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ガルバリア第一章
ユウロスとその仲間たち

『地球から気の遠くなるような距離のかなた 現在より遥か未来 天体名ガルバリアβ 地球から遠く離れた可住天体である 現在宇宙図上にその所在は記されていない 彼の話す物語りはここから別の次元が始まるかのように・・・・』
 どぎゃっ ばきゃっ げしっ (殴られる作者)
『きゅーーーーーーーーっ』ぐったり・・・・・・
α&β&γ『格好つけてないで さっさと本題はいらんかぁーい』
δ『始まりまぁーす ナレーションstart』


西暦702043年
 文明崩壊の後数千年が経ち また人類は自らを三度崩壊に至らしめた文明を復興しようとしていた 魔法という今までに前述の無い文明をもち それにより大陸二つを海の底へ沈めた 現在旧文明との共存をはかっている
 と文献に書かれ 人々はそれを史実とし日々を送っている
 ここは この星に点在する古代遺跡のひとつグラメダ遺跡である ここには古くからの港町が栄えているが 寒流の影響で冬は港が使えないのが難点でもある しかし一歩町から外へ出ると永久凍土の凍てついた大地が広がっているので陸路でここを訪れるものは極めて少ない この町はこの古代遺跡の発掘によってこの星最高の科学技術力を誇り町で生活する者の大半が坑夫及び科学者で占められているのもこの町の特性である そして町の下は至るところに坑道があり慣れた者でなければ再び地上に顔を出すことはないくらい複雑にとんでいる ここはそのメインとなる遺跡のとある坑道の行き止まり 時に10月と1日

『彼の者は重い扉をひらき長きにわたる闇の支配した空間に光を灯した』

 その坑道の行き止まり付近から声が・・・
「おーーい」
 白い顎髭をはやし少し太った班長がライトを向けて呼ぶので4、5人の力には自信のありそうな工夫および 頭には自信のありそうな学者たちが防寒着などを片手に駆けつける
「やりましたね 班長」
 班長のすぐ側には大きく口を開けた金庫室の扉がその役目を終えたように暗がりの中静かにたたずんでいた ランプやライトをその中に向ける
 一人の長身の学者はその闇の中に黒い金属製の金庫が置かれているのを見るなり愕然と
「あれは・・・」
「また か」
 新米の若い工夫の口から言葉が漏れた
 黒く大きな鋼鉄製の金庫を目の前にしてさっきの長身の学者が班長に言う
「早く開けてください」
「わしにまかせろ 今日は調子がいいんだ」
 班長は張り切ってその鋼鉄製の黒い金庫に耳をべったりとくっつけてそのダイヤルを回す
 しばらくの間その場に居合わせた全員が息をのみ 静かに待ち続ける・・・
 チンーーー
 心地よい音が闇の中に響き 班長はガッツポーズをとって 取っ手を引いた 中には様々な紙を束ねたものが入っている その紙は酸化すること無く 印刷したばかりのように綺麗でクリアーだった
「これに関しては上で調べないとならないねアレイム」設計図?
 そのメンバーで最も小柄の男が言った
「全くだユウロス」
 その中では背が平均であろう男が答えた
 工夫はさっきの金庫を二人掛かりで持ちその前を女性の学者とややむっくりした学者が歩いて行った
 かなり朽ちた建物の中を進む 所々に部屋への入り口の横に朽ちた扉が立て掛けられている
 この地下抗道は数千年前の高い文明を持った都市のなれの果てである 実際この岩盤に沈んだ建物は何かの儀式の為の塔だったらしく内部はほぼ空洞であった そのため地表に露出した部分を利用して垂直に降下するゴンドラを設置し現在に至っている その地上への乗り物はバケツのような形状の大きいゴンドラ それに乗って直径17mぐらいの深い縦穴を昇る
 吸い込まれそうなほど深く暗い穴の底をちらっと見た班長が身震いしながら
「ヒャー わしはここだけは苦手じゃ」
 笑いながらユウロスが上を見上げると遥か遠くに西日による紅い光の点が輝いている
 彼はさっきの紙の束を一枚一枚素早く正確に黙読して行く
「・・・・」これは見たことがある そう あの設計図・・・
 ゴンドラを動かすエンジン音が近づいてくると彼らは外の赤い西日の差し込むのを見てランプやライトの明かりを消し防寒服を纏った ゴンドラから降りた班長は思い出したようにユウロスに向かって
「ユウロス 君はもう帰るといい 用事があっただろう それともなにか仕事が残っているのかな」
「では 帰らせていただきます でわ」
 彼は言いながら持っていた紙束を班長に渡しその建物を出ると走りだした その長く限りなく白い緑の髪が白いリボンと一緒になびく 走りだそうとする彼に一行は
「気をつけて帰るんだよ」
 声をかけたが彼に聞こえたかは定かではない

 ユウロスは城門へと急ぐ 一行は彼が走って角を曲がって行ったのを見ると城へと歩き出した
 大きな城は今 夜の闇と冬の寒さに静かに包まれようとしていた
 日が暮れる 彼はそんなことを感じつつ新雪を踏み
 今日は何を食べよかな などと考えつつ氷の上を滑るように走る
 ユウロスは城門までの長い距離を走って行く 大きな壁で囲まれた城内は実験施設などの建物が立ち並らび石畳の路は至るところにある窪みに氷を蓄え 少し前に降り始めた雪がゆっくりと石畳を覆い隠そうとしていた

 城門を抜けるとそこからグラメダの街がにぎわっている 石畳の道路を走り 角を何回か曲がり 港に出る 桟橋を通り 彼はまっすぐ自分の家である長さ70メートル程度の船の舳先の前を走り抜ける
 セラミックのような質感の汚れ亡き純白の船体に空が薄暗い影を写していた 彼はこの船に乗り防寒着を脱ぎ壁掛けに掛け階段を降り自分の部屋に向かう
船の中なのであまり広くはないが 部屋に入るとすぐにユウロスは机の上の設計図らしき厚紙をかばんの中に入れ 息切れしたまま階段を駆け上がり 引ったくるように防寒着を纏い船を出た 陽はもう暮れていたが依然街はライトの明かりと人々の活気でにぎわっている 雪混じりの木枯らしのなか 人込みの中を鍛冶屋へと急ぐ
 走りながら独り言をつぶやく
「もう閉まってるかなぁ」
 その時よく知っている男の声が耳にとどいた
「おい ユウロスじゃないかぁー」
 ユウロスは立ち止まって振り返るそこにはしっかりとした体つきの男が立って・・・
「えっ ・・・ あっ ・・ ああラエルか」
 ラエルはふらついているユウロスの持つカバンに気づいて
「ふーん でっ どこへ行くんだ」
 ユウロスはふらついたまま答える
「鍛冶屋だよ」
 ラエルは刃渡り50cm程度の刃毀れのはげしい剣を取り出して言う
「俺も金がたまったんでこいつを直しに」
 ふらついたままユウロスはラエルと鍛冶屋へ
 キーン キーン と金属を打つ心地よい聞こえる中 二人は建物の中に入り
「すいませーーん」
と 二人で言うと 中からまさにおばさんと言える年増の女が出て来て
「何か御用」
 愛想笑いで言った
 ユウロスが話を切り出す
「この設計図の物を作ってほしいんです」
 言いながらカバンから設計図を取り出した
 女は設計図をユウロスの手から取り見いる 平然として
「材質は?」
 ユウロスは設計図の方を見て
「それに書いてあります」
「ちょっと待ってて」
 女は計算をしてからユウロスを見て
「15700ファルになりますが」
と いかにも払えるかなといった表情で言った
 ユウロスはどうだ と言わんばかりにプラチナ製のプレートを二枚差し出した
「20000ファルいただきます」
 年増の女は一度中に入って 再び姿を現し
「はい4300ファルお返しします ・・・ そちらは」
「じゃ ラエル 急いでるから」
「ああ」
 手をふるラエル ユウロスは走りだす が急に
 ぐうーーっ と腹の虫が鳴き
 腹が減ったのが分かったのか足音が次第に重くなり走りに勢いがなくなった と同時に耳に入って来る言葉があった
「・・・今にも攻めてくるかも」
「 ? どこが攻めてくるんだろう 最も近いラオリス王国かな でも今はそんなことはないはず まあどちらにしろここが狙われてる事には変わりないか 今までいろいろあったし」
 一人でぐたぐたと回想をめぐらしながら港にある酒場に入りカウンターに寄り掛かって
「おじさぁん いつものやつにミルクつけて」
「あいよ 今日は早いね」
 渋みを感じさせる爺さんが慣れた手つきで あらかじめ作ってあるサンドイッチにピザ(のような物)にミルクあっと言う間に彼の前に用意された
「ええ ちょっと用事があったので」
 幾つかの硬貨をカウンターにおいて食べ始めた
 爺さんはその硬貨をカウンターから拾いあげ
「まいど」
 食べ終えたユウロスはカバン片手に船にもどった
「たっだいまぁー」
 だれもいないのにあいさつするのは悲しいがと後悔しつつユウロスは鍵を閉め 部屋に戻りベットで横になった・・・

 翌朝
 ・・・リリリリリリリリリリリリリン
 反射的に時計のベルを止め文字盤を見る
「7時27分んー・・・ 27分だとー」時間が ・・・
 考えを抹消しながら急ぐユウロスは顔に水をかけるように洗い チーズが上に乗ったパンに食らいつきながら着替え船を出たが はっとして船に戻り黒いカバンと帽子をもって船を出て 鍵をかけ城へと急いだ
 寒さが全身に染みわたる 道は氷と化した雪に覆われ 家々の煙突は煙を吐き出し朝を迎えている
 ユウロスは全速力でドリフトをかけながら直角コーナーと化した町角を曲がる 最終コーナー この角を曲がれば城の門まで直線コースになる 最終コーナーを抜けた ドリフトから立ち直り再び加速 城の門はわずかに開いている そして その細い間を全速力で駆け抜けた
「よーし」
二号舎入り口まであと200m だぁっしゅっ
!?
 ユウロスの体が宙に舞う
 そのまま体を強いショックが襲いかかり 彼の体が氷の上をこんがらがった姿勢で情けなく滑る
「どっ どーやら氷につまずいたよーだ」うーむ
 何事もなかったかのように起き上がり 再び加速する
 グラメダは極寒の地 防寒に関しては結果的に厚着となるのが幸いしたのか怪我はなかった が打ち身ぐらいにはなりそうなもので
「うううっ」
 やはり痛いらしい 彼は走る 広場を通りすぐに中央の建物へと走る その横には高さ200m程の塔である二号舎がそびえる
 ユウロスはすぐに中央の大きな建物である一号舎の総務課に急ぐ
 軋みながら重い扉はすぐに開いた 総務課の窓口の前で
「すいません 12班は今どこに」
「あら また遅刻? 今は二号舎の四階 12班の専用ルームだとおもうわ」
 数人の職員の中で若い女の人が答えた
「どうも」
・・・ しかし二号舎の四階か・・・ 五階にしか渡り廊下がないからなー ああ辛いー
 考えをそのままにユウロスは一礼をして総務課を後にし石造りの比較的暗い階段を昇り始めた
 彼が五階にある渡り廊下にさしかかったころには息が切れていた はいつくばりそうになりながらやっとの思いで階段を下り四階についた そこからは12班専用ルームの扉が少し開いているのでのぞいてみる と アレイムが中でせわしく動いるのが見えたので中に入って行った
「やあ おくれてしまったー」
 ユウロスが声をかけたのはアレイムという彼より背の高い青年である ユウロスとは7年前に知りあい以後意気投合して良い友人として現在に至っている 彼は息を切らせているユウロスの言葉に反応するかのように
「やっぱりな ! そうだ班長が自分の荷物をまとめとくよういってたぞ 引っ越しでもするのかな ・・・ おまえも早く行ったほうがいいぞ」
「じゃあまた」
 息を切らせたまま石造りの壁によりかかりながら自分のブースへ
「ユウロス ちょっと」
「ん なにミディー」
「リボン直してあげる」
 ラルド・ミディー ユウロスより少し背の低い彼女はユウロスの長い髪の毛を結んでいる白いリボンを一度解き元のように蝶々結びして
「いいわ」
「ありがとう・・・」
 疲れ気味のユウロス
 ここは石造りの高さ4mの円柱状の大きな部屋である その中に机や本棚や暖炉などがあり ほこりこそかぶっていないがかなり散らかっている ユウロスは自分のブースに着くとまず呼吸を整えてから荷物をまとめはじめた しばらくすると
「ユウロス君きみの家は船だったね」
 いつの間にか現れた班長がいつになく真剣な口調で話す
 ユウロスはあわてて返事を
「は はあ そうですが」
「実は今日ラオリス王国が戦線布告して来たと同時に国境が突破された 既に陸戦隊の80%が全滅している 多分一瞬のうちにこの町は征圧されるだろう で 上の決定でこの城の地下にすべてを移すことになった しかし もしもの時を考えて我々12班のメンバーは今日の夕方には脱出する・・・  と くじ引きで決まったんだ だが君は君の船で脱出してもらうよ 明日の朝までに脱出すれば間に合うはずだ」
 言い切るなり班長はユウロスのブースを離れようとする
「しかし班長・・・」
「たのんだぞ」
 決して走ってはいないが素早く班長は逃げるようにユウロスのブースを後にした
「はあーっ なんだかなあ」世の中これでいいのか
 なんて考えながらユウロスはすぐ下の広場に荷馬車を用意させ書物などを運び積み込むのであった

