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ここはしげちゃんが、アムネスティー・インターナショナル関連で感じたこと、最近の出来事から考えたことを、マスコミや世間の考えとは多少違うかも知れないが、意見感想を述べ皆様にも考えていただくコーナーです。

 

安田弁護士の逮捕とその後ついて

日方 ヒロコ

(1999年2月 19日更新)

(お断り:この文章は「死刑廃止フォーラムinなごや」のニュースレター6号へ掲載するための原稿として日方ヒロコさんが書かれたました。ニュースはまだ発行していませんが、ご本人の了解をいただき先行して掲載します。)

(3月19日更新「死刑廃止フォーラムinなごや」ニュース6号へ

まえがき

このニュースレターを受け取る人にとって、昨年12月6日、安田好弘弁護士の逮捕のニュースは 大きな衝撃であったことと思います。

東京で発行されている「死刑廃止国際条約の批准を求める・フォーラム90」の通信を読んでいる方はすでに、安田さんを支援する会が出来、安田さんを逮捕した容疑内容が「強制執行妨害罪」という罪名を如何にフレームアップしたかが、解る声明も出でおり、「安さんの会ニュース」も5号まで出されていることを御存知だと思います。

安田さん逮捕からのいきさつの内容認識はそれらを読んでいる人いない人で違うのではないかと思います。

「死刑廃止フォーラムinなごや」でも「安田さんの逮捕は不当だ!!」と思った人々のネットワークが出来、しげちゃんが中部地区の配信をFAXで引き受け、情報を提供して下さっています。

東京では既に12月16日に「安田弁護士不当逮捕抗議集会」が弁護士会館「クレオ」で開かれ、名古屋からはS.R.さんが参加されました。

これは安田弁護士の不当逮捕に危機感を持った弁護士達が中心に行ったのですが、集会を知った市民達も含めて逮捕後わずか10日しか経っていなかったにも関わらず全国から500名以上の人々が集まった熱気あふれる集会だったそうです。

私は1月23日、東京赤坂区民センター行われた「安田好弘さんの不当逮捕を考える」集会に参加しました。主催は安田さんを支援する会・東京です。

この2回の集会での資料と報告を、私なりに整理して、私たちが、「安田さんの逮捕」という事態をどのように受け止め、行動していくのかという道筋を創っていきたいと考えます。

安田さん逮捕のニュース

 12月6日、仕事から帰宅すると友人から電話が入った。安田弁護士が今、逮捕されたというニュースをNHKが報じているという。

ニュースは安田弁護士の逮捕を伝え、容疑は旧住専の大口融資先の会社が住宅金融債権管理機構(住管機構)などの債権回収を逃れようとしてビルの賃料を別のダミー会社に移して隠す手口を社長らに指示していた、という内容だった。

逮捕の容疑内容は強制執行妨害の疑い、という。

報道はさらに安田弁護士を死刑廃止運動のリーダー的存在であり、オウム裁判の主任弁護士である事を伝え、あたかも人権派弁護士が裏ではこのような悪いことをしていたのだ、という印象を与えた。

私はこのような報道が流された場合、受けてとしていくつかの留意点を持って真相に近づく必要があると思う。

 

(1)安田弁護士にかけられた強制執行妨害罪に値することを安田弁護士は実際に指示したのか。

後に安田弁護士の不当逮捕に対して釈放を求める弁護団を通じて明らかになった事は、「スン社の代理人として住管と交渉し具体的弁済案を指示、一部弁済を終え、さらに交渉を継続しようとしているさなかに立件された事案」であった事が解った。

債権回収を逃れるため所得隠しを指示したのではなく、スン社再建のためのアドバイスをして、その収益から弁済する案を住管に提示し、しかも一部の弁済を終えていた。

次の交渉を継続しようとしていた矢先逮捕されたという。

警視庁捜査2課の容疑内容は、別会社に仕立てた会社に振り込まれた収益を隠したといい、安田弁護士は、その収益を提示し弁済を済ませつつあった。という、天と地ほどの違いだ。

とにかく安田弁護士の主張は、一部弁済が行われている事実を持って証明できるのだからそこに眼をつぶり起訴に踏み切った事により、デッチ上げを意図的に行ったといいきることが出来ると思う。

 

 (2)安田弁護士の逮捕が何故死刑廃止運動と麻原弁護団に対する報復だと言えるのか。

 

