パソコンのトラブルシューティングは進歩したか

パソコンのOSはネットワーク機能や、MPEG3といったマルチメディア機能、USBやFireWire(IEEE1394)といった新しいインタフェースをとりこんで、絶えず新しく変わっていきます。しかし、その一方で、トラブルに陥ったOSの復元の難しさは、MS-DOSでconfig.sysを修正してはリスタートをかけていた頃と比べても、たいして改善されていないのではないか、というのが、最近、立て続けにトラブルに合った私の実感です。

以前に、librettoとmobio NXのWindows 95が壊れて再インストールした話を書きましたが、一度OSが不調になったパソコンを、クリアインストール(ディスク初期化からの完全な再インストール)をせずに環境を維持したまま復元するのは、ほとんど無理ではないかという気持ちになっています。私は仕事で、マッキントッシュ(PowerMacintosh 8500, MacOS8.5)を3年ほど使っています。それなりの安定性で(^_^;使えていたのですが、最近、立て続けに不調をきたしました。まず、ある日を境に頻繁にフリーズするようになりました。立ち上がっているソフトを問わず、作業中にカーソルが動かなくなる、あるいはカーソルが消える。多くの場合、リセットをするcontrol+ command+ PowerKeyの手順すらきかず、本体の電源スイッチを使って落としていました。Macの場合、こうした問題の多くは、機能拡張ソフトのコンフリクトであることが多いので、まず最初に、機能拡張マネージャというコントロールパネルで、サードパーティーの機能拡張ファイルを外すことからします。このコントロールパネルには、OSの基本の機能拡張ソフトだけのセットに戻すメニューがあります。このセットでしばらく使ってみまたら、どうやら、フリーズが止まりました。それから、よく使うソフトを順に立ち上げていって、ソフトに必要な機能拡張ファイルだけを戻すことにしました。すると、MS Excel 98を起動したときに、勝手に不足している機能拡張をインストールした様子。で、試しに、フリーズしていたときの拡張機能の組み合わせに戻してみたら、なんと、最初の環境でもフリーズしなくなった。これは、MS Office98の機能拡張ソフトの問題だったのだろうか。二つのシステムの違いは、MS Office98のインストーラが改めて書き込んだいくつかの機能拡張だけ(の筈)です。

結局のところ、多くの場合、問題の原因は分らないので、Macユーザーは、それぞれが自分の経験に基づいて、拡張機能のコンフリクトの原因が特定の会社の製品であると判断するようなります。たとえば、ジャストシステムのIME(漢字変換ソフト)が悪いとか、マイクロソフトの機能拡張が怪しいとか。ただ、それが全てではないようにも思います。こうして、元に戻ったかに見えたシステムでしたが、半月後に、また別のトラブルが発生しました。プリント中にうっかり「Appleプリンタ」というネットワークプリンタのツールを起動したら、そのままシステムがフリーズ。で、システムをリセットしたら、ソフトを起動するコントロールパネルの「ランチャー」の窓が、下の辺が見えないくらい縦長になっているではないか。とりあえず一度これを終了してから、起動し直したら、エラー-192というのが出て立ち上がらなくなってしまいました。マッキントッシュは、システムがエラーを起こすと、数字でエラーの種類を表示します。この数字の意味は、ハードに添付される冊子にも、オンラインヘルプにも載っていません。ただし、この意味をどうしても知りたい人は、アップルのサイトにあるリストから探すことができます。このサイトには、多くの技術的な情報が載っていて、検索ページを使えば見つけることもできます。ただし、英文ですが。上のリストによれば-192が出る理由は、「Resource not found」であるということらしい。ほとんどのユーザーがこの説明を読んでも、なんら解決ができないのは明らかです。ユーザーが欲しいのは、そのエラーが出た場合にどの機能拡張ソフトをはずしたらよいかとか、どのソフトが問題を起こしているかです。でも、このリストに書いてあるのは、問題が起きたときにCPUが何をしていたかなんですね。

