猫バカ物語

 ねむり猫

  ねむり猫  落ち葉ささりし   昼下がり

 ここは東照宮。といっても日光ではありません。名古屋です。名古屋に東照宮
があるのかと言われるかも知れませんが、本当にあるんです。まあ、所詮家康の
お膝元ですから。
 とある試験を受けに名古屋の産業会館まできたのですが、受験の受付まで時間
があるのでその辺をちょっとぶらぶらしてみようと思い、地図を見ると、会館の
隣に「東照宮」の文字が。何でこんな所に?ということで探検!探検!
 しかし周り見渡すとビルばかりなんです。地図の場所もビルだし・・・と思っ
て回ってみるとビルの裏手に東照宮の文字が・・・ え〜!!これが東照宮? 
と思わずインスタント・ジョンソン風に驚いてしまった。
 本家日光はおろか、久能山の東照宮とも違って、とってもとっても小さい。綺
麗な彫り物も無ければ、きらびやかな金箔も無い。ちょっと気落ちしながら、と
りあえず見るだけ見ようと山門まで近づき、数カット写真を撮っていると、横の
ベンチでサラリーマン風の方が休憩中であった。こんなところに人なんかいない
と思っていただけにドキッとしてしまった。しかも、それだけではなく、柱の陰
に何かがいる気配を感じ、おそるおそる近づくとそこには・・・猫がいた。
 ちょうど日だまりになっていて、暖かいのだろう。イチョウの落ち葉が背中に
刺さっていることにも気づかず寝ほうけているではないか。そっと近づき写真を
撮らせていただいていると、気が付かれたらしく起きてしまった。「ちょっと!
どこ見てんのよ!」
とは言わなかったが、ついつい起こしてゴメンゴメンと謝
まってしまった。その後、当の猫は、ばつが悪かったのか、裏へとお隠れになら
れた。
 きっとあの猫は、東照宮の眠り猫なのではないか。12月にしては暖かい陽気
に誘われて、軒先で日向ぼっこをしているうちに、眠ってしまったようだ。そこ
を私に見つけられてしまったのだ。
 今度来たときには、お社をよく観察してみよう。きっとどこかにあのときの猫
が彫り物としているだろう。間違いない!
 猫に気を取られ、お賽銭を上げるのも忘れてしまった。ゴメン。


猫遭遇日 '04.12.05

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ニャジラ現る

この間、ふと猫コレクションを展示してあるオーディオラック(テレビが載って
いる)を見ると、倒れたりぐちゃぐちゃになっているではないか。何があったの
だろうかと想像してみた。

1.女房が掃除中に掃除機をガツンガツンぶつけた。
2.地震が来た。
3.テレビの裏に何か落ちて取ろうとして動かした。
4.裏の配線穴からネコが手を伸ばして荒らした。

こんなことくらいだろう。特に3か4あたりが有望ではないかと思っていた。修
復する気力もないのでしばらくほおって置いた。
 そんなある日、いつものようにミヨとハナキンの追い駆けっこが始まった。大
抵がミヨが逃げてハナキンが追いかける場合が多いのだけれど、時々逆転してい
るからおもしろい。そして、ついに見た決定的シーン。ミヨがラックの中に入っ
ているのだ。ミヨの足下にあるのはネコのフィギュア達。まさに大怪獣ニャジラ
がナーゴのネコ達を襲うかのような光景・・・と感心している場合じゃない。い
ったいどこから?
 正面のガラス扉はきちんと閉まっている。となると入れるのは裏の配線穴しか
ない。あの狭い隙間からよくはいったものだ。う〜ん。まあ、ミヨの細い体なら
入れるかも知れない。いや現に入っている。デブのハナキンではどう考えてみて
も無理だからなあ。そこに私の油断があった。私の頭には、「ミヨ=いい子」故
に、こんなところには入らない。「ハナキン=悪い子」しかし、この幅では入れ
ない。という図式が成り立っていたのだが、事実は、ハナキンに追いつめられた
ミヨがハナキンが入ることのできないここに逃げ込んだというだけであった。
 やれやれ、無事事件が解決してホッとしようと思ったが、大事なことを忘れて
いた。
「ミヨ!早くそこから出なさい!」