 昼
 ユウロスが最後の荷物を荷馬車へ積み込んだ直後 再び班長が来た
「君の船にはどれくらいの倉庫があるのかね寸法を言ってほしいのだが」
「えーと あれを入れて残りの空きスペースが長さ14m 幅6m 高さ4mですがなにか」
「よろしいでは用意した物全てもって行くように」
 班長は後ろにある荷馬車に合図を送る
「たっしゃでな」
「はぁ 班長もげんきで」
 班長はユウロスの返事を聞き取ると2号舎の中へ姿を消した ユウロスは馬車に乗り込む馬車が城内の道を城門へと進む 城内は現在荷物整理に追われ 学者や坑夫が至るところで抱え切れないほどの荷物を運んでいる
 しかし ユウロスは馬車の音より街の方がうるさいのに気がついた すぐに手綱を取っている人に聞いてみると 自分たちは街に残り反乱軍として活動する集団の一員だと答えた それでは答えになってないと問いただすと みな荷造りなどであわてているんだ ということだ
 ユウロスは二人の友人が気になりすぐに訪ねようとして船の鍵を渡し説明して荷馬車を降りた
 そして すぐにラエルの泊まっている下宿に急いだ 彼はユウロスに寄って来たほうの友人である なんでも見習いの剣士だが その腕は立つほうであるらしい
 しばらく混乱した人込みの中を走ってラエルの住んでいる下宿の玄関についた ユウロスは息を切らせて下を向いてぜいぜい言っている
「逃げるんだろお供するぜ 先にいってるからな」
 ラエルの声に玄関先ですれ違いざまに言いたいことを言われたユウロスであった
ほえーっ と 放心していたが 次はリネだど考えつつ人込みを走る
 走りだし角を曲がろうとしたその瞬間いきなり
「おい ぼうずできてるぞ」
 どなり散らした声で呼び止められた
 振り返ると鍛冶屋の人だと分かった すぐに麻の袋を渡された
 その重量感に戸惑いながら
「ありがとう」
 礼を言うと麻袋をかついでリネの家へと急ぐ
「ええと」リネの家は魔法書店だったな 店主がチャールだったから 話せば分かると思うが長い付き合いだし・・・
 そんなことを考えつつユウロスは再び走り始めたがすぐに
 ドカッ
 誰かとぶつかったらしい ユウロスは一回転して氷の上をかなり滑った 起き上がろうとするユウロスのまだすこしぼやけている頭にリネの声が響き渡る
「あっ ごめんなっ ・・・ ユウロスじゃない!よかった私も一緒に・・・」
「じゃあ夜までに船で 急いでるから」
 ユウロスはリネの姿を見て言った
一体どこで私ががグラメダから単独で逃げるという情報をつかんだんだ?
 そんな問いかけをすることもなく彼は手短に済ますと また走り始めたそして家である船に入り防寒着を脱いだ船の中は常に適温に保たれているからだ
 例の荷馬車の荷物の積み込みが行われている最中 冷蔵庫を開けて食料を調べ始める
「ラエルー」
 ユウロスはラエルが来ていることを前提として声を船内に響かせる
「何だぁー 何か用か」
 ラエルが階段を上がって来た
「これで・・・(書き書き)・・・この紙に書いてあるものを買って来てくれ」
 ユウロスはメモと5000ファル渡した
「行ってくるぜ」
 ユウロスは例の馬車からの荷物の積み込みを手伝うことにした

 時間の経過
 ユウロスにはつらかったのか汗びっしよりになって 終わったころには力尽きそうになっていた すぐにパンを食べて いや口の中にほうり込んでエンジンの点検に入ったがどこも壊れていなかったので処置を施す必要もなく比較的早く終わった・・・ エンジンルームから小さな部屋が4つあるデッキへと梯子を昇り上部デッキへと階段を昇る すると ラエルがいつの間にか帰って来ていた
「よう 店が閉まっていて なかなか大変だったが お前ブーメランが得意だったな」
「ああ 今もだ」店が閉まっていたのにどうやって集めたんだか・・・
 ユウロスは自信たっぷりのようすで返事を返した
「ほれ 何かのときには役に立つ」
 そう言って金属製のブーメランとブーメランの入れ物を渡された
「ありがとう」と 言っておこうかな どうせ私の金なんだろうが・・・
「俺の部屋どこだ」
 ラエルの言葉にユウロスは少し考えて
「ああ ついて来いよ」
 二人は階段を降りてユウロスは階段からみて左側手前から二番目の戸を開け言った
「ここを使ってほしい」
「よし ここだなじゃあ荷物整理するから」
 赤い絨毯の敷いてある通路の荷物をその部屋へ運び始める
「ああ」
 少し遅れて返事をしたユウロスは そのまま階段を上がり船外へ出て今度は船の外側を調べることにした こちらも異状は無かった さらに船内のソナー・レーダー等の計器を点検し
「えーと他には水ぐらいかな」
 海水を飲料水にする装置 あるにはあるが時間がかかるので井戸の水を汲もうと船外にでようとしたそのとき ユウロスの目の前には・・・
「ふう・・・ やっと着いた・・・ ねえ 私はいつもの右2番目の部屋を使わせてもらうわ」
 彼の目の前にリネが防寒着に付いた雪を払っている
「えっ・・・ああ いいよ」
どっちかといわせてもらうとただの固まりってかんじだなぁ
 あっと言う間にたくさんの荷物を背負ったリネは階段を降りた
 その反対にラエルが壁にはりついて上がって来た ユウロスはすぐに
「水汲み手伝ってくれる」
 防寒着を纏うユウロス
「ようし やろうやろう」
 ラエルは肩を回しながら答える
「じゃあそのポンプもって来て 私はホースをもっていくから」
 ユウロスは素早くホースの端を船体の屋根裏とも言える所にくっつけ 反対側をラエルの方へと引っ張る 桟橋からすく側の井戸の周囲には人の気配はなかった まだ町の方は騒がしくこの辺りが静かなのが不思議だった 雪が辺りを白く染めているのが静けさを強調するなか 彼らは新雪を踏みつつ道具を持ってくると すぐにポンプにさっきくっつけた送水ホースの反対側と 井戸に投じる方のホースをつけた そのホースの反対側には石がくくりつけてありそれをラエルが井戸に投げ込む 水音を聞いてよし今だ とばかりにユウロスはラエルにさしずする
「よし ラエルこれを右に回してくれ」
「よしきた ぬおぉーーーぉっ」
 ラエルはハンドルを右に回す幾つかの歯車と組合わさってた音と水の鈍い音がする ユウロスは走って船にもどり天井にある飲料水タンクのメーターを見上げる
「30・32・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96・98」
 ユウロスはラエルに走り寄りながら大声で
「すとぉーーぷっ」
「よーし・・・ ふうっ」
 ラエルがハンドルを止めた ユウロスは船に戻り船側のバルブを閉め ラエルに井戸側のホースを引き上げ手動ポンプ側のコックをひねり ポンプをそのままラエルにもってこさせた そして船側のバルブが閉めてあるのを確認してホースを取って片付け ラエルが戻ると戸を閉めた
 一息ついた後
「しばらく 出てくる」
 伝声管ごしに言い防寒着を着たままユウロスは船を出て そのまま凍りついた石畳の上を静かに歩き まだ騒がしい街の中に消えた
「いつの時代も戦争の犠牲になるのは一般市民か」
 呟き 人気の少ない商店街の中に入ってゆく 商店街と言えどアーケードはなく店からはひさしが営業中の店のみ張り出している程度である シャッターがまだ開いていてその中から明かりが見える店の一つにユウロスは入っていった
「チャールいるか?」
 ユウロスの声を聞いて奥からすっきりとしたなりの老人が出てきた
「こんな時間にどうした?」
「リネの事は良いのか?」
 この質問を聞いたチャールはしばらく困惑の表情を示していたが何か思い出したように
「そうだな だがいいんだ 孫はわしの息子に似て言い出すと手が着けられん それにユウロス おまえさんがいてくれれば心配はない」
「そうか・・・ しかし いいのか?」
「もし 私がリネを殺さなければならない状況に陥ったら 間違いなく私はリネを殺すぞ」
「その時はその時だ わしはそうはなら無かったがな」
「では ある程度の責任は持つよ」
「ひどい話だ ・・・ ユウロス」
「ん?」
「人間とは進化しないものだな・・・」
「・・・」地球史の一説 か しかし私には・・・
 しばしの沈黙の後ユウロスは口を開き
「すまない・・・」
「なぜ謝る ユウロス」何か気に障るような事を?
「すまない・・・」
 ユウロスはチャールの顔を見ることもできずに悲しみにとらわれたように立ちつくしていた
「分かった 何も言うまい」生きているが故の 悲しみか
 チャールが店の奥へ入って行く ユウロスはその後ろ姿を見ることもなく店を出 その姿を暗い商店街の闇の中に隠した
 船に辿り着いたユウロスは階段を降りて倉庫に向かった その中にはいろいろな物のかたまりがひしめきあっていて その上の人目によくつく所に手紙がおいてあった さっそく封をあけ読んでみる
「・・・・・・!・・・・?・・・・!?・・・・・・・・・・ほほう」
 読み切るとすぐにポケットにつっこみ倉庫を後にした 重い麻袋をもって部屋に入り机の上にばらまき
「えーと 設計図はどこだ ・・・ あ」
 設計図を広げフレームに部品を組み込んで行く
「うん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 しばらく沈黙していたが
「復元終了」
 ユウロスが作ったのは不出来な俗に言う光線銃 でも出力の割りにはあまり強くない そう思いながら丸い窓を開け先を向けた ヴオォーン という音とともに青白い光が飛んで行った
 喜びもつかのま なれない昼間の重労働がたたったのかぶっ倒れて大いびきをかいて寝入ってしまった

