しげちゃんの活動

ここはしげちゃんが、まじめに人権活動をしていることを報告するコーナーです。アムネスティ・インターナショナルと「死刑廃止フォーラムinなごや」の活動を中心に、しげちゃんが何を考え行動しているかを説明します。一見面白くないかも知れませんが、奥の深い（と自分では考えている）内容です。

下記の電話番号に間違いがありました。

大変ご迷惑をお掛けしたことを

お詫びします。

「死刑廃止フォーラムinなごや」

死刑制度の一日も早い廃止の実現を目指します。

そして

世界人権宣言が守られることを望みます。

NEWS

わや例会報告

（６月２９日更新）

6月28日いつもより早い午後１２時３０分より、女性会館において。参加会員は4名＋私の子供２人と少しさみしい。

以前から議論になっていたテーマ、「グループ連絡会はどうしたら良いのか」を話し合った。名古屋地区で行うイベントを連絡会主体で企画運営するのは筋が違うとは思うが、集まりたい人が集まっていると言われれば、周りがどうこう言っても仕方がないかもしれない。ただ、今以上にイベントに多くの人が集まるように、そしてアムネスティ・インターナショナルの活動を広げていくための工夫を今後“わや”グループとしては考えていきたい。

その後、アクションファイル・U.A.・キャンペーン・死刑執行抗議などの手紙を書く。相変わらず手紙の量は多い。

例会を終え、６月２０日の行った「RED HUNT」の上映会実行委員会。会計報告と剰余金をどうするかの話し合いのために栄に。居酒屋での一杯飲みながらの会なので、本題から横道にそれることがたびたび。上映会は短い時間で準備した割に、多くの人に参加して頂き、徐勝さんも機嫌良く帰ったようだし、剰余金が出るほど成功した。勿論反省点も大いにある。特に念入りに準備したはずのビデオプロジェクターが使えず参加者には不弁な思いをさせてしまった。打ち上げの時に予定外に出費が多かったことなどが話し会われた。

話の中での「徐勝氏にとっての名古屋は温泉旅行のようなものである。」という説に妙に説得力があった。これは今回も上機嫌（？）で帰った徐勝さんは名古屋へは割とリラックスして来ている様子を指摘したものだ。また徐勝氏にとってYokoさんはいったいどんな存在なのか。またYoさんに対しては？といった話。タケチャンのセクハラについての発言などで、Ｙ女史・女性陣と意見が分かれ、白熱した議論で異様に盛り上がった。席は小部屋にあり、同室の隣の席に座っていたカップルにとっては大迷惑だっただろう。

時間が経ち、剰余金を今後の活動につなげることとし、上映会の打ち上げ兼飲み会はお開きとなった。

RED HUNT 上映会報告

(6月22日更新）

1998年6月20日、名古屋市女性会館で、「RED HUNT」上映会を行った。当日に朝日新聞で紹介されたこともあり、参加者は98名ほど、視聴覚室の座席がほぼ埋まる盛況であった。

最初に徐勝さんから、忘れられた人権侵害事件、「済州島4,3事件」の概要と問題点が話された。それは韓国だけの問題ではなく、戦前から日本が行った抑圧の構造を、そのまま引きずった形での人権侵害事件であり、その意味で決して日本とは無関係ではないこと等の意味付けと説明が40分ほどあった。

そしてその後プロジェクターによるビデオ上映会が予定されていたのだが、そこで問題が起こった。事前のテストではうまく写っていたのだが、プロジェクターから映像が出ない。女性会館の備品で、今回が初めての使用。配線などを何度も調べてみたが解明できず、残念ながら使用を断念。仕方なく旧式の投影式画面のビデオを使用する羽目に。角度によってみにくい。場所を移動してもらったり、立ち上がったりで、見づらい姿勢のまま約1時間14分。内容は事件を経験したり、家族が巻き込まれた人の証言を集めたものであり、とても悲しくつらい。それでも上映中、真剣に見てくれている様子が分かる。中には、初めて知った事実に心を締め付けられた様子の人も。

上映後、徐勝氏から少し補足説明があった。時間のロスで質問の時間が十分に取れない。それに最初質問がなく、説明後一人二人から質問が出た。思わぬトラブルで参加者には迷惑をお掛けしたが、ブーイング寸前のところで、何とかビデオを見て頂き、事無きを得た。

その後、韓国料理の「ケナリ」で、20名ほどの参加者を得、徐勝氏の教授就任のお祝い兼打ち上げ。当初お祝いの話から、ビデオ上映会もやろうと言うことになったのだが、乾杯の時に肝心のお祝いの言葉が出ない。司会を務めたＹｏｋｏさんのうっかりミス？。徐勝氏から請求されてからお祝いの言葉が出た。皆さんからの一言など、交流を深めると共に楽しく盃を傾けた。私は秋にも他のゲストと共に徐勝氏を呼びたい旨をぶち上げると他のメンバーから疑問の声が上がったが、条件さえ合えばまたこのような機会を作りたい。アジアのそして世界中の人権侵害を少しでも無くすというアムネスティ・インターナショナルのテーマを実現するために今後も活動していきたいと考えている。

時間が過ぎ「ケナリ」の閉店の時間になり、その後時間のある人は、メンバーの家に場所を移し、親交を深めたようだ。（残念ながら私は不参加）。

今回の企画は時間に余裕がなく、事前の準備に時間を掛けられなかった。それにもかかわらず、多くの参加者を得、徐勝氏も喜んでいてくれた様子。京都からわざわざ来てくれた徐勝さん、時間のない中で準備した実行委員の人、そして多くの参加者に感謝します。

中部地区交流会報告

（６月８日更新）

アムネスティ・インターナショナル中部地区区流会が、１９９８年６月６日・７日に名古屋市の熱田区にある｢働く人の家｣で開催された。

これは愛知・岐阜・三重・石川・富山・静岡などにあるグループ会員が年に１回それぞれの活動報告や悩みを語る場として集まる。総勢３０名を超す近年にない盛況だった。古くから知った顔、Ｍ事務局長をはじめ初めて会う顔。その多彩な顔ぶれは、交流会ならではの雰囲気だ。

時間になりそれぞれのグループが、この１年間の活動を報告した。活発なグループ、例会を開くのがやっとのグループ。それぞれの事情があるにせよ、その世界中の人権侵害をなくそうとするその心意気は変わらない。

昨年賛助会員の減少等の理由で、支部全体の収入が減り赤字になった。しかしグループ活動そのものは相変わらず元気で情熱も変わらないようだ。

グループの報告の後、Ｍ事務局長の講演。講演と言っても現在日本支部の抱える問題点などを話してくれた。支部の赤字に象徴されるように、活動が停滞している。これは最近他のボランティア活動が活発になり、結果が見えにくいアムネスティ・インターナショナルより、もっと身近なわかりやすい活動に人と金銭が流れていったことが原因なのかも知れない。

その後に参加者の自己紹介。それぞれの入会した動機や活動歴、そして活動に掛ける思い入れなどが発表された。各人のキャラクターや思い入れが分かり興味深い。

その後自由に意見を出す時間を設けた。ネットに関して、最近はe-mailを使った連絡が頻繁に行われるようになった。インターネットを使った活動がもっと出来ないものかと言う意見が出た。持たない人に配慮は必要だが、道具としては便利なので、今後はセキュリティーを確保しつつ、さらに普及していくだろう。

その後食事をしながらの交流。一杯お酒も入り、普段おとなしい人からも忌憚のない意見が出る。そしてあちこちで、数人ずつそれぞれの話題に花が咲いた。夜も更け、とうに娘は寝ている。私たち家族の３人は当初泊まる予定だった。しかし、頭痛など疲労が溜まり、翌日に影響しかねない。少し体力の回復を図るため残念ながら、帰宅してゆっくり休むことにした。

中部地区交流会、ただ会って情報交換をしたり、話をするだけなのに、何年も続いている。そして結構楽しみにしている。これはなぜだろう。やはり他のグループの様子を聞いたり、話をしたりすることが、それから１年の活動にエネルギーを与えてくれるからだろう。総会やそれ以外の時に再会し、また話が出来る。同じ活動を通じての仲間としての意識が育まれることに交流会のよさがあるように思った。来年岐阜でまた会いましょう。

わや例会報告

(5月25日更新）

　
５月２４日女性会館で、今月は珍しくというより、殆ど始めてだと思うが、メンバー10名全員が集まった。それに我が家の子供が二人。例会場所の女性会館の活動コーナーは他のグループがすでに半分占拠していた。奥のスペース机二つにちょうど全員が座れた。1年以上ぶりのインドネシア帰りのゆずるクン。年令の割に（新聞に載った彼のコメントの記事で始めて年令を知った）さすが研究者、若く見える。インドネシア報告。本当は時間を作ってもっと聞きたいのだが、今回の例会は予定が盛りだくさんで十分聞けない。アクションファイル・KOTALAN・UA等の手紙書き、イベントなどの連絡や報告、そしてグループ連絡会をめぐっての激論。以前よりグループ内で意見が分かれていて、結論は出ない。そうしているうちに、女性会館の閉会時間が迫り、取り敢えず終えて、その日予定していた韓国斉州島の国家によるテロ事件4，3事件をテーマにした「RED　HUNT」ビデオの下見をするために会員宅でへ移動。アムネスティ・インターナショナルメンバー以外の実行委員や韓国出身の女性もの交えてビデオの下見をした。虐殺や人権侵害の記憶を悲しみと怒りもあらわに証言する人たちの記録映画だ。重いテーマでありなおかつストーリーより事実を記録しておくという映画作り、したがって、上映会の時には、上映の前に事件の概略について説明する必要性を委員の多くが感じたようだ。いくつかの今後の検討課題を残し、食事に出た。何人か帰った人がいたが、会員宅の近くの中華料理店へ。ビールを飲みながらのしばしの歓談。初めて会う韓国人女性のIさんとも、親しく歓談が出来、なおかつそこでもいくつかのテーマで熱く議論。どこへ行っても議論の種は尽きない。ラストオーダーの時間が過ぎ、家路についた。

連合メーデー参加・わや例会報告

（4月27日更新）

4月26日名古屋レインボーホールで開催された連合メーデーに参加。出席者は6人プラス我が家の子供2人。

NGOコーナーの一画に陣取る。細川たかしショーを始めスタンプ・ラリーや子供向けのコーナー・物品販売と企画は盛りだくさん。さすがに連合メーデーへの参加者は多い。わやはグッズの販売、手紙書き体験コーナー、世界人権宣言を支持の署名集め。途中ワールドクイズと称して参加NGOから問題を出し、正解者に記念品を。クイズに人は集まるが、間違えるとさっと散ってしまう。NGOに対する反応もいまいち。売り上げはTシャツを始めぼちぼち。残念ながら期待ほどの売り上げにはならなかった。それでも多少は宣伝になったと自分たちを慰め、後片付けをし、もともと例会の予定日だったので、例会をするために我が家へ。総会報告や今後の講演会開催について、今年の役割分担、中部交流会、連絡会のあり方、賛助会員獲得チームを作る提案などを話し合った。途中議論が白熱しつい大声でのやり取りも。その後U.A.・アクションファイル・キャンペーンなどの本来の手紙書きをした。夜7時を過ぎ、近くの飲食店へ食事に行きその後解散。朝9時から夜の9時近くまでご苦労様でした。

わや例会報告

（3月17日更新）

3月15日、いつもの女性会館で。参加者が4名プラス我が家の末娘が加わっただけで、少しさみしい例会だ。少ない人数でもやることは盛りだくさん。いつもの手紙書き、35通。総会の議案の読み合わせ、他のグループから出ている対案の検討、NGOセンターから話のあった連合愛知の主催する「連合メーデー」への参加するかしないかの検討。役割分担等など。女性デーの報告も時間が足りずにそこそこに結局時間切れ。総会議案の検討を、レストランへと場所をかえて続行。賛否を採った。「連合メーデー」には3万人規模のイベントとあって、グッズの販売と会員拡大の期待を込め、参加することに決定。４月25日搬入26日は朝から3時ころまでの予定。次回例会は、その4月26日、「連合メーデー」に参加後、しげちゃん宅においてすることになりました。

国際女性デー報告

3月8日名古屋の中心にある栄広場で、「ひろげようまもろう女の権利」と題して、「98年国際女性デー」が行われた。名古屋では3回目だそうだが、私たちは初めての参加だった。早朝から集まり準備。私たちは世界のいくつかの国で行われた女性に対する人権侵害を訴え、はがきを出してもらうように、また世界人権宣言50周年を多くの人にサポートしてもらう署名を集めるため、そして、アムネスティ・インターナショナルの財政活動同の一環として、絵葉書や報告集、Tシャツなどを販売する準備をした。

出展者、来場者はさすがに女性が多く、そして外国の人も多い。アムネスティ・インターナショナルは元々外国のほうが活動が盛んなので、海外での活動経験者も何人かいた。そして入会希望者も、数名。私たちの展示を見て熱心に話を聞いてくれる人も多い。

参加したグループの展示は、女性をめぐる問題を様々な角度から考えている。知らない団体もあり、その主張を展示をざっと見るだけではなく、深く考えたい内容も多い。その一つに男性中心社会を批判するパイ投げの展示があり、男性である私としては、少しひいてしまうコーナーだった。しかし仕事や会社そして、男性中心の社会が、最近の大蔵省と業者との癒着に見られるように、これだけ広く根が深い問題を生み出しているとしたら、このパイ投げに象徴される女性の気持ちは十分理解できる。

広場の中心にはステージが作られ、パフォーマンスが繰り広げられた。アピール、歌あり、コリアンドラムあり、漫才ありで、いずれも熱のこもった演技だった。その中でコリアンドラムの演奏者の一人に昔からの友人がおり、その演奏を初めて聞いた。力強く、お互いの気持ちを織成すように盛り上げ、そしてその力のこもった演奏は、心の底から出てくるパワーと民族の伝統を十分に表現していた。皆楽しそうに演奏をしていたのがとても印象的だった。最後には豪華商品が当たる抽選会があり、その後、栄を皆でパレードして締めくくった。

朝早くから、夕方まで、長い1日ではあったが、アムネスティ・インターナショナルに興味をもってくれた人が、何人もおり、また会員になってくれそうな人も数人。そして、アムネスティ・グッズの売り上げは約1万円ほどになり、多少の疲労感の中、家路についた。この段階でもそれなりの成果はあったと思う。欲を言えば、メンバーになりたいと申し出てくれた外国の人が、会員になってくれれば十分な成果だったといえるだろう。

わや例会報告

(2月23日更新）

2月22日の例会は、メンバーの都合により時間をずらし、また3月8日の女性デーの準備をするため、我が家で行った。出席者は8人。午後2時から、ドクターヨーコの指示のもと女性デーの説明のための資料及びポスター作り。世界地図をタケチャンが手書きし、意外な才能を見せた。その後6時から本来の手紙書き。アクションファイル・ＵＡといつもの通り50通ほど（？）手紙を書き発送作業。その後一品持ち寄りでの夕食。すでに我が家の子供はおなかをすかし、先に隣で食べている。タケチャン持参のマンボー(そうあの海を浮遊しているような泳ぎ方で成長すると巨大になるあの魚）の肉をしゃぶしゃぶにし、酢味噌とポン酢で食べる。子供たちも珍しがりながらも喜んで食べていた。学校でマンボーを食べたといっても信じてもらえないのではと少し心配になった。ビールが入り、話が盛り上がってきた頃に、Ｎさんから次期運営担当の提案があり、正式決定は次回の例会になるだろうが、本人もほぼ承諾しているのでタケチャンに決まりそうだ。

徐俊植さん釈放される

（2月6日更新）

友人のところに2月5日の深夜（6日の早朝）徐勝さんから徐俊植さんが釈放されたとの連絡が入った。零下での獄中生活はさすがにこたえたが、元気な様子で、心配、ご協力いただいた方に心からの感謝をしているとの伝言だったそうです。徐勝さんにとって教授就任とあわせて2重の喜びになったことでしょう。

徐勝さん教授に

（2月6日更新）

徐勝氏さんが、立命館大学の教授に就任することになった。「教授就任を心よりお祝いします。」徐勝さんの講演会以来、親しくさせていただいている名古屋の実行委員会のメンバーの一人として、今までとかわりなく名古屋にもまた気軽に来ていただけることを望みます。

マラウイという国を知っていますか

（12月15日更新)

マラウイという国を知っていますか。アフリカの南東部にある国です。アフリカは日本からは遠いところで、私の場合知っている国といえば南アフリカ、ルワンダ、ソマリア…なんだか人権問題とか、紛争でニュースになった国ばかりです。マラウイはあまりなじみがない国ですから平和な国であったのかと思うと、そうではなかったのです。他の多くのアフリカの国と同様に植民地として支配され、独立後は米ソ冷戦という構造の中で西側が作り出した独裁政権の下人々は苦しんできました。

12月7日に行われたアムネスティインターナショナルの講演会はそのマラウイの駐日大使館参事官のトコ・バンダさんを講師に招き開催されました。

1966年にイギリスから独立したマラウイは66年には共和国となり、マラウイ会議党（MPC）のバンダ氏（トコ・バンダさんとは無関係だそうです）を大統領に選出しました。それ以降MPCの一党独裁の下で、バンダ氏は終身大統領となり、人々は抑圧された生活を余儀なくされました。

トコ・バンダさんはまだ20歳にもならないときお父さんが投獄され、自らは国を脱出し米国へ逃亡しました。アメリカで大学を卒業後、コンサルタントをしながら祖国の自由のために活動をしていたそうです。当時、日本にも来てマラウイ政府を援助しないよう日本政府に働き掛けたそうですが、あまり反応は良くなかったそうです。バンダ大統領は、マラウイが共産化する事を恐れた米国をはじめとした西側諸国の支持を得ていたのです。その頃のトコ・バンダさんを支えたのは、各国の市民グループでした。

1990年代に入ると経済の停滞や、人権侵害に対し国民のバンダ大統領への批判が高まり、93年には複数政党制導入のための国民投票が行われました。94年新憲法が採択され、95年に行われた初めての複数政党制での選挙でバンダ大統領は統一民主戦線（UDF）のムルジ氏に大統領の座を明け渡す事になりました。

新政権の下では、アムネスティの良心の囚人を含む政治囚が釈放されました。トコ・バンダさんのお父さんも釈放され、政府の要職に就いています。また、同じような人権侵害を2度と繰り返さないために、人権委員会やオンブズマン制度などが設立されています。

マラウイの民主化を本当に喜び、その為に全力を注いでいるトコ・バンダさん。しかし、その道のりは平坦ではないようです。現在1100万人の人口のなんと８０％が18歳未満でその多くが貧困ライン以下の生活をしています。「民主化の理念をお皿に載せて食べる事はできない」という言葉が印象的でした。

例会(11月）報告(12月1日更新）

11月30日はわやの例会だった。いつもの女性会館ではなく、その後に飲み会をするために会員のMさん宅で行った。いつもより遅い3時に集合、エジプト・ルーマニア・ビルマの手紙書きその後U．A．（アージャント・アクション）を書いた。いくつかの情報交換と意見交換の後に、飲み会の準備。本来は新入会員Sさんの歓迎パーティーだったのだが、肝心のSさんに連絡が、取れずに欠席となってしまった。残念。

飲み会の料理は、一品持ち寄りのため、それぞれの工夫した料理が並ぶ。ビール・ワインを飲み、料理を食べ、話が進むにつれ、最近彼がいることが判明した二人の会員の話で盛り上がった。すでに同居を始めたS．Y．さん。今回も彼氏が同行で、仲の良いところを見せつけられた。なんとなくわやにも溶け込んで、いい感じだった。そしてとてもユニークな彼を持つH．R．さん。普段は比較的口数の少ない彼女だが、やはり彼のことだと話に力が入る。二人に、ついおじさんとしては、根掘り葉掘り聞いてしまう。しかし二人とも結構嬉しそうに話してくれた。二人ともお決まりではない恋愛コースのようだ。今後ずっと仲良くいてくれたらと、おじさんとしてはお祈りします。

