〜汎用猫型決戦兵器〜



「ついに完成したぞ!!」
「やっと完成しましたね! ハカセっ!!」
 ……ここはとある研究所の一室。
 ある物の完成に歓喜している博士と、その助手の姿がそこにあった。

「ハカセっ、なんと名付けましょうかっ!?」
 その完成したとされる物を指さし、感涙の眼差しでハカセに問う助手。
「…そうだなぁ、………よしっ、決めたぞ!!
 命名!! 『汎用猫型決戦兵器 ポチ2号』じゃあああっっ!!」
「ハ、ハカセ……猫型なのにポチですか!?」
「やかましーっ! ワシの趣味じゃ」
「………。」
 そのとき、パタパタとスリッパを鳴らしながら女の子がやって来た。
「…ハカセーっ、ハカセの大好きな梅昆布茶を煎れて来ましたよ〜っ」
「おおっ、美加クンか! どぉぉだい見たまえ、ようやくコレが完成したのだよ!」
「ホントですかっ! …わぁ、かわいい〜」
「よしっ、御子柴クンっ! さっそくこのポチ2号の起動じゃっ!」
「…あれから7年の月日が流れました。 そしてついにこの時が来たのですね、ハカセっ!!」
「ああ! そうとも、御子柴クゥン!」
 白衣のポケットからリモコンのような物を取り出すハカセ。 どうやらポチ2号の起動スイッチらしい……。
「御子柴クン、コレでようやく私達は救われるのだよ!」
「そうですね、ハカセぇ!!」
「なんだかワクワクしちゃいますね!」

 ………秒読み。 5秒前、4、3、2、1、…スイッチオォォンっっ!!
 きゅいいいいいいいいんんんんんっっっ!
 電気的なチャージ音に混じって………
 うにゃあああああおおおんんんっっおんおんっっ!
「見たまえ、ポチ2号の目覚めだぁっっ!!」

 今まで白目だったポチ2号の目に、力強く潤ったビー玉のような明光が浮き上がる。
 そして、ポチ2号は自分の力でゆっくりと立ち上がる………。
「どうですハカセ! 成功ですか!?」
「まぁ待て………。 美加クン………」
「はい」
 そういって目覚めたばかりのポチ2号に手招き(おいでおいで)をする美加。
 すると、ゆっくりと美加に向かって歩き出すポチ2号……。

 ポチ2号は美加に近づくとおなかを見せゴロンとなり、ごろごろと喉を鳴らして喜んでいる……。
「きゃああっ、かわいいっ!」
「…まずは成功じゃっっ!」
「ハカセ、その他の実験も試行してみましょう」
「うむ」

〜汎用猫型決戦兵器ポチ2号 実験結果一覧〜
 ・クビの後ろを掴み持ち上げてみる
   → 手足を丸め、のぼーとした表情に。 成功!
 ・またたびを与えてみる
   → トロンとした表情になり、病みつきになる。 成功!
 ・抱いたまま、水場に近づける
   → 極端に嫌がり、水を怖がる。 成功!
 ・耳の中に息を吹きかける
   → ぷるぷると頭を振り、嫌がる。 成功!
 ・猫じゃらしをぱたぱたしてみる
   → ちゃんとじゃれる。 成功!

〜その他、観察された汎用猫型決戦兵器ポチ2号 行動結果一覧〜
 ・排泄行動の際、いささか遠い目をする。
 ・自分のしっぽを追い回し、くるくる回る。
 ・与えた食べ物をその場で食べず、奪われない安全なところまで持っていく。
 ・柑橘類のにおいを嫌がる。
 ・収気音に対し、憤慨/威嚇行動を示す。
 ※ これらは専門家に問い合わせてみたところ、猫のそれと相違ないと判明した。

「その他、肉球のぷにぷにとした感触、引っ張ればびのぉっと延びる皮の感触なども違和感はありません!」
「そうか御子柴クン、開発及び実験は例の件を除いて成功だなぁ!!」
「はいっ!!」
「これできっと、あの忌々しい寝不足から解消されるのだっ!!」
 歓極まって抱き合い、感涙するハカセと助手。

「…あのォ、ハカセ? 一つ聞きたい事があるのですが…」
「なんだい、美加クン?」

 ハカセの好きな梅昆布茶を注ぎながらハカセに問う美加。
「何のためにこのような猫ロボットをお造りになったのですか?」
「そりゃあ汎用猫型決戦兵器というくらいだからねぇ…」
「はぁ…」
「この研究所内に巣喰うネズミどもを退治するためだよ、猫は本来ネズミを捕らえる習性を持つ事を美加クンは知らんのかね?」
「……あ、あのハカセっ!?」
「あのネズミどもの走り回る音はうるさくてたまらんからのォ!!
 ……はあぁっ、美加クンの煎れる梅昆布茶は最高だ! なぁ、御子柴クン!」
「はいっ、ハカセ!!」
「………。」


前へ戻る次へ