 次の日
「・ ユ・・ お・ろ・ ユウ・スおきろユウロスおきろ!!!!」
 ラエルの声が呼ぶ
「んーー おはよう」
 部屋の床の上でユウロスは目をこすりながら
 ボカッ
「おはようじゃねぇーもう十時じゃねーか」
「まだ十時だよ」
殴ることないじゃないか・・
 ユウロスはむくりと起き上がり部屋を出て階段を上り顔を洗った
「逃げなくていいの」
 顔をふいているユウロスにリネが心配そうにきいた
「逃げるよ でもまだ早いこの船は速いんだから それよりどこへ逃げるかが問題だよ」
「イトスはどうだ」
「うん たぶんほかのもそこにいくんじゃないかなぁ・・・うーん・・・ ! でっ どうしてイトスなんだっラエル イトスに行くには赤道を越えるんだぞ」なにかあるな
「いやぁーただ思いついただけだよ」
 これはウソですと言わんばかりの顔
 ユウロスがじろじろとラエルをみて
「まあ追求するのはやめようかな・・・ ではイトスというわけで着替えて来ますので」
 言いながらユウロスは二人を追い出し自分の部屋の戸を閉めた
「ところでラエル さっきは『いやぁーただ思いついただけだよ』て言ってたけど本当はなんなのかな」
 リネが好奇心そのままでたずねた
「なんでもないから」このやろう などと思ったのもつかの間
「いや なにかある」言え ラエル
しつこくリネが言う
「なんでもないって」しつこいなぁ
「ぜったいなにかある」はやく白状しなさい
 そのころ着替え終えたユウロスが作った昨日制作した光線銃を持って出て来た 当然そこではリネとラエルが言い合いをしているわけで・・・
 ユウロスは大きく息を吸いこんで
「うるさぁーい!!」全く・・・
と ありったけの声量をぶちまけた 二人はぼーぜんとしてユウロスを眺める ユウロスはすぐに階段を上がり扉の上に操舵室と書いてある部屋に入った
 中は少し暗い ユウロスは操縦席ならぬ操舵席にすわりキーボードにシステム起動用のコードを打ち込む 3Dの立体映像であるメインパネルが現れその下のサブパネルに文字が表示される
 ユウロス ノジール
 お久しぶりです 何か変わった事でも?
「亡命のような事をするんだ」
 分かりました 機能が復帰するまでマニュアルコントロールになります
「出港する」
 言ってサードエンジンをまず始動した
 軽快なモーター音が響く ユウロスはたくみに船を操舵し少し流氷の浮いたもう冬の港を出かかった そのとき
「ユウロスあれーっ!」
 リネが伝声管ごしに叫んだ
 ユウロスが全天周を映す写すメインパネルを見る そこには地球史の第2次世界大戦後並のラオリス王国艦隊がその灰色とも黒ともつかない色をグラメダの艦隊の向こう 流氷の浮いている白い海の上に姿を映している 一触即発の雰囲気だ
「ほう」
 ぼーーっとしたユウロスがいった
「なんとかしろよ」
 伝声管ごしにラエルの声が聞こえる
「うむ」
 操舵室で冷静的なユウロス
 船の中はいつの間にかリネとラエルが混乱のまっただなかそんなとき ユウロスは操舵室で操縦桿を握って確認しながらレバーやキーを操作し計器類に目をやる
「マニュアルコントロールか メインエンジン内圧力上昇へ・外部対圧力バリアフルパワー メインエンジン内対圧力バリアON 圧力300へ・・・・・最高速航行へ サブエンジンスタート ・・270・・280・・290・・300 Fire」
 いきなり船がさっきまでの運転速度から さらに加速する
 ユウロスはとっさに
「艦隊を突き抜けるぞー」いけぇーーーーーー
 グラメダの新造艦の間を抜け船尾ノズルから炎としぶきを上げ海を切り裂きながら ラオリス王国の艦隊の中へ

 ラオリス第2艦隊旗艦
 ユウロスの船から数百mの位置にあるラオリスの空母の艦橋に一人の男がラオリス海軍第2艦隊司令官としてグラメダ攻略の命を受け乗り組んでいた この男の名はディアス・エピックと言いリネの父親である 高名な魔道士であるせいか海軍の要職に付いている またこの男の乗る艦は最大級の航空母艦でもある 参謀が双眼鏡を除きながら
「司令 高速艇が我が艦隊を突破する模様」
「作戦開始だ・・・ 全艦 敵に対し 攻撃する」
「はっ しかし12時にならなければ攻撃は・・・」
 この作戦参謀の言動を無視し司令官は
「そんなもの律義に守れるほど私は紳士ではないよ 艦長・・・  攻撃開始」
「はっ 全艦 作戦に従って 敵艦を包囲しつつ 攻撃にあたれ」
 張り詰めた声で通信班長がラオリス第2艦隊全艦に通達した
「open fire」
 次の瞬間ラオリス軍艦の砲門という砲門が一斉に火を吹く
「高速巡洋艦を2隻 高速艇にまわせ」
「カリア フルシュ 今抜けて行った敵高速艇を攻撃にあたれ その後の処理は任せる」

 ユウロスの船 内部
 艦隊の集中砲火の中を加速しながら突破した事を確信して
 ユウロスが一人喚声を上げる
「いぃーやほぉうぅー」
 まだ二人は混乱を通り越して きょとんとしている
「なっ なに今のはなんかすごかったけど」
 リネが言った
「さあ なんだったんだぁー」
 ラエルが言った
「いっ 今も速いんだけどなぁ」
 ユウロスも操舵室から言った がすぐにエンジン音がおかしいのにユウロスは気が付いた 音が低くなって来たのである
メインパネルには第7ブロックに異常 メインエンジン出力低下と二つ表示されていた
「メーンエンジ停止 サブエンジMAXパワーへ」
 言いながらユウロスは操縦桿やレバーを操作する すぐに電車が止まるような感じの強い慣性が身体を襲う その時すでに船のまわりでは水柱が次々に上がっていた ユウロスがメインパネルで後方を確認する ラオリス軍の高速巡洋艦がおって来たのだ
「ああー 二人は頼りにならんか よしフルオートモードだ」砲弾を避けていろよ
 事ずけるように言うと操縦席を離れた
「ラエル リネ静かにしているんだぞ」しかし言っても無理か・・・
 そう言い投げて階段を降りていった
 船の周辺に多数の水柱が立ち並ぶ
「リネっ てめえの魔法でなんとかしろっ ぐずぐずしてると魔法攻撃くらうぞ」
 ラエルはあの船に魔法を使う者が乗っていると予想しどうやら正気に戻った
「ラエルこそ そこのユウロスが作ったもの使ったらいいじゃない」
 いつの間にか正気に戻っているリネ
「えっ  ・・・  ん じゃ二人同時に出るかっ」
 ラエルが決断した
「じゃ そーゆーことで」
 リネが左舷の扉をもって言った
「せーのっ」
 寸分の狂いもなく二人同時に出る
 風の抵抗を感じながらラエルが
「ところでどうやって使うんだろライフルと同じだといいんだがっ」
 ライフルと同じように扱ってみる すると ヴォン という音とともに青白い光が飛んで行った
「同じみたいだな・・・ 沈めてやる しかし」言ったものの 戦闘艦相手にこんなもの効かないよなぁー
 ともかく ねらいを定めてラエルは一発撃ったが弾着位置を確かめずにリネが気になりそっちを向いた
 そこにはリネが薄ぼんやりと黄色っぽく光っていた そう思った瞬間ラオリス軍の高速巡洋艦を雷撃が襲った その高速巡洋艦は黒煙を吹き上げスピードが落ちてゆく
「すっっげーえー」わんだふーーーー
 ラエルはあっけにとられてまっ白けっけになっていた
 そのころユウロスはエンジンルームで悪戦苦闘していた
「ああーーーっややこしい くそおおおっ」こんなのならもっと簡単にするべきだったぁ
 うーむ 悪戦苦闘しています

 時間の経過
 上ではいつの間にかラオリス軍の高速巡洋艦を駆逐し終わっていた
「いやー魔法は強いねー全くこのライフル 途中でエネルギーが切れたんだぞ」
 ラエルが感心している
「雷撃だけは自信があるんだ」
 リネは笑ってそう言った
 しばらくの間二人して戦果を話していたがリネが
「ところでユウロスは?」
 二人がそう言えばなどと思っていると階段をゆっくりと疲れ切ったように上って
「エンジンの修理終わったよ」もう疲れた
 げっそりしたような声だ
「大丈夫かユウロス」
 二人同時に言った
「ああなんとか」
 ユウロスがげっそりしたような声で答えながら操舵室に入った 操縦席に座り
「じゃあゆっくりいこうかな 速度45ノットへ ・・・ 対圧力バリアOFF フルオートっと 頼むよ」
 了解
と サブパネルに表示された 操舵室からでて来て一番
「ではおふたかた 私は倉庫にいますので」
と 言いながら階段を降りて行った
 ラエルが降りていったユウロスを確認して
「どうもあいつの性格はよく分からんな」
「ほんとにそーね」
「はっ はっ はっ あんたら いいお笑いコンビだよ」
 伝声管ごしにユウロスが言ったが二人がそれを聞いていたかどうかは彼は知るよしもない

 しばらくしてちょうど昼に差しかかった時 激しい振動が船を襲った
 とっさにユウロスが伝声管にどなった
「何が起こったんだぁー」
 リネが伝声管に向かって
「空から攻撃して来たわー」
「なに?」たぶん空母の艦載機だろう 航続距離は恐らく・・・・ いや
 考えながらユウロスが上がって来てすぐ操舵室に入った シートに座り 手動に切り替えキーボード片手に操縦桿を握った そして一呼吸おいて
「誘導エネルギー砲 スタンバイ」
 火器管制システムはいまだ読み込み中 しばしお待ちを・・・
 読み込み及び調整終了
 この文字に反応するかのように 前甲板の操舵室のすぐ前に縦に四連装の小型のミサイルポットのようなものが三つ出て来た メインパネルには全部で 7個の点が動いているそれぞれ敵の軍用機に反応している サブパネルには
 上空の敵機は現在7機 現在撃墜可能は5機 残り2機はレーダに反応せず
 エネルギー充填完了
 撃墜しますか?
 ユウロスは操縦桿のボタンを押しながら 「発射っ」
かすかに赤い光が曲線を描きながら敵機にあっと言う間に追いつき四散するのをユウロスは2D処理された全天周のメインパネルを見て確認し
サブパネルに
 上空の敵機5機撃墜 2機は戦場離脱
と 表示されているのを確認した しばらくして ため息と同時に言葉がもれた
「戦争か またあれが必要にならなければよいが・・・」
 ぐぅーーーっ
「うっ・・・ おなかすいた」
 この一言でユウロスの頭の中は昼ご飯の事でいっぱいになった

 航空母艦内の豪華な船室の中
 ドアを開けるが早いか
「指令っ 例の高速艇に向かわせた攻撃機ですが・・・」
と 男の低い声が一瞬止まった
 どっしりと椅子に腰掛けたディアスは
「つづけろ」
 言葉を投げた
「はあ 帰還機は2機 攻撃に失敗しました」
 ディアスはワイングラスに赤ワインを注ぎながら話始める
「あれは いや あの船は我が海軍が総力を挙げたとしても 勝利は奴がもって行くだろう」
 静かにワインを一呑みした
「では・・・ どうすれば」
 男はたずねる
「簡単な事だ 奴 いやユウロス・ノジールという男以外が操っていれば話は別だ・・・しかし・・・ いや 下がっていいぞ」
 ディアスがワイングラスに再びワインを注ぐ前に部屋から男の姿は消えた
「しかし 美味いなこの酒」
 ディアスは小さな幸福に浸るのであった