良心の囚人「魏京生さん」釈放される！

（11月17日更新）

政治囚として合計18年もの間獄中に拘禁され、アムネスティ・インターナショナルが釈放を要求していた良心の囚人、中国の民主活動家で、ノーベル平和賞の候補にもなった魏京生さんが、病気療養のため仮釈放され、アメリカのデトロイトにあるヘンリーフォード病院に入院した。

これは先のクリントン大統領と中国の江沢民主席の首脳会談で、アメリカ側が強く釈放を求めたためと思われる。

かねてより、中国の人権状況改善要求を出していたアメリカ政府の要請にこたえたことは一歩前進したともいえるが、今なお王丹氏を始め多くの政治囚が拘束されており、また死刑問題を始め、今なお多くの人権問題を抱える中国の今後の対応が注目される。

治療終了後中国に帰るように義務付けられている魏京生氏だがその予定は決められておらず、アメリカに永住できるものと見られている。

1996年3月16日アムネスティ・インターナショナルの名古屋地区グループは魏京生さんの妹である魏珊珊（ウェイ・シャンシャン）さんの講演会をした。魏京生さんの体のことを心配し、その釈放を訴えるために世界を回って講演を続けるシャンシャンさんのお話と姿勢に聞き入ったことを思い出す。講演にあたって、事前にシャンシャンさんの危険が伝えられ、不審な人物がいないか緊張したことを思い出す。

魏京生さんに続き政治囚が釈放され、死刑問題も含め中国の更なる人権状況の改善を望みたい。

徐俊植さん拘束される

Ｍ．Ｙ．さんからしげちゃん宛てにメールがきました。今まで講演会をしたりして、名古屋のアムネスティ・インターナショナル会員にはなじみのある徐勝さんの弟である徐俊植さんが拘束されたことに対するアムネスティ・インターナショナルの緊急行動の要請です。アムネスティ・インターナショナルの会員以外の方は、なじみがないでしょうが、以下の英文を手紙にし、下記の注意にしたがって少し手直しをし、韓国の当局へ送ってください。

前略

徐俊植さん逮捕の件です。その後の情報で、１１月８日午前１１時３０分からソウル西部支院で徐俊植に対する拘束適否審が行われましたが棄却されました。これにより、今後、最大５０日間の調査訊問が捜査機関によって行われることになりました。当局は広範な家宅捜査と物件押収によって、より大きな国家保安法事件として作り上げる可能性があり、少なくとも一審終了の６ヶ月ほどは釈放の見込みはうすいとのことです。アムネスティの緊急行動がすでに１１月４日に出ております。以下の手紙を大統領、法務大臣、国家保安企画部長官に送って下さい。以下のサンプルは大統領当てのものですが、書き出しを法務大臣の場合はDear Minister、安企部長官宛はDear Directorとして下さい。日付は手紙を出す日付に変更して下さい。期限は一応１２月１８日までとなっております。その後送る場合はアムネスティ本部に問い合わせが必要です。（Ｍ．Ｙ．）

Nov. 9, 1997 （送る日に変更して下さい）

Your Excellency,（送り先に合わせてください）

I am writing to you to express my concern about the arrest of Suh Jun-sik and to call for his immediate and unconditional release.

I urge the authorities to ensure that he is not subject to any form of ill-treatment during questioning.

I call on the government not to arrest anyone for the non-violent exercise of

their rights to freedom of expression and association

Please be assured that my concern in this matter is based solely on humanitarian grounds.

Yours respectfully,

（あなたのサインを書いてください）

（以下の宛先に送ってください。）

Appeals to:

1) President Kim Young-sam

The Blue House

1 Sejong-no, Chongno-gu,

Seoul, Republic of Korea

Fax:+82 2 770 0253

2) Minster of Justice

Mr Kim Jong-koo

1 Chungang -dong

Kwachon-myon

Shihung-gun

Kyonggi-do, Republic of Korea

Fax: +82 2 504 3337

3) Director, Agency for National Security Planning

Mr Kwon Young-hae

Segok-dong, Kangnam-ku

Seoul, Republic of Korea

Fax:+82 2 770 0253(c/o President’s office)

名古屋入管要請行動の報告(11月11日更新）

「名古屋難民チーム」による難民認定に関する名古屋入国管理事務所への要請行動

１　日時　　11月7日（金）　10時35分～11時20分（会議室で約40分の話し合い）

２　場所　　法務省名古屋入国管理局　名古屋市中区三の丸4-3-1　法務合同庁舎内

　　　　　　　２階会議室　　　電話０５２-951-2391

３　参加者わやG2名、なごや栄G2名、金城G1名、個人会員1名、以上６人が交渉に参加。

　　　　　　わやGの２人は庁舎前で待機。合計８人。

４　応対者　　澤下　豊（名古屋入国管理局総務課渉外調整官）

　　　　　　　加藤　三千雄（名古屋入国管理局総務課総務係長）

５　要請内容名古屋入国管理事務所長宛の難民認定に関する10項目にわたる要請書　　（別紙）に607人分の署名を添えて提出。

６　マスコミへの取材依頼及び報道

地元の新聞社「中日」「朝日」「毎日」「読売」４紙と共同通信社、テレビ局「NHK」「CBC」「東海テレビ」「中京テレビ」「テレビ愛知」５局へ、ファクシミリで取材依頼（約１週間前）。内容は、要請行動の日時場所などと取材依頼の旨を書いたものの他に、入管への要請書、「難民不認定取り消し訴訟」の「中日」の記事の３枚。前日の６日に、「中日」「朝日」には再度確認の電話とファクシミリで念押し。「CBC」からは前日に取材予定の連絡あり。「中日」「朝日」も取材に来そうな感触を得る。当日は、「CBC」「中日」が事前取材に、名古屋入管前に移動してから「NHK」「朝日」も取材に。テレビカメラは、庁舎内に入らず。記者も会議室へは入れず。報道は、当日お昼の地方ニュースで「NHK」「CBC」ともに放送された。のこと。新聞は、翌日の朝刊に、「中日」「NHK」ラジオでも流れたと」は３段「難民行政改善を　入管に要請書など提出」、「朝日」は１段「難民認定適正に名古屋入管に要請」の見出しで、それぞれ名古屋市民版に掲載された。

７感想と今後へ要請行動直前に、偶然にして幸運にも「難民不認定取り消し訴訟」の名古屋地裁判決（原告勝訴）があり、絶好のタイミングとなった。マスコミの取材もあって、名古屋入管の対応は予想以上のものだった。前日に、入管の担当者から東京事務所まで問い合わせがあり、こちらからも入管へ連絡し打ち合わせができた。その際に会議室での対応が確認できた。要請項目に沿った回答なりコメントは得られなかったが、次回以降の　話し合いを継続することが確認されたことは大きい。早めに訪問の時期を伝え、事前に文書で質問などを提出すれば、ある程度の回答はもらえそうな手応えも感じた今後に向けて、入管へ「お礼」を兼ねて次回を計画する旨の手紙を送る予定である。法務省の当局者との話し合いは、正直おもしろかった。彼らの発想や考え方が多少ともわかり、こちら側への必要以上の警戒心も解けてくるのが少しは見えた。アムネスティ流の当局側の改善点を評価する点も伝えた。入管行政職員の増員など、市民側の理解が深まることは彼らにとって、そう悪い話ではないだろう。アムネスティの看板と運動の力を実感できた。今後も、入管見学を兼ねて、いろんなメンバーが話し合いを経験できるといい。わやグループ　N.M.　

「難民行政改善を」名古屋入国管理事務所に提出（1997年11月８日更新）

12月7日午前10時に、アムネスティ・インターナショナル日本支部、名古屋地区の難民チームは、日本の難民行政に関する改善要望書と署名を名古屋入国管理事務所に提出した。「入国審査前に難民申請のための多言語による説明書を誰でも入手できるようにしてほしい」などの10項目が書かれた要望書を手渡した。詳しくは難民チームからの報告を後日掲載します。

1997年10月10日「アジア保健研修所（AHI）オープンハウス参加の報告

（byまさと1997年10月14日更新）

ことしも「わや」「くちゃ」両グループの会員とその家族3人の合計17人で参加しました。例年の「シシカバブ」（羊肉の串やき）に人参サラダ・フランスパン・アイスコーヒーという組み合わせで今年は販売、用意した5キロの肉を完売しました。アムネスティ商品（絵はがき・書籍・カレンダーなど）も2万円あまり販売できました。故相馬司教も力を入れた東ティモール支援のCD

（2700円EAST　TIMOR　HOPE　FOUNDATIONがカナダで制作）販売のビラも配りました。我々のグループが日本での販売窓口になっています。

他に「くちゃ」会員ののKさんの提供で、アジア・南米の民芸品と音楽のCDなども脇で売りました。

両グループとしては、多少ともアムネスティの活動の広報宣伝にもなり、会員の親睦もはかれるということで今年も評価が出来ました。もちろんささやかですが、AHIの活動を援助もでき、グループ財政にも寄与しています。

　AHIオープンハウス参加報告(1997年10月11日byしげちゃん）

1997年10月10日わや・くちゃ両グループの、新人1名を含む、会員14名＋3名は、毎年恒例の愛知県日進市にあるAHI（アジア保健研修所）のオープンハウスにささやかながら財政活動の一環として、また少しでもアムネスティ・インターナショナルについて知ってもらうため参加した。

いつもの通りシシカバブ（羊の焼き肉）に、今年はサラダとパンとコーヒーをつけて販売した。今年はオープンハウスそのものを縮小したせいか、出だしがちょっと鈍い。となりの少し怪しげなＫさん（くちゃメンバー）の世界の雑貨コーナー（？）は相変わらずの人気。

お昼近くになりおなかが空いてくる頃にやっと行列が出来、準備していた分がすぐに売り切れ。見通しが難しい。

毎年思うのだが、半分生か良く焼いて焦がすか、焼き具合が難しい。何年やっても腕が上がらない。焦げたものは身内で食べる。準備も大変だし（準備してくれた人に感謝）収益もいまいち。来年こそはもうひと工夫を！

この反省も来年になると忘れてしまい、また同じことの繰り返しだろうが。

とは言うものの、元々ひとつであったわや・くちゃの合同イベントとして楽しみながら出来たことに意義を見つけ、多少疲れた足を引き摺りながら、家路についた。皆様お疲れさまでした。

わやに新人入会、１９９７年９月２８日の例会で、S.I.さんが入会。アメリカに留学経験があり今後翻訳の即戦力として大いに期待が持てる新人が、突然入会。難民問題で卒論を書いた。調理師免許を持っている。とその他の経歴もユニーク、今後の活躍を期待します。

それからもう一人、S.Y.さんの彼氏が例会終了後に現れる。今までうわさでしかなかった？S.Y.さんの彼が、例会後に行った喫茶店に来て初対面のご挨拶。新顔二人の登場で、今後”１０９”わやグループが盛り上がるといいですね。

アムネスティ・インターナショナル

なぜしげちゃんがアムネスティ・インターナショナルの活動をしているのか？

「どこかで困っている人がいたら助けてあげたい。」

　日本国内でも最近様々なボランティアの活動が活発になってきましたが、原点は誰でも持っているこの素朴な気持ちです。幸い私たちは日本で平和に暮らしています。そのことには感謝しています。

　しかし、日々の報道では、事件や事故で多くの人が死んでいくのを目にします。犠牲者が多くても少なくても一人一人の命の重さは同じです。天寿を全うするのではなく、死んでいく人々の無念さと残された家族の深い悲しみを想像したときに、手を差し伸べることは出来ないのだろうか。

そして少し注意深く世界からのニュースを見ると、日本では考えられないような不条理な理由で人が死に、死なないまでもひどい目に遭っている人が多くいることが分かります。

　それは例えば、政治的・思想信条・宗教・性別などの理由により逮捕されたり、拷問を受ける。時には処刑されてしまう。そのようなことが世界中で、起きています。遠い外国での話で身近には感じられないかも知れません。しかし、彼らの置かれた状況は深刻です。いつ生命に危険が及ぶかもしれません。

　そのような生命の危機、人権侵害にさらされている人を救いたいと思うのは当然だと思います。そしてアムネスティ・インターナショナルの活動の対象にしているのは、そのような人たちです。

　アムネスティ・インターナショナルが対象としているのは、例えば非暴力で、政治的発言、宗教的理由で、逮捕され投獄されている人。政治的理由や紛争で国を追われている難民。政治的発言・行動で、裁判もなしに殺されてしまった人、あるいは殺されそうな人たちです。

　対象がなぜ外国なのか。国内でも多くの困っている人がいるのでは、と問われることがありますが、そのような深刻な人権侵害はやはり外国に多いことがあります。しかし日本国内でも外国から来た人の難民申請の問題、死刑制度の問題があります。

それ以外の理由での生命の危機もあるのでは？と思う方もいるでしょう。

確かにそのとおりです。病気・飢餓・戦争・民族紛争等様々な問題が世界中にはあります。もちろんそのような問題にも手を差し伸べたい気持ちはあります。しかし一人で何もかも出来るわけはなく私が選んだのはアムネスティー・インターナショナルの活動だということです。そして、その活動の一部でもある死刑廃止の活動です。

アムネスティの会員は奇特な人・変人だ?

　人と違ったことを言っているし、ちょっと難しそうだし、近寄りがたい。と思う方もいるでしょうが、私たちはごく普通の市民です。何ら変わらないと考えます。確かに時間もお金も掛かる活動を続けるのは大変です。一所懸命すればするほど、他の人からは少し違って見えてくるかもしれません。しかしそれぞれのメンバーを見ると発想は豊かで、面白く、ユニークです。話が多岐にわたりいつも楽しく活動しています。アムネスティ・インターナショナルの活動については

「私たちが出来るささやかな活動で救われる人がいれば活動をするのが自然だしごく普通のことだ。」と多くのメンバーは考えていると思います。

　皆様も少しでも興味がもてるのであれば、自分には出来ないと考えないで、一歩踏み出して、アムネスティ・インターナショナルの活動に参加してください。

誰のために？

　と疑問を持つ方がいるかも知れません。困った人のため、人権侵害に遭っている人を助けるためというのはもちろんもちろんですが、自分のためであることも多いのです。その理由は、普段の仕事や趣味で知り合う人とは違った、利害関係のない大変ユニークな人と知り合う機会があり、そして話を聞くというだけでも自分にとっては楽しく勉強になります。また弁護士さん、学者、マスコミの記者その他の多くのメンバーから仕事の価値観とは別の価値観を勉強できただけでも自分にとって貴重な経験です。また皆さんの持っている専門知識・発想はとても興味深く、時には大学のゼミ以上の高度な知識を得ることが出来ます。時には議論もします。そのような時間を持てることは自分を向上させる結果になり大変有意義であると言えるでしょう。

アムネスティ・インターナショナルとは？

いつの新聞を開いても、世界のどこかで誰かが、意見や信仰を政府から認められないために投獄され、拷問を受け、処刑されている記事を目にする。そして読者はウンザリするような無力感を覚える。しかし人権侵害に対するその嫌悪感を、世界中の人々が一つの行動へつなげることが出来れば、必ず何らかの効果をもたらすことが出来るに違いない。

ピーター・ベネンソン(弁護士、アムネスティ・インターナショナルの創設者）

アムネスティ・インターナショナルは

「アムネスティ」は英語で恩赦の意味。生きていく上で、最低限保障されるべき権利をうたった国連の「世界人権宣言」がすべて正しく、まもられ、実現される世界を目指して活動しています。アムネスティは1961年にロンドンの弁護士ピーター・ベネンソンが「人権侵害を防ぐには、世界的な市民運動で、圧力をかけることがもっとも重要である」と思い立ち新聞に投書したことがきっかけになって誕生しました。

その後、活動は世界に広がり、1977年にはノーベル平和賞を受賞しました。

アムネスティは非政府組織（ＮＧＯ）です。いかなる政治・宗教からも独立して、不偏不党の立場で活動しています。人権状況を改善するため、国際人権基準に基づいて、各国政府との対話も行っています。

普段の活動、109わやグループを紹介します

名古屋には現在7つのグループがあります。それぞれが毎月あるいは毎週例会を開き、手紙書きなどの活動をしています。アムネスティ・インターナショナルの日本支部では、約１５０のグループがあり、私は、名古屋の“１０９”わやグループに所属しています。メンバーは９名、地下鉄東別院駅近くの女性会館で毎月第4日曜日の午後例会をしています。例会では、手紙書きを中心に、イベントの打ち合わせ、メンバーそれぞれの活動の情報交換などを和気あいあいとしています。現在担当しているアクションファイル（担当しているケース）は、エジプト・ビルマ・ルーマニアの３つです。その他に朝鮮民主主義人民共和国・韓国・日本・台湾を地域的に見ること、東ティモール問題、難民問題についても取り組んでいます。ではそれぞれのケースについて簡単に紹介します。

１.エジプト

反政府的な文書を持っていたために逮捕された１２人の医師

２．ルーマニア

エミリアン・ニクラエさん、１９９５年３月２１日に警察に拘束され、虐待を受けたロム（ジプシー）の人権監視ＮＧＯのメンバー

３．ビルマ(ミャンマー）

　漫談の中で政府を批判したため拘束されているコメディアンら４人の良心の囚人ウ・パ・パ・ライ、ウ・ル・ザウ、ウ・アウン・ソウ、ウ・ハトウェの釈放を求めるケース。１９９６年１月４日にアウン・サン・スー・チーさんの自宅での独立記念日の祝いにウ・アウン・ソウとウ・ハトウェはウ・パ・パ・ライ、ウ・ル・ザウの劇団を招く手配をした。その劇団ミョ・ウイン・マー(我が道）はビルマのイギリスからの独立４８周年を記念して、２，０００人のＮＬＤ党員の前で芸を披露した。ウ・パ・パ・ライとウ・ル・ザウは漫談の中で、役人の汚職やウ・パ・パ・ライが以前投獄されたことなどをジョークにした。３日後の１月７日ウ・パ・パ・ライとウ・ル・ザウは故郷のマンダライで逮捕された。また、他の劇団員や１月４日のパフォーマンス手配にかかわったＮＬＤ党員も逮捕された。翌朝ウ・アウン・ソウとウ・ハトウェも拘留された。彼らはマンダライ郊外の軍情報部で取り調べを受けた。ウ・パ・パ・ライの妻など劇団員８名が１ヶ月の拘留の後に釈放された。その１ヶ月の間、外部との連絡を絶たれてて拘留されていた時期もあった。

　ウ・パ・パ・ライ　

　東ティモールを知っていますか？（1997年10月11日）

　　東ティモールCD発売中！こちらへ

ティモールは悲しい母のよう

頬がぬれている

泣いているんだ

……

何千人もが死んだ

わが愛する祖国、東ティモールで

目を開けてはっきり見よう

みんなに起きたこの悲劇を（Abe　ho　Aloz:

Sing　for　a　free　East　Timorより）

東ティモールはインドネシアの東端にあるティモール島の東半分に位置する国だ。海を挟んで南にはオーストラリアのダーウィンがある。

元々ポルトガル領であり、ポルトガルに社会主義政権が誕生したときに、統治権を放棄した。東ティモールは独立しようとしたが、1975年隣のインドネシアが軍事進攻し、併合しようとした。東ティモール人は現在に至るまで、独立を求め抵抗している。

東ティモール人に対しての人権弾圧により、一説には20数万人の東ティモール人が殺されたとされている。しかしインドネシアはそれを無視した。そして現在も人権侵害が続いているとの報告がある。