安田さんを逮捕するにいたった被疑内容は顧問会社への業務上の助言という普通の弁護活動なので逮捕そのものが異常としか言えない逮捕内容であった事。

安田さん逮捕については事前にマスコミに逮捕情報が流されていたという。

安田さんの逮捕について、マスコミは何故顧問弁護士による「強制執行妨害の容疑」とだけ報道しなかったのか。

マスコミの報道はおしなべて、あのオウム裁判の主任弁護士が……。死刑廃止運動のリード的立場にある人権弁護士として信望の厚かった弁護士が……。

ついに金に眼がくらんだかのような見出しの報道をした。あるいは表では人権派を標ぼうしながら裏では違法な金稼ぎをしているといった印象を植えつける報道である。

制執行妨害を指示した見返りとして四千万近くの金を受け取った悪徳弁護士の表と裏、という図式である。

事実は、再建のアドバイス料は一銭も受け取っていない。4,000万近い入金は93年に解決した件の報酬が入金されたのであった。

 

(3)では何故黙秘しているのだという疑問に対して

 

私たちは報道で安田弁護士が黙秘を続けていると思っていた。が事実は違っていた。

検察官による弁解録取や、裁判官による拘留質問の機会にも自分の弁護活動を次のように説明している。

――私は、依頼者の正当な利益を擁護するため。全力を尽くしてきました。他人に違法行為を指示したり、また他人の違法行為に加担することは、私の職業倫理と生き方に反します。」といい、検察官の呼び出しがあればこれに応じ、事実を余すことなく明らかにすることを約束し、罪証隠滅の疑いがあるなら、その一つ一つに納得のいく説明が出来ること、それでもなお危惧感があるならこれを払拭するに足る約束ができことも申し出ているという。

そういう約束を申し出た上で安田弁護士には彼を必要とする多くの依頼者がいること、その人たちをほ放っておく訳にはいかないことを説明し直ちに釈放することを求めている。

しかし、検察官は拘留を請求し、裁判官は拘留を決定し、裁判所は準抗告を棄却、25日に起訴、現在は東京拘置所に身柄を拘禁されている。

 

(4)オウム裁判で、安田弁護士はいたずらに裁判を遅延させるための弁護活動をしていたか。

 

人権と報道連絡会世話人の山口正紀氏の文章から引用させて貰う。

麻原裁判では、12月3日に公判が 100回目を迎えたのを契機に弁護団批判キャンペーンが展開された。――だが、起訴が17件もあれば簡単に判決には至らないのは当然だ。むしろ2年半に100回の公判は通常の2〜3倍のハイペースであり、弁護団は法廷準備にへとへとになりながら、証拠に基づく公正な裁判の実現に全力を尽くしている。

なかでも安田弁護士は裁判資料検討のために連日、事務所に泊まり込み、自宅に帰るのは週に一、二日という日々を過ごしてきた。

そんな誠実な弁護士も、メディアの手にかかれば、一夜で「悪徳弁護士」に仕立て上げられる。―――

山口正紀氏は80年に山梨県で起きた幼児誘拐事件に密着取材して、安田弁護士の仕事ぶりを知っている。調書と証拠の中に食い違いはないか現場を何回も廻り、目撃者を探すなど安田さんの弁護士活動ぶりをつぶさに見てきた人である。この事件は控訴審から彼が弁護を引き受けたが一審死刑、控訴審では無期になった。

麻原裁判で弁護活動をつぶさに傍聴している人からは、真相を究明するその奥深さに被疑者家族からも信頼されているという証言を得ている。

麻原弁護団が、100回目の法廷を終え、次への弁護団会議を済ませた直後に逮捕した警察庁捜査2課の不当な逮捕に対し、麻原弁護団は弁護活動に重大な支障を生じさせるものであり、その政治的意図を露骨に示したものである、と抗議し主任弁護人の即時釈放を求めている。

検察官の描くシナリオはどうもしっくりこないものがあるのに対し、安田弁護士の事実に基づいた被告人への問いかけは、真実を知りたい被害者家族にとっても納得のいく展開であったという事に、私たちは留意すべきだと思う。

 

(5)死刑廃止運動での安田さんは多くの仲間と共に、どのような事をしてきたのか。

「死刑廃止フォーラム90」は全国の死刑廃止運動とゆるやかなネットワークによって結ばれている。「死刑廃止フォーラムinなごや」はこの近郊でつくったグループだが、いつも連絡を取り合い、死刑執行の動きとか、拘置所交渉とか、フォーラムの取組みと連携し合ってきた。