 ユウロス・ノジールの船 内部
 船の操縦をオートにしたままなにも食べずに 機械類の点検をし玄関兼応接間兼台所である上部船室部に出たすると
「ユウロス 夕ごはんだぞ」
 ラエルが食べながら言う 四角い窓の外はもう日が暮れていた
「おっ 俺は昼を食べなかったのか」
 そーだったのかー
「早くしないとなくなるぞ」
 ラエルがせかす
「はいはい いだきます」
 ユウロスがラエルのがっつくような食べ方を見て
「こぼすなよ汚い」
「まあまあ」
 ラエルはあまり気にしなかったようだ
 食事がすんでテーブルを拭き紅茶の入ったコップに手をかけて外を眺めようとして首をひねった すると 真っ暗な水平線の辺りに光がいくつか輝いているのが見える
「サーチライト みたいだなー ラオリスの航空母艦じゃなきゃいいけど」
「何見てるの ユウロス」
「あれ」
 ユウロスはリネに水平線上の光を指さした
「かなり大きい船だねー 何か点滅してるよ」
「信号かな ちょっと他の光と混ざって見づらいな リネの望遠鏡 望遠鏡もって来て リネっ」
「ユウロスって見かけによらず目わるいのね」
「はやくリネっ」
 ユウロスがリネをせかす
「はいはい」
 リネは階段を降りて行った
 突然ユウロスの頭に重いものがのしかかった
「ユウロス 何見てんだ」
 ラエルがユウロスに寄り掛かってきたのだ
「重いっ 離れろ」
 ユウロスはラエルの腕をのけながら
「はいよっと あの光かぁ」
「ああ ラエルあれ何だと思う」
「さあ・・・」
っと その時
「もって来たよ ほらっ」
 リネがユウロスに向かって望遠鏡を投げた
「わあっと!」
 みごとにキャッチするユウロス
「どれどれ」
「お前の魔法で何か分からないか リネ」
「あのねぇ ラエル 私だって万能じゃないわ」
「あっそう ユウロス何か分かったか」
「多分味方の船だと思う 行ってみるかな」
「行ってみよう 行ってみよう」
 リネとラエルの言葉が重なった
「お前さんら 双子か?」
 捨てぜりふを残し操舵室入った
「なんで私が こ ん な や つ と 一緒にされるのよぉー」
「いちいち くぎるなぁーーああーっ!」
 ドスゥン
 船が方向を変えた時にラエルが不安定に立っていたのでラエルは床にしりもちをついた
「まぬけっ」
 リネがラエルを見下ろす
「なんだとぉーっ」
 とっさに起き上がり言い返す(以下省略)

 船はゆっくりと光源に向かって進む
「あの船のデータと距離を出して」
 独り言のように話すユウロス メインパネルに船のデータと距離が出て来た
「うーん 三隻 固定武装の搭載は未確認?・・・ 貨物船? かなぁ」
 武器が内蔵の場合もあるし
 船は向きを変え貨物船らしきもののそばに着けた その船の方を向いている出口以外をロックし操舵室から出て来たユウロスは二人にたずねた
「さてどっちかに留守番を頼みたいのだが」
「あんたが留守番をすればいい」
 リネはユウロスに言った
「別にそれでもいいけど」
 ユウロスが口ごもった直後
「じゃあ決まりだ」
 ラエルが決定した
 しばらくして二人に向かって手を振るユウロスは策に溺れたと思っていたことだろう
 ラエルはリネの魔法で貨物船らしきものの甲板に上がった
「あんた無茶苦茶重いよ」
 リネは早くも疲れた様子
「まあそう言うな」
 ラエルはあまり気にしなかったようだがリネの精神的疲労感はすぐに魔法に影響するのである
 その船の甲板はずーっと広く明かりだけついて静まり返っていた 端の方にあるブリッジの明かりもついていない
 突然一体の武装した二足歩行型ロボットが甲板の明かりの中に姿を現した 近寄って来て二人にガトリングの銃口を向けると
「この船をグラメダの特別機動艦隊旗艦と知って侵入したのか?」
 冷たい言葉が二人の耳に入る しばらくあぜんとしていた二人だが
「ということは味方なわけね」
 リネが吹き出しそうに言った
 だがロボットは
「船の所属を言え」
 冷たく質問してくる
「まてよ おい もう一人を連れてくるから」
 ラエルは甲板の端に立って言った
「その必要はない」
 ロボットは飛び降り ユウロスのいる船の甲板に静かに降りたった
 ドアを開けユウロスが出て来て
「何だこいつは」
 驚きの声を上げる
 銃口を向けロボットは
「船の所属を言え」
 冷たく質問した
 ユウロスは
「ガルバーフォース所有のライジングアローだ」
 銃口を向いて言った
「あの上の二人は」
 ロボットの質問は続く
「私の友人だ」
 ユウロスの返答にロボットはしばらく黙っていたが
「分かりました艦長 後で艦橋のほうへ」
 ロボットは甲板を離れ戻って行った
「艦長か やれやれ 面倒なことにならなければよいが・・・」
 ユウロスはため息のようにつぶやく
 上で見ていた二人はロボットが離れたのをよしとしてラエルが縄ばしごを用意し始める
「ユウロスーっはしご降ろすぞー」
 ラエルは縄ばしごを投げ放した
 がっ
 縄ばしごの先端がユウロスの頭にHIT しばらくは鐘が鳴り響いたことだろうが・・・
 ユウロスは少ししてからゆっくりとはしごをのぼりはじめた
「ユウロスだいじょうぶ」
 リネが心配しているようだがユウロスは
「多分」
と 一言しか言わない
 縄ばしごを登りきったユウロスは無言でブリッジへ向かって走った 薄明かりの中にユウロスが消えて行くのを見て二人は後を追った 二人はユウロスが入ったブリッジへ入るための扉を開けようとしたがロックされていてびくともしない
 そのころユウロスは艦橋の扉を開けようとしていた
 シュッ という空気音と共に扉が開いた 中は暗く静まり返っていたがしばらくしてまぶしいほどの明かりが中を照らし始めた
「なんだ?・・・・・・・」機能が復活した?
 ユウロスはつぶやいたすると
 「私はこの航空母艦リバイアサンのブレイン HAC08だ」
 どこからともなく音が響き渡る
「何のために私を呼んだ」
 ユウロスはブレインに問う
 「あなたの船ライジングアローのブレインUAI02のデータが欲しい」
「なぜ?」
 「私には魔法に関するデータがないがUAI02にはあると分かったからだ」
「分かった 許可しよう」
 ユウロスが答えると
 「ありがとうございます」
 その場を離れようとしたユウロスが振り返って訪ねる
「この船には人はいないのかい」
 「いますよ200人ほど でもいまは寝ていますから」
「確かに この船からも生命体反応があ・・・」ったかなぁー 見てなかったなぁーそういえば
 突然ブレインは
 「ユウロス艦長グラメダ陥落とありますが・・・」
「ああ たしかにグラメダは落ちた」
 「では私はどうすればいいのですか」
「脱出した者たちがいるそのブレインはたしか・・ HAC15だとおもうが」
 「緊急脱出用巨大潜航艇オケアノスのブレインですか?」
「そのはずだ たった今からきみにそれが安全に航行できるように命ずるよ」
 「分かりましたユウロス艦長」
「私は帰るぞ」
 「また会うことを」
「ああ」会えればな・・・
 ユウロスは扉をあけ艦橋から出た 甲板へ出ると二人が待っていた リネは心配そうにユウロスを見る
「何ともなかった?」
「ああ 何ともなかったよ」心配してくれるのはうれしいが・・・
 ユウロスが答えるとリネの表情は元に戻った
「じゃあいこうか」
 ラエルが言った
 船にもどると艦隊は動き始めた
「そのうち また会えるさ」生きてさえいれば
 ユウロスはつぶやいた
 操舵室に入るとユウロスはイトスまでの航路計算をして操舵室を出 そのまま部屋に入りベッドに横になった・・

 翌朝
 操舵室に入るとユウロスはサブパネルに
 なぜわたしは話ができない?
と 表示されているのを読んで
「このパーツは俺が作った訳じゃあないしなー」
 しかしHAC08もHAC15も話すことが可能なのになぜ?
「端末機だからじゃないかHAC08もHAC15も本体だし」
と ユウロスの返答
 そうかもしれませんが・・・
 気がついたようにユウロスは
「そういえばお前の本体はどこだ」
 それは言う訳にはいきません
「なぜ」
 あなたの仲間から止められています
「?・・・ 分かったもういい」
 突然字体が変わった
 艦隊確認 戦艦3隻 巡洋艦7隻 空母2隻 潜水艦14隻 補給艦3隻
 距離252Km 艦隊速度47ノット 方向11時53分 最大射程86Km48%
 空母より戦闘機12機発艦こちらに来ます なお武装はミサイルのみ 潜水しますか
「これより潜行する スタンバイ」
 オール グリーン
 この表示を確認し艦隊と船の位置関係を映したメインパネルに目を置き
「潜行する」
 そう言って赤いパステルカラーのレバーを倒した 船は徐々に水の中へ沈む
 質量操作正常作動中
 潜水率70%・73・76・79 と変わるサブパネルの表示を見ながら
 ユウロスは操縦桿を前に倒した 船は傾き海の中へ
「急速潜行 深度400」
 船は無音で海の中へ
 巡洋艦1隻 潜水艦3隻 接近中 距離208Km 速度60ノット
 敵機12機上空へ展開 敵機4機発艦 武装T−670型魚雷2対
 当艦が撃沈される確率 63%
 作戦変更を要求する
「全方位にエネルギーシールド 対圧力バリアともにフルパワー メイン・サブエンジンMAXへ 浮上し 誘導E砲・Hoレーザースタンバイ 光学照準機も使え」
 ユウロスはそう言って操縦桿を引き上げた すでに深度270である 船が船首を上に少し上げかかったときにサブエンジンが始動した
 深度74・・・64・・・54
 カウントダウンのより早く深度を表す数値が減って行くのを見ていると 爆発音と共にメインエンジンがアフターバーナー全開で始動した 一瞬のうちに水面上に出てロケットエンジンの勢いで進む船はさながらロケットの様に空高く上っていく
「姿勢制御 −10度」
 船首の甲板の一部がスライドして中から姿勢制御用バーニアが姿を現すと同時に炎を吹き上げた
 敵機16機上空に待機中 現在撃墜可能は16機
 Hoレーザー      照準 巡洋艦1隻
 発射しますか?
 ユウロスは操縦桿のボタンを押した
 16本の赤い光が曲線を描きながら敵機にあっと言う間に追いつき四散するのと同時に 青い細い光が敵巡洋艦を包み込み 巡洋艦は間もなく海に消えた 一瞬の出来事を確認したユウロスはつぎの着水のショックに
「うわぁーーーーーっ」
 とだれにでも『わたしは驚いています』と 言わんばかりに驚き すぐに若干戻していたスロットルを入れた
「全速前進っ  っうーーーっ」押し潰される・・・
 慣性消去装置エネルギー不足 慣性中和率35%
と サブパネルには表示されていたが それに目をやる暇も無く あまりの加速度に体がついていかずに体が押し潰される感覚にユウロスは失心した・・・
 その頃リネとラエルはというと
「ううっ 何だったんだ今のは なあリネ ?リネっ リネーっ」
 リネは泡吹いて気絶
「はあーーーっ この分だと リネより体の弱いユウロスは死んだかもしれんな」
 操舵室のドアを開けたラエルは
「ユウッ ああやっぱり」
 としか言えなかった 自分の予想が遠からず当たったのを少し深めにかみしめた それからユウロスを持ち上げて激しく降る
「・・ ・・ ・・ わっ わっ わっ わっ わっ わっ おわぁっ とっ とぉめぇろぉー」
 ラエルはユウロスを落とした ユウロスはしりもちをついて床に落ちる
「ううっ肺の辺りがズキズキする」
 ユウロスは肺の辺りをおさえて操縦席につきサブパネルに目をやる
 速度2034ノット 3時間でイトスに到着予定
「分かった まかせる」
 ユウロスはそう言って肺の辺りをおさえながら階段を降りた 部屋についたユウロスは肺の辺りをおさえたままベットに横になった・・・・・・

