OSは選ぶものか

最近、Linux(リナックス)というUNIX系のOS(アプリケーションを動かすのに必要な環境を提供するソフトウエア:Operating System)がパソコン用のOSとして認知されてきました。そこで、PC-AT互換機にWindowsがバンドルされているのは、使う人がOSを選択する自由を奪うものだという意見もでてきました。パソコンにバンドルされてきたWindowsを返すから、ライセンス料金を払い戻せという運動が、アメリカで起きています。ただ、パソコンのOSなんて興味はない、あまり戸惑わずに使えればなんでもよいユーザーの立場で考えると、パソコンとOSが分離するのは、はたして良いことかと疑問に思います。

最近、アメリカの西海岸にあるフォスターシティのマイクロソフトのオフィスにLinuxユーザーが、デモをしたそうです(CNET,Wired)。彼らの主張するところは、PC-AT互換機にはWindowsがバンドルされているが、自分たちは使っていない。その分のライセンス料を返せというのです。根底には、「コミュニティー・ベースの無料ソフトウェア開発」というプログラマの思想がからんでいるのですが、使わないものには金は払わないというのは分かりやすい問題提起だと思います。私も、パソコンにバンドルされているソフトを全て使っているわけではありません。もしかすると、10%位かもしれない。しかも、駅ナビみたいな時刻表システムは、すでにデータが古かったりして、バージョンアップの費用がかかってしまったりします。付いてきたソフトの全てをアップデートしていったら、その出費もばかにならない。すると、必要なソフトだけ使えば良いわけで、ソフトをバンドルするのではなく、試用版をバンドルして、使うものだけを正式に買ったほうがリーズナブルではないでしょうか。まぁ、アプリケーションソフトのバンドルは、MS-Officeしか選択できなかったりして、それはそれでなかなか文句が出そうなところですが、OSの方のバンドルはまた別の意味があります。

昔、PC9801F2というNECのパソコンを買ったときに、OSを選択する必要がありました。当時は、N88−日本語Basic(通称Disk-Basic)、MS-DOS、CP/Mが出ていましたね。Basicはプログラミング言語だから、OSと言えるのか分かりませんが。現に、その後、MS-DOS上で動くBasicが出てきたし(^_^;。それはともかく、本体を買って電源を入れただけでは、ソフトは動かなかったのです。そういえば、当時はソフトの方にOSがバンドルされていたっけな。ハードディスクなんて高級なもんは普及していなかったから、フロッピーで立ち上げるのが普通でしたもんね。逆に、そうだからOSを選択する必要があったのかもしれん。しかし、その数年後にMacintoshを買ったら、こっちは起動するとすでにOSが入っていました。もちろん、ハードディスクが内蔵されていましたからね。PC-98の方も、ハードディスクを内蔵したものが出てくる。すると、ソフトもフロッピーから起動するのではなく、ハードディスクから起動するようになりました。こうなると、ハードディスクにOSをインストールしておく必要が出てきます。でも、その頃には、すでにMS-DOSになってましたね。BasicもMS-DOS上で動くのが売られていたし。ただ、OSをバンドルするようになったのは、Windows 95の頃からではなかったかな。これは、マイクロソフトの戦略だからですね。でも、ユーザーから見れば、だから困るってことでも無かったように思います。他に、選択もなかったし。

ここに来てにわかに問題になってきたのは、LinuxがWindowsに代わるOSとして使えるようになってきたことと、Linuxで動くソフトも出始めたからでしょう。例えば、最近のニュースでは、IBMもLinuxを戦略的に使おうとしているという話もあります。大手のソフトメーカーもLinuxで動くソフトを提供し始めれば、WindowsばかりがPC-AT互換機のOSではない時代になるかもしれません。そうそう、LinuxはMacintoshのハードでも動くものがありますから、Mac OSも他人事ではない。数年後には、Macnitoshユーザーも、Mac OSを返すからその分のライセンス料を返せなんて要求するようになるんでしょうか。そうなれば、ユーザーも安定で使いやすいOSを選択することができてよいではないか、と言えるんでしょうね。でも、一方で、本当かなぁとも思う。なぜなら、複数のパソコンを使う場合に、異なるOSが混在するってことは意外と面倒なんです。ソフトは、それぞれ買いそろえることにしても、データのやりとりで互換性が問題になったりする。たとえば、テキストの行末コードとか、漢字コードとかね。自分の職場を考えた場合、MacintoshやWindowsが入り乱れた中に、Linuxが入ってきたりするとちょっとデータの共有で困ってしまいます。しかも、そのユーザーがLinux初心者だったりして、自分も知らなかったりすると相手の言葉が分からなかったりする。

グループでパソコンをネットワークでつないで仕事をする場合には、同じOSでするのが一番問題がでません。お互いに、知識を共有できるから、問題解決も速い。でも、Linuxの方がWindowsよりも安定だぞとあなたは言う(^_^)。そうです、Linuxに限らず、UNIXはめったに画面が凍ることはありません。コンソールが落っこちることは、無いこともないけど。だから、全員がLinuxになっちゃえばいいんですね。でも、まてよ、それでは、OSを選択する自由はどうなるんでしょ。きっと、みんながLinuxを使えば、Linuxをバンドルするようになりますよ。こんどは、Windows愛好家がデモをしかけたりして。そう考えると、特に初心者から見れば、パソコンのOSとは、一番使われているOSであれば良いのです。それが、不安定であろうと無かろうと、みんなが使っていれば、問題解決も速いし、データの共有も悩まずに済むのです。みんなが使えば、ソフトも安くなるし良いことずくめじゃないですか。こういう考えって乱暴でしょうかね。でも、そうしてPC-98シリーズも売れ続けてきたし、いまだにWindowsを使う人が一番多いのではないですか。

パソコンが、本当に個人で使えるコンピュータであるには、スイッチを入れればOSが立ち上がる、OSがバンドルされた状態がベストだと私は思います。それが、昔のPC-98のように、OSのインストールからやらないといけないとすると、その壁は初心者には大きすぎると思うのです。もちろん、今のプレインストールされたパソコンが使いやすいかどうかは、置いといてですが。あの、再インストールも含めてね。すると、この先、OSをユーザーが選択するようになるのが健全なパソコン世界だとすると、いろんなプレインストールパソコンが出回るようになりますね。Mac OS版Macや、Be OS版Macや、Linux版Macや、Windows版PC-AT互換機や、Linux版PC-AT互換機や。で、ソフトもその数だけ種類が出るのかな。OSが選べるべきだと言うのは、正論だけとむちゃな感じもします。パソコンを使うのが初めての人に、どれを勧めたら良いんでしょう。ソフトの数が多くて値段もやすいOSかな。でも、それだと偏っちゃうからまずいかな。なんか、OSのお仕着せはごめんだと言う人は、どんなOSでも使える自信がある人で、そういう人には、OSの意味も分からない人の気持ちは理解できないのではないかとも思う。

もちろん、Windowsをメーカーにバンドルさせて、使う使わないにかかわらずに、ライセンス料をとっているマイクロソフトのやり方はちょっとね、と思います。でも、似たようなことをしてるアップルとの違いは、自分でハードを作っているかどうかの違いだけであって、ユーザーから見れば区別はつかないのです。別に、Linuxに偏見が合って書いているわけでもないけど、報道する方もLinuxとWindwosの勝負という切り口ばっかりでなく、Linuxがパソコンユーザーのどの部分に入っていくのか、普及しているソフトはどの分野のものなのかまで、ちゃんと説明して欲しいんです。多分、複数のOSが共存する世界では、その得意分野で用途が別れていくだろうと思いますしね。

1999.02.05
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