昨年のノーベル平和賞は、東ティモールの独立のために運動をしているベロ司教とラモスホルタ氏に贈られた。

問題はインドネシアが領土を拡大するために軍事侵攻したことに対し、世界の多くの国が撤退を勧告し、国連は東ティモールの独立を認める決議をした。インドネシアと経済的つながりが強く、利権優先のアメリカや日本はインドネシアの軍事進攻を止めるように言わないことだ。アメリカおよび国連はクウェートにイラクが侵攻したときにはクウェートの石油の利権をまもるため多国籍軍を派遣した。東ティモールでも同じことが起きているのに、対応はまったく逆。ダブルスタンダードである。原理・原則より利権が優先する顕著な例である。世界の動きは利権を考えないと分からない。という例でもある。

アムネスティ・インターナショナルは東ティモールの人権侵害の実状を知ってもらうため、ここ数年にわたり、スピーキングツアーといって、本人や家族が人権侵害を受けた経験を持つ東ティモールの人を招き、その体験を講演してきた。

今年はアベ・バレトさんが来日し名古屋でも3回講演会を開いた。アベ・バレトさんは東ティモール生まれ、講演当時31才。男性。インドネシアの大学で、英語を専攻しつつ地下組織に参加。1991年に交流プログラムでカナダに旅行中東ティモールでサンタクルスの虐殺事件が起こる。その2ヶ月後カナダに難民申請し受理された。現在、東ティモール民族抵抗評議会カナダ支部代表。詩や歌で、思いをつづり、ＣＤを出している。

深刻な人権侵害が今なお続く東ティモール

一日も早く平和が、訪れることを祈りつつ手紙を書きつづけたい。

東ティモール問題に尽力された相馬信夫司教死去

前カトリック名古屋教区の相馬信夫司教が10月6日未明に亡くなった。

東ティモール問題では、象徴的な人物であった。東ティモール問題の国際会議の時に入国を拒否されたり、1996年マレーシアの会議では拘束されたり、話題豊富な人だった。私は、何回かイベントでご一緒しただけだから、存じ上げているわけではない。だから思い出を語ることは出来ないが、東ティモール問題だけではなく人道的な立場から、広く活躍されてきた相馬信夫司教のご冥福をお祈りします。

東ティモール支援CD発売中

タイトル

２０YEARS　OF　RESISTANCE　

TO　GENOCIDE　IN　EAST　TIMOR

歌手

このCDは、アベ・バレトさんを始め、U2やピーター・ガブリエルなど東ティモール支援者活動に賛同するアーティストたちの20曲が入っています。

収益金

このCDの収益金は全額「EAST　TIMOR　HOPE　FOUNDATION」に寄付されます。

申し込みはe-mailまたはFax052-853-7021まで、ＣＤが届きましたら、代金と送料を振り込んでください。　

突然出来た！新コーナー

ゆずるくんのインドネシア特派員報告！

わやメンバーで、現在インドネシア留学中の、ゆずるくんからの報告です。彼の専門は法律・国際法・人権で、インドネシアの法律や人権について学んでいます。最近日本語の乗るコンピューターを買ったので、メールのやり取りが盛んに出来るようになりました。インドネシアはこのコーナーの前に書いてある東ティモールやイリアンジャヤの領土問題に絡んだ人権問題を抱えています。それ以外にもインドネシアの人権状況や興味深い問題を報告してもらいます。

スハルト辞任に寄せて

（１９９８年５月２３日更新）

ゆずるくんがインドネシアから帰ってきました。今回は久々の彼からの報告です。１９９８年５月、インドネシアの学生たちによる民主化、そしてスハルト大統領辞任要求に対し、周辺からの支持を失ったスハルト大統領はハビビ氏にその職を譲った。日本に帰国した（弦）ユズルくんの、一味違った詳細な解説と分析を本人の同意を得て、掲載します。若干いいまわし、変換のミスなどは修正しました。なお１９９８年５月２２日の中日新聞朝刊にこの一連の事件に対するユズルくんのコメントが載っていました。（しげちゃん）

　（メールの前書き）

今回の、スハルト大統領辞任について、自分なりに今回の一連の騒動の中で考えてきたことを忘れないうちに文章にしておこうと思い書いてみました。今書いている論文の最後の部分に付けてみるのも良いかと思っています。急いで書いた文章でろくに校正もしていませんが、ご批判をお願いします。

　スハルト辞任に寄せて

弦（ゆずる）

三十年以上に渡りインドネシアに君臨していたスハルトが退陣することは、現代東南アジア史にとって画期となる事件である。権威主義的支配、開発独裁、人権侵害、汚職ファミリービジネスと言う多くの負の面を持つ一方、スカルノ時代の壊滅的な経済状況を回復し、教育水準を向上させ、識字率を格段に向上させ、様々な村落改善プログラムをとり生活状況の底上げに成功してきたことは、否定できないし、それどころか賞賛すべき功績である。ジャワ文化における善と悪の共存・不可分という哲学をある意味スハルトの経歴は物語っている。スハルトは多くの利害やしがらみに縛られ、引くべき時を誤った。スハルトの権威を背にしたファミリービジネス・側近ビジネスは、スハルトが個人では決断できないほど巨大になっていた。スハルトが五月十九日の演説で「今やめることは責任を逃れることだ」と言った「責任」は国民に対すると言うよりも、実はそのようなしがらみに対する責任なのかもしれない。

スハルト最後の数日間を見るとき、独裁者の末期の一つの典型を見る思いがする。12日のトリサクティ大学での学生射殺事件、13日から15日まで続いた暴動は、スハルト体制を支えてきた、軍、官僚、国会らの人々に自分たちはいったいどちらの側に立つべきなのかという問題を突きつけた。16日からの舞台裏のでの駆け引きが、彼らに与えられた回答時間であり、18日ハルモコ国会議長は国会内会派議長の合同声明として、大統領に対して辞任の勧告を行う。19日スハルトは、それを無視するかのように辞任はせず、自らの指揮下で総選挙を行い、その後辞任するという延命策を明らかにした。しかしそれに対する国会側の答えは、スハルトの声明を無視するかのように、先の勧告を国会本会議に提出、あくまで大統領を辞任させるという方向をとり、他の国会議員たちもそれに同意した。軍は暴動後から市民・学生の側につくことを明らかにしており、20日には内閣の大半が辞表を提出、また故郷のジョグジャカルタでは、50万人が集会を行い、そこでジャワ人の精神的支柱であるスルタン、ハメンク・ブオノ10世が群衆を前にしてスハルト不支持を明確にした。スハルトは自らが属しているジャワ人社会からも不支持を突きつけられたのである。こうしてみると、実は、スハルトは19日の演説の時点でほとんど全ての支持基盤を失っていた。わずかにスハルトを囲むのは、ごく少数の側近あるいは取り巻きであり、彼らがスハルトが裸の王様であることをスハルト自身から覆い隠していたのではないか。しかし、彼らとてスハルトの権威がなければ何もできないのであり、政治的信頼を完全に失ったスハルトを一日すらも擁護できなかった。21日スハルトは、かろうじて、自ら辞任、副大統領に大統領職を後継するという、自分の最後の望みである合憲的権力移譲を行うことができただけであった。ハビビ政権がスハルト体制の最後の一章であるのか、それとも全く新しいものであるのかは、今のところでは何ともいえない。まだ何も起こっていないからである。しかし、韓国、フィリピン、タイ、中国、シンガポール、台湾、それぞれの国の人々や権力者たちは、またそれぞれのやり方でそれぞれの独裁に幕を引いてきた。インドネシアもまた非常にインドネシアらしいやり方でその独裁政権に幕を引いたのである。

もう少し時間を遡り、いつからスハルト体制の終わりが始まっていたのであろうか。92年の総選挙は、まさにインドネシア経済の絶頂期であった。一方でスハルト体制の腐敗は目に余るものになっていた。それに彼はすでに十分に高齢であった。当時各マスコミは、一斉にスハルトの後継問題を取り上げ、また当時科学技術担当大臣であったハビビと国軍との間の確執をさかんに書き立てていた。89年頃からの政府の言論自由化政策と、経済政策で一大産業となっていたプレス業界は、ここぞとばかりに政府に批判的な記事を書き、それが読者のニーズに応えることであった。また、当時多くNGOが結成された。94年、政府は特に政府に対して批判的な論調であった3雑誌の発行禁止処分を行った。言論自由化政策の終わりを宣言したのである。しかし、一度開かれた扉は閉じられることはなかった。過去の発行禁止処分では見られなかったような、広範な抗議行動が繰り広げられた。記者や学生だけでなく、市民や、またビジネス街に務める中産階級の人々もこの抗議行動に参加した。発禁された雑誌の内の一つテンポ誌のグナワン・ムハマッド編集長は「これらの声に答える責任」を感じて、発行禁止処分に対して不服を申し立てる行政訴訟を情報大臣に対して起こした。そして、このことは裁判所においてさえも時代が動いていることを明らかにした。勝てるはずがないと、全く問題外だと思われていた結果は、一審及び控訴審で編集長側が情報大臣に対して勝訴したのである。このことは、時代が後戻りできないことを強く印象づけ、民主化の運動に弾みをつけた。最高裁では敗訴したものの、その苦しい判決内容は政府の発行禁止処分の不当性をより際だたせた。ほぼ同時期に行われていた、大統領侮辱罪の別の裁判とも併せて、この裁判運動の過程で多くの民主化グループ・人権組織がその地盤を固め、活動を活発にしていった。1996年には、政府は野党民主党の党総裁人事に介入、スカルノ大統領の子供でもあるメガワティ総裁らの一派を追放した。それに対しては、多くの民主化グループがメガワティ派支持を表明、メガワティ派はこの介入の不当性を訴え裁判闘争を行った。そのいくつかには勝利さえもしたのである。1996年7月27日、民主党本部明け渡しを拒否するメガワティ派に対して、軍は強制排除を行い、死者数十名、行方不明者多数、さらにジャカルタ中心部では十数年ぶりの大規模な暴動に拡大した。政府施設、華人商店、自動車販売店などが略奪、焼き討ちされた。この事件は安定を誇ってきたスハルト体制のほころびを端的に示すものであり、その後も多くの地方都市で暴動が頻発するに至った。

よく1997年は総選挙の年であり、5月のその総選挙はスハルト七選を約束するためのものであった。その選挙は「史上最も暴力的な選挙」と評されるほどであり、ジャカルタ、メダン、スラバヤなどの大都市を含むインドネシア全土が、まるで暴動のような「選挙運動」で覆われた。投票日当日ですらも、投票所の焼き討ち、国営銀行の火災などの混乱に見舞われた。大統領の退陣要求は半ば公然と語られはじめ、スハルト体制の終わりを示すような選挙の様子であった。さらに政府にとって運が悪かったことは、この年は天候不順による大凶作の年となる。外島地域では餓死者が大量に発生し、カリマンタン島では森林火災が深刻化し、経済は悪化し始め、そしてとどめの一撃として八月タイでのバーツ急落で始まった東南アジアの通貨危機はインドネシアにおいて最も深刻なものとなり、物価の急騰、生活必需品の不足、失業者の増大、国際的信用の急落が起きた。この中で、経済成長の中で覆い隠されていたスハルト体制の矛盾は、もはや修復できないほどのものとなり、今日この結果に至るのである。スハルト体制の終わりは6年ほど前から始まり、それは修復されないまま放っておかれてきたのである。

では、今後のインドネシアはどうなるのであろうか。スハルトが辞任を表明してからようやく12時間程度が経過した現在において、今後を明確に示すような材料は全く出されていない。ハビビ大統領がいかなる政策を採るかも明らかではない。ここでは歴史的経

験から推測するしかない。スカルノ大統領は、オランダ植民地支配に対する抵抗運動、そしてその結果勝ち取った独立の中で大統領に就任した。彼の就任は多く独立闘争のためのグループ、民族的、宗教的、思想的に実に多様なグループに支えられた就任であった。したがって、彼はそれらのグループの利益を無視することができず、したがって、独立当初インドネシアは多数政党制議会制民主主義体制であり、表現の自由も広く認められていた。しかし、元々インドネシアの極端な多様性に発する分断的状況は議会における政党間の対立を克服しがたいものにし、地方でもジャカルタ政府への反乱が相次ぎ、議会制政治は息詰まっていき、スカルノ独裁体制へと入っていった。1965年10月以降、スハルトはクーデター未遂事件を手掛かりにスカルノから権力を奪取していく。本質的にはスハルトによるクーデターであるが、スハルトは努めて民主的な装いをしようとしてきた。スハルトの権力奪取の大義名分は、スカルノ独裁体制における目に余る憲法違反と国家原則パンチャシラからの逸脱、政治的自由や表現の自由の圧殺、崩壊した経済状況、などの回復であった。そしてそれらの状況は事実としてそうであり、多くの国民の支持を得た。共産党員（それと恐らくそれとは何の関係もない人々）数十万人の虐殺があったとはいえ、スハルトは、スカルノ時代に発行禁止にされていた多くの新聞・雑誌を復活させ、学生を中心としてスカルノ独裁に不満を持っていた勢力は反スカルノのデモを繰り返した。その中には、現在の民主化運動の指導者の一人にして、詩人そして雑誌テンポの元編集長であるグナワン・ムハマッド氏など、その後民主派のリーダーとなる人々も多く含まれていた。また独裁や軍政というイメージを避けるために、リベラルで実務的な政治家であり外交官として知られていたアダム・マリクと、ジョグジャカルタの近代化に尽力し、またジャワ人の精神的支柱であり、開明的政治家として宗教地域を超えて尊敬を集めていたジョグジャカルタ候ハメンク・ブオノ9世との三頭政治を運営した。事実、そのころはインドネシアにおいて表現の自由、プレスの自由が最も花開いた時期でもあった。そのような状況は70年代半ば、ジャカルタでの大暴動が起きるまで続き、その後スハルトは独裁を強めていくのである。このような歴史的な経験を見たとき、現在の状況とのいくつもの類似点に出会う。今日のスハルト辞任においても、学生・市民の実に多くの民主化活動グループが重要で中心的な役割を果たし、軍も結局はそれらを支持する側に廻った。ハビビ政権もこのことは絶対に無視することができない。新政権においてこれらのグループの要求を取り入れることができなければ、再び反対運動が激化するだけであり、そのときに軍が政権を支持する保障は全くない。ハビビ大統領は、組閣においてそのような要素を十分に配慮し、スハルト大統領が設置を約束した「改革委員会」を早急に設置し、その中で、総選挙法、汚職防止法、独占禁止法、政治活動法、国家転覆活動防止法などの法律を全面的に見直し、民主的な政治システムと経済システム、表現の自由などの政治的権利の保障を明確にしなければならないであろう。ハビビ大統領はいずれにしても、真に国民によって選ばれた大統領ではない、できるだけ早く選挙を行い、国民によって選ばれた大統領を選出することをその業務とする大統領である。しかし、一方で、自由な選挙は諸刃の刀である。スカルノ時代の議会制民主主義の行き詰まりで明らかになったように、インドネシアの多様性の中での、多数政党制は再び地域主義や宗教間対立を再燃させる可能性がある。確かに、当時からすでに40年以上が経過しているが、果たしてこのような状況は解消されているのかどうか、経済成長や、インドネシア語の普及、高い人口流動性などの積極的な要素もあるが、相変わらず地方にはジャワとジャカルタ政府に富が集中しているという思いは強い。教会の焼き討ちや華人に対する襲撃は今回の一連の暴動でも顕著であった。さらに、スハルト退陣に重要な役割を果たした民主化勢力は、選挙において果たしてまとまった行動がとれるのであるかという問題がある。これから総選挙にかけての期間において、まとまった体制を作っていく可能性もあるが、現時点ではまだ所詮は「烏合の衆」である。支持基盤も、イデオロギーも全く雑多な集団に過ぎない。メガワティにしろ、アミエン・ライスにしろ政治的能力については疑問である。政権を執ることになれば、どんなに国民に口当たりの良い約束をしたとしても、やはり経済建て直しのためには、国民に人気のない政策を採らざる得ない。そのときに、その政権は分裂せずにまとまって国民を率いていくことができるのか。将来的にはともかく、現時点では悲観的にならざる得ない。むしろ国軍がイニシアチブをとり、その下で民主化勢力の指導者やエコノミストなどがまとまるほうが安定という面では確実かもしれないとも思う。しかし、これらのリスクはインドネシア人自らが責任を負わなければならないリスクであり、今日のインドネシア人の同級生たちの「うれしい」と言っているのを見れば、やはりこの状況に希望を託すことしか外国人にすることはなくなる。最後に、私が今一つスハルト退陣や、民主化勢力の勝利を素直に喜べないのは、恐らくハビビ政権だろうが、軍政だろうが、民主派政権だろうが厳然として残るであろう絶望的な貧富の格差である。今回の抗議行動に参加した学生たちは、実はインドネシア社会の中では特権的な身分である、そのほとんどは裕福な家庭の出身であり、大半は中流以上の出身である。彼らは今日の結果に満足して家に帰れば、別に食べることにもそう困らないし、また明日から楽しい学生生活が待っているであろう。しかし、一方で、そんなこととは全然関係ない人々が圧倒的多数で存在するのである。字も読めないし、テレビも見ないから今回の事情もよくわからない。今晩の食べ物もまだめどがついていない人たちがいるのである。西イリアンやカリマンタンなどでは相変わらず、飢餓や森林火災に脅かされている人がいるのである。今回の大統領の辞任と民主化勢力の勝利のほろ酔い気分の中で、このような社会的矛盾は、政治的矛盾の解消という流れの中にまた覆い隠されてしまうであろう。今回の暴動の中で、略奪や焼き打ちに走った市民達のことを考えさせられる。

以上

弦（ゆずる）

名古屋大学国際開発研究科

ゆずるクンへのメールはshimgen@ibm.net

送信日時:1997年12月12日金曜日 12:12

件名: 少し早いご挨拶

(12月13日更新）

わや一同　

MERRY CHRISTMAS AND HAPPY NEW YEAR

ちょっと（と言うかかなり）気が早いですが、年末年始のご挨拶。これから当分、年明けまで、メールにアクセスできそうもないところにいるので。

年も押し迫ってきたときに、日本発で大ニュースがあったようですね。

「スハルト大統領死亡」あるいは重病説

インドネシアでは、先日の新聞で大きく一面ににこやかな例の顔が出て、噂を打ち消していました。しかし、このニュースの影響は大きく、ルピアは一挙に1＄＝5000ルピアまで下落してしまいました。まあ、彼も良い年なのと、寒くなると人が死にやすいと言う日本のイメージが合わさり、ニュースが真実性を増したのでしょう。もっともこっちは相変わらず暑いままです。

町は、もうクリスマス一色、イスラム教のジルバブ（女性のかぶる頭巾）を着けた女の子もクリスマスの予定を聞いてくる始末です。ただ、町にあふれるサンタクロースは、とても暑そうです。あんな服じゃなくて、Tシャツでも着せたら、もっとインドネシアらいくていいのにと思うのですが。

新聞記者殺害事件に関わる冤罪事件では、先日正式に被告人が釈放されました。勿論釈放決定は確実視されていたのですが、最後まで「Factor X」、つまり外部（政府）からの干渉を憂慮する記事がでていました。次の段階は真犯人の追及ですが、まだ目立った成果はでていません。全体の調子は、今回の冤罪事件のシナリオを書いた、警察署長の取り調べが第一に求められているようです。今回の釈放決定については、釈放請求を行った、検察の判断が英断として評価されているようです。

一方で、先日、警察が検察官五人を逮捕するという事件がおこりました。もちろん手続き的には問題がないのですが、協議と合意を重んじるこの国では驚きを持って迎えられ、警察と検察の間の対立が表面化したものと受け取られています。

