パソコンの進化か、ただの出費か

アップルのPower Macintosh G3が日本の店頭で売られるようになって、この新しいMacを使うユーザーも増えていくことでしょう。しかし、こうした斬新なコンセプトのパソコンっていうのは、ユーザーにとってプラスなのかマイナスなのか一概にいえません。一方で、次期Windowsである、Windows2000の個人向けバージョンは発売が2003年まで持ち越されました。これも、このOSがアメリカで一番売れている廉価版パソコンでは動きそうもないことを考えれば、当然かもしれませんけどね。

先日、電気屋さんで、青いすけすけデザインのPower Mac G3を見かけました。プラスチックの箱を通して電磁遮へい版に書かれたG3の文字が見えてかっこいい。どれ、ちょっと後ろも見てみようと覗き込んだら、USBの他に見慣れないポートが2つ付いている。これが、新しく標準装備されたFireWireポートです。もちろん、他に、10/100BaseTのポートも今まで通り標準で付いています。でも、そのときには「ここに無いもの」に気がつきませんでした。アップルのPower Macintosh G3の雄姿については、このパソコンのホームページを見ていただくとして、そのスペックのインタフェースのところを読むと、なんとSCSIポートが見あたらいのです(注:内部SCSIは全機種にあり,最上位機種にはWideSCSIボードも入っているとのこと)。思い起こせば、私がSCSIという言葉を知ったのはMacintoshを使うようになってからです。もちろん、その後、PC-9801にSCSIボードをつないだりしましたが、初めてMacintoshの後ろに見慣れない棒のささったひし形のマークを見たときには、こいつは何だろうと思ったものです。で、どうやら、これに外付けのハードディスクとかスキャナがつけられるらしいことが分かって、実際つけてみたら、これが便利。ターミネータを忘れておかしくなったこともありましたが、それでも、こんな簡単に、しかもハードディスクもスキャナもCD-ROMもMOディスクドライブも、同じポートに混ぜてつないで良いっていう所は、当時驚きでありました。ただし、慣れてくると、つなげるのは6つまで、ケーブルも長すぎるとだめ、ターミネータをつけてよいのか器械によって違うという、面倒くささも感じるようになりました。

その点、FireWireは、一番早いUltra Wide SCSIよりもさらに10倍の400Mb/sという高速転送が可能だし、つなげられる器械の数は63台、ケーブルの長さも最大4.2mです。機器もパソコンも電源をいれたままでつないで良いし、つなぐだけで自動設定できるホッとプラグ対応です。SCSIの時のように、番号が重複して全部の機器の後ろをチェックして回るようなこともなくなります。なーるほど、こいつは便利だ、今のMacも古くてOSが重くて仕方ないから、買い替えるか。と、思ってよくよく考えると、困るのが、今持っているSCSI対応の機器をどうやってつなぐのかということですね。えー、全部捨てるの。それとも、いまのパソコンも残しておいて、ネットワーク経由でデータを取り込むか。G3にバージョンアップする人の悩みは、USB対応のフロッピードライブを買うだけで解決するものでもないようです。こうした、ハードウエアの展開は、ハードとOSを一緒に売っているアップルだからできた技だと思います。多分、Windows系のパソコンではFireWireとSCSIを同居させるステップがあるでしょう。すると、アップルのやったことは、ユーザーに対する暴挙だろうか、ということですが、必ずしもそうでもない様に思うのです。というのは、今のOSは、このG3でも従来のPowerMacでも動くから。もちろん、これ以上パソコンを置く場所が無いぜという人には不便でしょうが、Windowsの様に、OSが変わるたびに、使えていた周辺機器が使えなくなっていくのに比べれば、まだましかと。もしかして、わたしはMacに甘いかな(^_^;。FireWireを巡っては、ZDNetニュースを読むかぎりでは、アメリカの周辺機器メーカーは好意的なようです。そりゃ、新しい市場が広がるかもしれないし、SCSIというインタフェースにも限界があるからですけど。

一方の、Windowsの方の話題では、Windows 9x系のOSは98でおしまい、次はWindows NT系のWindows 2000にしてねと言っていたマイクロソフトが、2003年まではWindows 9xを続けると言い出したということです(ZDNet, CNET)。ニュースを読むかぎりでは、こうした判断をした原因は明らかではないようですが、ZDNetの記事では、これまでのWindows 9xのソフトウエアとの互換性をとるのに苦労しているのではないかと書いています。この問題の中には、Windows 95以来の売りであった、プラグ&プレイの移植も含まれているようですから、これが本当なら致命的ですね。私は、Windows 95とWindows NT4.0の両方を使っていますが、Windows NTの面倒くさい部分の一つが、プラグ&プレイがつかえない点ですから。これが解決しないままにWindows 98のユーザーをWindows 2000に移したら、ユーザーはかなり混乱するでしょうね。とは言え、周辺機器がまともにインストールできて、多少のイベントビューアの赤いSTOPマークを無視する鷹揚さがあれば(^_^;、Windows NTもなかなか良いものですけど。強いて言えば、ジョイパッドが使えないとか、ゲームが走らないとか、楽しみの乏しいOSではありますな。逆に言えば、今Windows NTを使っている人は、Windows 2000になって、このOSでゲームソフトが動くのを楽しみにしていたりする。もっとも、お家でWindows NTを使っている人は少ないと思うので、これは、インターネットよりも生産性を落とす原因になるかもしれませんね(^_^)。

それはともかく、今回のWindows 2000個人版を先送りするニュースは、個人ユーザーにとっては喜ばしいことです。というのは、このOSは64MBのRAMと300MHzのPentium IIが必要だからです。日本の市場に出ている売れ筋新製品ではこのスペックは当たり前なので、なんてことはないという感じですが、廉価版パソコンや低消費電力が命のモバイルパソコンのユーザーはひっかかるかもしれません。そもそも、モバイルパソコンでWindows NTするかな。Windows CEがあるだろうと言われそうですね。300MHzというCPUのパワーは最低要求でしょうし、例によって日本語処理を快適にするには64MBというのもたらないかもしれません。今使っているパソコンの1.5倍は高性能なパソコンで、今と同じ位のパフォーマンスという感じかもしれませんね。というわけで、マイクロソフトの話では、Windows 98を2003年までサポートするようですし、この間にマイナーなアップデートも行うそうですから、とりあえず去年の暮れに「要求スペック」どんぴしゃのパソコンを買ってしまった方も、それが古くさくなるまでは使えそうです。めでたしめでたし。でも、これを書いていて気がついたけど、私が今Windows NTを走らせてるパソコンって、Windows 2000の要求スペックを満たしてないや(^_^;。

それにしても、ハードウエアを変えてしまったアップルとか、OSを変えようとしているマイクロソフトも、ユーザーからみれば、出費が増えそうな点で同じですね。これは、ユーザーからみて、SCSIからFireWireへのきりかえなど、パソコンの進化としてしかたないものだととらえるべきなのか、あるいは、ただ使えるものを使えなくしているだけで、消費者の負担でしかないと考えるべきなんでしょうか。私には、よく分かりません。2003年になって分かるのかもしれない。ただ、アップルにしても、マイクロソフトにしても、少なくとも、いま持っているパソコンがくたびれるまで使えることは確かなようですから、まぁ、しばらくは様子を見ていましょうか。

1999.02.05
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