その死刑廃止フォーラム90の声明文から引用してみよう。

―――私たちは安田さんと死刑廃止運動を通じて出会った―――

私たちの知る安田さんは、死刑廃止フォーラムの中心的存在として、存置論者との対話集会を企画し、国会議員に働きかけ、国連に日本の状況を訴え、執行に備えて人身保護請求などの取り組みを精力的に展開してきた人である。死刑は法制度や刑罰の問題ではなく、すぐれて人権の問題なのだということを、静かに熱く語り続ける人である。そうした働きかけの結果、11月6日には、国連・自由権規約委員会が、日本政府に対して死刑廃止をめざした措置と死刑囚処遇の人道的改善を勧告した。にもかかわらず、法務省・中村正三郎法務大臣の命令により、昨年11月19日に3名の死刑確定者に対する死刑執行が行われた。

しかしその一方で中村法務大臣は11月4日、死刑執行について、日時と件数を執行のたびに個別に公表する方向で事務当局に指示したことを表明。11月6日には「最近ではほとんど例がない」(法務省)とされる東京拘置所の死刑を執行する刑場の視察を行い、大臣は後に「死刑というものが大変な罰であるのだな、という認識を改めてもった。法の定めによるとはいえ、執行される人にも同情を禁じえない」と感想を話している。さらに12月3日に同法務大臣は参議院法務委員会での質問に答え、執行日をあらかじめ本人に伝えたり、親族に面会させたりできるように、運用の見通しを検討する考えがあることを明らかにした。

このように従来法務省がかたくなに守り通してきた「行刑密行主義」に基づく死刑制度の運用自体は、部分的にせよほころびはじめている。こうした矢先に、安田弁護士に対する不当かつ不必要な逮捕が行われたのである。

―――私たちは、安田弁護士に対する不当で不必要な逮捕・拘留に抗議する。裏付調査なく捜査機関情報を垂れ流し、安田弁護士を一方的に「悪徳弁護士」に仕立て上げようとする報道に抗議する。そして、今までと同様、今後も変わりなく死刑廃止に向けて多くの人々に呼びかけ、活動を多様に展開することをここに表明する。98年12月14日

 

死刑廃止国際条約の批准を求める   フォーラム90

 

まとめとして

 

多くの資料の中から、安田弁護士は何故逮捕されたか。逮捕された時付加されたオウム裁判主任弁護士+死刑廃止運動のリーダー格の裏側をあばかれたかの様相を持つキャンペーンに対して取組まれたてきた概要をお伝えしました。

既に超党派による国会議員保釈請求に動き出しており、3月3日から開始される安田弁護士の裁判では、土屋公献弁護団長(元日弁連会長)のもと全国から集まった弁護団によって弁護に取り組みます。

私は「安田さんを支援する会」に加わった者として、3月3日から始まる東京地方裁判所刑事第16部宛の「安田さんの身柄釈放を要請する署名用紙」を同封させて貰います。

(しげちゃん注:署名用紙はこちらまで)   将門バナー.GIF (15136 バイト)

集約先は用紙に記入されていますので、ご協力下さいますようにお願いいたします。

なお「安田さんを支援する会なごや」(仮称)に加わりたい方は、しげちゃんまでご連絡下さい。

e-mail shigeo@mx4.mesh.ne.jp

 なおこの件についてより詳しくお知りになりたい方は、

インパクション112

特集    「安田弁護士の不当逮捕を考える」     :インパクト出版会

をご参照下さい。

 

安田さんの身柄釈放を要請する署名活動に参加して下さい。

署名の書式はこちらへ、そして安田弁護士関連の事を

もっと知りたい人はこちらのホームページへ、

将門バナー.GIF (15136 バイト)

(2月12日よりリンク)

安田弁護士の支援の輪広がる

(1月18日更新)

アムネスティ・インターナショナル名古屋栄グループの例会後、安田弁護士を支援するために出来ることが話し合われた。食べ物の差し入れ、励ますための寄せ書き作り、そして1月23日、東京での集会に行く人へ名古屋のグループからの一言メッセージを託すこと、カンパをすることが決まった。