さらに、今月を賑わした事件と言えば、ごみ捨て場において胎児（あるいは嬰児）13人の遺体が発見されたと言う事件があります。調査の結果殺人事件ではなく、違法な中絶の結果であろうと言うことになりましたが、テレビではその遺骨の映像が放送され、中絶された胎児の骨格があんなにしっかりしたものであることには、正直驚き、中絶の是非について思わず考え込んでしまいました。

また、12月9日には、インドネシアの中央銀行である、バンク・インドネシアのジャカルタ中心部にあるビルの新館で火災が起こり、15人が死亡しました。この火災については、たまたますぐ近くにいたので、ずっと見ていました。インドネシアでは３０階を超す高層ビルが次々と建てられ、中心部の景観は、それは見事なものですが、工事があらく、新築でも雨漏りするビルが多いそうです。消火設備についてもやはり不十分ではなかったかと思います。

インドネシアでも年末は暗いニュースが多く、経済の悪化した状況はこのまま年を越え

そうですし、来年３月には、国民協議会による大統領選出があり、大統領の健康問題と

絡んで、政治的に不安定な状況になりそうです（あの、インドネシア最大の事件９・３

０事件もきっかけはスカルノ初代大統領の健康悪化でした）。またプレス機関に対する

圧力も強くなるだろうと予想されています（現在は比較的手綱を緩めている時期です）

できれば、私が帰るまでは平和であって欲しいのですが、でないと荷物の郵送、帰国手続き、国内移動などに支障がでそうで不安です。しかし、まあ、皆さんよいお年を。

送信日時: 1997年11月19日水曜日 15:42

件名: インドネシアの森林火災について

（11月19日更新）

しげちゃんから、インドネシアの森林火災の様子を尋ねたことに対しての報告です。

森林火災はやはり深刻なようです。「ようです」と言うのは、ジャカルタではその影響は全然ないから、日本と同じ外国の出来事のようです。主な被害地は、カリマンタン島とマレー半島、スマトラ島北中部です。ジャカルタからだと、鹿児島から札幌よりも離れた距離です。

新聞報道によれば、本来は雨期であるこの時期にもまとまった雨が降らず、状況は好転していないようです。ただ、ジャカルタでは先週ごろからいよいよ本格的な雨期らしい天気になってきて、とりあえず市内の水不足は解消しそうです。

森林火災の被害は、近隣諸国に広がった上に、飛行機事故、海難事故を引き起こし、

また地域住民の健康はかなり深刻な被害を受け、呼吸器、眼などに深刻な障害が表れて

いると伝えられています。住民は日中でも家からでられず、視界も百メートル以下と言

います。また、自然に対する被害も深刻で、オラウータンが住みかを失い、また焼け出

されたとらが人家を襲うという事件も発生しています。基本的には天災なのですが、毎

年起こることであり、何ら有効な対策をとってこなかった政府の責任も問われています

。

また、森林火災と並んで深刻なのは、西イリアンでの干ばつによる飢饉です。半月ほど前のニュースで餓死者が既に４００人を越えていると伝えられています。学校も既に授業が行える状況にないそうです。現在、新聞社などが義援金募集のキャンペーンを行っており、こちらのほうが大きなニュースになる日も多くあります。さすが、イスラム、喜捨の伝統と、独自の相互扶助の伝統が合わさり、かなりの額が寄付されています。

（名前と金額が新聞に載る）

送信日時: 1997年11月17日 20:31

件名: インドネシア人件状況３

（11月18日更新）

インドネシア人権状況

労働関係

　インドネシアでは労働組合としては政府公認である全インドネシア労働組合連合(SBSIF)とその傘下の労働組合のみが認められている。SBSIFは一貫して政府よりであり、労働者を守る立場に立っていない。基本はパンチャシラ労使関係と称される労使協調体制であり、したがってストライキ等もこの労働組合は行わない。しかし、実際には政府の定めた最低賃金も支払われていない職場が多く、労働者による争議、ストライキが頻発している。ジャカルタの近郊のタンゲラン市にあるスポーツシューズメーカー、ナイキの工場で起きた大規模な労働争議は有名である。　しかし、これが公認の労組によるものではないため、指導者は非合法な争議を扇動したことについて責任を負わせられる。場合によっては、使用者側、あるいは介入した軍隊によって殺害される例もある。アジア・アフリカ会議で知られるバンドンの近郊には、アパレル関係の工場が密集しており、そこの労働条件の悪さはつとに知られている（おかげでバンドンではジーンズなどが産直で非常に安く買えますが）。ここでは労働争議もまた頻発している。そのうちのある工場でおきた労働争議において、その指導者であったマルシナという女性が、何者かによって強姦された上殺害された。警察は工場長及び重役を強姦殺人の容疑で逮捕したが、彼らについて反抗を立証する有効な証拠が存在しなかった。この事件についてはむしろ国軍の関与が指摘されていて、被疑者達も拷問の上自白を強要されたと証言している。結局最高裁に至るまで、被疑者達の容疑を立証する証拠はなく、結局無罪とされた。これは最近のインドネシアでは話題になった冤罪事件であるが、もっとも重要な真犯人については明らかになっていない。当該の労働争議に介入していた国軍関係者によるものという見方が強い。

　労働者の味方でない、SPSIFに愛想を尽かし、新たに独立系の労働組合を作る動きが1990年代から広がり、その中で最大のものはモフタル・パクパハン議長の率いるインドネシア福祉労働組合(SBSI)である。もちろん政府はこの労働組合を認めていない。SBSIは、1993年スマトラ島メダンでゼネストを行ったが、それが反華僑暴動に発展して多くの死者を出した。この責任を問われてモフタル議長は殺人罪で起訴された。この暴動に関しては、ゼネストによるものよりも、むしろ何者かに意図的に扇動されて暴動に発展した疑いが強く、多くの目撃証言は国軍と目される者たちが放火・略奪などを率先して行っていたことを示唆している。最高裁判所は、この事実を認め被告人を無罪とした。この判決の主任裁判官を務めたのは、アディ・アンドジョという裁判官であり、彼はジャカルタにおける私立学校設立を巡る汚職事件で、最高裁判所判事が賄賂を受け取っていたことを内部告発し、最高裁判所の汚職問題を公にしたことで後に知られることになる（結局、最高裁判所独自による調査で汚職の事実はないと片づけられ、彼はそのまま定年退職、現在は大学で教鞭を取る）。しかし、あろうことか検察側は1996年最高裁判所に事件の再審を請求、この請求の合法性について多くの議論を呼んだが、最高裁判所は受理し、別の裁判官チームによる再審の末、モフタル議長は殺人罪について有罪とされ、さらに国家転覆罪もついた。また彼はその著書に関連して大統領侮辱罪の裁判も抱えている。

　インドネシア国会は、今年新しい労働法を制定した。この法律は労働者の権利を保護するどころか、逆により厳しい抑圧下に置く法律であり、例のSBSIFでさえもこの法律に反対している。主な点は特に労働争議に関するものであり、労働争議について政府は自由に介入することができ、さらに労働者側はストライキの三日前までにその旨及びストライキの指導者の名前を政府に報告する義務を負う。また、労働者側はストに参加している間の賃金を受け取る権利を有しない。

　先日、インドネシアの国営航空機製造会社であるIPTNの賃上げを求めて労働争議を行った。この会社は科学技術担当調整大臣であり、また時期大統領候補の一人にも上げられているハビビ（彼はドイツの航空機会社の役員でもあり、エアバスの尾翼設計などで知られている技術者である）の会社であり、その従業員は実のところインドネシアでも最高レベルの待遇を受けている。この従業員における争議は結局負傷者すらでないまま平和に解決、彼らは賃上げを獲得した。この事件と、他の労働争議との差を見るとまた考えさせられるものがある。

　またインドネシアでもう一つ問題になっているのは、海外出稼ぎ（主にメイド）労働者の問題であり、これは以前にも紹介した。最新の統計によれば、合法的な海外出稼ぎインドネシア人はマレーシア408211人、サウジアラビア319444人、シンガポール86209人、韓国26278人、アラブ首長国連邦19630人、台湾225567人などである。もちろんこの数倍の非合法労働者がいる。報道によれば労働大臣は、現在サウジアラビアにおいて359人のインドネシア人労働者が収監されていると言う。また現在150000人のインドネシア人労働者がサウジで違法に働いているとも述べた。いずれにしても、出稼ぎ労働者に対する政府の保護は非常に貧弱であり、斡旋業者についても管理されていない状況である。連日、彼ら、彼女らについて雇い主による虐待、性的暴力、無賃金労働、あるいは家族離散による悲劇などが新聞紙上で報道されている。

送信日時: 1997年11月13日木曜日 1:03

件名: インドネシアの人権状況

（11月13日更新）

しげちゃんへのメッセージ

しげちゃんへ、インドネシア人件状況続編です。人権状況と言うよりはインドネシアのメディア事情になってしまいましたが、まあ読んでみてください。アンドロメダ銀行の件は、今日のニュースによれば、訴えは撤回されたそうです。

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プレスの自由に関して：

インドネシアは憲法第２８条で「集会及び結社、並びに口頭及び書面による意見の公表、並びにそれに類する自由は、法律でこれを規定する」と定めています。この条文についてどのように考えるかはまた難しい問題を含んでいますが、いずれにしてもインドネシアにおいて、表現の自由に関係する法律は、刑法の中の一連の侮辱罪に関する規定、道徳に反する罪に関する規定（日本では猥褻罪に相当）、１５４条などの「憎悪拡散条項」、民法の名誉棄損に関する規定、反国家転覆法、映画法、プレス基本法、放送法などがあります。但し、このうちほとんどのものは形式的には、日本などのほかの国とそう変わらないものであり、厳密に内容を検討しない限りはとくに問題となるものではなく、またここではそのような検討を行うことは必要ないと考えます。

しかし、刑法の「憎悪拡散条項」、侮辱罪の一部、反国家転覆法、プレス基本法については、インドネシアにおけるプレスの自由を大きく特徴づけるものであり、これから紹介するいくつかのケースにおいて比較的詳しくその内容を紹介することになると考えます。

インドネシアでは、独立後、ごくわずかな例外的な時期（独立戦争時、独立戦争後の数年間、スハルトが権力を掌握した後のわずかな期間）を除いて、プレスは一貫して強い制約下に置かれてきた。しかし、８０年代後半以降、世界的な冷戦終了の影響も受けて、インドネシア政府はいわゆる「開放政策」と呼ばれる政策をとり、プレスに対して一定の政府批判、政策批判を容認する規制緩和政策をとった。もちろん、これは具体的にその政策が提示されたわけではなく、大統領を含む、政府・軍の指導者がその言動の中で匂わせたものを、プレス側が解釈したものである。その環境の中で、プレス側は積極的に政府批判を行い、今までタブーと考えられてきた大統領後継問題、東チモール問題などについても報道を行うようになった。このような状況はもちろん国民にも歓迎され、そのことは雑誌・新聞の発行部数がこの時期に大きく伸びたことにも見て取れる。しかし、この状況は一気に終焉を迎えることになる。

1994年6月、情報大臣は、当時最大の出版部数を誇っていた週刊誌TEMPO、それとEdito r、タブロイド誌のDetikの三誌について、そのプレス出版経営許可を取り消すことを決定した。その理由については、Editorについては報告を義務づけられている取締役の変更について報告を怠ったこと、、Detikについては、犯罪報道を行うと行う許可要件に反して、その紙面のほとんどを政治報道に割いていたこと、TEMPOについては、その報道の内容が、プレス基本法の定める自由かつ責任あるプレスと言う条件をもはや満たしていないと判断されたこと、が挙げられた。確かにEditor及びDetikについては、それが明確な法律違反を構成するものであるが、実際には多くの雑誌で日常的に行われていることであり、事実上黙認されていた。それが、この２誌に限って許可取消しの対象となったこと、またTEMPOに関しては、はっきりとその報道内容が不適切であるとしたことは、政府が行き過ぎている報道自由化に対して、この三誌を見せしめとして警告を発したものである。

プレス基本法は、その規定で、出版許可制度の廃止、検閲及び発行禁止処分の禁止を規定する一方で、プレス出版企業に対して、経営許可の取得を義務づけている。経営許可は本来、会社規模、設備、社員の福利厚生などについての経営上の条件を満たしていることを許可理由としているはずであるが、実際には経営許可に関する実施規定である大臣規則では、大臣が該当するプレスの報道内容が法律の定めるプレスの指名、機能、義務に違反していると判断する場合は、その経営許可を取り消すことができるという一文がいれられた。この結果、事実上発行禁止処分は名を変えて存続することになってしまった。

上記三誌の発禁処分に対する反響は大きく、処分の翌日には情報省前でデモが行われ、一週間以上連日デモが行われた。デモ参加者は、学生、ＮＧＯ活動家に限らず、市民さらに既存の発禁を受けなかったメディアの記者にも広がった。このことは、以前の発禁処分においては見られなかった現象であり（現制度下で既に３つのプレスが発禁処分を受けている）、開放政策がもたらした影響の大きさを物語る。何よりも異例だったのは、発禁された雑誌の中で最大部数であったテンポの編集長及び従業員が、この発禁処分に対して裁判を起こし、大方の予想を裏切り、一審及び控訴審で全面的な勝訴を勝ちとったことである。結局最高裁は政府の処分を認め、テンポ側は敗訴したが、下級審での敗訴の影響は大きく、政府内では本気で処分撤回の可能性が探られ、上告手続が大幅に遅れたことは政府内の混乱を示唆している。

一方、政府内でもこの処分に対する見解は大きく分かれていて、発禁という極端な処分に対して、とくに国軍内を中心に非難する声が連日報道された。これは一つに発禁の原因となった報道合戦が、政府内での軍人と文民官僚との間の確執を背景にしており、文民側の情報大臣及び科学技術大臣のイニシアチブにより処分が行われたことを背景としている。

この処分において本来新聞記者の利益を代表するはずの公認のインドネシア新聞記者協会(PWI)は、逆に政府の処分に対して理解を示すという声明を出した。このことは新聞記者達を多いに失望させ、もはや公認の組織では報道の自由は守ることができないと言う考えに至らせ、この組織とは別の独立した新聞記者組織を結成するに至る。この組織は、発禁の年に西ジャワのシルナガリという村で「表現の自由を侵害するあらゆる介入に反対する」と言う宣言に署名したテンポの記者やそれ以外の若手記者を中心とした数十人の新聞記者により独立ジャーナリスト同盟(AJI)という名で結成された。しかし、政府はこの組織を認めず、またPWIもAJIに参加したジャーナリストを除名した。（法律上、新聞記者は全てPWIに加盟しなければならない）さらに、プレス各社に対してAJIに加盟したジャーナリストを解雇し、また雇用しないようにと言う回状を出した。ほとんどのプレスで、AJIのメンバーは解雇、または非報道部門に配転された。（一連の処分でPW Iは一貫して政府の立場を代弁したが、一枚岩と言うわけではなかった。とくに上述の裁判において、証人としてPWIの常任理事の一人が政府の手続き上の瑕疵を示し、政府敗訴の決定的原因となる証言を行っている）AJIは、インドネシア国内においては認められなかったが、国際的にはインドネシアを代表するジャーナリスト組織として国際ジャーナリスト連盟に加盟を認められた。

AJIは、その機関誌としてスアラ・インディペンデン（独立の声）という雑誌を発行した。この雑誌は許可を得ていなかった。１９９５年断食明けを祝うパーティーをAJIがジャカルタ市内のホテルで行い、その際この雑誌も配布された。そこへ警察が踏み込み、２人のリーダー（エコ及びタウフィック）及び雑誌を配布していた手伝いの高校生（ダナン）を逮捕した。彼らは無許可による雑誌販売及び政府に対する侮辱で起訴され、実刑判決を受けた。

また、同じ頃NGOのピジャールという団体の機関誌がやはり大統領を侮辱したとして、そのリーダーのトリアグスが逮捕され、やはり実刑判決を受けた。この四人の逮捕は、上記の発禁事件の強い影響下で起きたといえる。

この四人の逮捕のうち、高校生はとくに気の毒であった。彼は事実上何も知らないアルバイトであり、大学受験を目前にしていた。インドネシアの刑務所の惨状を考えると、何もわからず巻き添えになったことはまったくの不幸である。彼は他の三人（懲役二年半）よりやや早く釈放され（懲役一年３カ月）その後ジャカルタ市内の大学で心理学を学んでいる。最近、獄中の体験を本にまとめ出版した。この本の出版記念会で彼と会ったが、非常にしっかりとした、またこの事件の影を感じさせない明るい人だった。ちなみにジャーナリストになるつもりはないそうである。今年になって他の三人も釈放された。トリアグス氏はインドネシア中を飛び回っていてなかなか会えない。AJIの二人は、出獄直後のパーティーで会ったが、インドネシア人らしく、得体のしれないこの外国人に対してもとにかく明るかった。現在は契約ジャーナリストとして活動している。

AJIは現在も認められていない。雑誌D&RがAJIのメンバーを採用しようとした際に、PW

Iはその編集長を除名すると警告した。テンポのもとスタッフの一部は政府が救済策とし

て設立を許可した雑誌Gatraに移籍した。ここのオーナーは大統領の親友である、ボブ・

ハッサンであり、彼は不適切な報道に対しては経営者として介入する意志を明確にして

いる。元テンポの寄稿者であった知識人達がGatraボイコットを表明している。その中心

人物である社会学者アリフ・ブディマン氏は大学を追われ最近オーストラリアに出国し

た。Editorは、新たに出版許可を得て雑誌Tirasとして再開した。Detikについては依然

として復活していないが、オーナーのスリヤ・パロー氏はインタビューで「もはや、発

禁されるために雑誌を作るのにはうんざりだ、このエネルギーはもっと他のことに利用

できる」と語っている。彼は以前にもPrioritasという新聞が発禁処分を受けている。こ

のときには徹底的に政府の処分と争い、結局破れている。インドネシア有数のメディア

コングロマリット、メディア・インドネシアグループの総帥でもある。テンポの編集長であり裁判の原告であったグナワン氏は現在プレス活動を離れ、本来の詩作・芸術活動に専念している。現在は日本に長期滞在している。 Gatraに移籍しなかったTempoのメンバーは、現在その多くが契約記者として活動している。上記三誌の発禁で、市場には５０万部近い真空ができたが、現在それを埋めるほど他の雑誌の発行部数は伸びていないという。話しはそれてしまったが、最近、これ以外にも表現の自由に関わる重大な事件がインドネシアで見られた。一つは連続した新聞記者殺害事件であり、そのうちのジョグジャカルタで起きた事件については既に詳しく報告した通りである。それ以外でもスラヴェシ島のウジュンパンダン、カリマンタン島のバンジャルマシンで新聞記者が不審な交通事故死を遂げている。この件についてはその後の詳細に情報はインドネシアではない。野党民主党の国会議員スリビンタン氏は、ドイツ訪問中に行った講演でスハルト大統領を独裁者であると発言したとされ、大統領侮辱財で有罪とされ、議員の職をとかれた。また、幾つかの本について、その内容が大統領・政府を侮辱するとして起訴され、現在裁判中である。著名なプラムディヤ・アナンタトゥール氏については依然として彼の作品は全て発行禁止の対象である。（ただ、最近彼の自伝を手に入れた。本屋で買ったのではないので良く判らないが今年の発行である。発禁処分にはならなかったのか）いずれの事件も開放政策が引き起こした、市民のメディアへの関心、政治や社会事情の情報への強い欲求から以前には見られなかった強い関心を呼んでいる。このことを考えるとき、一度開かれた情報の扉はもはや閉じることはできず、その点では開放政策は一時的には減速したが決してとどまるとは思えない。とくにスハルト以後のインドネシアにおいて、権力の分散化は顕著になり、権力グループはその中で多いにメディアを利用すると考えられる。それは決して悪いことではなく（日本、アメリカを含めどこの国も状況は同じで）そのためにメディアは広い活動範囲と自由が与えられることになろう。よほどの御用プレスでない限り、メディアは確実にこの機会を利用すると期待している。このことは、近隣のシンガポール・マレーシアと異なり、インドネシアプレスの商業的性格の強さ、つまり資本レベルにおいて主要プレスでは政治的影響が少ないことも有利に働くであろう。現在、新たに放送法が制定され。その関係で、報道活動が許可された民放各社が国会での実況中継の解禁を求めて政府に強く要求しているそうです。

