OSは共有の資産か

アップルは1999年3月16日に、Mac OS X Serverの出荷に合わせて、OSの基本部分を公開することを発表しました(ZDNET,CNET)。これが実現すれば、アップル以外のOS開発者も、プログラムの一部を流用することができるようになります。例えば、Mac OSの一部をMacintosh用のLinuxに応用するとか、Windowsのインタフェースが走るG3マシンとか、出てくるかもしれませんね。OSオタクの皆さんには興味深い話題でしょうが、OSってなんだかわからんまま使っている一般ユーザーにとって、これはどういうい意味を持つのでしょうか。

今回の発表は、Webサーバーとか、電子メールサーバーといった、ネットワークのサーバー市場でメジャーではないアップルが、シェアを延ばすために考えた戦略のようです。サーバーの様なネットワークサービスの世界では、UNIX系のOSかWindows NTが使われるのが一般的で、最近話題のLinuxも、個人が仕事に使うというより、サーバーマシンのOSとして広がっていくのが最初だと思います。そんな中で、これまで、マッキントッシュの用途は、もっぱら個人ユーザーが仕事や趣味で使っているわけで、これをサーバーマシンに使おうという発想は、ファイルサーバー以外ではあまり思いつきません。そこで、OSの基本部分を公開して、それを使ってMacOS X Serverが、Linuxのように浸透していかないかと考えているようです。OSのプログラムソースが公開されるのは、これに始まった話ではなくて、UNIXなどは多くの研究者が互いに協力して作っていったものです。MacOS X Serverの基本部分も、もとはカーネギーメロン大学が開発したものですから、そういう意味で、オープンに戻った様なものです。それにしても、アップルというのは、ユーザーインタフェースを含めて、OSの公開はとんでもない見たいな感じがずーっと続いていて、オープンソフトウエアの人たちとは犬猿の仲だと思っていたので、今回の話ではずいぶん印象が変わりました。

計算機のOSという世界についてはよく知らないのですが、Linuxなどの成長を見るとプログラムのソースがオープンであることで、OSの欠点が修正されていったり、新しいインターネットのサービスに早く対応できる、といったメリットがあるのではないかと思います。しかし、それとは裏腹で、いくつものバリエーションができて、ユーザーが戸惑うところもあります。UNIXで言えば、無料で手に入るOSとしては、Linuxの他にFreeBSDがあります。売り物でよければSolarisというパソコン向けのUNIXもあります。どれが良いのでしょうね。また、ワークステーションには、そのメーカーのUNIXが付いてきます。UNIXですから、基本は同じなので、一つ知っていれば直感で使えますが、選べと言われても、結局、使おうとしているソフトが対応しているかどうかで決めるしかありませんね。もちろん、コンパイルからインストールまで、苦労を惜しまなければ、選択肢は増えます。ただ、そういうオープンソフトウエアのカルチャーの一方で、Linuxでさえ、一般ユーザーや企業はレッドハットという特定のOS供給元に集まる傾向が出ています。やはり、入手先はメジャーな所にしたほうが安心というのがユーザーの立場ですもんね。

アップルはOSの基本部分を公開しても、ユーザーインタフェースの部分は公開しないようです。ですから、MacintoshのGUIは、OSが公開されても変わらないでしょう。これは、私は良いことだと思います。昔、UNIXで二つのGUI(motifとOpen Windows)が勢力争いしましたが、結局共通のライバルだったWindows NT勢力を援護しただけで、なんのメリットもありませんでした。同じようなことがMacintoshで起きてもらっても困るわけです。この先のMacintoshは、オープンなOSの上に従来のGUIがのった構造になるのでしょう。それにしても、こうした、プログラムのソースを公開して皆で磨いていくOSのあり方と、がんがん、ユーザーに新しいコンセプトを押し付けてくるマイクロソフトのようなOSと、どっちが良いんでしょうね。素人目には、OSのソースコードをオープンにすると、特定のコンセプトに向けてOSを変えていくようなことは難しくなるように思います。これとは正反対に、マイクロソフトは、独自の路線で突き進もうとしています。それは、もはやコンセプトの塊のようにもみえます。

PCマガジンに、マイクロソフトの次期OSであるWindows2001はこれだ、みたいな記事が出ています。マイクロソフトの内部プレゼン資料をひそかに入手して書いているとか。なんか、怪しげですが、著者によると信ぴょう性は高いそうな。これを読んでいると、Win2001のデスクトップって、もはやWebブラウザそのものですね。電源を入れると、スタートページなるものが表示されるらしい。なにやら、得意の「お気に入り」とか、「最近使ったファイル」的なメニューが画面いっぱいに並んでいます。インターネット・イクスプローラを全画面表示したようなものですね。これは、カスタマイズできるようで、そのパソコンメーカーのロゴなんかも表示できるらしい。こういう表示を、アメリカ人は初心者に優しいと思っているらしくて、あっちで流行のポータルサイト(ネットサーフィンの起点)の画面とか、最近ネットスケープを傘下に入れると発表した、超大手プロバイダのAOLの専用ブラウザの画面なんかも、必ず、はではでな画面に、「ニュース」「チャット」「スポーツ」「ショッピング」といった、リンクが並んでいます。よく分からんのですが、こんなもんがパソコンの電源を入れるたびに画面にでたら、わたしゃうっとうしくてたまらんのですが。朝のデスクトップは、掃除の行き届いた机であって欲しい(^_^)。あーぁ、Win2001をインストールして最初の仕事は、このへんてこなインタフェースを外して、空のデスクトップにする作業でしょうか。でも、外したら、その下にはなんもなかったりして。

思うに、OSの根幹の部分はオープンであって、多くのプログラマの目に触れていたほうが安全でしょう。これは、ネットワークからのクラッキングの予防に対しても効果があります。UNIXでは、多くのセキュリティホールが報告されては、ふさがれていきます。Windowsの場合は、ユーザーは問題を指摘することはできても、それを直すことはできません。で、どっちが、エンドユーザーにとって良いかといえば、遊ぶにはマイクロソフトは面白いけど、仕事はLinuxやMacOS Xかなぁ、なんて思ってしまいますが。どんなもんでしょうね。

1999.03.19
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