 ラオリス第2艦隊旗艦の艦橋
「司令 巡洋艦ティーホウ及び戦闘機16機撃墜されました」
 通信班長がメモを読み切った
 ディアスは双眼鏡を片手に
「そうか」
と 言い残し 用意された朝食に手をつける
 しばらくしてディアスは艦長に
「ひとまず母港に戻ろう なぁ艦長」
「了解 作戦終了につき母港へ帰還します」

 翌日
 朝になってユウロスが起き甲板に出てみると外は一面の霧に包まれ 船は凪の静かな海の上に静かに浮かんでいた 外に出たユウロスは真っ白の中 船首に立ち止まり深呼吸をして中に戻った 中に戻るとリネが上がって来た
「おはよう ユウロス」
 あいさつをして顔を洗うリネを見ながら階段を降り倉庫へ 倉庫の中は修理・釣・工作用具などがありユウロスはその中から釣り道具を出して 甲板へ出て餌を付け糸をたらした
「なにしてるの」
 リネが出て来て聞く ユウロスは振り向かずに
「朝ご飯を釣るのさ」
と 答えた
「期待してるわ」どーせ 釣れないよ
 皮肉を交ぜた言葉でリネが返事し中に入った行った
「どーも」絶対に釣ってやる
と ユウロスは思ったことだろう
 風は暖かく霧深く春の日の朝と言った感じだ

 一時間経過
「ユウロス焼けたよ」
 リネの皮肉がユウロスの精神を切り裂く
「あーっ どーして釣れないんだ」
と そのとき 躍動的な感触がユウロスに伝わった
「きたー」
と 歓声を上げ 引き上げた 月並みの魚が一匹釣れたのである
「リネッ 釣れたよ」
「はいはい よーござんした」
 腕をくんで少しふてくされた感じでリネは言った ユウロスはしばらくしてその魚を塩漬けにした
 ラエルが起きたころになると日は高く昇り霧が晴れてきた ユウロスは操縦席に座り操縦桿を片手にサードエンジンを始動した モータの音が心地よくユウロスの耳に入ってくる
 目の前にはイトスの港が開けて来た 港を埋め尽くす木製や石造りの桟橋に大小様々な帆船や動力船その向こうには造船所のドックが とにかくグラメダより格段に大きく活気のある港であった
 このイトスは昔の魔法文明が最も栄えた大陸の沈み残りで今でも大半の人が何らかの魔法をつかえるというものだ とは言うものの大陸を沈めたのはユウロスなんだけと・・・
 そんな事はさておき ユウロスはいつもどうり港の手前で停船し甲板の上で待っている
 すると小型のボートがよって来て
「入港かい?」
 ボートの上にいる人がたずねた
 ユウロスはその人に
「この手紙を最高責任者に」
 班長のくれた手紙を渡した
 ボートが船から離れて行き それからほぼ20分すると戻って来た ボートの人の指図により船は港の中へ しばらく進むと『桟橋へ着け』の合図 船は反転して船を桟橋に着けた しばらくして三人は船の甲板に出て桟橋に降りた
「おおっ 地震か?」
 ラエルが不安定な格好で二人に言う ユウロスはそれをよそにボートの上にいた者のところへ リネとラエルはそれを見ている
「何やってんだ あいつ」
「しらないわ」
 リネが逃げる そんなことやっているうちにユウロスの姿が消えた
「どこいったんだ あいつ」
 リネはラエルをよそに町のほうへ そのころユウロスはいわゆる町長の所へ足を進めていた ユウロスの前方に二階建ての比較的この街ではモダンな建物が見えて来た とその時
「ユゥーロォース」
 リネが追いついて来たがユウロスは
「ここでまっててね」
 子供を相手にするようにリネに一言告げるとその建物の中に消えた 中には幾つかの部屋があり階段を上ると二階の奥の部屋の戸が少し開いていて中に円卓が見えた その部屋に案内されたユウロスは中に一人の中年があの手紙を前にしていた 後で分かったことだが その男こそこの町の町長さんだったのだ 男はユウロスを見て
「グラメダ陥落と言うのは本当か」
「本当です」
 ユウロスもまた男を見て椅子に座る
「グラメダはラオリス王国軍には手も足も出なかった・・・ まあ すべてその手紙に書いてある」
 部屋を足早に立ち去ろうとしてユウロスは男に呼び止められた
「待ちなさい 停泊許可証だ」
 ユウロスはそれを受け取りポケットにしまい込み部屋を出た
「何か訳のわからん事言ってた気もするが」まあいい
 モダンな建物の外に出るとリネが
「なにしてたの? あたしを子供扱いして」
「別に」
 ユウロスは歩き始めたのでリネは後を追っかけた しばらくいった所には二人が予想もしなかった事が待ち受けていた
「やっほー お二人さん」
 なんとそこにはラエルとリネより少し背の低い女の子が並んでいた ラエルはユウロスとリネにその女の子の紹介をする
「あっ そうだ初対面だったね 俺の妹エレナだよ」
 エレナは二人に ペコリ とあいさつをした
「おれ今日は実家に泊まるから よろしく」
と 言ってラエルらは行ってしまった
「あっそーー」
 半分口が空いたようにユウロスはつぶやいた
「いこうかユウロス」
 リネはユウロスの顔をちらっと見て走りだした ユウロスはその後を追っかけて大通りを走りだした こうなるとただの徒競走になる しかし 悲しいかな ユウロスはリネにぐんぐん差がつけられた ユウロスが船に着いたのはリネが着いてから1分してからだった ユウロスは船に戻り朝食を作ろうとしていた この船の台所には火の気はない いわゆるホットプレートの超強力版が二つある その上に中華鍋の小型板の鍋をおき調理を始めた
 油の弾ける音と共に かぐわしき匂いらしきものが辺りをつつみこむ
「おっと 換気扇 換気扇」
 換気扇の音と共に かぐわしき匂いらしきものが辺りから消えて行く しばらくすると鍋を置き中のものを食べ始めた と そのとき
「おいしそーねー どれっ」
 リネは鍋の中のものを一つまみ パクッ しばらく考えるように食べていたが口の中で はじけるようなような感じがした数秒後 一気に蛇口へ走った
「ふふっ」中のギミが弾けたよーだな
 蛇口をくわえるように口の中を冷やしていたリネが向かって来て
「ギミが入っているなら入っていると言ってくれたっていいじゃない 魔法が使えなくなったらどうするのよぉー」
と 言ってユウロスに襲い掛かろうとする
 ユウロスは危険を感じ食べ終える間もなく席を離れ甲板へ逃げる

 3分後
「リネ さっきから言ってるように君の魔法はそんな事で使えなくなることはないんだ」
「問答無用」
 リネの指先から稲妻がはしる
「少しは ひとぉーー」おわぁーーーー
 ユウロスはリネの作り出した稲妻を避けると甲板から桟橋に降りて走りだした リネも甲板から降りて追いかける ユウロスは突如180度向きを変えリネに体当たりと見せかける リネがひるんだ一瞬の間に通り抜け 船の中へ入りちょうど前甲板の真下を占拠する倉庫へ入り 扉に鍵をかけ 小形の飛行機であるフロートバイクに乗り リネが倉庫の扉に触れるのを待った
「ちょっとぉー ユウロス 出てきなさいよぉー」
 リネの怒りを持った威圧するような声が船内に響く
 しばらくして 扉のノブをいじる音がした それを聞いてユウロスは倉庫の天井 船首の上甲板を開け
 昼の空へ飛び出した 港が一面に見渡せる高さになると
 ユウロスはフロートバイクのエネルギーシールドを張り巡らせ 島を見物に港から離れた
「リネも もーちょっと おとなしくしてくれればなー」
 フロートバイクのT字型の操縦桿を握りながらつぶやいた
 っと そのころリネは甲板からユウロスを探していた
「もうっ」
 振り上げた拳を何かにぶつけるかのように振り降ろした
「ぐぅわぁあああっ」
 直後 ユウロスの操縦するフロートバイクを衝撃が襲いエネルギーシールドがリネの魔法によって跡形もなく崩された
「助かったぁー」助かったぁー
 ユウロスは危険を感じスピードを上げ急いで港から離れた うららかな北半球の春の昼過ぎだった

 数時間後 夕暮れ時
になって 一人の旅の剣師らしき人物が船の前に来た 1.5m程度の太刀を背中に腰には60cm程度の剱に古びたマントに・・・
 気づいたリネは甲板に出て
「何か?」
 剣師は船名を確認しゆっくりと桟橋の上を甲板の上のリネに歩み寄りながら
「メルギアまで行きたいのだが 乗せて行ってくれるかな」
「ちょっと 待ってて」
 リネはユウロスの精神に
「ユウちゃん お客さんよ」
 と 呼びかける
 ユウロスは 気のせいだなと気に止めずに小さな沢の散策を続ける
「早く戻って来なさい」
 ユウロスは背筋の凍るような感覚に陥った
「じれったいんだから」
 いつの間にかユウロスはフロートバイクごと船の倉庫にいた
「なんでしょーか?」いつの間にここへ? あれ?
 なんとなくしか自分のやっていることが分からない感じだった
 剣師は若干混乱しているユウロスに
「メルギアまで乗せてくれないか」
「目的は?」
「言うことはできん」
「・・・・5400ファルならいいけど?」
「480リルまでなら出せるが ・・・ 高いな」
「・・・・いいでしょう」だいたい4300ファルか
 ユウロスは剣師を船室に案内し出発は明日の昼と予告した 倉庫とエンジンルームに鍵をかけ 外に出て2週間程度の航海手続きを済ませ 朝の続きを食べた そのとき リネの指先が放電してユウロスに
「ふっ ふっ ふっ 昼間のうらみっ!」
「ぴぃっ ぎゃぁあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
 がくっ
 ちなみにユウロスが起きたのは明日の朝7時になってからだ

 翌日
 朝 リネは床に倒れているユウロスを起こしにかかっていた
「ユウロスッ ユウロスッ」
 ゆっさ ゆっさ ゆっさ と体をゆする でもユウロスは起きない
「んーーーーーーっ そうだ」
 ユウロスに弱い電撃を加える
 驚くユウロス
「わあぁーーっ!」
「起きた?ユウロス」
 でもやっぱり
「おはよっ ・・・ ぐうーーー」
 寝てしまうユウロス
「起きろぉー!」
 業を煮やしたリネは雷の固まりをユウロスにぶつけた スパークの音 焼けるような匂い 叫び声
「 ・・・ はへーー」一体何が何だか・・・
 にっこりと顔を作ってリネは
「ユウちゃん 起きた?」
「とっ・・・とりあえずー」目の焦点が合わない
 さんざんにリネにサンダーを浴びせられ立っていてもどっちを向いているのか分からないユウロス
「ちょっと やりすぎたかなー・・・ んじゃねー ほいっ」回復 回復
 若干照れながらリネの手のひらから緑色の泡状の光がユウロスにそそがれる
 いきなり元気なユウロスは
「全く 冗談じゃない」
 そう言ってユウロスは朝食を作り始めた