以上

（11月10日更新）

送信日時: 1997年11月10日月曜日 15:20

件名: 新聞記者殺害事件裁判続報

先日（ずいぶんと前になってしまいましたが）、新聞記者殺害事件の被告人が釈放されたということを書きましたが、その結果についてのやや詳しい情報をお伝えします。

実際にはまだ、完全に無罪放免というわけではなく、検察が裁判所に対し被告人を釈放するように請求したということです。（日本では起訴取消しに相当）最終的には、裁判所が、公判中止、被告人釈放の決定を出すのを待たなければなりませんが、現在までの裁判の経過、新聞報道で見る限りでも、釈放請求が覆る可能性はまずないでしょう。

前にも書いた通り、この事件を特徴づけるのは、新聞記者殺害というテロに対して、メディア側が一貫して積極的に追跡報道を行い、検察・裁判所に対して、それと政府や社会に対して、事件を風化させないように、そして、犯人でっちあげによる、殺害動機の覆い隠しが罷り通らないように、圧力をかけつづけた成果だといえます。

以前にも、政治的動機を隠蔽するための冤罪事件について、無罪判決が出されたケースがありますが（有名なところではマルシナ事件）、今回の事件はその報道が非常に大量に、そして一貫して真実究明に向けられていたという点で特徴的です。

また、先週に行われた経営不良の銀行１６行に対してその事業許可が取り消された件も、最近のインドネシアの法律状況を物語るものです。

閉鎖された銀行の中に、スハルト大統領の次男（バンバン、ビマンタラ財閥総裁）が筆頭株主であるアンドロメダ銀行が含まれていましたが（それを含めて、１６行中３行が部分的又は完全に大統領親族の所有だった）、当初からバンバンは、この許可取消し決定に対し不満を表明し、今日の報道によれば大蔵大臣及び中央銀行総裁を相手取り、行政裁判所に訴えました。

もちろんこのことは、インドネシアにおける大統領家族を中心とした経済構造の中で、行政決定に対する一種の法外的圧力手段であることも割り引く必要がありますが、それでも、今まで常に法を無視し、地位を乱用していた大統領の家族でさえ、裁判という手段を使うと言うことはかなり画期的なことではないでしょうか。

今回の銀行の許可取消しは、政府による一方的な行政決定であり、今後かなりの問題を生じる可能性はありますが、結果的には為替相場などを見ても、賢明な判断だったとのではと思います。（日本のように手遅れになるよりは）ただ、市民レベルでは、紙屑になった決済手形をもって途方に暮れている中小自営業の人たちには、気の毒でしかたありませんが。今後されに５０行の閉鎖もあるという噂もあります。

未確認情報ですが、大統領の長男の息子が、麻薬取引に関わるいざこざでマフィアに殺されたそうです。インターネット情報です。インドネシアでは一切報道されていません。情報があれば教えてください。

相変わらず、暑いインドネシアですが、デパートでは気の早いことに、クリスマスの飾り付けが始まりました。真夏の気温の中で見るクリスマス・ツリーというのは、わかっていてもかなり奇妙なものです。

それでは、

送信日時：1997年11月4日11：04

件名：新聞記者殺害事件の裁判について

以前から、お伝えしてきたジョグジャカルタ・BERNAS紙新聞記者の殺害事件について、今日公判がありました。ニュースを見る限りでは、被告人Iwikは証拠不十分で無罪、

あるいは、検察側が起訴を取り下げたことにより釈放です。（この辺ちょっと聞き取り

に自信がなくてどっちだか良く判りません、いずれにしても釈放されました。）

この釈放は十分予想されていたことですが、本来もっとも重要である真犯人の究明については悲観的であると言わざる得ないでしょう。ただ、少なくとも警察による謀略的な冤罪事件についてだけは、これで防げたことになりました。

明日新聞を読んでみないと何ともいえませんが、検察が控訴する可能性もあります。

（もちろん起訴取消しならば、それまでですが）今回の裁判は、言論に対するテロについて、あくまで真実を追及するべきであるという、それこそインドネシアの全てのメディア、学生、NGO、一般市民の積極的な態度が、事件が闇から闇へ葬られることを防いだ、ということはインドネシアの今までの政治的事件の中では見られなかったことです。（特に各新聞による積極的な報道、テレビによる裁判中継は画期的でした）1992年の雑誌発行禁止に関わる裁判以降、この種の事件について裁判を舞台にして積極的に議論される傾向は強くなってきていますが、今回のはその最たるものでしょう。これは、民主化への意識が広まってきたこと、また、1980年代後半から1992年までの言論開放政策が、メディア・市民の意識の中ではまだ続いていたことを示すのではと思えます。

送信日時: 1997年10月29日水曜日 1:05

最近のニュースから

最近インドネシアでずっと問題になっているニュースで、サウジアラビアでメイドとして働いていたインドネシア人女性に対して、殺人罪で死刑が宣告された事件があります。

死刑を宣告されている女性は名前はNasirohといい、彼女の雇い主を殺害した罪により死刑を宣告されています。先月にも一人のインドネシア人女性がやはりその雇い主を殺害した罪で死刑が執行されていて（このときには死刑が執行された後はじめてインドネシアに対して知らされた）、インドネシア国内では立て続けの死刑判決に対して、彼女へ減刑嘆願のための抗議運動、対応の遅い政府への批判が噴出しています。これは、かつてフィリピン女性がやはり雇い主に対する殺人で、アラブ首長国連邦で死刑判決を受けたさいに、フィリピン政府がアラブ首長国連邦に対して強く抗議し、死刑判決を撤回させた事例があり、それと比較して、海外出稼ぎ労働者に対して保護の薄いインドネシア政府に対して、国民の不満が噴出した形になっています。

インドネシアでは、宗教的に障害の少ない中東産油国に、男性は建設労働者、女性はメイドとして多数のインドネシア人が出稼ぎにいっています。しかし、海外労働について専門の省庁を持ち、比較的保護の厚いフィリピンに比較して、インドネシアでは民間ベースによる労働力輸出であり、彼らについての法的な保護も事実上ありません。また、インドネシアもサウジアラビアも「移民労働者の権利に関する条約」にも加入しておらず、国際法上の保護もありません。

インドネシア国内では、最大の人権NGOの法律扶助協会が政府に対して、サウジアラビア政府に対して死刑判決を撤回するように要求するよう求める一方で、在インドネシアサウジアラビア大使館に抗議行動を行い、また国家人権委員会も死刑判決を受けた女性の家族からの要請を受けて調査を開始しています。インドネシアでは、この女性は雇い主から性的虐待を受けていたと報じられています。

インドネシア政府は、今回の件では、これらの圧力を受けてかなり強硬な態度にでていて、サウジアラビアからインドネシア人出稼ぎ労働者の政府が費用を負担しての一斉帰国、さらにそれらの帰国者達を労働大臣が空港に出迎え、「あなたたちは国家の英雄である」と述べたりしています。労働大臣は今回の一斉帰国をサウジアラビアに対する「ショック療法」（10月28日のテレビニュース）であると表現しています。

いずれにしても、今回の問題は社会の多数を占める一般大衆の感情に大きく関わるものであり、また来年の大統領再選を控えていて、政府の威信低下に伴う治安の悪化に警戒しなければならず、さらにフィリピン政府がこの問題では強硬な態度で成功していること、及びわずか１カ月ほどのあいだに二件の死刑判決があったことなどで、インドネシア政府は対内的にも、対外的にも強硬な態度をとらざるえなくなっています。

いまのところ、サウジアラビア政府の対応がはっきりと報道されていません。日本で何か情報があれば教えてください。

追伸：

ジャカルタでは、毎年JakJAZZというジャズコンサートが５日間に渡り開かれ、５万人くらいの観客を集めているのですが、今年は例の通貨危機で外国のアーティストを招くお金が足りなくなってしまって、インドネシアの代表的歌謡のダンドゥット・バンドが出演するそうです。このダンドゥットという音楽は確かにノリが良く、インドネシア人の多くもこれで踊るのが大好きなのですが（選挙を含むイベントの人集めにはダンドゥットが欠かせないし、乾期になるとあちこちの村でどさ回りのダンドゥット・バンドのコンサートが開かれて夜更けまで大騒ぎです）、何となく田舎もんの音楽というイメージがあり、JakJAZZに来るようなジャカルタっ子にはどうなんだろうと思ってしまいます。言ってみれば、Mt.Fujiジャズフェスティバルに、演歌歌手が出演するようなものですから。こう考えると、通貨危機はかなり深刻です。

送信日時: 1997年10月27日月曜日15:41

件名: インドネシアの新聞から2

前略

おそらく、イシリオのお兄さんも以下の事件への関わりで逮捕されたのだと思います。

下の記事でも判るように、インドネシアではベロ司教が比較的評価されているのに対し

て、ラモス・ホルタ氏についてはテロ集団のリーダー以上には見られていないようです

。もちろん、非政府団体の中には東ティモール問題に関心を持っている人が多くいるので

すが、新聞報道の影響で一般インドネシア人は東ティモールの運動に対しては非常に

批判的だと思えます。ただし、数年前Jakarta-Jakartaという週刊誌が長編の東ティモール

と追悼集会での虐殺事件（名前を忘れた）についての特集を組んで話題になったことが

あります。

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Jakarta Post1997年10月22日

「インドネシア国軍、テロへの関わりについてラモス・ホルタを非難する」

ジャカルタ：国軍スポークスマンのA. Wahab Mokodongan准将は昨日、東ティモール分離運動の指導者であり、ノーベル賞受賞者であるラモス・ホルタを国内における最近のテロ活動への関与で非難した。中央ジャカルタ、ムルデカ・バラットにある国軍本部で記者に対して、Wahabは、ホルタは彼の仲間を通じてこれらの活動に従事するテロリストグループに間接的に関与していると述べた。

Wahabは9月13日の中央ジャワの敬虔なイスラム教徒の町Demakで起きた手製爆弾の爆発に言及した。

「Demakでの爆発は東チモール分離運動のグループであるティモール社会主義者連盟(Assoc iacio Socialista de Timor, AST)の特別軍事部門であるテロ集団Brigada Nagraのメンバーによるものである。」と彼は説明した。

Wahabは1994年以来ホルタは、AST事務局長Avelino Maria Coelho Da Silva（通称Shalar Kossi）と東ティモール及びその他の地域での可能な転覆活動に関して集中的に接触してきた、と主張している。彼は、ホルタに関係する証拠について逮捕された二人のASTのメンバーからの証言で得られたと述べた。手製爆弾は、三人の東ティモール人、Nuno Vicente Pereira Sadanha、35歳、Joano Bosco Carceres、19歳、Lurindo Albino da Costa、22歳が住んでいたDemakのPlamongan Inda h住宅地にある家で爆発した。このことは、その爆発が事故であることを示唆している。Carceresは当時ただ一人家にいて、その後、姿をくらましている。彼とda Costaの所在については不明である。

SadanhaとKossiは、9月19日以来インドネシアのオーストリア大使館でポルトガルへの亡命を求めている6人の東ティモール人の中に含まれていると思われる。Wahabは、国軍はオーストリア大使館に対し尋問のために彼らを引き渡すように求めていると語った。このテロ活動についてさらにWahabは次のように語っている。「Shalar Kossiは今年3月2 5日に、Brigada Nagraとして知られるテロ活動のための特別軍事部門を設立した。このグループは国内に不安定状況を作ることを目的として、インドネシア各地でテロ、サボタージュ及び殺人を行ってきている」Wahabによれば、Shalar Kossiはそのグループの活動のために、中部ジャワ・スマランのJl. Mahaesa Timur II No. 438に家を借りた。

「Shalar Kossiは東ティモール人に爆弾の製作を訓練するために今年5月、Geofreyとだけ特定されているオーストラリア人の教官を雇った」と彼は語った。「Shalar Kossiの命令により、活動家のConstancio Costa Dos Santos (Aquito)が9月6日、爆弾20個、M-16ライフル用弾丸44発、コルト拳銃用弾丸21発、FN拳銃用弾丸1発及び多くの機密書類を持って船でディリに渡った」とWahabは語った。

Aquitoと仲間の東ティモール人Paulo Jorge Periraは9月15日ディリで爆発物と弾薬を運ん

でいるところを逮捕された。

この二人の証言が、ホルタのテロ活動への関与の証拠を提供している。

それとは別に、ホルタとディリのベロ司教(Dili Bishop Carlos Filipe Ximenes Belo)

を含む34人の参加者は月曜日、オーストリアのKrumbach宮殿での4日間の会談を開始した

。

この東ティモールの統合派と分離派との会談は、相違を調停し、東ティモール問題の解決のための良好な雰囲気を作ることを狙っている。しかし、国連が主催するこの会談は、インドネシア政府とポルトガル政府の専権事項となっている政治的解決については触れない。

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送信日時: 1997年10月27日月曜日15:40

件名: インドネシアの新聞から

以前にお伝えした新聞記者殺害事件に関わる裁判について、次のような報道がありまし

た。これは英字新聞からの翻訳ですが、インドネシア語紙においても記事の内容はほと

んど同じでした。インドネシアの人権状況の参考としてお読みください。

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Jakarta Post 1997年10月21日

「イウィックがウディンの殺人について警察に強制されたと証言」

ジョグジャカルタ：

イウィックは昨日バウトゥル地方裁判所で、警察が彼に去年八月にジャーナリストのファウド　Ｍ.シャフルディン（ウディン）を殺害したことを認めるよう強制したと語った。昨日イウィックは彼の以前の供述を撤回し、彼はそのジャーナリストには会ったこともないと証言した。そして、彼はエディ・ウリヤント(Edy Wuryanto)特務曹長を、彼を殺人者に仕立て上げたシナリオを準備した者であると確認した。「私は（ジャーナリストの）ウディンの殺害を認めるよう強制された。もし拒否した場合、拷問にかけられ殺されると言われた。」とイウィックは語っている。イウィックはまた、彼が殺人を認めるよう強制された理由は、バントゥル監のスリ・ロソ・スダルモ(Sri Roso Soedarmo)を守るためであったとも語った。エンダン・スリ・ムルワティ(Endang Sri Murwati)が裁判長を務め、国家人権委員会からクスパルモノ・イルサン(Koesparmono Irsan)及びジョコ・スギアルト(Djoko Soegiar to)の二人の委員が出席している法廷で、イウィックは、エディ（当時はフランキーという名前を使っていた）がイウィックに対し、警察に撃ち殺されるよりも殺人を認めた方が良いと語ったと述べた。エディ（フランキー）は、記者が殺害されてから一ヶ月後の9月15日に初めてイウィックに近づいた。1996年10月20日、エディはイウィックにパラントゥリティス・ビーチ・リゾート（ジョグジャの南にある海岸）に一緒についてくるように強制し、強引にアルコ―ルを飲ませ、売春婦と一緒に部屋に押し込んだ。エディは、もしイウィックがウディンの殺害について認めたら、金と良い職、保護を提供すると提案した。証言によると、エディはまた、イウィックがウディンを殺害していたときに着ていたと認めなければならなかった服をイウィックに与えた。イウィックはまた、彼に富と保護を約束するという三人の「ボス」に会いに連れて行かれた。「あとで、私は二番目のボスがアデ・スバルダン(Ade Subardan)中佐（去年のバントゥル警察分署署長）であることに気づいた」とイウィックは証言している。。恐怖と混乱で、イウィックはジョグジャカルタ警察署署長ムリヨノ・スレマン(Moelyono Soelaeman)大佐に、殺害を認めた。

「その上、私が拘留されている間、エディ特務曹長は常に私を脅迫し、もし私が自白を撤回したら、私を殺して爪を剥いでやると語った」とイウィックは証言している。イウィックによれば、警察の捜査官は彼に弁護士を依頼する権利があることを伝えていなかった。裁判官団はアムリン・ナイム主任検事に対して求刑を準備するための期間として二週間を与えた。法廷は11月3日に再開される。ウディンとして良く知られているその記者は、バントゥルにある彼の自宅で8月13日に未確認の個人又は集団により襲われた。バントゥル地区の政策に対する批判的な報道で知られていたウディンは、その三日後に死亡した。この事件の主な証人であるウディンの妻のマルシエム(Marsiyem)はイウィックはウディンを殺していないと証言してきていた。当初から、この事件に関する捜査は規則違反ばかりであった。たとえば、ある時には、エディ・ウリヤントが出廷したとき、証拠の一部、つまりウディンの血液サンプルを改竄していたことが明らかになった。

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送信日時: 1997年10月20日月曜日 4:15

件名: インドネシアの人権状況

（報告の前にしげちゃん宛てのメール）

とりあえず、少しだけ書きました。まだ幾つも書きたいことがあり、とても長くなりそ

うなので、分けて書くことにします。とりあえず、総選挙がらみのことから。

悪いことしか書いていませんが、本当はインドネシアはとても良い国です。確かに暴動

は多いですが、別にそれで全土が殺伐とした雰囲気になっているわけではありません。

選挙運動にしても、暴動一歩手前みたいな騒ぎを、村のおばあちゃんが朝から交差点に

陣取って、孫を連れてお弁当を食べながら眺めているとか、みんなお祭りみたいにこの

騒ぎを楽しんでいるのもまた一つの光景でした。また、非政府組織のメンバーもあくま

で明るく、楽しくやっています。決して武器をもってどうこうと言うのが普通なのでは

ありません。本当に、良いことのほうがよっぽど多い国です。（その辺はタケちゃんあて

のメール参照と言うことにしましょう。まとめて書くと長くてしょうがない、まあ、そ

のときの気分でころころ変わるでしょうが）

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インドネシアの人権状況

民主党関係（７月２７日事件）：

スカルノ前大統領の長女メガワティと彼女が党首を努めるインドネシア民主党の人気を好まない政府はきたるべき総選挙のための予防的措置として、メガワティ党首の追い落としを画策、スリヤディ前党首を傀儡に仕立て、メダンで臨時党大会を開き強引にメガワティ党首の解任と、スリヤディ新党首の就任を宣言。すかさず、政府はメダン党大会とその決議を正式なものとして承認した。メガワティとその支持者は、抗議行動及び裁判闘争にでるが、政府は次の総選挙においてメガワティ派からの候補者名簿を受け付けないことを宣言し、メガワティの政界追放を決定。このような状況下、メガワティ支持者はジャカルタ・ディポネゴロ通り（高級住宅地メンテン地区に面し、多くの在外公館がある）にある民主党本部にたてこもっていたが、１９９６年７月２７日未明、警察隊の支援を得たスリヤディ支持者が党本部の奪回を開始、激しい投石、発砲、ガス弾が使用され、死者十数人、行方不明者百人以上と言う１９８４年(?)反日暴動以来のジャカルタ市内最大の暴動となる。党本部での暴動は、近辺のスネン地区、スディルマン通り、サレンバ地区に波及し、多くの商店、銀行、自動車販売店、政府ビルが放火略奪にあった。この騒ぎについては、スリヤディ派は本部奪回のための暴力要員として多数の人間を雇ったとされ、後にこの雇われた者達がスリヤディに対して謝礼の支払いを求める騒ぎもあった。また、暴動には政府国軍による謀略の影が見られ、多くの焼き打ちが偶発的と言うよりも計画的だったと言う証言もある。この事件に対して国家人権委員会が調査団を派遣し、当初警察の発表した犠牲者・行方不明者の数が少なすぎるとして、独自の調査結果を発表、この調査で人権委員会が単なる政府の飾りものでないことを認識させ、一方、大統領を含め政府高官が人権委員会に対して自重を求めると言う騒動になった。もっとも、このあと人権委員会の活動が消極的になったと言う指摘もある。いずれにしても、政府はこの暴動のスケープゴートとして、ごく小規模の民主化運動団体民主人民党を黒幕として摘発、党首であるブディマン・スジャトミコ氏をはじめ、メンバーを次々と逮捕、転覆活動罪（最高死刑）で起訴した。結果、スジャトミコ氏が懲役１３年となるなど重罰が課せられた。しかし、民主人民党自体はほとんど存在が知られていない、ごく小規模の組織であり、むしろ学生運動の延長程度の組織であり、あの大規模な暴動を扇動したと言うのは、どう考えてみても無理がある。ちなみに、同事件一周年の今年７月２７日、政府は民主党本部前での献花等の追悼行動を禁止、逮捕者がでた、また同日、現場から近いプラザ・インドネシア（そごう百貨店、グランド・ハイアットホテルが入る、大統領の息子の所有）でぼや騒ぎがあったが、詳細は不明。政府は、民主人民党を含む、幾つかの非政府団体について、社会団体法を適用し解散させることを決定、まず同党が非合法化された。また、社会学者のアリフ・ブディマン、労働組合活動家のモフタル・パクパハン、国会議員スリビンタン・パムンガス、雑誌編集者・詩人のグナワン・ムハマド等を共産主義者であると攻撃している。メガワティ派は、幾つかの訴訟において地裁レベルで勝訴判決を得ている。