また安田弁護士を支援するために各地で集会が予定されている。また支援をする会が各地で発足。安田さん早期釈放のために署名運動を準備中。など支援の輪が徐々に広がっている。以下各地の動き。

☆鹿児島 「安田さんとともに」 

 報 告:荒川護鹿児島大学法学部教授(時間調整中)

 日 時:1月23日午後6時〜

 場 所:鹿児島市中央公民館地階A室 

その他:資料代(カンパ)

「私たちは6年前に鹿児島でアムネスティ・インターナショナルの

メンバーとして安田弁護士の講演会を聞き、死刑と人権に関わる運動に連帯して

います。このたびは安田さんを支援する集会(赤坂区民センター)の呼びかけに

応えて鹿児島でも同じ日時に集会を開くことになりました」

★各地から鹿児島集会に連帯のメッセージを寄せてください。

連絡先:鹿児島ミニ集会呼びかけ人

☆福岡 人権弁護士・安田さんへの弾圧は不当だ!2・6福岡集会 

日 時:2月6日 午後2時〜4時

場 所:福岡県弁護士会館3階ホール

講 師:田鎖麻衣子弁護士(市ケ谷国際法律事務所・安田弁護団)

主 催:人権弁護士・安田さんへの弾圧は不当だ!福岡集会実行委員会

    【連絡先:省略】

☆2月13日 長野 詳細不明。

その他の関連ニュース

☆署名の準備中

 現在保釈を担当している東京地方裁判所刑事14部に、早期釈放の手紙作戦を

行っている。これと並行して、3月3日の初公判後、刑事16部に直ちに保釈す

ることを要請する署名を準備中。

刑事14部は昨年末に保釈請求を却下しており、保釈を認める可能性が薄いこと

から、圧倒的な数の署名を集めることで、遅くとも3月には保釈を認めさせるた

め。現在最終版下作成中。署名の集約日は2月末日。 

☆弁護士内で、早期釈放を求める署名も行われている。

身近な弁護士で、署名のことをご存じない方がいたら教えてあげてください。

問い合わせ先  東京 四谷総合法律事務所 

☆その他の動き

 1月9日 大学同窓生の会誕生

1月11日 人権と報道連絡会が定例会で安田さん逮捕・勾留問題を取り上げました。同日早期釈放を求める弁護士集会 主催・第二東京弁護士会有志の会  詳細不明。 

(注意)連絡先は、了解を得ていないので省略しました。興味のある方はこちらまでメールを下さい。

E-MAIL

 

 安田弁護士を支援する会名古屋結成

(12月25日更新)

安田弁護士をめぐってのその後の動きは、検察へは早期釈放を要請すること。懲戒請求を出す動きがある第二東京弁護士会へは、その人柄を知る人から、出さないように要請する動きがある。

東京では、「安田弁護士を支援する会」(仮称)が結成されつつある。

名古屋での話合いの場では、容疑に関する事実が出てこない以上真実は分からないが、安田弁護士が報道されている容疑があったとはとても思えない。名古屋でも何か出来ないかと言うことになり、東京での「安田弁護士を支援する会」結成を受けて、連動して「安田弁護士を支援する会名古屋」を結成しようということになった。具体的にはまだ何も決まっていないが、主旨に賛成して頂ける方は、ご連絡を下さい。

賛同して頂ける方はこちらへ

 

安田弁護士逮捕に思うこと

(1998年 12月17日更新)

 新聞報道で、安田弁護士逮捕を知ったのは1998127日午前10時過ぎだった。私にとっては、大きな驚きであった。

 今日までの約10日間、事実関係、事態の推移を追いかけて来た。昨日1216日に東京弁護士会館で、この不当逮捕に対する抗議集会が行われた。事態が少し見えてきたので、死刑廃止運動にかかわっている者として、今回の逮捕に対する自分の意見をまとめておきたい。 

 逮捕のニュースを読んだときに、以前からオウム真理教の麻原被告の弁護人に死刑廃止論者がいるというのでうすうす感じてはいたが、安田弁護士は主任弁護士をしていたと初めて知った。それまで匿名だったが、この逮捕をきっかけに一斉に実名が出てしまった。

 それまでに安田弁護士は、金城大学の学生誘拐殺人事件など多くの刑事事件を扱ったことで知られている。

 私が安田弁護士を知ったのは、多分1990年の121日東京日比谷公会堂で行われた、「死刑廃止フォーラム90」に参加した時だったと思う。その時はまだ安田弁護士を知らなかったので、はっきりした記憶はない。その後、名古屋での死刑廃止活動を通じて、何回か話を聞く機会があった。また名古屋大高アベック殺人事件の裁判を数回に渡って傍聴していた。安田弁護士が弁護人をしていたので、弁護ぶりを少しは知っている。その時の印象は、報道されているようにお金欲しさに仕事をするような人では決してなく、いつも筋を通し、弱者の権利を守るために仕事をしている人だとイメージを持っていた。

  ではなぜ逮捕されたのか?