 昼が近くなると操舵室に入ったユウロスが伝声管でもって剣師に出発をづけた
 剣師はユウロスに聞いて来た
「どのくらいかかるかな」
「なに 1日かかるかどうかって所ですよ」
 ユウロスは伝声管のふたを閉じキーボードにメルギアまでの行路計算をさせるよう打ち込んだ
 操縦桿を片手でもってキーボードに指先をぶつけるように打ち込み サードエンジンを始動した 船は少しずつ桟橋を離れていく 桟橋が見えずらくなって来たころユウロスはサブエンジンを始動させた 小さな爆発音とともに船は加速した 約3分後メインエンジンが始動した 轟音とともにさらに船は加速する メインパネルにはメルギアまでの予定航路が映っていた 青い点がこの船の位置 赤い点が他の船
「現在速度は? 672ノット まだまだだな」
 いまだに加速し続ける船は 後に高くしぶきを上げ走る
「現在速度はー 715ノット 外部対圧力バリア ON」
 無音のうちに船の周囲は放物面の形状に似たような透明の対圧力バリアで囲まれる ところでバリアは後方の噴出口付近が空いている 他には攻撃等の際に瞬間的に必要に応じて処理される
 操舵室からユウロスが出てくると船内が少し静かになった 音速を越えたのだ
 そんなこととはうらはらにユウロスは
「リネ」
「なに?・・・ ユウロス」
 テーブルに向かって外の景色を眺めていたリネは驚いてユウロスの方を向いた
「リネの料理が食べてみたいな」自分で作るの面倒だし
「仕方がない何か作るかー」
 リネは諦めて 冷蔵庫をかき回し 中から幾つか材料を出し そして火にかける 油の弾ける音は船内にこだましている しばらくしてリネはそのフライパンをテーブルに移した
 ユウロスは何も言わずにフライパンの中身を食べ始める
「ユウロス 大丈夫?」
 心配そうに聞くリネ 無言のユウロスがさらに彼女の心配をあおる
「・・・・・。」まずぅーい
 無言のユウロス
「あ ・・・ あのー」
 不安の蓄積するリネ
「まずい」 ・・・ はっ 言ってしまったぁー
 リネは顔を引きつらせて
「なによー! サァ・・・」許さない
 今リネの怒りは無限大 ユウロスは危険を感じとっさにリネの集中力を分散させるために体当たりをしながらエルボードロップだぁーー
「ぐふっ」
 床に倒れるリネ さあユウロス そのままブレーンバスターかそれともバックドロップかぁー?
「それっ」
 ユウロスは応急処置のためにもっていた麻酔針を刺した
「うっ」
 リネの体がリネの意思を離れ動かなくなる
「危うく船を爆破させるとこだった」
と その時階段から足音が 剣師が上がって来たのた彼は二人のほうを見て・・・
 剣師の頭の中は
・・・・・・・空白・・・・・・・
 そそくさと ユウロスはリネの体を持ち上げリネの部屋に運び再び上がって来た
 剣師はユウロスにその訳をたずねたがユウロスは
「ただの たわむれですから気にしないでください」
 剣師の頭の中は・・・
・・・・・・・無・・・・・・・
 しばらくして剣師は
「何か 食べたいのだ が」
 水平線を見ていたユウロスは
「あっ・・・・。」
 ユウロスはフライパン片手に包丁を取り出して調理を始める しばらく後ユウロスはフライパンの中身を皿にうつしテーブルの上において
「他に何か必要でしょうか?」
と 剣師に尋ねる
「そうだな ワインでもあれば言うことないんだが」無いだろーなー
「酒ですかー アルコール度は」
 薬品棚に近づくユウロス
「20%ぐらいのを」
 剣師は不安の表情を浮かべながら
「・・・・」何か違う 何かが・・・
 ユウロスは薬品を混ぜ合わせ冷蔵庫からブドウのエキスを取り出し混ぜ合わせた薬品に4滴垂らして
 混ぜ合わせ 2つのグラスにそそいだ ユウロスは片方を飲んで
「うっと ・・・ こんなもんだな どうぞ」アルコールがまわるぅーー 死ぬぅー
 剣師は すげえ などと思いつつ混合物を口にした 口の中に今まで飲んだこともないような上等のブドウ酒の味が広がってくる
「うん ・・・ これはいける」
 剣師がユウロスを見ると ユウロスはいすに座ってぐったりとのびていた
「はあー」なんだこいつは・・・・
 剣師の口からため息が漏れる そうしてユウロスの方に目をやり
 うまいワイン?・・・ なんだがなー と考えた
 その剣師が食事を終えようとしているころ 階段から音がしてリネが上がってきた 髪の毛がライオンのたてがみのように静電気によって逆立っている リネの姿はさながら化け物だ
 剣師の頭の中
・・・・・・・・・・無色透明な自画像・・・・・・・・・
 ブドウ酒を作った器具を片付けていたユウロスはこれに気づき
「よっ よるなー リっ  リネっ
 ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
 辺りが真っ白になるほどの電撃がユウロスを襲う ついにユウロスは帯電してしまい 限りなく白に近い緑色の髪が 白いリボンで結んだ所より先のほうは逆立っていた しばらくしてユウロスはバッテリーをもってきて両極をもってしばらくたたずんでいた
 そのあと操舵室にこもってしまった

 時間の経過
 ユウロスは薄暗い操舵室で
「メインエンジン停止 サブ・サードエンジンmax power」
 そんなこと言っても船は60ノット以上で進んで行く
 ユウロスは伝声管を持って
「今から川を上りますので注意されたし」
 辺りは真っ暗になり時折すれ違いや追い抜く船の明かりがユウロスには星のように写った
 そのころ伝声管ごしに聞いた剣師の頭の中は
・・・・・・・・空白で無色透明な自画像・・・・・・・・・

・・・・・・・・・はっ速すぎるぅー・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・真っ白けっけ・・・・・・・・・・
 墨のような暗い夜の川をしぶきを上げ走って行く船は 無謀な2人+1を乗せ進んで行く
 操舵室から出て来たユウロスはリネが窓の外をじぃーっと見ているのを見て さっきのことをふまえて おびえながら無頓着そうに話しかける
「リネよーい ・・・ おーい ・・・ あの ちょっと ・・・ 」
「なぁーによー」
 狼のような視線がユウロスに向けられる
「いっ ・・・ いや あの」どうしよう
 こーなるとユウロスは ただのばか
「うーーーーっ サンダァー!」
 リネ最強のやつあたりサンダーがユウロスに襲い掛かる
「・・・・・・・・・・言語道断の叫び声・・・・・・・・・・」
 ユウロスが気がつくころには夜が明けていた 床に寝ていてるユウロスは暑苦しさを覚える 操舵室に駆け込みエアコンの出力をあげる 少しずつ冷ややかになっていく船内は ユウロスの感覚を元に戻した
「ふーーっ」いやいやいやー 暑かったー
 操舵室から出てくるとリネと剣師がいすに座ってのびていた
 暑さのせいである 全身汗びっしょりの二人にユウロスは操舵室に逃げ込んで 席に座り操縦桿を持って 冷や汗を垂らしながら メインパネルに目を釘付けた メインパネルにはメルギアの都市の衛星写真らしきものが 緑色に映っていた
 ユウロスは伝声管を片手に
「後どのくらいでメルギアに着くのかな?」
 サブパネルには 約15分後 と表示された
 伝声管を口に近ずけて
「後約15分後にはメルギアに着くぞー」
 少し強めに発音した ユウロスは操舵室から出て剣師の方に歩いて行く
 剣師は 「金だな 今取ってくる」
 そう言って剣師は階段を降りて行った
「ユウロスっ もう着くの?」
「ああっ そーだけど 何か」
「ちょっと着替えてくる」
 そう言ってリネも階段を降りて行った ユウロスは窓の外を見て
「こんなところで都市を造るなんてなー」
 しばらくして剣師が階段を上がってきた 
「金だ」
 剣師はユウロスに代金を払いユウロスは操舵室へ 操縦桿を持って都市の外れの小さな桟橋につけた
 剣師が船を出る際にユウロスは
「剣師さん 名前は?」
「バリアスとでも覚ぼえといてくれ」
 剣師の姿が見えなくなったころリネが上がって来た
「やっほーっ」
 涼しげな格好で上がって来たリネはユウロスを見て
「着替えて来なさい 町に行くわよ」
 ユウロスは
「でも・・」
「でもじゃない」
 リネは強く断定する
「はいはい」
 ユウロスは階段を降りて行った
「全くっ・・・ぶつぶつぶつぶつ・・・」
 リネがぶつぶつ言っているうちにユウロスがさっきとあまり変わらない服装で階段を上がって来た
「おまたせっ」
と コートを着るユウロス
「行くぞっ ユウちゃん」
 ユウロスは全てのハッチや窓ロックして船を出た
 一歩出るとそこは湿度と温度の地獄だった
「でっ 何しに行くの?リネ」
 歩きながらリネは
「町を見に行くのよ」暑いぃーーーー じめじめしてるぅーー
「さいですか」いやあ温度調整のできるコートはいいねぇー
 リネの斜め後ろをついて行くユウロスはリネが一体何を考えて町に行くのか見当がつかなかった
 肌を焦がすように照りつける光 湿度も100%はあろうかというような状態で何も言葉が出ないリネ その斜め後ろで涼しげな顔をして温度調整できるコートを暑々と着込んでいるユウロス
 しばらく歩くと とてつもなく大きな半球状の巨大なドームが木々の間から見えて来た 近くまでくるとよく分かったが このドームは一種の日よけになっており 材質もグラスファイバーの発展系が使われている様だった ユウロスは門をくぐりドーム中に入って日陰のような涼しい感覚をおぼえた湿度もぐっと下がっているようだ
「涼しいな リネッ」
 頭だけ暑かったユウロス
「ええ」
 全身暑かったリネ しばらく進むとリネがある店の前で立ち止まった
「どうしたリネ」
 ふりかえってリネは
「ねぇー この腕輪買ってー」
と 店頭におかれた 複雑に装飾の施された腕輪を指して言った
「いやだっ」
 そう言ってユウロスはその店の奥へ入って行った 奥にはこの店の主人らしき人物が座っていた
 ユウロスは主人に
「何か掘り出し物は出てないか」
 主人はユウロスの姿を見て答えた
「さあ 訳の分からないものなら あるが」
 言いながら主人はなにか機械のような物体を出した
 ユウロスは手にとってしばらく見て
「うーーん」これはスタビだなー
「買います」
 主人は驚いた表情で
「いいよ いくらで買う?」
「・・・・・・6000ファル」
 主人は 笑みを浮かべて
「売った」いやあ ぼろ儲け
 威勢よく言った ユウロスは6000ファル主人に渡すと物体を持って人込みの中へリネと共に入った
 リネは
「ユウロスそれって一体何?」
「さあ わかんない ああサンダー使うなよ 壊れるから」と 言っておこう
「はいはい よぉーく分かりました」
 リネはあらたまって
「ねー なにか買ってよー」
「やだよ 子供じゃあるまいし」
「あんた 自分が何歳だと思っているの?」
「君よりは大人だよ」
 そっけなく言った言葉にリネは
「先に帰ってるわ」
 言った直後にユウロスの目の前から消えた
「なんだかなー」
 ユウロスはリネが視界から消えたことに 不満をもつことはなかったが
 見知らぬ土地で 一人になる あの 感覚を思い出していた
 心の中を冬の風が吹き抜けて行く感触だった
「まあ 戻るとするかな」
 ユウロスは元来た道を戻りだした
 ドームを抜けたころ コートのおかげでさほど感じないのだが地獄の暑さと共に
 逆三角形の視線をユウロスに向けたリネが視覚に入った
「どうしたリネ 失敗して船にぶつかったんじゃあないだろーなー」
 冗談半分のユウロス
「ふぎゃーー」なんで分かったのよー
 リネがユウロスに八つ当たりする
「こら たたくな たたくな」
「うーーーっ」
 リネはそのまま船に向かって歩く
「うううっ・・・」図星だったとはな
 ユウロスは片手で叩かれた頭を押さえてリネの後を歩く 船が見えてきたころユウロスが走って行き鍵を開けた
「ユウロスー のけえーっ」
 リネがユウロスを押しのけ船内に入り冷凍庫の扉を開ける 強力な冷気が船内の床を漂う ユウロスは戸をあわてて閉ようとする
「何をするんだ リネ」
 あわてて冷凍庫の扉を閉めたユウロスは流れ出た冷気から離れた 床のあたりの凍りつくように寒い感覚がリネの足に針を刺すような刺激となって・・・
「ユウロス・靴が・張り付いて・しまった」
「何をやっているんだか」
「そんなこと言ったって足がっ」
 靴が全く動かないリネ
「ふっふっふっ」シューーーート
 ユウロスはサッカーのシュートの様にリネの足を・・・
「きゃっ」
 リネが足払いをくらったように倒れる・・・
「わっと」
 リネは手をついて頭が先に落ちるのを防いだ
「リネッ 冷凍庫は食料を置いている訳じゃないんだ 気をつけろよ」
「はぁーーい」
と 両足の軽い凍傷を魔法で癒しながらリネは答えた ユウロスは操舵室へ入って操縦桿を持って船を元来た川下へ進めた オートモードに移してユウロスは倉庫に町で買ったものを持って行く リネはアマゾン川のような川の景色と澄み切った水の幅広い流れと外の暑さを 過ごしやすい船の中から眺めていた