総選挙関係

選挙運動では、公式の選挙キャンペーン期間が始まる前に、ゲリラ的にメガワティ派のキャンペーンが見られたが、前述の事件との関係でメガワティ派が完全に選挙運動から締め出された。実際の選挙においては、多くの民主党支持者がイスラム系政党の開発民主党に合流したと見られ、同党の選挙キャンペーンは随所で史上最高の盛り上がりを見せた。一方与党ゴルカルの支持者との暴力的な衝突もあちこちでおこり、ジョグジャでは、開発統一党が抗議のために選挙運動を一時停止した。また、民主党への政府の介入を含む、不公正な選挙運営に抗議して、棄権・白票投票を呼びかける運動は選挙を妨害するものとして禁止され、ジョグジャのガジャマダ大学などの集会で学生の逮捕者がでた。また、開発統一党の支持者がメガワティ派との共闘を呼びかけた「メガ・ビンタン」運動は（メガは、メガワティを意味し、ビンタンはインドネシア語で星であり、開発統一党のシンボル）選挙への参加を認められていない人物を巻き込むと言うことで、途中で禁止され、赤地（民主党の色）に星マークなど、それを示唆するマーク、標語の仕様が禁止された。多くの場所で、一時拘留、没収などが行われた。選挙運動は、インドネシア全土で暴動の様相を呈し、新聞などでは史上もっとも暴力的な選挙と呼ばれた。特に、スラベシ島のウジュンパンダンで起きた暴動は、暴徒が略奪目的でデパートに侵入、放火が起き、500人以上が死亡する惨事となった。この事件に関しては、死亡者が皆略奪目的だったとはじめ発表されたが、遺族の抗議があり、人権委員会が調査、一般の買い物客も逃げ遅れて死亡していたとして、犠牲者に対して一定の名誉回復がなされた。この暴動状態によって、選挙キャンペーン最終日には、開発統一党がキャンペーンを行うジャワ島では、少なくとも長距離バスは全面運休となった。（バス停に行ったら今日は走らないと言われた）ジャカルタ市内でも、オティスタ通り、ワルンブンチット通り、タナアバン地区など、比較的豊かでない地区を中心に商店、自動車の焼き打ち、警察との衝突などが頻発したし、支持者同士の小競り合いはほとんど日常の風景だった。投票日当日には、ジャカルタ市内は平日にもかかわらず、不気味なくらいの静けさで、ほとんどの商店、企業が自主的に営業を停止していた。特に大規模な暴動はジャカルタ市内では伝えられなかったが、華人の多く住むコタ地区の国営銀行のビルで火災が発生、全焼した。また、地方で開票作業の不公正に起こった民衆が投票箱に放火、投票がやり直されると言う事態も発生した。一方、知識人・学生を中心に選挙前から、政府とは別に公正な選挙を監視しようと言う運動が展開され、各地で独立選挙監視委員会が作られた、政府は当初はこの委員会に開票所への立ち入りを認めるともしていたが、結局独立選挙監視委員会自体を禁止、地方の裁判所では、この委員会に参加した裁判官に対し辞職が求められるなど、弾圧が行われた。最終的にこれらの委員会がどの程度活動できたかは、選挙中、選挙後とも全く報道されていない。選挙期間中に頻発した暴動状態は、選挙終了後も全く収まる気配がなく、地方を中心にほとんど毎日どこかで暴動が起きている状態である。先日、カリマンタン島バンジャルマシンでかなり大規模な暴動が起きた。ほとんどの暴動は新聞で報道されていない。

送信日時: 1997年10月16日木曜日 12:12

インドネシアから

（しげちゃんからのホームページ記載の依頼と神戸の事件を少し説明したことに答えて）

構いませんよ。ただ、結構記憶に頼って書いているところがあるので、今度からちゃんと新聞を横において正確に書くようにしなくてはいけませんね。別に、匿名である必要もないと思います。

神戸の事件については、こっちでも日本の新聞を読むことが出来るので、知っていまし

た。ただ、多分日本の新聞では見逃したのかも知れませんが、インドネシアの新聞には

、被害者の子どもが、知的障害を持っていたことについても言及していました。

いずれにしても、こっちの新聞でも結構大きな記事になっていました。（一面と言うわ

けにはいきませんが）。新聞では、日本の教育制度の弊害だろうという分析がありまし

た。それにしても、こういうときにいつでも起こる、少年法改正の動きとか、人権主義(

?)の弊害だとかいうのも、やっぱりあったのでしょう。新聞の雑誌広告などで、そのよ

うな特集があるのを見ました。

本来、少年法の役割は、子どもに対してはあくまで更生の可能性を捨てないと言う趣旨

だと思います。それは、このような、かなり異常な事件の場合でも同じだと思います。

それに、死刑存続論と同じで、厳罰主義が必ずしも犯罪の現象につながるかも疑問です

。

送信日時: 1997年10月15日水曜日 17:20

インドネシアから

最近、インドネシアで話題になっている事件で、新聞記者の殺人事件があります。この

事件は色々な面で奇妙な事件で、毎日必ず新聞のどこかに顔を出します。

ことの発端は、もう一年以上前になりますが、インドネシア・ジョグジャのBernasと言

う地方紙の記者が深夜に彼の家に来た何者かによって刺殺された事件です。

彼は（ウディン、と言う名前ですが）殺される直前まで、ジョグジャ近郊のパラントゥ

リティス海岸と言う場所の観光開発を巡る汚職について報道してきました。この海岸は

ジャワ王室にとって非常に神聖な場所であり、この汚職の話を知ったジョグジャの王様

が怒って、結局開発を中止させたことで、彼はあちこちから恨みを買っていたそうです

。

彼が殺されたことは、すぐに彼の報道に関わるものとして報じられましたが、警察が逮

捕したのは、イウィックという人であり、彼の奥さんが、ウディンと浮気をしていて、

それに怒ったイウィックが殺した。と言う筋書でした。

しかし、この警察発表を信じる人はだれもいなくて、すぐにウディンの同僚達が、Berna

s紙上で、真実追及のためのキャンペーンを始めました。もちろん誰もが、真犯人は権力

と結びついた、つまりこの開発プロジェクトに関わっていたものであると信じています

。しかし、結果としては、政府から圧力がかかり、ウディンに関する記事は当面の間掲

載できなくなり、事実究明に熱心だった若手の記者たちは、地方に配転させられてしま

いました。（この辺は、もちろん新聞報道ではなく、当の新聞の記者から聞いた話です

が）

イウィックが犯人であると言う説には、被害者の家族も信用しておらず、ある民放局で

、被害者の妻と、容疑者の妻に対する別々のインタビューの中で、被害者の妻が容疑者

の妻を慰める言う番組が放映され話題になりました。

このように、この事件は、一つは新聞記者に対するテロ行為と、もう一つは、何者かに

よる真実の隠蔽と、犯人でっちあげによる、冤罪事件と言う二つの側面を持つ事件とな

りました。日本では信じられないかも知れませんが、容疑者イウィックの初公判（罪状

認否、起訴上朗読等）は全国放送（民放）で全てが生中継されました。

現在のところ、警察側に有利な証拠はほとんど出ておらず、容疑者のアリバイを含めて

、殆どが容疑者の冤罪を示唆するものばかりですが、裁判はあまり迅速には進んでいな

いようです。特に問題は、警察側の公判の引き伸ばし策、それと証人となる警官の証人

尋問が進まないことにあるようです。警察側は徹底して裁判所不協力の態度をとってい

ます。この間の新聞では、裁判所は警官に対し裁判所侮辱罪を適用するべきだという論

説もありました。

現在のところは、まだ判決が出ていません。最近では、モクタル・パクパハン（非公認

労組の指導者で、メダンで起きた反華僑暴動の責任を問われた）の事件、及びマルシナ

（繊維工場のストライキの指導者）殺害事件の犯人、について、最高裁で無罪判決がで

るなどしているので（但しパクパハン氏は、その後検察からの再審請求で、逆転有罪の

判決をうけている）、今回も無罪判決が出る可能性はそう低くはないと思います。但し

、そのあとに真犯人が捕まるかどうかは、まあ無理でしょう。

この事件以外にも、ここ１年、ウジュンパンダンとポンティアナでやはり汚職を追って

いた新聞記者がひき逃げなどで死亡しています。

来年には、スハルト６選を決める国民協議会が三月に、そしてその前には、何かと問題

が起きやすい断食月が待っています。（今年は１月１日から?カ月だそうです）だから

、その前の年末に、治安強化が行われ、また何人か逮捕者がでそうだという噂が流れて

います。（まあ、噂ですけど）

こんなところです。日本語が使えてうれしいので沢山書いてしまいました。

送信日時: 1997年10月13日月曜日 16:26

メッセージありがとうございました。イジリオのおにいさんの件については、こっちの奴らとも相談して、何かできることがあるかどうか、考えてみます。

人権委員会は、かなり働いています。何せ、委員会で、政府に一番うるさがられているのは、元軍人です。ブディマン（教授）という人に言わせると、みんな、人権委員会の空気に影響されて、民主的になるのだそうです。

バジャイについては、昔から結構有名で、海の上に集落を作り暮らしています。スール―海と言うフィリピンとインドネシアの間の浅瀬の広がる海で暮らしています。みんな、小舟にのってどこまでもいってしまうそうです。よく、沖縄の糸満の漁師と比較されています。彼らもすごい行動力の持ち主です。

まあ、これくらいにしておきます。

（しげちゃん補足）イシリオというのは名古屋にいた東ティモール人で我々わやメンバーも良く知っている。現在ポルトガル在住。そのお兄さんが逮捕された事件。

　

送信日時: 1997年10月11日土曜日 1:46

こんにちは、

このたび、インドネシア渡航８カ月目にして、ようやく日本語メール環境を作りました。

といっても、今までのコンピュータに何かしたというわけではなく、この間一時帰国のときに買った、モバイルギアと、値段は高いけど世界中にアクセスポイントのあるIBMネットに加入するという、一番お手軽な方法に頼ったわけですが。

まあ、とにかくそういう訳で、メールアドレスも新しくなりました。

今後、日本語で書けることで、ややこしい、インドネシアの人権問題についても詳しく報告できることと望んでいます。ただし、あと４カ月足らずの上に無精者ですから、わかりませんけど。

ちなみに今日の新聞によれば、来年のインドネシア国民協議会（憲法上、国権の最高機関、大統領の任命と五か年計画の策定をする）で、インドネシア人権憲章を採択するかどうかで、今の憲法で十分と消極的な、与党ゴルカルに対して、内外各方面から積極的になるべきだという声が上がっていて、そのための調査チームが設置されたということです。最も、人権憲章が出来てどうなるのかという気もしますが、これは国家人権委員会が出来たときも同じ気分でしたが、これがなかなか、国軍や警察出身者が目立つ委員会ですが、大統領が怒り出すほどに人権問題に対して積極的に調査を行っていて、みんな驚いています。まあ、そういうことですから、少しは期待しましょう。あと、他には、インドネシアにすむ海洋民（漂海民とも言われる）バジャウ人の漁師が、オーストラリア領海に対して、白人が来る前からそこは彼らの漁場であったことを認めさせ、アボリジニーと同じような「固有の権利」(indigenous rights)をオーストラリア政府に認めさせ、今後伝統的な漁法により、自由にその海域で漁ができるようになった、というニュースがありました。

長くなりました。すみません。まあ、今後思いついたことがあったら、またお知らせします。

わやグループホームページへのLinkはこちらへ

わやのメンバーのたけちゃんが管理するホームページ、わや通信、わやタイム（わやの活動）、難民問題ホームページ、アムネスティの他のグループへのリンクはこちら

なんか大変そう！英語を使ったりして難しそう！

と思う方もいるでしょう。確かに緊急を要すること、例えば難民の申請などは高度な知識が必要です。人の命に関わることですから、いいかげんには出来ません。しかしはじめから難しいことは出来るはずはなく、少しずつ知識を得ながら出来ることからやっていけば良いと思います。確かに英語を使う機会も多いのですが、英語が出来ない人(実は私もそう）は他のメンバーが用意した手紙にサインするだけでも参加できます。日本語だけで出来ることも数多くあります。

責任はあるの？

ボランティアだからと言って責任がないとはいえません。引き受けたことは責任を持ってやってもらわないといけないと思います。自発的にやっていることですから、やらなきゃとかイベントに行かなきゃというような必要以上の義務感はあまり持たなくても良いと思います。あなたに出来ることからすれば良いと思います。私たちが平和に暮らしていけることに感謝しつつ、少しだけ恩返しするためにアムネスティー・インターナショナルの活動に参加して下さい。

アムネスティ・インターナショナルの（マンデイト）責務

アムネスティは、深刻な人権侵害を食い止めるために、活動しています。

暴力を用いてもいないのに、自分の信念や信仰、人種、言語、性などを理由に囚われている人びと「良心の囚人」の即時釈放を求めます。
軍や警察などによる、政治的な目的・背景を持った殺害(超法規的処刑)、軍や警察などの手によって人びとが連れ去られ「失踪」させられることの根絶を求めます。
すべての政治囚に対する公正ですみやかな裁判、その他の刑事手続きが正しく行われることを求めます。
すべての拷問や死刑の廃止を求めます。

未来に向けて

アムネスティ・インターナショナルは、人権について考え、人権を大切にする心を広く世界に呼びかけます。地球市民としての人権意識を創りあげていく努力。遠回りのようでも、これこそが人権侵害を未然に防止することにつながると確信しています。

「死刑廃止フォーラムinなごや」

「死刑廃止フォーラムinなごや」は名古屋で死刑廃止を求める人たちが集まって活動をしています。

ＮＥＷ！

死刑廃止フォーラムinなごや

ニュースレター第5号

1998年1月発行

（1998年4月4日更新）

－しげちゃんから－

これは1998年1月に「死刑廃止フォーラムinなごや」が発行したニュースレターを転載したものです。ご本人に迷惑が掛からないようにイニシャルにしました。文中の実名も一部を除きイニシャルにしました。同じイニシャルになる方は区別のために立場を補記しました。

「犯罪被害者支援組織」を考えませんか？

M.H．(学者)

死刑廃止と被害者支援　最近、死刑廃止運動関係者の間で犯罪被害者支援について話されることが多くなってきました。東京では、この夏、「フォーラム’９０」の関係者を中心に「東京犯罪被害者支援センター」が設立され、活動を開始しています。　死刑廃止を主張すると必ず出てくるのが、「被害者感情」の問題です。存置論者は、「死刑で被害者（遺族）が救われる」と言います。しかし、死刑は遺族の本当の救済にはなりません。死刑は、加害者の処刑を問題の解決とすることで、逆に遺族の救済を放置するものです。被害者・遺族の救済は、物心両面からの被害者救済制度を充実させて、真の精神的・物質的な救済をはかるべきものです。

　とはいえ、被害者救済システムは、まだ弱体です。我々も、被害者の立場にも思いを寄せ、この問題を真剣に考えるべき時期にきているのではないでしょうか。

被害者支援の現状

　日本の犯罪被害者支援システムは、かなり立ち後れています。１９８０年に三菱重工ビル爆破事件を契機に「犯罪被害者等給付金支給法」が制定され、一定の場合に殺人・重傷害の被害者・遺族に国から給付金が支給されるようになりましたが、その後は大きな動きはありませんでした。しかし、最近、地下鉄サリン事件を契機に被害者支援システムの必要性が強く認識されるようになり、いくつかの新しい動きが出てきました。

　一つは、警察・法務省サイドの動きです。警察庁は、昨年２月に「被害者対策要綱」を策定し、被害者支援を進めています。今年２月には、全国で、捜査状況、被検挙者の氏名、起訴・不起訴等の処分結果、起訴した裁判所等を被害者に通知する「被害者連絡制度」が始まりました。また、愛知県警も、女性警官を性犯罪対策捜査員に指定して女性被害者からの事情聴取にあたらせる、警察官が被害者宅を訪問する、被害者の精神的な悩みに対する臨床心理士による相談窓口・電話（「ハートフルライン」）を開設する、犯罪被害少年のケアのために教師・民生委員・元補導員等をボランティアに委嘱して「被害少年サポーター制度」を作るなどの対応を始めました。法務省も、被疑者の資産の早期没収、刑事裁判資料の民事裁判への早期利用等を可能にする法改正の検討を進めています。

　もう一つは、民間レベルでの被害者支援の動きです。最初の被害者支援組織は１９９２年に東京医科歯科大学に開設された「犯罪被害者相談室」ですが、その後、水戸・大阪・東京・金沢・札幌・和歌山・広島などの各地に、被害者のカウンセリングなどを行なう市民ボランティア組織が作られています。

　国際的には、１９８５年の国連犯罪防止会議で「被害者の人権宣言」が採択され、多くの国で被害者の人権保護のための制度作り、法改正などが進められています。イギリスの「全国被害者支援協会」、ドイツの「白い環」、アメリカの「全米被害者支援機構（ＮＯＶＡ）」のような、被害者支援のための全国ネットワークが作られている国も少なくありません。これらの被害者支援先進国と比べると、日本の現状はかなり立ち後れています。

犯罪被害者支援の課題

　被害者支援を考える場合には、被害者の置かれた状況とニーズを正確に把握した上で、何がなされるべきかが検討される必要があります。この点については、調査などに基づいて、次のようなことが指摘されています。

　一つは、被害者が十分な損害補償が受けられるようにする必要があるということです。犯罪の被害は、原則として、加害者からの損害賠償で補填を受けることになります。しかし、加害者との賠償交渉や訴訟は容易なことではありませんし、加害者が無一文の場合も少なくありません。被害者を経済的に支援するため、刑事手続への「被害賠償命令」「被害者・加害者和解プログラム」の導入や、給付金制度の充実が課題になります。

　もう一つは、被害者が事件の捜査・裁判の「蚊帳の外」に置かれている現状を改める必要があるということです。現在の刑事手続では、被害者は、証人・参考人等として手続に関わるだけで、固有の法的地位は与えられていません。そのため、捜査の状況、裁判の期日、判決内容等を知らされる権利や、法廷で発言する権利も与えられていません。そこで、被害者に手続に関する情報を伝えること、被害者の感情と関心が司法手続に反映するようにすること等が課題になります。