 
 事件解決日 '04.07.17

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招き猫の楽屋

ここは、猫の置物として最もポピュラーな招き猫の産地で有名な愛知県常滑市。
 この町の駅周辺は、コンクリートの建物が建ち並ぶごく普通の町である。しか
し、その一角に昭和の中期を思わせる町並みが存在する。窯屋(窯元のことをこ
ちらではこう呼ぶらしい)が建ち並ぶここは、招き猫だけではなく本物の猫もた
くさん住んでいる。
 道が狭く車の通りが少ないため、このあたりはネコ達にとっては天国である。
悪さをしなければ、地域の住民達からも嫌われないため、割とうまいこと共存し
ている。
 とある店先で猫を見つけた。こんな時に私のように猫好きのものは、ついつい
立ち寄ってしまう。そして、お店の人から見ればいらっしゃいとなるわけだ。ま
さに招き猫である。この時猫がどっちの手を上げていたかは定かではないが、明
らかに招いていたのだろう。
 お店に人が来れば猫の仕事はおしまい。さっさと次の鴨を探しに場所を変える
のである。きっと後で、お店の人から紹介料をもらうのだろう。でもお客がなん
にも買わなかったらそれも無し?
 普通、猫は昼間は見かけない。元来猫は夜行性なので、猫と遭遇するなら朝か
夕方というのが一般的である。しかしここのネコ達は、昼間だというのに堂々と
お店の回りをうろついている。しっかりと招き猫の血(?)を受け継いでいるの
かもしれない。
 そんなネコ達も、やっぱり自分たちの時間が必要。お店の前ではなく、裏通り
の屋根の上で毛繕いをしている親子の猫を発見。

「さあ、ちゃんと毛をきれいにしておかないとお客さん達入ってくれないからね」

「かあちゃん、向こうにカメラを持った変なおじさんがいるよ」

「あら、私たちを見に来たのかしら。ここは楽屋なんだからあんまり見ないでく
 ださいな」

「カメラを持った人の隣で踊っている女の人はなに?」

「きっと、私たちの気を惹こうとしているのよ」

・・・・・

「やっと行ってくれたね」

「まったく、楽屋を覗くなんてマナー違反よね。でもきれいに撮ってくれたかし
 ら・・・」

「かあちゃん、そろそろ次のお店に行く時間だよ」

「そうね、今日は天気がいいから稼がなきゃね」

なんて会話がこの親子の間で交わされていたかも知れません。

  
  猫遭遇日:'04.07.11

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 「御花」の招き猫 

 柳川にある元殿様の屋敷である「御花」というのがある。入場料700円だか
払うと、中に入って、屋敷や庭園が見られるのである。
 その御花の入口にお土産物屋が並んでいて、その前にいつもいるのが今回紹介
する三毛猫のミケ(仮名:ノラのため正式名は無い)である。
 去年の秋に、たまたまここを訪れたときに彼女を見つけ、写真を撮ったのであ
る。お店の人に話によると、誰かが彼女をここに捨てていったという。まったく
もってひどい話ではある。
 今年の春に、再び御花の前を通りかかったら、ミケがお店の前で気持ちよさそ
うに日向ぼっこをしていてた。本日は、水上パレードがあるためたくさんの観光
客で賑わっているにもかかわらずたいした度胸である。
 そうこうしているうちに人のたくさんいる気配を察したのか、起き出してちょ
っと運動を始めた。その後、店頭ワゴンの側に戻って、しっかりと招き猫を始め
たのである。
 以前より薄汚れている感じだけど、元気そうでなによりだ。
 しかし今回は、前回と違うところがあった。それは、お腹が大きくなったこと
である。しかも、いいもの食べてて太ったのではなく、子供がいるような感じで
ある。
 困ったものだ。というのは端で見ている私の意見だが、当のミケは全く気にし
ていないようである。
 ここに居ついているということは、きっと誰かから餌をもらっているのであろ
う。いじめる人もいないのか、本人もここが居心地いいようである。
 人に対する警戒心は、一応持っているようだが、相手が危害を加えないと解る
と一転して人なつっこさを発揮する。この猫に引かれてお店に入った人もいるの
ではないだろうか。
 愛想もいいし、綺麗に体を洗ってやれば本当に招き猫になりそうなだけに惜し
いなあ。
 そんなミケも私が写真を撮ってやったら、彼女も招き猫らしく座ってくれるで
はないか。(さすがに手は上げなかったけど)
 そうなるとやっぱりもう1枚撮ってやりたくなるのが人情というもの。私が、
写真を撮っていると、他のカメラマンも面白いと思ったのか、釣られてシャッター
を切っていた。
 次回来たときには、彼女の回りにちび猫がいたりするのだろうか。次の楽しみ
と共に、ちび猫達のその後の運命を考えると、ちょっぴり不安を抱いてその場を
後にしました。

 

猫遭遇日 '02.03.17 旧八代通信(Mail版)からの再録

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