 時間の経過
「艦長 正体不明の軍艦一隻接近中」
と 薄暗い潜水艦の中で魔道士らしき人物が言葉を告げた
「よし 浮上し攻撃に移る 魚雷で攻撃」
 艦長の声が各艦に伝わるのに時間は掛からない
 個々の潜水艦の艦長が
「浮上 魚雷装填注水・・・」
「急げ」とまでは言ったかどうか定かではないが数隻の潜水艦が浮上し始めるのであった

 そのころ
 日が沈みかけたころ約60ノット前後のスピードで進む船の中で二人が珍しくおとなしく 夕食を食べているころだった
「・・・・・・・」なにか来る
 バァン
 ユウロスは操舵室へ駆け込み操縦桿を片手にメイン・サブパネルに目をやった メインパネルに示された川の上に赤い点が三つ ・・・
「ラオリスの潜水艦か?」
 サブパネルに
 敵潜水艦 3艦 注水音 6
 当艦が撃沈される確立 32%
 フォースエンジン始動要請
「よし フォースエンジン始動 20・・・ メインエンジンスタート180へ」
 船が水面から完全に離れ水面から5メートルぐらい離れたとき
 メインエンジンが轟音とともにアフターバーナーを吹き出す

 潜水艦
「艦隊長 敵艦は浮遊した模様 恐らくラオリスのものだと思われます」
「エネルギー砲用意 急げ・・・ ラオリスのやつらこんな所までくるとは・・・・・」

 ライジングアロー
 10秒としないうちに潜水艦が浮上して来た
 潜水艦の上部甲板が開いてそこから
 敵潜水艦 後方に1艦浮上 対艦エネルギー砲 出力30000kW 発射まで約30秒
 当艦が撃墜される確立 98%
と サブパネルに詳細が出てくる
「エネルギービーム スタンバイ ・・・ 目標 対艦エネルギー砲中枢 ・・・」
 後部甲板がひっくりかえりエネルギービーム砲が出る
 ユウロスは敵対艦エネルギー砲の発射までのカウントダウンを目で追っていた
・・・・・ 17 ・・・ 16 ・・・ 15 ・・・・・
 エネルギービーム 出力100% ロックオン
を みてカウントダウンに目をやった
・・・・・ 12 ・・・
「くっ」操縦桿のボタンを押した
 緑色系統の光線が ・・・ 炸裂

 潜水艦
「ぐわっ」
 エネルギー制御装置のそばにいた水兵の叫び声とほぼ同時にスパークが飛び散る
「どうした」
 艦長の声が狭い潜水艦の艦内にこだまする
「エネルギー制御装置サブシステムに切り替えます」
 別の水兵の声が艦長の耳に届いた

 ライジングアロー
 同敵 対艦エネルギー砲 発射まで約40秒
「Hoレーザ スタンバイ 目標対艦エネルギー砲」
 両舷側面がスライドしHoレーザ発射口が現れた
 ユウロスは自分の鼓動を聞く
 ・・・・・ 36 ・・・ 35 ・・・ 34 ・・・ 33 ・・・・・
!「誘導エネルギーシールド スタンバイ」
 ・・・・・ 29 ・・・ 28 ・・・ 27 ・・・ 26 ・・・ 25 ・・・・・
 一秒がやけに長く感じる
 ・・・・・ 24 ・・・ 23 ・・・ 22 ・・・ 21 ・・・ 20 ・・・・・
 Hoレーザ ロックオン
 操縦桿のボタンを押す・・・・
 轟音とともに潜水艦の上甲板に出ていた対艦エネルギー砲は木っ端みじんに砕け散った
「ふーっ 長かった」
 冷や汗がひいていく
 再び操縦桿を握り直して
「外部圧力バリア オン メインエンジンフルパワーへ
 誘導エネルギーシールドHoレーザー及びエネルギービーム解除
移動目標 イトス オートモードへ」
そのころリネは
「はーっ」
と ため息をついて部屋を出た
「ユウロスはどうしてるかなー?」
「やあ・・・」
「どうしたのユウちゃん」
 階段を上がって来たリネは氷水を飲んでいる疲れ切ったユウロスに問う
「ちょっとね・・・」ゆるさん 人の苦労を
 船は空を飛んで行く 宇宙空間から見ると点にも見えないかな?

 数日後
 たくさんの帆船や貨物船が行き交うイトス周辺の海域はいつものにぎわいを見せている
 ユウロスはぼぉーーーーーっと 後甲板に座ってこの様子を見ている しばらく見ていると 変な大きなかたまりが遠くに浮かんで来た
「どっかで見た様な気がする ・・・・・・・ オケアノスか?」
 そのかたまりは近ずくにつれだんだん大きくなって
 ユウロスはフロートバイクに乗り込み前甲板を開け飛び出した
「最大収容人員57824名か」
 そばによるとたとえようのなくでかい 一つの島ぐらいはある ユウロスはいつの間にか持ってきた携帯用インコムに向かって
「サディス 来い」
 船の中のユウロスの部屋の戸が空いた 中からセンサーと足のある浮遊しているメカが出て来た メカは階段を上がり船の外へ出 ユウロスのいる方向に向きを変え アフターバーナーを噴き出して飛び去って行った
「また ユウちゃん ろくでもないものを作ったな」
 飛んで行くメカを見上げてリネが言う
 ユウロスは またインコムに向かって
「サディス ドッキング」
 フロートバイクのユウロスの座っている操縦席の後方上部中央当たりが ライジングアローの前甲板が開くように開いた すこしして そこにサディスが来て9割をフロートバイクのなかに沈めた メカを固定する音を聞いて
「行くとするかな」
 フロートバイクを移動させる
 オケアノスの広大な甲板が人であふれかえる 中には海に落ちる者もいた 皆歓喜に満ちあふれている
 それから一時間ぐらいしてオケアノスは幾つもの艀で陸とつながれた
 ユウロスはオケアノスの甲板に降り立って12班のメンバーを探しにかかる そしてハッチを開けはしごを降りようとしたときだった
 不意に足が滑る
「えっ?!」
 背中に痛みを感じた そこで意識が途切れた

 気がつくとそこはベッドの中だった
「気が付いたかいユウロス」
 過去に聞いた声だ 背中に痛みが走り声の主を思い出した
「アレイムかい」
「ああそうだよ ユウロス しっかし相変わらずだな」全く梯子には弱いようだな
と ユウロスは起き上がった
「大丈夫か かなり強打したようだが」
「大丈夫だと思うよ」普通の人間よりは・・・
と言い ベッドから出た
「大丈夫かね」
 白衣を着ている医師らしき人物がユウロスにたずねた
「ええ」
「そうか ・・・ 君っ いや気にしないでくれ」
「そうですか・・・」
 そのままふたりは部屋を後にした
「ユウロス ばれたのか?」
「かもしれない・・・」
「・・・そうか 戦争が終わったらお別れかもな」
「アレイム 今はそんなこと考えずに ところでほかのみんなは」
「第4倉庫にいるはずだ」
 アレイムが部屋を出て来て 第4倉庫へ足を進めた しばらくしてアレイムが階段に注意を払いながら
「ライジングアローの調子はどうだい」
「ああ 少し被弾したようだが 大丈夫だよ」
と 第4倉庫の扉を目の前にして答えた アレイムがシークレットコードを入れ扉を開けた そこにはユウロスが想像もしなかったものが暗がりの倉庫にあった
「何だ あれは」
「ユウロスこれは波動リアクターを使用したエネルギー砲だ 従来のメーザーエネルギー砲と比べるとスピードが95%威力が249%になっているただ・・・」えーっと決まり文句決まり文句
「ただ」続きは・・
「ただ 一度に消費するエネルギーが大きいからあまり・・・」
「使いものにならない と」
「ああ だから今 皆が考え込んでいるところさ」
「あっそ」
 がっかりしてユウロスが話を打ち切った ユウロスは辺りを見回して
「アレイム 設計図ない?」
「ああ ちょっと待て そこのテーブルで」設計図か見なくてもあいつの場合は何とかなるだろーな
 ユウロスは少し離れた大理石のテーブルにエネルギー砲の近くにある椅子をもって行った 引きずりながら
「あったぞ ユウロス」
 アレイムは大理石のテーブルに設計図を広げた
「一人で考えたいんだ」
「分かった」
 アレイムは二度振り向いて倉庫を去った

 そのころリネは桟橋から座って眺めていた 遠望するにははっきり言ってじゃまなオケアノスを
 その時 である
「よおっ」
 ラエルがリネを軽く押した
「あっ」
 ラエルが思ったときには時既に遅く リネは水の中へ・・・
「うげっ ごほっ」くっ 苦しい 塩辛い お助けぇー
 浮かんで来たリネは海水を飲んだらしく 苦しい表情をいっぱいにうかべている
「リネっ」
 大丈夫か?
 ラエルは手を差し伸べる
 しばらくして 着替えたリネが部屋から出て来た
 その時 一本の光線がオケアノスの中から装甲を木っ端微塵にしてリネとラエルのいるこの桟橋をかすめていった音も立てずに桟橋の向こうに置いてあった帆船のマストが気化した
 リネが
「なに?・・・・・・・・・・。」
 ラエルは
「エネルギー砲か」
 ユウロスは
「あっ」やってしまった
 12班の面々
「なんだ?」
 12班のメンバーが第4倉庫に行くとユウロスがエネルギー砲を半ば分解した様に目にうつった
 数名口をそろえて
「何をしている ユウロス・ノジール」
 ユウロスは沈着冷静に答える
「以前の35%のエネルギー消費量で以前と変わらない出力を・・・ ええと その ・・・・・要するに成功致しまして」そりゃあエネルギーロスがあれだけあれば使えないよなぁー
 再び12班のメンバーは口をそろえて
「う・そ・だ・ろっ」
「じゃあもっかいいきまぁーーーす」人が何人か死にそうだなぁ
と ユウロスが作業にかかる 彼が操作すると平行になっている二つの部分が光りだした光りはスパークをおこしながら強くなっていく 数秒後 目が開けられないぐらいまぶしいくなったそのとき 真っすぐに数秒間 光が放射され消えた その光線はさっきと同じコースを通り抜けた
 ユウロスは少し鼻がむず痒くなったが開き直って
「どんなもんでしょー」
 肌の白い男が
「うむっ 成功したと言ってもいいだろうが! ・・・ なんだぁー このありさまはーっ これじゃあ潜水できんだろう なおすのにいくら金が掛かると思っているんだ」
「ははっ はははっ ・・・」まずい フッ フロートバイク
っと そのときフロートバイクがオケアノスの装甲に開いた穴から入って来てユウロスの上に停まった ユウロスはその後部のフックを持って
「さらばじゃ 皆のしゅうー」
と言うが早いかフロートバイクと共にオケアノスから脱出した
 ユウロスはオケアノスから出ると反動を利用して一気にフロートバイクの上に立ち上がりコクピットへ
 肌の白い男は 苦い顔をして
「くっそーっ」