　さらにもう一つは、被害者を精神的・物質的に直接支援する必要があるということです。殺人事件の遺族や傷害事件の被害者は、精神的に大きなダメージを受けます。それが原因でＰＴＳＤ（精神的外傷後ストレス障害）になる人もいます。また、事件に巻き込まれることで、被害者・家族は、生活に大きな影響を受け、様々な困難が生じてきます。そこで、被害者が精神的・生活上の困難を乗り越えることができるよう、直接的な支援をする必要があります。

被害者支援活動の内容

　国連の「被害者の人権宣言」は、「各国は、被害を減らし、困っている被害者に援助を与え、社会政策・保健衛生・教育・経済・防犯などの各種の政策を、多角的に推進し、場合によっては、国よりも民間で行なった方が効果的であることを考慮して、そのための環境を整備する」としています。「被害賠償命令」「和解プログラム」の導入や給付金制度の充実、刑事手続における被害者の地位の確立などは、基本的に国の仕事です。これに対して、被害者に対する直接的支援活動は、国や自治体で行なうべき部分もありますが、民間で行なうのが適当な部分も少なくありません。「お礼参り」からの保護、医療・住宅・教育等の福祉的サービスの提供などは警察や自治体の役割でしょうが、公的サービスに関する情報提供や請求の援助、賠償交渉の援助、刑事手続への対応の援助、各種の悩み事相談やカウンセリングなどは、基本的に民間で行なうのが望ましいことと思われます。被害者支援先進国では、これらの支援活動が、国・自治体・民間の密接な連携のもとに行なわれています。日本でも、そのような活動を徐々に広げていく必要があると思います。

　名古屋の場合、当面考えられるのは、電話相談でしょう。ただ、それをするにも、相当長時間の学習・研修が必要です。また、単なる情報提供や悩み事相談は一般のボランティアでも可能ですが、カウンセリングやＰＴＳＤの治療は、臨床心理士や精神科医でなければできません。電話相談だけでも、市民ボランティアのほかに、臨床心理士・精神科医・ソーシャルワーカー・法律家・宗教家等のボランティアを集める必要がありす。さらに、運営資金も集めなければなりません。どれも簡単なことではありませんが、名古屋地区にもこのようなシステムが必要ではないでしょうか。ノウ・ハウは、水戸・東京に提供してもらえます。この問題を、一緒に考えてみませんか？（1997年11月稿）

[追記]

その後、12月15日に、愛知県警本部で｢社団法人被害者サポートセンターあいち｣(仮称)の設立総会があったとの報道がありました。県警によれば、同センターは、民間レベルの被害者支援組織で、電話・面接相談が中心で、カウンセリング経験者がボランティアで対応するとのことです。1998年4月から事業開始とのことです。

マスコミが作る被害者像

Ｈ．Ｎ．

｢犯人が憎い｣「ぜひ極刑にしてほしい」――新聞やテレビのニュースなどでよく見る、聴く言葉だ。凶悪な事件が起きると、事件の容疑者が逮捕されると、そして裁判の判決があると必ずといっていいほど被害者、遺族の口から語られる、マスコミを通して。

「被害者感情」の問題については他で語られているので、ここではマスコミが作り上げる被害者像について思いつくままに書いてみたい。

何か事件が起きると、マスコミでは警察など当局への取材を始めるほか、必ず現場周辺へ人を出し、被害者、遺家族、親族関係者に直接あたって声を取ろうとする。発生直後からだ。被害者、遺族、関係者らが、「悲しみの底に沈んでいる」であろうからといって、しばらく時間をおこうなどとちゅうちょすることは、決してといって言いほどない。電話をかけ、直接訪問し、インターホーンを鳴らす。

そうして作られる記事、ニュースが、悲しむ被害者、関係者らが犯人を殺してやりたいほど憎んでいる、といった基調をはずれることはない。たとえ、被害者、関係者らが記者に何も語らなかったとしてもだ。押し掛ける記者を避けるために自宅の中に引きこもっていたとしても、無遠慮な報道陣におびえ灯りを消して身を固くしていたとしても、記事やニュースの上では、事件に対する悲しみにうちひしがれていることになる。被害者、関係者が押し黙れば悲しみに耐えていることになり、多くを語れば憎しみをぶつけていることにされる。マスコミが被害者としての役割を演じさせているようなものなのだ。

声を落とし、眉をひそめて被害者らから話を聞いた記者も、一たん記事を仕立て上げれば何事もなかったように、笑いに興じることができる。周辺取材で、被害者の不良な素行情報でも得ていれば悲惨なものだ。被害者、関係者らが、聞くことのできない新聞社、

テレビ局の中で、被害者の素行は格好の話のタネになる。時には嘲笑の対象になることもある。

最近、被害者に対してもマスコミの刃が向けられることが多くなった。つくば母子殺人事件や東電女性社員の殺人事件などはその顕著な例だ。｢弱く｣「はかなく」「真当な」被害像に合わない被害者らは、マスコミによって、プライバシーも何も丸ごとはぎ取られてしまう。神戸の小六殺人事件の被害者家族も、刃の犠牲になることを恐れてマスコミとの接触を避けていたが、これも悲しみで押し黙り引きこもっているかのように報道されていた。

死刑存置の世論をマスコミだけが作っているとまで言うつもりはない。だが、ステレオタイプの単純な被害者像、被害者感情を描き出して流布させ、センセーショナルに大報道することで、報復感情という世論を煽り、作り出すことに大きくマスコミが加担していることは間違いないと思う。マスコミにとって、被害者、被害者感情は単なる一情報、商品のための材料でしかない。にもかかわらず、その単なる商品によって世論を組織し、加害者という人間の命を奪う死刑制度の維持に力を割いているマスコミの責任は大きいのではないだろうか。

いっしょけんめいを活かし合えてこそ

Ｈ．Ｈ．

足りない力、動き甲斐のあるよすがを

私が映画『デットマン・ウォーキング』の原作者、シスター・プレジャンの来日を機に、大阪講演に関わっている事を知った『フォーラムinなごや』ニュースレター編集部からレポートを頼まれたのは大阪講演の前日だった。

木村修治さんの死刑執行があってから、昨年一年は、朗読劇『その日翔んだＳｈｕ』上演と、同時進行形でビデオ予約をお願いしていたことから、後半はビデオ製作に時を費やす、といった形で、『フォーラムinなごや』には疎遠になっていた。

７月５日に上演したビデオ撮りが、うまく収録されていなかったため、９月１６日『七ツ寺共同スタジオ』を借りて撮影しなおした。

が編集が遅れ、ダビングした時には約束の効果音が入っていず、苦心して映像化したスライドの絵も生かされていないという悲惨な仕上がりだった。

出来たばかりのビデオを持って、真宗大谷派の専修学院祭にかけつけた。

そこでは茶髪の学生もいて熱心に観てくれた。真摯な質疑応答もあったので、ビデオ

の出来栄えは不満であったが「これも生かせる道はある」との思いで全国に発送したのは年末も押し迫ってのことだった。

朗読劇が好評だっただけに、朗読劇を観に来て下さった方々には「全然別のものになってしまっている」と概して不評だった。

それでもあちこちでビデオ上映会をして下さって「大変衝撃的内容だった」「徹底して死刑囚側からの視点が新鮮だった」「無関係だった自分が恥かしい」「心を揺すぶられ通しだった」と言った言葉もいただいた。

また、本格的な映画に取組んだ経験を持つ作家からは、シナリオはよく出来ているがビ

デオは完全な失敗作であると指摘され、各プロット毎にていねいな分析までいただいた。

次回、取組む機会があるとしたら生かしたいと思っている。上演やビデオ購入に協力して下さった方々にこの場を借りてお礼を申し上げます。

今年に入ってからも私は『フォーラムinなごや』実行委に参加していない。

ニュースレター４号には、初めて死刑事件の容疑者に面会にいったI．O．さん

の素敵なレポートが掲載されている。

Ｔ．Ｔ．さんは昨年末、４０代の若き父を亡くされた。通夜の席で彼女は「私が一番最初に死刑存置論者だった人を廃止論者に口説き落したのが父だったのに・・・・」と、気丈に涙をこらえて話してくれたことは深く私の心に残っている。放っておいてはいけいないことは解っているが身体が言うことをきかない。無我夢中で動いている内、年を取りすぎていたという事もあるが、代弁ばかりしなければならない公の立場が、私の心身のバランスを崩してしまっていた。

死刑は廃止しなければならない、という立場がぐらついた訳ではない。

私が１５年間、見てきた事、動いてきた事の中で形象化しておかなければならない事は山程ある。現実に拮抗するもの、叩く扉を創り出す、足りない力が足りなさの中で動き甲斐のあるよすがを創る。そんな模索の時間が欲しくなった。

死刑事件が無期になった日

これも昨年末のことである。聖マルコ教会で５、６人でもいいから死刑執行された修治さんの一周忌の記念式をして貰おうと、電話予約はしていたが、１２月１６日、大高緑地事件の判決公判を、名古屋高裁へ傍聴に行く途中、念押しのため教会に立ち寄った。

改めてお願いし、裁判所へ向った。傍聴の列は長く抽選になったが幸い席につくことが出来た。判決は死刑から無期に、もう一人は１７年から１３年に減刑されるという画期的判決だった。

事件当時少年だったこと、計画的犯行ではなかったこと（詳細はインパクト出版会『死刑・存置と廃止の出会い』年報‘９７参照）等、弁護側の主張が全面的に取入れられたのだ。

死刑がとり除かれた事で久し振りに傍聴仲間と喜び合い、帰途についた。

途中、瀬戸電が動かなくなり、人身事故であることが伝えられた。人の命を奪ったレー

ルの上を１時間余り遅れて帰宅する気持は何とも言えない。事故の知らせを受けて茫然とする家族の姿が彷彿とした。

帰宅直後にTELが鳴って聖マルコ教会の牧師の死が伝えられた。持病があったが突然死だった。

１年前、私と共に修治さんの遺体を名古屋拘置所に引き取りに同行して下さった森一郎牧師が亡くなったという。

翌日教会の人々は森牧師の通夜、告別式を行う準備の中で、４日後に控えた修治さんの一周忌を、引退された牧師が代行して下さるという連絡を受けた。

通夜にはＨ．Ｈ．さんと参列した。『フォーラムinなごや』のメンバーには仏教者もキリスト者もいる。私は相方の宗教者たちに支えられて心身共に調節力の乏しい人間でありながら今日まで何とかやってこられたと思っている。けれども教会での告別体験は少ない。

通夜で森牧師の神学徒であった頃、６０年安保を闘う反戦神学徒であったという逸話が話され、天に召されることを悲しみだけではない別れとする告別に、明るさを感じた。修治さんの一周忌

２０日夜、東京のＹ弁護士から「明日は互いに思いの丈を語り合いましょ」との連絡がついた。死刑が確定する１年前から１０年間、あらゆる手をつくして、死刑執行を防御するために闘って下さった弁護士も来れるという確約を得た。ところがその１時間後に、同じ弁護士から死刑執行の知らせが入った。松浦功法相就任から４３日しか経っていない。野口悟さん、今井義人さん、平田光成さんと、それぞれ違った人生を歩んだ人を一括りにして“殺す”という刑の執行命令書に印を押す。慎重審理を経たとは思えないと追求する記者団に「部下を信じている」という解答だったという。法相という立場での責任の放棄としか見えない。

法務省の意志を維持する橋本政権のますます希薄になった人権感覚に対して、私たちはどう対応すれがよいのか。

翌日、修治さんの一周忌記念式には、全国から２３名の人々が参加して下さった。

修治さんとその母、そして昨日執行されてしまった３人の人々も共に、彼等一人一人の無念さを、参加者の無念さとして私たちの心に刻んだ日となった。その後、フォーラムinなごやの人々で死刑執行抗議の書面が起草され法相と首相にFAXされたと聞く。

今年(‘９７)に入ってから何も手につかない状態を収拾する作業の一環として、個人救援誌『コスモス』に別冊として、被害者家族と事件現場に同道した体験を大筋にしたフィクションの作品を発表した。一人一人の執行を喰い止めるための私に出来るくさび打ちの１本のつもりであった。

増すプリして仲間に広げてもよいか、という問い合わせは何人かの人に貰った。被害者兄の気持がどっくんどっくんと伝わってきた。

芝居にできないだろうか等、嬉しい反応も得た。後は商業誌の餌になった感が強い。

商業誌に取材された場合、発表されるまで油断ならない。取材された側の圧迫感は耐

え難いものだ。売り込んだライターは、タイトル・写真までは責任が持てないという。よい機運を創ろうと取材に応じた者にとって裏切り行為としか写らない。

私は取材に甘んずるより自分たちの文化を創っていきたいと常々思っているし、それを実行してきた。

シスター・プレジャン来阪への関わり

シスター・プレジャン来日日程と、その受入れ先を求める声が『フォーラム９０』の通信に掲載されたのはそんな時だった。

丁度、Ｔ．Ｍ．牧師をモデルにした松下竜一著『汝を子に迎えん－人を殺めし汝なれど』という著作が発刊されたばかりの頃だった。

Ｔ．Ｍ．さんから「宝塚に一服しに来ませんか」という誘いがあり、死刑囚の「姉」「母」「妻」たちが集まった。死刑執行が早くなって来たことで「家族」たちの閉塞感は強

まるばかりだった。「胸につかえたようなものを吐き出しちゃいたいね。」

４人の悩みはそれぞれ違うけれども、面会に行ったときの訴えさえ公けに出来なくなってきたような状況は破っていかなければ、私たちの行為は意味をなさない。『デッドマン・ウォーキング』を映画で観た時の共感と、ある種の解放感は何だったのだろう。

プレジャンさんが来るのなら、こちらとの違いを訴えてみたいね。なんて話にエスカレートした。

その後、Ｔ．Ｍ．さんが大阪集会で鼎談の一人として選ばれた事で、私と向井さんは原作を読み込み、参加者に比較しつつアピールしたい事をピックアップすることになった。　死刑囚の母となって全身全霊を持って愛で包み込もうとする向井さんと、死刑囚の姉となって獄外との空気孔の役割を果たそうとした私とは、生き方・考え方に多くの違いがある。その二人が死刑囚の日常と接している者としての閉塞感や共感は同じであることを、この本を仲介に確認しあえた事は互いの支えにもなった。翻訳された『デッドマン・ウォーキング』は、女のおしゃべりに近い、行動と感情が自由に行き交いながら、次への打つべき手へ立ち向かう。その姿、そう、動く姿の見える文章は私を魅きつけた。

私は次の３点にしぼった。

（１）精神的アドバイザーとなったシスター・プレジャンは、死刑囚パトリック・ソニアが死刑執行されるまでに４人の役人に会っている。

死刑執行命令書を出す州知事、（日本では法相）刑務所長、（日本では拘置所長）恩赦委員会の委員長、矯正局長、といった各所の首長に直接会って、公共の義務と個人的信念の不一致に対して追求している。確かに何度も電話連絡を取ったりするのだが、連絡がとれたら、必ず彼らに会うことが出来るし、彼らは自分の意見を率直に話す。

日本では個人的な電話連絡で彼らに会うことは絶対不可能。色々手をつくして、紹介議員などを通じてやっと会えたとしても、ほとんど質問に対して「お答えできません」という返事しかかえってこない。

（２）プレジャンさんは本書冒頭で、’８２年、刑務所連合のチャヴァ・コロンが訪ねてきて、死刑囚の文通相手になってほしいと頼まれたことがきっかけで面会が始まった、となっている。

刑務所連合とはどのような目的で創設されたのか、どの位の規模で活躍しているのか。精神的アドバイザーになるために、教誨師から面接の要請があり、2ヶ月後許可証が当局から送られて来る。精神的アドバイザーになる資格が特にあるのか。私たちの立場が精神的アドバイザーの立場に似ているので、活動できる範囲が知りたい。

日本でも本来なら縁者でなくても、複数の人が会える制度を作るべきだ。

（３）恩赦委員会には聴聞会があって弁護士、プレジャンさん、母親などがそこで恩赦出願の意見陳述が出来たこと、恩赦委員会の構成メンバーが、明らかにされていること、審理過程に公平さを欠く情況は著しいけれど、とにかく顔の見える関係の中で行われていることによって、審理過程の不備は、追求する手立てがある。

日本の最近の例で言えば、’９５年１２月２１日に死刑執行された死刑囚（木村修治）は、膨大な恩赦出願書を三回にわたり提出したにも関わらず、その内容をどのようなメンバーがどのような審理を経て、却下されたのかされなかったのか、何一つ本人や出願書提出代理人の弁護士への通知がないまま執行された。この情況は著しい人権侵害に当たると思う。死刑執行停止に近づけるため、国際的な批判の対象として取り上げられないだろうか――。

これらは他の問題と共に大阪実行委で検討されたが、ディスカッションの時間は通訳の時間を差引くと30分しかないので、Ｔ．Ｍ．さんが（１）を、私が会場からの発言として（３）を執行された死刑囚の姉として発言するようにと言われた。

プログラムが出来た段階で私には三つの懸念があった。

第二部で私の予想していた形は、鼎談であった。死刑囚と関わっていくクリスチャンの女性という共通性を持つ向井武子さんとプレジャンさん、この具体的体験者たちの関わり方の困難さや内情の理解が即座に出来る中道弁護士が間にとりもつという流れができれば、50分程の持ち時間もスムーズに流れるだろうと。

ところが、プログラムはパネルディスカッションとなっている。もう一人司会が入り、思いがない展開になった場合、例えば内情に詳しい通訳でも一人では賄い切れなくなる。

集会タイトルが、『シスタープレジャンと語る会』となっていることで参加者とも語り合えるだろうといった魅力的イメージになっている。会場からの意見も受付けることが明記されている。二時間半ではさばき切れない内容だ。

私の会場からの発言はない方がいいと伝えたが、私の危惧は伝わらなかった。

実行委に出ているわけではない私は、それ以上介入できなかったが、せめて2部での質疑応答は文章化しておいた方がよいのではないか、出来たら英訳も、などと伝えたが準備会での検討する機会は残されていなかった。

本番10月25日は極めて早い段階から崩れ出した。

通訳は優れた人であったが、死刑制度を論じ合うと言う専門用語に慣れていない人だった。

通訳との打ち合わせが当日まで行われていず、1時間前にプレジャンさん到着と同時刻にしか来れなかった。

通訳の人は事の重大さを会場に来て知るという事態になったが最後までパニックに陥らないよう自制しながら、翻訳出来ないスペルを何度もプレジャンさんに聞き直して頑張られた。が、講演が10分オーバーした時、プレジャンさんは予定の内容を断念し、「後は『デッドマン・ウォーキング』を読んでくださるよう」という言葉で諦めた。

会場から通訳の問題は実行委の責任であるといった厳しい批判が出た。

第2部はパネラー3人の意見陳述が、一通り終わった瞬間から、会場からのブーイングがはじけた。

「シスタープレジャンを招んでの集会なのにいつまで実行委員主導で、とりしきるのか」

司会の机上には意見用紙が山積になっている。講演さえうまく通じなかったのだから意見用紙が、生かされる時間がないと参加者が判断したのは無理はない。

これ以上の事は私から言うべきことではない。司会者は混乱の中を毅然とした態度で、それぞれの側面に良く対応した。

実行委形式の集会は、不連続に集まるその場の出席者によって企画がつめられていくので定型に陥りやすいし、破綻が見えていても、訂正する機会を失う場合が多い。

今回は、プレジャンさんの来日が思いがけなく早く実現した事から、会場確保、金策にかけまわって、宣伝と集会構成を充分吟味する時間なかった事は、なごやフォーラムの経験から言っても良く解る。