 私たち死刑廃止運動をしている者にとっては、法務省の役人というのは死刑執行のたびに、マスコミを通じて厳しく批判を繰り返している、批判の対象だ。

 オウム裁判でも、法務省にとっては裁判が思うように進まず、頭の痛い対象であることは、想像できる。 つまり、法務省にとっては、死刑廃止運動もオウムの裁判も、「目の上のたんこぶ」のような存在なのだろう。その中心になっていたのが、安田弁護士であった。

 今回逮捕に至った事件を、良くは知らないが、債権隠しを首謀、あるいは共謀したように報道されている。弁護士が、顧問になっている依頼人に、合法的な行為を説明すれば違法行為との境目を説明することになる。説明を受けた依頼人が、一歩踏み出して違法行為をするかしないかは、依頼人の判断に任されるわけで、依頼人が違法行為をしたからといって、弁護人が逮捕される理由はない。もしそのようなこじつけで逮捕したのであるのなら、それこそ法務省が超えてはいけない一線を超えてしまったことになる。

 なぜなら、逮捕する理由もなく、権力者が自分たちの意見と違う人間を、法律解釈を捻じ曲げ、その権力を行使し意見を封じ込めようとする行為は、政府であれ法務省であれ許されないことである。反対にたとえ自分たちの都合の悪い意見を持った人間でもその人の権利を最大限に守るように努力するべきで、権力で押さえ込もうとする行為は、近代国家、法治国家においては、絶対にしてはいけない。強権行政の批判を免れない。

法務省が何を血迷ったか、逮捕に踏み込んだことは、市民の側からの明確な批判の対象ができたばかりではなく、日本が先進国としてはお粗末な官僚しか持っていない証拠として、世界から今後大いに批判される結果になるだろう。

今後私たちは報道のされ方、法務省検察当局の取り調べから裁判に至る経緯、その間の代用監獄の問題点・矛盾点などを注目し、今回の不当逮捕に対し大いに声を上げていきたい。安田弁護士というもっとも有能で強力な人物が、これらの問題を自分の体験として、感じ考えているわけだから、死刑廃止運動・オウム事件の裁判・安田弁護士にとっても今回の逮捕は大変だと思うが、今後このような問題点を解決する近道になることを期待する。そして多くの市民運動をしている人を敵にしてしまった法務省。その意味で法務省は、最も逮捕してはいけない人物を逮捕してしまったことになるのではないだろうか。

愛知万博を考える

1998420日更新)

愛知万博とは何か?

以前名古屋オリンピックを誘致しようとしていたことがある。

名古屋には東京や大阪と並ぶ都市圏であると言う自負がある。東京がオリンピックをやり、大阪が万博をした。万博開催をきっかけに道路などの都市基盤を整備し、公共事業により地元の企業が潤い、そして、世界的にも注目を浴びる事になる。地元にとっては、いいことばかりのようだ。

今度の万博構想もオリンピック誘致に失敗した名古屋の政財界が、地元振興のために、大きなイベントをしたいという希望があり、それに万博構想が選ばれたというように見える。しかし事態はそれほど単純ではない。

例えば、万博はすべて地元で行うように、考えている人が多いのだろうが、実はその基本構想から実際に中心となる設計・建設業者まで、どうも地元ではなく、通産省がらみの東京中心の設計事務所・建設業者である可能性が強いようだ。

万博をしたいという原点も考えたい。最初に万博会場の予定地である「海上の森」があり、そこの土地を利用すれば、何をしてもよかったのである。その事は後で説明する。

今までの万国博覧会とは、機械の発展や、新製品・新技術の発表の場であった。今回の万博を推進している団体を見るとやはり名古屋の政財界であり、企業群だ。旧態依然とした万博をめぐる利権構造が見え隠れする。そこから発想出来ることは、自分たちに企業の宣伝であり、新製品の展示場であると予想出来る。おそらく万博というより、「こんな製品が出来ましたよ。」といった見本市のような展示が、主になるのであろう。そして環境問題を考えるにしても、多少は環境破壊が、減るように考えていますよ。といった程度であろう。