こうしたシステムエラーコードは、WindowsNTが異常終了するときに青い画面に表示するダンプリストや、UNIXでアプリケーションソフトが異常終了したときにディスクに書き出すcoreファイルと同じで、ソフトを書いた人が原因を解析するのには参考になっても、ユーザーにとってはほとんど参考になりません。まぁね、これは自分の領分をこえているから、再インストールしようという判断材料にはなりますけど。ちなみに、-192のメッセージにあるリソースというのは、データと一緒にファイルの属性も持って歩く、Macのファイルシステムに特有の構造です。これは、アップルが開発者に提供しているリソースエディタ(ResEdit)というソフトで内容を見ることもできます。多分、このリソースが壊れているのでしょうが、ResEditで見たところで、どこが壊れているという表示はしてくれません。ですから、ここは、Mac OSの再インストールということになります。アップルのMac OSインストーラでは、OSの部分的な削除、追加、全体の再インストールを選ぶことができます。私は、これを全部やってみましたが、解決しませんでした。なぜかというと、デフォルトの再インストールはWindowsでいうハードディスクの初期化からするようなクリアインストールではなく、上書きのインストールだからです。クリアインストールをするには、CD-ROMから起動後にディスクツールでハードディスクの初期化を自分でするか、インストーラのディスク選択面のオプションで、「新規インストール」(ハードディスクは初期化しない)を選ぶ必要があります。今回の問題は、結局、ランチャーの初期設定ファイルが壊れていたことが原因のようでした。しかし、初期設定ファイルを捨てて再起動するだけでは元に戻らず、他のMacからコピーしたランチャーを起動することで、正常な動作ができました。Macの難しさの一つは、初期設定情報がファイルのリソースにもある所かもしれませんね。

ソフト上の問題の多くは再インストールで解決するにしても、それでも解決しないこともあるのが、パソコンのトラブルの奥の深いところです(^_^)。職場のあるフロアでは、パソコンのLANへの接続を赤外線通信でやっています。これは、赤外線通信用のアダプタとパソコンを10BaseTのケーブルでつなぐだけで、あたかも、ハブにつないだように使えるという代物です。ケーブルの引き回しが無いのでフリーアクセスでない部屋でも、床をケーブルが這うことが無い。しかし、あるWindows95のパソコンをこのインタフェースにつないで使おうとしたら、IPアドレスを振り分けるDHCPサーバーとの通信ができないという問題が発生しました。パソコンのイーサネットアダプタをみたら、ちゃんとLEDが瞬いていて、信号が来ているらしい。しかし、パソコンはDHCPサーバーとの通信ができないという。もちろん、IPアドレスは取れないので、電子メールも読めないし、Webも読めない。この状況から考えられるのは、アダプターの故障、次にOSの故障。しかし、直前までハブに直結して使えていたパソコンが、いきなり壊れるとは思えない。では一応確認しようと、とりあえず元通りにハブにつないでみたら、ちゃんとDHCPサーバーにつながるではないですか。では、赤外線通信アダプタが壊れているかというと、これを他のパソコンにつなぐと、なんの問題もなく使えるのです。いったい、何がまずいのでしょうか。ユーザーには分りませんね。多分、オシロスコープをもってきて、赤外線通信アダプターからの電気信号をモニターすれば、どれかの電極の信号レベルが低いとか、なんらかの違いが分るのでしょうけど。結局、エンドユーザーの対処は、そのメーカーの赤外線通信アダプタと特定のメーカーのパソコンをつなぐには、間にハブを入れないとだめらしい、というレベルのものです。

パソコンは本当は難しいものではなかろうか。なーにが、誰でも安心して使える入門機だ。それだって、ちょっと使い込めば、おかしな動作をするようになるんだよ。しかも、対処の方法は、OSを再インストールすれば直るかもしれない、ボードを交換すれば直るかもしれない、間にハブを入れれば直るかもしれないの、かもしれない運転(^_^)ばっかりです。パソコンを使い込めば、トラブルへの対処法はいくつか身に付きますが、問題は、それは必ずしも一般的な解決策ではないことです。使っているソフトも、つないだ周辺機器も、通信環境も違うパソコンで、同じようにカーソルが凍って、同じエラーコードが出たとしても、同じ対処で戻るとは思えません。OSが進化する割に、こうしたトラブルシューティングは相変わらず、FAQとか書かれた薄っぺらな冊子程度。しかも、それに書かれていないと、お手上げなのが、ユーザーフレンドリーな現代的パソコンの世界なんでしょうか。ところで、こんどは、アップルメニューオプションが「致命的エラー」で開かなくなっちゃったんですけど(^_^;。

1999.04.16
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