来日したプレジャンさんがどんな事を言いたかったかは東京からのレポートに詳しい。

大阪では聞けなかったが、映画になったいきさつはとても興味深い。

第2部の対談も学ぶべきことは多いだろう。

被害者の問題に入る対談者の鎌田さんの入り方は「被害者感情」などといった

括った言葉で表現されていない。

これは、司会がパネリストに質問事項として「被害者感情」という言葉で立てた事に対しての私の危惧の一つであった。

具体的に被害者に会って行動しているプレジャンさんを迎えているのに観念語におきかえた言葉で質問するのは、人の営為を切り捨てる。

東京ではプレジャンさんが死刑囚と直接関わっている人はいないのか、と質問されたという。私たちが、プレジャンさんを求めていたように、プレジャンさんも関わっている者とも話したかったのだろう。

私自身の意見は、打合わせの時、自分の義弟が死刑執行された時の事として文章化していたので、通訳さんの手始めの仕事としてプレジャンさんには充分伝わっている。

彼女は私の方に大きく頷きながら聞いてくれていた。名古屋拘置所がスミ塗りをした『デッドマン・ウォーキング』の本は、会場が退ける頃、Ｔ．Ｏ．さんによって手渡された。

プレジャンさんは驚きの声をあげていたという。交流会がお開きの時、プレジャンさんは「アメリカで公開されている事が、日本では、すべての局面であいまいにされている事が解りました。今日は向井武子さんとＴ．Ｎ．さんというすばらしいパネリストに恵まれよい集会を開いて下さいました。それらを支えたすべての皆さんに感謝します。」と明るく挨拶して、空飛ぶシスターらしく、次のスケジュールの渦の中に去っていった。

辛かったけれどいい出会いでもあった。

批判だけが滞らないように、残った課題は活かし合えるようにと思い出をこめて、記録させて貰いました。

’97年11月15日

第10回死刑廃止合宿の感想

Ｍ．Ｈ．(被害者家族)

播州･姫路において9月20日～9月21日の二日間第十回死刑廃止全国合宿が開催されました。同時に獄中生活のなかで描かれた作品の｢いのちの絵画展｣も開かれ、合宿参加者以外の方々が来られ、なかなかの好評を得たようでした。

昨年9月箱根の全国合宿以来すでに2回もの死刑執行がなされています。そのなか70名もの参加者があっての全国合宿でした。

1日目全体会では問題提起がなされ、姫路の梶原氏、東京･Ｙ弁護士・Ｔ氏からの問題が提起され、緊迫した状況で進行されました。死刑廃止運動の問題点、量刑の問題、死刑囚とのかかわり、人権問題、水戸の被害者救済センターの状況報告など、多くの問題が出されました。そのあと分散会へと移り、各会場ではかなり活発な意見交換がされました。夕食後、主催者代表ユヨンジャさんの夫君であるジョンカンギュンさんが民族衣装を身にまとい、オカリナの演奏を披露しました。そのオカリナの音色に思わず引き込まれ、時間を忘れました。2日目の全体会では、各地域からの方々が死刑廃止運動のあり方、状況報告を発言され、一段と熱気に包まれていました。今回、この全国合宿で私自身が感じた点については、今決して楽観視を許すことが出来ない状況の中で、死刑の執行を止めるには具体的に何をすればいいのか・・を考え直すことが必要ではないかと痛感しています。と同時に、私当事者として、加害者と被害者の問題点を改めて考え直す時期に来ているのではないでしょうか。そして死刑廃止への方向性を見極める必要が今こそ最も大切だと痛感しています。

この姫路での全国合宿の想いが、今播磨の風にのって各地域に流れています。

若い世代に伝えたい！

1997年の「死刑廃止フォーラムinなごや」の活動について

Ｒ．Ｓ．

　96年11月の映画『宣告』上映会の後、これからフォーラムはどのような活動をしていったらよいかを話し合いました。そこで、97年は、思考が柔軟な若い世代に対して、死刑廃止についての理解を広めてゆこうということになりました。

　そして、７月20日には、名古屋市天白区の東海女子高校で開催された第９回愛知サマーセミナーで、20人ほどの高校生に、死刑をテーマにして話をしました。参加者の高校生は、私たちの示した死刑廃止論や、またそれに対抗する死刑存置論の論点などに熱心に耳を傾けてくれました。

　私たちは、もっと多くの高校生と死刑廃止について語りたいと考え、サマーセミナーのような高校生と接する機会を積極的につくろうとしました。そこで、多くの高校が秋に迎える文化祭を前にして、「もし皆さんが、文化祭で死刑に関する企画をお考えでしたら、私たち死刑廃止フォーラムが協力します」という旨の案内状を作ました。それを、名古屋市および近郊の公立・私立の高校100校あまりに郵送しました。会計報告の支出の欄に、「高校へ案内状郵送費」「案内状の紙代」という項目があるのは、このためです。

　「この秋は、各高校への出張講習でけっこう忙しくなるのでは」という楽天的な予想とは裏腹に、実際の反応はゼロでした。１通だけ返事の手紙が来ましたが、それは生徒からのものではなく、死刑廃止に対して感情的な反発を抱いている先生からのものでした。生徒の手に届くように、「○○高校生徒会御中」と書いて出したのに、先生からこのような返事が来たということは、私たちの案内状が生徒たちに渡らなかったのでしょうか。先生たちが、「死刑廃止？そんなのけしからん」という調子で、手紙を握りつぶしてしまったのでしょうか。あるいは、生徒たちに届いたかもしれませんが、「死刑なんて興味ない」という感じで、反応がなかったのかもしれません。

　でも、サマーセミナーで直接高校生たちに接した時には、こちらの話の切り出し方次第でけっこう興味を持ってくれました。また、神戸の事件など、さまざまに報道される犯罪のニュースに対して、大人とは違う独自の受け取り方をしているのが感じられてました。「凶悪犯罪には、ぜったい死刑で対処すべし」と考える頭が硬直した大人とは異なる、豊かな反応が返って来ました。ですから、私たちからの働きかけを拒否したのは、先生たち大人であって、高校生ではない、そう思いたいのです。

　若い世代に、死刑廃止や、拘置所や刑務所での人権の尊重について、もっと知って考えてもらいたい。そうして、そういう若い人たちが社会を担うようになった時に、いまの日本のような人権状況が「何かおかしい」という嗅覚をもって欲しいと願っています。確かに今回の試みは失敗でした。しかし、今後も若い人たちに対して、何らかの働きかけを続けてゆきたいと思います。

収穫のあったサマーセミナー

Ｋ．Ｓ．（しげちゃん）

１９９７年７月２０日、私たち「死刑廃止フォーラムinなごや」のメンバーのうち６名は、名古屋市の東海女子高校で行われた高校生を対象としたサマーセミナーに参加し、「死刑制度を考える」と言う題で講演を行った。直前まで興味を持ってくれるのか、人数が集まるのかが心配されたが、２０数名が集まってくれた。まず死刑制度存置の立場からの説明。続いて廃止論。次に実際に自分の弟を保険金殺人事件で殺されてしまったＨさんの体験談。そしてグループに分かれての自由討論。最初高校生からはあまり意見・質問が出なかったが、私たちの話を熱心に聞いてくれた。　私たちの中で高校生に一番年令の近いＴさんのグループでは、実際に裁判に傍聴していること、現在裁判中の青年に面会に行っている話などを、興味深く聞いてくれた。実際の話は説得力があり、８月には実際に裁判の傍聴と面会に一緒に行こうという話にまでなっていた。

２時間ずつ、２コマの講義に合計２４名の高校生が参加した。人前ではなかなか意見を出さなかったが、私たちの意見を自分たちが受け入れられるかを真剣に考えていた様子がその後の感想を読むと良く理解できた。結果的に、存置に賛成したのは６名。廃止は８名。不明・分からないが５名、意見表明なしは３名といった結果になった。　　

今まで死刑制度についての情報が少なく、しっかり考えたことがなかったこと、これを機会に考えていきたいことなどの感想がみられた。

　講演前の私たちの期待通り、若い人たちは柔軟に死刑制度を考えてくれる。その意味では大変意義のある講演であった。

もっと時間を

Ｋ．Ｉ．

週休2日はかなり定着しているらしい。弁護士の事務所の集合ビルである弁護士ビルも土曜日は閑散としている。

この3か月程、ある刑事事件で弁護団を組む同僚と土曜日に定例会の会議を開いてきた。最終弁論のための私の原稿は約300頁になった。300時間はかかっている。週休２日どころか週休１日もない。

この世の中に、時間がないといって、トイレでひげを剃る男はどれぐらいいるのだろうか。

＊＊＊

10月6日、菊池さよ子さんからファックスが入った。死刑確定者は5１名。18名が再審請求中。年に2回の執行が定例化していることから、これを阻止するための方策として再審請求、恩赦出願の準備をすべしと督励する文面である。

私は上告審の弁護を担当したAさんと恩赦出願の手続きを引き受ける約束をしていたから、督励を受ける理由がある。

Aさんの恩赦出願の準備のことはこの２，3年来いつも私の念頭にあったが、準備の時間がないという理由以外に、「恩赦が認められないと後がない」という思いに悩んで手がつかなかったのである。しかし、「何もしない間に」と考えると、これも焦慮の種となる。

＊＊＊

意を決して、１０月１９日（日曜日である！）、Aさんを支援している若干のみなさんに参集していただき、恩赦出願の準備のための協力をお願いした。

Aさんの上申書などの原稿は昨年受け取っていた。ワープロの活字にして１００頁を優に超える。これを整理する作業にとりかかり、これと平行して、出願書を起案し、様々な資料を点検し出願書の添付資料にまとめる作業に入った。

この作業をしながら、自己変革を課題として生き、生きて償いたいというAさんの思いを痛切に感じている。

死刑から価値あるものがもたらされるのだろうか。

＊＊＊

今日、１１月９日（日曜日である！）、長文ではないが出願書の本文を書き上げた。１１月１７日には、再度、Aさんを支援している仲間の皆さんに参集いただくことになっている。みなさんも、今頃、時間がないと叫びつつ「宿題」の作業にとりかかっておられるだろう。それぞれの思いをこめた書面を用意していただくことになっている。

私たちのこの時間がAさんのための時間につながるのだろうか。

Aさんのために、そして、仲間や私のためにもっと時間を！

（1997.11.9)

会計報告 1997年11月21日

　（1996年9月～1997年10月分）　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　会計担当　Ｒ．Ｓ．

収入		支出
前回からの繰越し金映画「宣告」上映関連の収入カンパ	191,764 42,030 49,450 　　　　　 670,244	映画「宣告上映関連の支出例会会場費死刑廃止ＮＥＷＳスペシャル購読費高校への案内状郵送費封筒印刷費雑費（コピー代･振り込み手数料など）次回への繰越金	469,690 25,000 　 3,000 2,091 18,690 730 142,403 670,244

出来ましたら、カンパをお願いします。

振替口座：００８５０－１－１３３６０８

加入者名：死刑廃止フォーラムinなごや

編集後記

◎－ニュースレターの原稿が集まった頃、法務大臣の様子から、12月18日か19日に執行がありそうだとの情報が流れた。東京･名古屋･福岡で執行停止要請行動が行われた。幸い執行はなかった。つかの間の安堵。しかし緊張は続く。一日も早い死刑廃止実現を望む。（K．S．）

◎－年2回の執行が当たり前になってきています。これに慣れてしまわないようにしなくては。かつ早急に着実に活動を進めていく必要性を感じます。（T．T．）

［連絡先］Fax052-937-5492

例会報告（1998年3月28日更新）

今回の例会のテーマはイベントについて。、若い人に死刑制度を考えてもらうために秋頃にコンサートを企画。関西の阪神大震災の被災者を励ます音楽活動をしているグループを呼ぼうということに。日程・会場・趣旨・予算について話し合った結果、企画書を書いて出演交渉をすることになった。出席者は6人。犯罪被害者の遺族でありながら死刑制度に疑問を持つＨさんが4月5日（日）の夕方6時から、ＴＢＳ（名古屋ではＣＢＣ）系列の報道特集で、取り上げられることに。是非見てください。

例会報告（1998年2月28日更新）

27日の6時30分から、出席者は、5名。新メンバーＴさん登場。今年静岡から名古屋へ仕事の関係で転居されたとのこと。アムネスティ・インターナショナルのメンバーであり、死刑廃止のホームページを作っているという、死刑廃止運動の歩くデータベースのような方で、今後、死刑廃止フォーラムｉｎなごやで力を発揮していただけそうである。

例会では、ニュースレター発行後の反応とカンパなどについての報告が合った。10万円ほどのカンパが集まった。この場を借りて感謝します。それから、死刑廃止運動を広げるために、多くの人に来てもらえるイベントをしたいということで、誰を呼ぶか等の企画について話し合った。

その後「ケナリ」へ行ってＴさんの歓迎の意味を込めて飲み会をしたことは言うまでもない。

例会報告(11月23日更新）

11月21日午後6時半から、メンバーのうち6人が出席。今回の議題は来年1月に出す「死刑廃止フォーラムin なごや」のニュースレターの打ち合わせ。この1年の活動を振り返って、メンバーの感想などの原稿を持ちより、見通し、予算、枚数などを話し合った。内容は、シスタープレジャンの講演会の感想、・死刑確定囚の再審請求・恩赦請求の手続きとタイミングを考慮している弁護士さんの感想、サマーセミナー報告・会計報告、犯罪被害者救援のための組織作りの呼びかけなど。

特に今後の活動方針として、現在日本の中の数箇所で活動を開始しつつある「犯罪被害者救援のための組織」作りをこの名古屋でも検討の時期であると考え、皆さんに呼びかけようと考えている。

例会後、恒例になっている韓国料理店「ケナリ」へ行って一杯飲んだことは言うまでもない。その席でこのホームページで「死刑廃止フォーラムinなごや」の事を取り上げていること、まだパソコン初心者の私ではあるが、パソコンを利用ししていないメンバーにe-mailで連絡のこと、ホームページの説明を話し、今後の導入を勧めた。近い将来、メンバー同士の連絡は大方e-mailで出来るようになるだろう。

メンバー

弁護士・大学教授・マスコミの記者、ごく普通の市民など現在20数名、さらに賛同していただいている方は600名以上います。

例会

月に1回、名古屋市地下鉄東別院の近くに会場を借りて開いています。出席者はいつもは7・8名イベントの前には十数名が集まります。死刑廃止を実現するためには何をしたら良いのかを話し合っています。例会後に近くの韓国料理店で一杯飲むのが恒例になっており、こちらも楽しみです。

活動

死刑廃止が1日でも早く実現するように、毎年いくつかのイベントをしています。今年は高校生を対象としたサマーセミナーに講師を派遣しました。また死刑執行があったときには抗議集会を開いたり、抗議声明を出しています。

しげちゃんの考え

なぜ死刑廃止？犯罪の被害者の人権は？

わかりやすく説明したいと考えています。

　工事中につき、乞うご期待！

サマーセミナー参加報告

１９９７年７月２０日、私たち「死刑廃止フォーラムinなごや」のメンバーのうち６名は、名古屋市の東海女子高校で行われた高校生を対象としたサマーセミナーに参加し、「死刑制度を考える」と言う題で講演を行った。直前まで、興味を持ってくれるのか、人数が集まるのかが心配されたが、２０数名が集まってくれた。　　まず、死刑制度存置の立場からの説明。続いて廃止論。次に実際に自分の弟を保険金殺人事件で殺されてしまったＨさんの体験談。そしてグループに分かれての自由討論。最初高校生からはあまり意見・質問が出なかったが、私たちの話を熱心に聞いてくれた。

　私たちの中で高校生に一番年令の近いＴさんのグループでは、実際に裁判に傍聴している話、現在裁判中の青年に面会に行っている話などを、興味深く聞いてくれた。結構盛り上がって、８月には実際に裁判の傍聴と面会に一緒に行こうと言う話にまでなっていた。

　２時間ずつ、２コマの講義に合計２４名の高校生が参加した。人前ではなかなか意見を出さなかったが、私たちの意見を自分たちが受け入れられるかを真剣に考えていた様子がその後の感想を見ると良く理解できた。結果的に、存置に賛成したのは６名。廃止は８名。不明・分からないが５名、意見表明なしは３名。といった結果になった。　

　今まで死刑制度についての情報が少なく、しっかり考えたことがなかったこと、これを機会に考えていきたいことなどの感想もみられた。

　講演前の私たちの期待通り、若い人たちは柔軟に死刑制度を考えてくれる。その意味では大変意義のある講演であった。

死刑制度をめぐる議論の要旨(サマーセミナー資料より)

１．死刑存置論

一般に言われている死刑制度を存置するべきだと考える理由

●「遺族感情」「被害者感情」を大切にしなくてはいけない

●応報として死刑は必要

殺人犯は、その生命をもって罪を償い責任を果たさなければならない。

「正義感」が許さない。

●死刑があると社会の利益になる。

・死刑には、殺人などの凶悪事件を抑制する効果がある。

・死刑がなくて、終身刑になったらば、お金がかかり税金がムダに使　われる。

・死刑がなければ凶悪犯が、再び殺人を犯すおそれがある。

・死刑がなければ、復讐や仇うちがしばしば起こる。

・優生学的に価値がある。

２．死刑廃止論

　　死刑制度を廃止するべきだと考える理由

　　　●死刑廃止は世界の趨勢

　現在、100カ国が法律上または事実上死刑を廃止。

　存置国は94カ国。1989年「死刑廃止条約」が成立。

●死刑は非人道的で、不道徳・反倫理的

　死刑は「生命の尊重」の理念に反する。

　死刑は残酷である。日本では絞首刑。

●国家に個人を殺す権利はない。

　人の生命を奪うことは、基本的人権の理念に反する。

　「個人の尊重」を基調とした自由主義･民主主義の国家。

●死刑は刑罰として無意味

　凶悪犯罪の防止には無期刑で十分。

　刑罰の役割…犯罪者を改善･更正させて社会に復帰させること。

●冤罪の可能性

　1980年代の４つの再審無罪事件。

死刑執行抗議声明

　　　　死刑執行に強く抗議します

　報道によれば、８月１日に、東京拘置所で永山則夫さんと神田英樹さん、札幌拘置所で、

日高安政さんと妻信子さん、合計４人の死刑が執行されました。

私たち「死刑廃止フォーラムｉｎなごや」は、今回の執行に強く抗議します。

私たちは、凶悪な殺人事件が、発生し「凶悪事件の犯人に極刑を」という世論が高まって

いるこの時期に死刑を執行したことに強い憤りを覚えます。　本来、総理大臣や法務大臣

あるいは法務省は、感情的な世論や扇情的なジャーナリズムに対して、理性と人権尊重の

立場から、「死には死を」という悪循環を断ち切るように指導力を発揮すべきでした。凶悪

な殺人を犯した人物に死刑をもって報いることは、残虐な悪循環です。今回のように世論に

便乗する形で死刑を執行したことは、私たちの社会の尊厳を貶める行為にほかなりません。

　世界の流れは、死刑廃止へ向けて大きく傾きつつあります。現在、世界の約半数の国々が

死刑を廃止しています。死刑は残虐な刑罰であり、いきる権利を否定するものです。

今後一件たりとも死刑を執行しないよう、強く要請します。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　１９９７年８月２日

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　死刑廃止フォーラムｉｎなごや

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1991年　　シンポジウム「死刑廃止フォーラムinなごや」

　　　　　映画「獄中の生」上映会

　　　　　裁判劇「死刑制度を裁く」主催

1996年7月　「その日翔んだSHU」後援

1996年11月　映画「宣告」上映会

1997年7月　サマーセミナーに参加

1997年8月　　死刑執行抗議声明(上記）

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