携帯電話界のインターネット

iモードが普及したおかげで、インターネットの利用者数は増加する一方です。最近の(2000.5.31)郵政省の調査[mpt]では、携帯電話からインターネットに接続する利用者が930万人を越えて、電話回線からの利用者数に迫っているようです。一言でインターネット利用と言っても、携帯電話を通した接続は、電話回線よりも転送速度が低い分、質が異なるように思います。また、別の調査会社の報告[rad]では、東京よりも大阪の方が、携帯電話からのインターネット利用の割合が高いという結果も出ていますね。それが関係しているのか、大阪の利用者は、Webを見るよりも電子メールを使う人の方が多いようです。これも、上に書いた、インターネット利用の質の違いを表しているようにもみえます。質と言っても、質の善し悪しを言っているわけではありません。使い方の違い、といった程度の意味です。

インターネット利用者が急増しているとはいえ、携帯電話を通した利用は、いまのところ文字が中心のアクセスになります。そして、携帯電話を通して見るインターネットと、主にパソコンを使っている人から見えるインターネットは、また違う文化を持っているように思います。これらが、来年から本格化する広帯域の携帯電話サービス(IMT2000)の導入で、どのように変わっていくのか興味があるところです。ただ、今のところ、今よりも高精細の画像が小さな画面に表示できるとか、テレビ電話が使えるとか、その程度のイメージしかありません。仮に、そういった使い方ができたとしても、パソコンの17インチの画面でブラウザを通して見るWebとは、まだ隔たりがあるように思うのです。つまり、思うに、携帯電話からのインターネットの普及は、今までのパソコンの画面を通したインターネットの利用者の世界と同じことができるとは思わない方が良いのではないでしょうか。ただ、それが携帯電話のデメリットにはならないとは思います。現に、300以上のオフィシャルサイトに、6000を越える一般ユーザーサイトが作るiモードの世界[zdnet]は、それだけでインターネットの一大サブネットと言えますから。

こうしたiモード版インターネットの増大が影響したのか、現在のiモードでは通信料金が高すぎるのではないかという議論も出ています。iモードは、128バイトのパケット毎に0.3円課金されます。iモードの平均的な利用料金は一ヶ月1500円くらいだそうですから、一人当たり、600キロバイトをダウンロードしていることになります。ちなみに、ここの表紙の容量は、文字だけでおよそ15キロバイトですから、この表紙を40回表示したら、一ヶ月の料金ということになります。これは、パソコンでネットサーフィンする人にとっては、信じられない位少ない量です。逆に言えば、通信料金が高すぎるということになります。画像が入っていない文字だけのページですからね。実際に、月に一万円以上使ってしまい、料金が高すぎると思っている利用者の使い方は、Webサーフィンのようです。多分、サーフィンといっても、iモード対応のサイトを回るのでしょうが。ただ、これは、iモードの料金を設定したときに想定した使い方から外れているようにも思えます。

iモードの値段設定がパケット単位になったのは、通信速度が遅いので通話時間で課金すると高くつくという考え方からでしょうか。このあたりは、iモードの紹介ページ[nttdocomo]にも書いてあります。基本的に、数行のメモのような電子メールのやり取りと、キーワードだけのメニューを使ってサービスを選択するような使い方を想定していたのではないでしょうか。それに、応答の待ち時間とか、転送の待ち時間を考慮して設定された価格なんでしょうね。それが、iモード対応のホームページが急増し、電車やバスの待ち時間のような、すき間のタイミングに文字情報をダウンロードするような使い方をするようになった。こうなると、チリも積もれば山のようなバイト数になっても仕方ないように思います。これは、携帯電話とパソコンの間のインターネット接続料金格差だろうか。もちろん、そういう利用者は、PHSの64kbps通信を御利用くださいという振り方もあるでしょうが、使い方のカルチャーの違うものを勧めても仕方ないようにも思います。多分、1パケット0.3円が重すぎるという利用者は一部でしょうから、何らかの料金制度的な救済は必要な感じがします。でも、その機能を装置に組み込むコストだけで足が出ちゃうんでしょうけど。

来年から始まる[nttdocomo]次世代携帯電話のデータ通信料金が、どのような体系になるかは知りませんが、伝送速度が384kbpsを越える様な世界でパケットあたり0.3円の料金設定では、毎秒400円も払うことになってしまいますから、とても現実的ではなくなります。多分、パケット料金が高すぎるという問題は、自然消滅することでしょう。ただし、WCDMAの料金が庶民でも払えるレベルに抑えられればの話ですけど。お金の話の一方で、携帯電話を通したインターネット接続の話題は、むしろ海外の方で期待が膨らんでいる[cnet]ように思います。iモードの成功を見たアメリカの業界は、モバイルユーザーからのインターネットアクセスが、ビジネスモデルとして成り立つと考えているようです。したがって、携帯電話とインターネットの組み合わせは、これから数年の内に世界的なトレンドとなるかもしれません。その時、携帯電話の様なモバイル端末アクセスと、パソコンのような固定端末アクセスの世界は、どうつながっていくのでしょうか。

ホームページを作る側から言えば、iモード対応のページと、従来のブラウザで読むページの作り方は、大きく違います。これは、かりに広帯域の次世代携帯電話が普及しても変わらないと思います。例えば、携帯電話の限られたメモリーに対応するために、一度に読み込ませるデータ量を制限する必要があります。iモード対応に改造したら、このページなんか何十ページくらい、分割することになるかな。その分、無駄を押さえるので内容も磨きがかかるか。それはともかく、携帯電話からのアクセスが無視できなくなると、ホームページの管理者は、ページを二重化する必要があります。これは、IEとネットスケープ用のページを用意する以上に手間かも知れません。何らかのゲートウエイを通すことで、iモード界からも制限なくパソコン界のインターネットが覗けるような仕組みがあれば、モバイルユーザーにとっても、本当のインターネット接続が実現できると思うのですが。誰か、そういうの考えてくれないかな。

2000.6.23
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