Webの多国語対応はどうなるか

World Wide Web(WWW)が普及し始めたころは、国内のサイトの数も少なかったので、海外のホームページを読むことが多かった。ニュースサイトもアメリカで始まったから、ホットなニュースは英語で読むというのが当たり前だったと思います。幸い、最近は、インターネット上のニュースサイトも日本語版がサービスされていて、あまり不便を感じませんが、それでも、ニュースの量は本家の方がずっと多いし、結構日本語版に載らないものに、面白い話があったりするものです。でも、英語を読むのがつらいのが日本人ですね。そうだ、翻訳ソフトっていうのは、どれくらいのレベルになったんだろう。リアルタイムで日本語にしてくれたりしないのだろうか。

asahi.comに、サンノゼ・マーキュリー・ニュースというアメリカの新聞の紹介ページがあります。あくまで紹介なので記事の要約がでているだけで、本文の記事は英文をよむことになります。しかし、このページに「ポップアップ英和」なる言葉がありますね。これは、英文の単語の意味を表示してくれる無料の(って書くとみんな使うかな:笑)プラグインなのです。このソフトをインストールして、ポップアップ英和対応ページ「辞書機能付き」を開くと、カーソルの位置に単語の意味が表示されます。そうです、これは翻訳ソフトではありません。単語の意味を表示するプラグインなのです。それでも、英語を読み慣れた人なら辞書を引く手間が省けますからとても便利です。ただし、全ての単語に対して、意味を表示する訳ではありません。カーソルを英単語の上に持っていって、カーソルがメニューを意味する形に変われば、その単語の意味が表示できます。じつは、このプラグインはパソコン上に辞書を持っているわけではなくて、単語の意味はWebサイトから送られてきた文書に付属しているのです。さらに言えば、その文書はhtmlで書かれてはいません。

サンノゼ・マーキュリー・ニュースの「辞書機能付き」ページを開いた状態で、ブラウザのソースを表示すると、そこには記事の文字列は入っていません。(ブラウザのソースは、Netscapeなら「表示」メニューの「ページのソース」メニューを使うと見えます。IEなら「表示」メニューの「ソース表示」ですね。)そのかわりに、embed srcというタグで、rlfという拡張子のファイルを呼び出していることが分かります。このファイルに、文章と各単語の意味が入っているのです。この、rlfというファイルは、リッチリンク形式といって、Macintoshを使っている人なら無料のオーサリングソフトで作ることができます。このソフトを使ってみると分かりますが、もともと、このリッチリンクというのは、文章に注釈を入れるための機能のようです。注釈の外に図面やWebページのリンクも張れます。そうした機能の一つとして、英和辞書の使用ライセンスを買えば、「辞書機能付き」の文書を作ることができるという仕組みです。もちろん、こうした機能は、翻訳ではありませんが、多少、英語が読めるけど知らない単語が多くて困るという人には、この後に出てくる翻訳ソフトよりも、無料!というだけでもお得ですね。もっとも、アメリカのほとんどのホームページはリッチリンク形式ではないので、任意のホームページで日本語訳を読みたい場合には、翻訳ソフトを買う必要があります。

パソコンで使う翻訳ツールというのは歴史が古く、何種類かでまわっています。こうしたソフトを紹介しているサイトを歩いてみると、Webのページを翻訳しますという項目が必ずありますね。さらに、海外の検索サイトに日本語で検索をかけたうえ、結果も日本語に翻訳してくれるという機能をつけるのもトレンドのようです。やはり、翻訳ソフトの世界もインターネットの需要は無視できないようです。こうしたソフトには、例えば、NECの「翻訳アダプタII」、富士通の「翻訳サーフィン」、IBMの「翻訳の王様」、AILogicの「Transpad」なんかがありますね。確かに、こうしたホームページでは、いかにも便利に正しい翻訳ができるかのように宣伝していますが、買ってみたら訳の分からん文章が出てきたりするのではないかという不安があります。実際に試してみたくなりますが、辞書ファイルが大きいからか、あまりお試し版をダウンロードできる製品はありません。でも、上に書いた中では、IBMの「翻訳の王様」は30日間のお試し版を使うことができますね。20個もファイルがあるので、心してダウンロードしなくてはいけませんが、それでも、翻訳ソフトってどれくらいのことができるのかを、自分で使って確かめられるメリットは大きいです。で、私も試しにダウンロードして使ってみました。このソフトは、Webブラウザを開いた状態で、そのレイアウトのまま英文を翻訳します。翻訳速度は瞬時とはいきませんが、選択範囲の翻訳もできます。で、翻訳の実力はというと、そうですね、シンプルな言い回しの英語なら、そこそこ意味を外さないで訳してくれます。でも、だらだらした長文や、スラングが混じると訳が分からなくなりますね。でも、これは、一般的な翻訳ソフトの癖だとは思います。翻訳した英文は、カーソルを持っていけば、単語の意味も表示できますから、おかしければ自分で意味を考えることもできます。

こうした翻訳ソフトは、まだオールマイティではないように思います。少なくとも、多少でも英文が読める人は単語単位の意味を表示してくれたほうが早く読むことができると思います。もし、全く英語が読めない人の場合は、翻訳ソフトを使うよりも、日本語訳のサイトを読むので我慢したほうが現実的なように思います。翻訳ソフトには、誤訳は避けられないと思うのですね。そういう、誤訳が混じっているかもしれない翻訳文を読んで、それのほんとの意味を類推するなんてことは、英語の読めない人には無理な話だと思うのです。しかし、こうした翻訳ソフトが出ている一方で、翻訳機能をブラウザにつけることを、全世界的にやろうというプロジェクトも始まっています。これは、国連大学がすすめている、UNL(Universal Netwoking Language)というものです。この仕組みでは、全ての文章はUNLという共通言語の変換されます。ブラウザには、この変換機能がプラグインで入っていて、アクセスした人は、このUNLで記述された文章をダウンロードするときに、それぞれの母国語に変換して表示します。このプロジェクトは10年間かけて、日本語も含んだ、アラビア語、ヒンズー語、インドネシア語などの変換モジュールを作っていくそうです。こうして変換された文章が、どれくらい読みやすいかどうかは、まだ分かりませんが、共通の言語となるUNLが、意味を特定しやすい誤訳をしにくい構造であれば、これまでの、言語から言語への翻訳ソフトよりも使えるかもしれませんね。どんなものが、できつつあるのかは国連大学の高等研究所に行けば、デモを見ることができるそうです。

日本語を含んだ12言語間でUNLが使えるようになるのは2000年度だそうです。最初からWebブラウザで翻訳することを前提としたプロジェクトですから、誤訳が起きにくいものであることを期待しましょう。ただ、使えるようになったときに、自分のホームページをUNLにしてアップロードしたりすると、そのプラグインが入っていない人は、まるっきり読めなくなるわけですよね。もし、UNLが本当に一般に受け入れられるものであれば、プラグインをブラウザに標準でいれてもらわないと、不便になるでしょう。それにしても、あまりUNLの話は聞かないな。逆に、読めないホームページが増えてしまったりしないでしょうね。

1999.05.14
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