賢いホームページ選び

ネットスケープコミュニケータのバージョン4.5を使っている人は、URLが表示される「場所ツールバー」の右端に「関連サイト」というアイコンが見えるでしょう。これを押すと、URLのリストがプルダウンします。インターネット・イクスプローラを使っている人でも、バージョン4であれば、ネットスケープ社のサイトから「Netscape TuneUp for IE」というのをダウンロードすると、似たようなリストを表示することができます。この機能をSmart Browsingと言って、賢いインターネットサーフィンができるツールなんだそうです...。ほんと?

この「関連サイト」っていうのは、見ているページに関連したサイトが表示されるほか、そのサイトを運営している会社の株情報とかもでます。でも、私には「・・・サイトに関する情報」というサブメニューが面白かった。このメニューには、見ているサイトの人気度が表示されるんですね。具体的には、世界で?何番目くらいのアクセスがあるか、何ページくらい持っているか、いくつくらいのサイトからリンクされているかが出てきます。その数字が、妙に詳しいところが、なんだか怪しげなんですけどね(^_^;。たとえば、テレビ局のホームページを軒並みあたってみた結果が、これです。(数字は'99年4月23日のデータ。)

人気度ページ数よそからのリンク数
NHK5000050855587
日本TV10000125877664
読売TV100000147
TBS50000213928347
フジテレビ5000038
テレビ朝日50000132764805
テレビ東京5000064533210

人気度の意味は、10000であればベスト10000クラスということだそうです。こうして並べると、なんとなく人気の違いを納得させられてしまうのが数字の魔力ですね(笑)。ニッテレさんは、インターネットでも人気者。読売りテレビさんより一桁もランクが上なんだって。こんなこと書くと、大阪の人が意地になってアクセスしたりして。それとか、人気度をページ数で割って、効率のよいホームページはどこだろうかと解析してみたり、なかなか遊べるでしょう。でも、よそからのリンクの多いTBSは、リンクのないフジテレビよりもコンテンツに優れるとか結論をだすのは、ちょっと待ったほうがよいですよ。まずは、この数字は誰が数えているのか調べてみないとね。

「関連サイト」アイコンをプルダウンすると、「Smart Browsingの詳細」というメニューがあります。これを選ぶと、このリストの意味が英語で書かれたページが表示されます。このページの「What's Related FAQ」という所をクリックすると、誰がこのプルダウンメニューのコンテンツを作っているかが分かります。これによると、このメニューは、ネットスケープが作っているのではなくて、Alexaという会社が提供しているのです。Alexaは、インターネットの無数のホームページの情報を集めて分類し、関連づけをすることで、ユーザーが目的の情報を見つける手伝いをするというのが売りらしい。この会社は、ブラウジング支援ソフトみたいなのを提供していて、これを使っても、「関連サイト」アイコンと同様のことができるようです。つまり、この会社のサービスをネットスケープが買ったということですね。この会社は500,000サイトのデータを持っているんだそうな。これは、便利。この会社のデータベースを使えば、欲しい情報を素早く探せますね。無意味なサイトまで表示されてしまう検索サイトより便利かも。ただ、ちょっと気になるのは、このリストが、必ずしも偏った情報でないという保証がないという点です。

ネットスケープの説明ページの内容から推測すると、Alexaという会社は、ロボットプログラムを使ってインターネット上のリンクを検索し、さらには、見つけたサイトのページ数や、どうやるのか、アクセス数と、そのサイトからどこのサイトに人が流れているかという情報も収集しているようです。そうした情報をもとに、たとえば、AというサイトからBというサイトに多くの人が移動していれば、Aのサイトの「関連サイト」のメニューにBというサイトが載る仕組みになっています。ですから、上のテレビ局のサイトの例で言えば、関連するサイトには放送局関連のサイトが並ぶことになります。つまり、この「関連サイト」の情報には、そのサイトの作者の意図はなく、過去にそこを訪れた人が、そこからどこに出ていったかというだけの意味しかありません。言い換えれば、新宿の「カメラのさくらや」に関連する店は、「ヨドバシカメラ」であると教えているようなもので、見ようによってはたいした情報でもないかもしれない。そうね、メジャーでないところは表示されないから、無駄の無いお買い物ができるってことか。でも、電気街の穴場を探すようなことは難しいですね。

これを、賢いWebブラウジングと言えるのかどうか、ちょっと疑問な感じがします。それに、上の表みたいな数字で(嘘か本当かしらんが)人気度を示されると、アクセス数は少ないけど価値のあるサイトへいく人は減少し、アクセス数の多いサイトへはさらに人が集まる傾向がでそうな気がします。さらに、それまでの人の流れに基づいて「関連サイト」を示すことは、その流れを増幅していくようにも思います。すると、究極の賢いブラウジングの結果は、みんなが特定のサイトに集まり、そこからレールの上を通るように特定のルートでインターネットを動いていくというようにならないだろうか。「関連サイト」を使ってみると、登録データのないサイトも多いことに気がつきます。そこは、Alexaのロボットが来ていない所ですね。こうしたサービスをする企業が乱立すると、ロボットがインターネットをわいわい歩き回るようになりませんかね。アクセス数の水増しにはなるだろうけど。ちなみに、Alexaのサイトの人気度は、www.yahoo.comにならぶベスト10クラスなんだそうです。ネットスケープのポータルサイトである、home.netscape.comがベスト50クラスだっていうんだから、ちょっとおかしくないかな。なんか、アクセス数を効率良く延ばす裏技があるんじゃなかろうか。ロボットを集めるサイバーマタタビなんてのをホームページに貼り付けとくとか。

上の、表みたいなのを作ってみると、おー、人気サイトが一目瞭然、ここをチェックすれば安心、みたいな気がしちゃいますけど、あまりに分かりやすいものには注意が必要です。それと、ひとつ気にくわないのが、インターネットはどのサイトにも等距離でアクセスできるのが特徴で、だからこそ個人でも自分の主張ができるし、いろんな視点の意見に触れたり、貴重なデータを見つけることができるというメリットがあるわけです。しかし、「関連サイト」みたいなサービスに頼ると、みんなが見ているサイトをみんなが見ている順序で回るようになるでしょう。それは、悪用すると、インターネットでの情報操作にもつながるわけで、あんまりうれしくないように思うのです。検索サイトのデータだって偏っていないかと言われれば、なんとも分かりませんが、それでも、玉石混合な検索結果をチェックしていくほうが、世界が見えるようにも思うんですけど。これは、賢くないブラウジングでしょうか。

1999.04.23
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