時代錯誤の愛知万博

ではこのような万博が、果たして21世紀に必要なのであろうか。

国民の大多数が、かつてのように貧困で、物質的に衣食住・電気製品・自動車・レジャー産業などが十分でなかった頃には、新しい製品を求める気持ちは強くあっただろう。しかし、多くの日本人が、海外旅行を含む旅行に出かけ、自動車も一家に2台、電気製品はないものがない時代に、どうして必要のない新製品の見本市をする必要があるのだろうか。

交通死傷者を減らし、自動車のもたらす公害を改善するために、自動車中心から、公共の交通機関へと交通体系を換えていかなければならない時代に、トヨタはこれ以上自動車を普及させたいのだろうか。インターネットが普及し必要な情報は瞬時に手に入れることが出来る。このような時代に、人を一個所に集めて、見本市をする必要があるのだろうか。必要のないものを宣伝することによって需要を喚起する。ウンザリするような広告手法の延長でしかない。そしてその結果、企業が利益を得る。いまだに経済中心の価値観を押し付け、推進派を始め多くの人は迎合してしまっている。

このような価値観に支えられ、考えられているこのような万博を「産業振興型」万博と呼びたい。そしてこの「産業振興型」の万博はすでに時代後れで「手垢の付いた人形」と化している。「手垢の付いた人形」とは、かつてはみながよく手にして遊んだが、今では誰も手を出さなくなったおもちゃになってしまったという意味だ。

仮説・利権の構造

愛知万博の開催地をめぐり、一つの説がある。土地をめぐる利権構造だ。当時の県知事や関係者、親しい財界人等が、開催予定地の周辺の土地を買い占め、県が将来開発をし、土地の値上がりによって自分たちの利権を図っている。といったストーリーだ。20年も30年もの時間を掛けて、実現する利権構造だ。

これを私たちはどのように感じ、考えたらよいのだろうか。「先見の明」と呼ぶのか。「権力者の特権」とあきらめるのか。「それくらいのことはよいのでは、」と認めてしまうのか。それとも「倫理的に許されることではない」と追求するのか。「犯罪」として、糾弾するのか。

もしこのことが事実であれば、それはテレビドラマの中に出てくるような「悪代官」のイメージそのものである。行政を自分たちの利益を図るために利用することは許されることではない。

別の視点を求めて

バブル期までの経済成長は、自動車・電気製品などを始め、世の中に多様な製品をもたらした。これ以上欲しいものはあまりないといっていいほど、経済的に豊かになり、国内旅行・海外旅行などレジャー産業も盛んだ。

しかし多くの人は、経済的な進歩はよいとしても、精神的な文化の未発達が原因で十分な幸福感を得られなかった。それどころか精神的文化を課題として捉えてこなかったことが、精神的幼稚さ・貧困さ、現在人の殺伐とした精神構造の原因となっており、多くの社会的問題の原因となっている。

今回の愛知万博は、その反省が生かされておらず、いまだに経済成長優先の価値観に基づく万博だ。

では私たちはこれから何をしたらよいのか。それは経済成長や物質面、新製品等といったハード面ではなく、精神面、文化面での進歩を考えることではないのか。

物があっても人の幸福感が得られないのはなぜか。いったい「人間」とはなんであるのか、なぜ紛争や戦争が起きるのか。教育・政治・人権・戦争・紛争、人間が置かれる環境によって、あるいはその人自身の努力によって、善人にも悪人にも変化できるこの「人間」。

このような気持ちの面の研究・精神面文化面での更なる発展が求められているのではないのだろうか。

その意味では、万博推進派が行おうとしている「産業振興型」はもちろん、反対派が主張している環境破壊から止めるべき、という議論のどちらも実は的外れなのではないのだろうか。

世界に目をむけると、50の国や地域で、戦争や紛争が起こっており、我々日本人が知らされていない、戦争・紛争・殺人・人権侵害が、まだ世界中に存在している。

このように世界には紛争国や地域が多く存在しているのに、日本では、ごく一部の人以外その事に無関心だ。

そして知らないうちに日本が、アメリカの軍事力の枠組みに組み込まれていく現在、世界の軍事戦略に組み込まれるということは、日本の軍事的独立性が、希薄になり、ひいては、戦争放棄を放棄しなくてはならなくなる可能性も生じる。

