ビジネスモデルの時代

パソコンだの、PDA(Personal Digital Assistant)だの、携帯電話だの、インターネットだの、いろんなハードウエアの開発競争の時代が20世紀最後の数年だったとすれば、21世紀の初めの数年は、そのハードでどうやって飯を食うかという、ビジネスモデルの開発にインターネット界の興味が移っていくでしょう。使う側は、そうしたビジネスモデルのごった煮の中でおぼれないように気をつけたほうがよいかもしれない。相手が見ているのは、利用者の利益よりも儲けの方だけかもしれないし。

去年の暮れに、IBMからキャンペーンの抽選に当たりましたと、DVD-ROMが一枚送られてきました。え?応募したっけ。そういえば、映画や音楽情報がたくさん入っているというので、Webで応募したような記憶も。まっ、当選するのはめでたいからと、手持ちのDVDドライブで再生してみることにしました。同封の説明書には、インターネット接続してから、DVD-ROMドライブにディスクを挿入するとある。で、さっそく言われたとおりにプロバイダーにつないでから、ディスクを挿入してみたら...、インターネットに接続してくださいというエラーメッセージが出て終わってしまった(^_^;。

ま、無料でもらった物だから動かなくても損した事にはならないけど、ちょっと気になりますね。そこで、説明書をもう一度読むと、まずIBMのパソコンに限定されているようで、さらに動作確認されている機種がいくつか列挙されていました。それを見ると、確かに私のThinkPadは、IBMの製品ですがこのリストには載っていません。でも、昔からパソコン界で「動作確認機種」というのは、動作が保証されている機種という意味で、これに書いていない機種が全て動作しないという意味でもないように思うんですが。次に、問題なのはOSにWindows 98としか書いてないこと。私のパソコンはWindows 2000で動いています。ここで諦めてもよかったのですが、この説明書に書いてあるサポート窓口にメールを送ってみました。

意外にすばやく帰ってきた回答は、あなたのパソコンは、応募時にお知らせした動作環境を満たしていないので動作しません、というものでした。メールに引用されていた動作条件は、DVD-ROMに同封されていた説明書とほぼ同じでした。もっとも、説明書で「動作確認機種」とあったのが「動作機種」になっていたけど(^_^;。確かに、おっしゃるように、厳密に言えば私の環境は要求とは一致していないので、文句をいえる立場ではないようです。でも、たいていのWindows 98用ソフトは、Windows 2000でも(曲りなりに)動いてしまうものです。ただ、このDVD-ROMは違っていました。その理由は、このDVD-ROMがインターネットを使ったソフトウエア・プロテクトを使っているからのようです。この、DVD-ROMのソフトは、時間を限定して再生できるようになっています。これを超えると、プロテクトがかかって再生できなくなります。この判断を、プロテクト機能をサービスする会社が管理しているらしい。

昔から、ソフトウエア・プロテクトというのはハード依存が強いから、機種やOSが合わないと動作しない場合が多かったと思います。もしかすると、このDVD-ROMの場合、IBMのパソコンを使っているかどうかもチェックしているのかもしれない。そのあたりを知りたくて、サポートの電子メールアドレスを参考にして、プロテクトを管理している会社のホームページ[dvd-magic]につないで見ました。このサイトの情報から、やはり、これがインターネットにおかれたサーバーを使ったDVD-ROMのロックサービスであることが分かります。このロック(プロテクト)サービスは、著作権の保護はもとより、顧客がどのデータを使ったかといった情報も収集できるようです。私が当てたDVD-ROMの場合は、プロバイダーの拡販もかねている様子。インターネットを使っていない人が当てたら、スポンサーのAOLに加入するかもしれないから。ただ、マイナス面ばかりでは無い。こうしたロックによって、映画や音楽のような著作権のうるさいメディアも、DVD-ROMで配布できるようになるわけですから。

とはいえ、再生ができなかったから言うわけではないけど、利用者保護の面から見て、こうしたサービスに問題が無いわけでもないと思います。まず、なぜインターネットに接続する必要があるのか明らかに書かれているわけではない。「インターネットに接続しながら ご視聴いただく(DVD-ROM同封の説明書から抜粋)」という説明だけでは、それがデータをサーバーから取ってくるためなのか、ロックを解除する鍵をとってくるからなのか分からない。ほとんどの人は、インターネットに接続すると言えば、Webにアクセスして画面を表示するのだと思うでしょう。さらに、細かいことを言えば、鍵すなわち著作者のデータのコピーを得る権利を得るために、なんらかの利用者のプライバシーを開示しているのかどうかも分からない。DVD-ROMの特定のデータをアクセスしていることがサーバーに記録されているとして、接続時に住所氏名などの個人情報がアンケートなどの形で送信されていれば、特定の利用者の趣味や購入したい商品などの情報が、このサーバーを持つ会社に流れるのは目に見えています。現在のところ、この会社のホームページには、個人情報保護に関する注意書きは無いようです。

ISDNやら、ADSL、光アクセス、無線アクセスなどなど、インターネット界の話題はハードウエアが表に出がちですが、実際に投資家の興味が集まっているのは、ネットワークから効率よく収入を得られるビジネスモデルではないでしょうか。しかし、そうしたビジネスモデルの中には、ネットショッピングやネットオークションのように、利用者が主体になって利用するものもあれば、今回のDVD-ROMのように利用者の意図しないところでビジネスが動くものもあります。この先、こうしたインターネット業界の仕組みを誰かが消費者に解説していかない限り、複雑なビジネスモデルのなかでインターネット利用者が翻弄されることになるかもしれません。

2001.1.15
おまけこの頃欄
はて?:鉄腕アトムの誕生日はいつかね
ふと思いついて検索かけてみました。鉄腕アトムの誕生は、2013年と2003年の二つの説[~HI5K-STU]があるんだそうな。2013年が一番古い漫画雑誌の出展だそうで、その後の漫画では2003年になったんだって。現在の定説は2003年の4月7日生まれ。ちなみに、2003年説をとると、御茶ノ水博士は、1952年生まれで、天馬博士は1966年生まれなんだそうな。あの、空を越えちゃうテーマソングは、詩人の谷川俊太郎[toshiba-emi]が書いたんだって。この先、2003年4月7日生まれの子供にアトムと名前を付ける親がきっといる?でも、この世代はアトムをテレビで見ていないか。(^_^;

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