このような世界的な問題を解決するために私たちは何か出来ないのか。

勿論簡単にできることではない。しかしきっかけになるような、文化の違い、民族の違いを認め、戦争の遠因を探り、各国間の利権構造のもつれた糸をほぐすように、日本が貢献できる道を探るといった、文化的な博覧会を開催することは出来ないものだろうか。

以上の事を踏まえ、世界に目をむけ、私たちに出来ることを考え話し合う場を提供し、世界平和を考えるための「文化振興型」の文化博覧会が開催できるのであれば、大いに賛成し、協力を惜しまない。

アンチ愛知万博、「地球市民文化博覧会inなごや」構想

愛知万博は止めてもらいたいのだが、このまま進めば開催されるだろう。それはそれでやりたければやって頂いて、私はもっと人間を見つめ、精神的文化を発達させるために、文化振興型の「地球市民文化博覧会inなごや」を、私たち市民は市民のレベルで開催するように提案する。

テーマは、「人間」。人間を精神・文化の面から更なる進歩するために、人間とはいったい何かを考え、世界各国の文化の違いを正面から見据え、共通点を探り、違いは違いとして認め合い、対立する利権構造を明らかにし、戦争や紛争の原因を考え、利権構造を知り、調整できるようにする。

今までの万博とはまったく違う形で、一個所集中型ではなく、インターネットを利用し、分散型で意見の交換・発表が出来、重要ないくつかのテーマごとに会議・講演をする。

宿泊も、ホテルは出来るだけ使わず、ホームステイで行う。

いままでの経済成長中心の社会的価値観を、精神文化中心の価値観への転換させ、さらに発展させるためのきっかけをこの名古屋の地から発信する。このような博覧会を、今から準備を進め愛知万博が開催される時期にぶつけてみても面白いと考えるが、いかがなものだろうか。

神戸の中学生による殺人事件に思う。

マスコミ報道について

今回の神戸の事件では、まだ14歳の中学生が容疑者として逮捕された。新潮社が、雑誌「フォーカス」などで、まだ容疑者に過ぎないこの少年の顔写真を載せたことは、世間の「知りたい」と言う声と「表現の自由」と言った自分勝手な理由付けで、その実、雑誌の販売部数を伸ばし利益を図ろうとした卑劣な行為であると言わざるを得ない。たとえ成人であっても容疑者の段階で、実名、顔写真を報道すること自体問題があり、まして、少年法の精神を著しく外れている。まだ容疑者に過ぎない少年に一出版社が、私的制裁を加えたことになり、行き過ぎたリンチであり暴力であると考える。

孤独な中学生

子供たちが一番身近に感じている社会は、学校であり、家庭である。子供にとって一番評価してほしい場所でもある。しかし学校でも評価は当然ながら、学業が一番である。評価の低い成績の悪い子供は居場所がない。ほかに評価される場所があればよいのだが、残念ながら、今の社会事情からするとそれは難しい。いわゆる問題のある生徒・成績の悪い生徒は、学校からはじき出され、切り捨てられ結局仲間に入れてもらえる不良の社会へ逃げ込もうとする。以前に少年事件のベテラン弁護士の講演会で、ある少年が非行に走った原因を聞いた。ある時事件を起こした少年が先生に「どこの高校に進学できるか」たずねところ、「おまえの行ける学校があったらこっちが教えてほしいよ」と答えたそうである。

この言葉をきっかけに非行に走ったそうである。いろいろな原因があるにせよ、先生の言葉が、きっかけになった。

今後の課題

 現代の社会的背景を考えると誰にでも今回の問題は生ずる可能性がある。私たちは暴力のない社会を目指しているにも関わらず、テレビ雑誌、テレビゲームなど子供達を取り巻く環境は、暴力的表現にあふれている。学校の切り捨て教育に見られるように、社会からの疎外感・孤独感。対話の乏しい家庭環境。

子供達は実は自分を表現したい・話を聞いてもらいたがっている。親は忙しくまた面倒臭いといって、なかなか聞いてやらない。自分を認めてほしいのに認めてもらえない。このストレスが、原因になる。

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