 そんな事がありまして数日後
「行くよ ユウちゃん」
 リネが杖とバスケットを持ってユウロスをせかす せわしく階段を上がって来たユウロスは肩にバルカンブラスターを持っていた 後ろからサディスが上がって来た 熱核ジェットエンジン 反波動エネルギー砲 レーダー1つ センサー5つ フル装備だ
「科学ってのは不便だねー」うんうんそーだ
 などと言っているような顔付きでしみじみと言うリネ ユウロスが船の入り口に鍵をかけると
「おーい」
 ラエルの声だ ふと見ると桟橋には中型の幌馬車が二人を待っていた リネとユウロスは馬車に乗り込んだ
「なにしに行くんだラエル」
「いいとこへいくんだよっ」
 軽いノリで言うラエル 彼は手綱を操って馬車を進ませた 町を出てグラメダの民の避難民のキャンプのそばを通っているとラエルが言った
「化け物退治に行くんだユウロス」
「な・ぜ」おひおひ
「そりゃあオケアノスの修理費稼ぎよ」
「はあーっ だからフル装備でと言ったのか」ああ紅海先に佇む
 かっくんと首を下に折るユウロス
「それにお前の家も修理費高いだろ」
 ユウロスは諦めの表情を浮かべて
「仕方がないかなあー」いやでも
 開き直り
「やっぱり戻ろう」
 ユウロスが馬車を降りようとしたその時 リネがロープをもって 「かんねんせい!」
「わぁー」
 暴れるユウロス 楽しんでいるリネ
「なぜ」わたしが・・・
 がんじがらめに縛られたユウロスは遠ざかる町を見て・・・

 ユウロスが目覚めると辺りが白み始めたころになっていた
「どうやら馬車のまま野宿したようだな」
 何とかロープから脱出したユウロスは馬車を降りて辺りを一度見回した
 朝焼けがきれいなさなか 彼は作業帽に取って付けた様なインコムをかぶった ヘッドホンみたいなつぶれた円柱状の物から右に1本 左に3本センサーなどが突起しているのがわかる
 サディスに向かって
「サディス 何k進んだ?」
 すぐに答えが出た 57k とユウロスの視界に表示された
 東の空が青から白そして何とも言えない日の光に時間とともに変わって行くその情景にユウロスは
 しばし心を奪われた が
 耳を貫くラエルのいびきが
「nGoGoGoooooo」
「サディス行こう」
 ユウロスはいびきが聞こえなくなるまで歩きだした朝の冷ややかな草原の草を踏みながら
 しばらくしてユウロスは草の上に座り込み空のコントラストに目をやった
 そして何とも言えない風が2・3度吹き抜けた・・・

 ・ ・・・ ・・・ ・・・ ゴツッ 頭のてっぺんに何か当たった?それになんか明るいし・・・  ・・・ ゴツッ まただ・・・
 ・・・ 「・・き・・おき・」何だろ? 何といってるんだ・・・
 ・・・ ゆさっ(横に半回転)ぶわぁっ つっ 冷たい・・・
「だあーーっ」
 手をついて起き上がるユウロス 冷たいのは朝露だった
「あははははっ」
 二人の笑い声が聞こえる
「行くぞ ユウロス」
 ラエルは馬車に向かった
「ふぁーーっ」
「行くよ ユウちゃん」
「はいはい」分かりましたよーだ
「ラエルどっからこんな仕事を取ってきたんだ?」
「それはな俺の母がそういう仕事しているんで 適当に選んで請け負ったんだよ」
「仕事って何の?」
「グラメダじゃあ全くといっていいほど無いが それ以外だとたいていは冒険者がいて そいつらの飯の種があると言うものだ」
「冒険者って?」
「簡単に言えばフリーアルバイターだな」
「なるほどねえ」

 昼頃になって馬車はとある農村についた
「ちょっと行ってくる」
と ラエルはそのまま村の中へ駆け出した
「なんか こう ・・・ 暇ね」
「ラエルが戻って来たよリネ」
「ユウロス リネ来いっ」
 ラエルは二人の手をもって馬車から引っ張り出した ずるずるとラエルに引っ張られる二人
「ええい離せっ」
 ユウロスがラエルの手を振り放した リネがラエルの腕に電撃を・・・
「だぁーっ」すぱぁあああくぅー
と ころで魔法慣れしていないラエルにとってはユウロスと違い常人なみに効くのだ
「筋肉がマヒしてる ・・・ すげえ」
「行きますよ」
 ラエルをほっといてユウロスが歩く
「待ってくれよ」
「はいはい」
 二人が来るまで立ち止まった 少し進んでこの村では平均的なレンガ造りの家に入った
「ふむ ふむー」
 推定年齢58前後のしっかりした老婆がリネとユウロスをじろじろと見た
「ラエルこの老人は」
と ユウロスが問う
「ここの長老さん」
 目の前の老婆を紹介するラエル
「でっ 何をするわけラエル」
「長老」
「最近家畜が襲われてな 襲われ方が尋常でないのでこうゆう手段をとった・・・」
「家畜を襲う者を何とかしろと・」だれにでも分かるよ 底レベルな
「まあ そういうことだ」
「家畜が襲われるということは 夜に襲われると ゆーことかな」
「ああっ まあそういうことだろう」
「たしかに だが油断なさるなよ それから家畜は牧場で集合的に飼われている・・・」
「では明日の朝また」
 出て行った三人の事を考えながら長老は
「これで終わるといいが」

 その夜
「準備よしと ラエルそっちはどうだ」
「こっちも準備はできている」
「では行きましょうか おふたかた」
 しばらくして 牧場の物置小屋に三人+1は身を潜めた
「サディス センサーのデータを」
 インコムのスクリーンにセンサーのデータが8色のグラフで表示された
 ユウロスはそれにじっと目をこらしている インコムは直接脳に情報を送るので 本人以外にスクリーンの画像は見えない
 北緯40度の春風が牧場を流れて行く雲が風に乗り行き交う 星々の輝きと二つの月の光りと動いて行く空の光りが牧場を照らす そんな光景に見とれていると東の空が白み始めた 雲が広がり始めているのが分かって来た センサーのデータが少しづつ朝をうつし始める 東の空が白み明るくなってきた頃突如としてグラフが狂う
「リネ ラエル何かが来るかもしれん」
 突如として バキバキという音と共に寝ている牛が側面から押し潰されたが 何者も見えない
「リネ 何か分かるか」
「召喚系統の魔法かそれとも・・」
「実体はあるのか」
「ええ あるはずよ」
 ユウロスはいくらか水の入っている瓶と固められた地面を指して
「じゃあ そこの水と土で泥団子を作って当てればいい」
「なるほど」
 二人は泥団子を作ってリネが感知しラエルが投げた
 その相手は泥団子が飛んで来る方向を感知したらしく
「こっちに来るわ」
「どのくらいで」
「あと10秒ってとこ」
 ユウロスは二人+1に
「全速力でこの場を離脱しろー」
 脱兎のごとくクモの子を散らすように三人+1が物置小屋を離れた
 あっと言う間に物置小屋がスクラップと化す
 ユウロスが走りながら
「リネどんな形をしているんだ」
 リネは走りながら感知し
「ドラゴン系統」
 ラエルが走りながら振り向いて
「うそぉー」ということは見えていても接近戦は無理だな
 ユウロスはまだ走りながら
「サディス 安全圏に離脱 反波動エネルギー砲87%を泥に向かって発射」
 サディスがユウロスの頭を越えて飛んで行った インコムのスクリーンに返事が出るがユウロスを含めた三人は泥を頼りに薄明るい牧場を走り回る
「もう だめ・・・」
 ユウロスのスピードが急激に落ちる
 泥はその方向に進む ユウロスはバルカンブラスターを泥に向かって構えた
「パワー拡散・・・」Fire
 一筋の赤い光が連続して泥に当たる
「グァー」
 とでも言うような不気味な声が響き渡りブラスターによる傷口らしきものから体液らしい赤い液体の様なものが流れ出る赤い液体と泥が交ざりあいのたうちまわることによって広がりそれが右足だということが分かった ユウロスはその右足から離れ二人がいるほうに走った
 走りながらユウロスは
「サディス 形を把握して撃て」
「ユウちゃん 大丈夫」
「ははっ なんとか」
 インコムのスクリーンには収束率が表示されその数値が87になると
 一瞬の光が泥の腹部をとらえた 光が当たったところが地面に落ちた焼けただれた内臓の様なものが不気味だった
「近くに召喚師がいると思うけど」
「サディス 生体反応を」
 インコムのスクリーンを見て
「あっち」
と 小さな林を指さした 三人+1は林の中に入ったすると体長5m程度の飛竜が腹部と右足に火傷をおって倒れていた リネは回復系統の魔法をかけ始めた
「なぜそんなことをするんだ」
「かわいそうでしょ」
「じゃあ麻酔針を」
 プスッと飛竜に射す
 夜が明けると長老にラエルが訳を話した
「まあよかろう村から災いがなくなることに変わりはない おっとそれから 礼金だよ」
 ふくろの中身を見てラエルは
「じゃあ 帰ろうか」
 さて 飛竜はというと・・・ どういう訳かユウロスになついてしまい大きすぎて馬車にも乗れないので おっかなびっくり飛竜に乗って飛んで帰ることになるわけで・・・
 飛竜は翼を広げた 片翼だけでも長さはゆうに15mを越える そしてその翼を羽ばたきゆっくりと宙へ舞い上がる 徐々に加速がつきさらに空高く舞い上がる ある程度上昇すると羽ばたくのをやめ気流に乗って滑空し始めた どこまでも晴れた空は遠くにイトスの町並みが望める しかしユウロスはしっかと飛竜の首根っこを持っていつ落ちるかと恐怖のど真ん中にいた・・・
 昼頃ユウロスはイトスの町の上空を数回旋回し桟橋に飛竜を下ろした
 ユウロスは飛竜と共にオケアノスの部品を作っている造船所に行きオケアノスの修理費と称して長老からもらった礼金を渡した
 ユウロスが桟橋に戻り一息ついていると 船の方から
「やっほー」
 リネの声だ
「わあーっ」
「驚いたでしょ」
 ユウロスはとりなおして
「リネこの飛竜小さくしてくれないかなー」
「あたしはそんなことできないわ ユウロスだってしってるでしょ」
「やってみてよ」
「じゃあ 責任もてないけど」どーなっても責任はとらないよ
 リネは船の中から魔法書をもって来て魔法陣を桟橋に書き始めた 魔法陣を書き終えると飛竜をその中心に据え精神を集中させる
 雷撃が魔法陣と飛竜を襲う
「あっ」失敗だぁー
が ユウロスとリネは目を疑った
「やったー」
「あははっ やればできるもんだなリネ」
 飛竜は体長50センチ程度に縮んだのだ
「ところでリネ 馬車からてれぽーとしたのか」
「まあ そんなとこ」
 ユウロスは船の中に入って行った飛竜も歩いて彼の後をつけて船に入る 彼は操舵室に入り戸を閉めた
 飛竜が扉の前でピーピーとなく
 それをよそに
「UAI 飛竜についてのデーターは」
 飛竜 データーあります
「じゃあ 何を食べるんだ」
 飛竜 肉を主とする雑食性だがほとんどのものは食べる
 肉は主として猛禽類のものを好む
 草は腸の清掃用として食後に食べることがある
「それだけ」
 はい
「UAI」
 はい
「サディスのコントロールをある程度任せたいんだが」
 わかりました 7番コードを接続してください
 ユウロスはインコムをかぶったまま
「サディス 操舵室へ」
 ラエルの頭の上をサディスが飛んで行く
「おおっ」残ってしまったか
 ユウロスは操舵室の扉を開けた飛竜が扉の前でユウロスを見つめる ユウロスは飛竜を抱き上げ
「そんなに見つめるな そうだ名前をつけないとな」
「どんな」
「そーだな ・《ユウロスが考えていますしばらくお待ちください》・ ラーズ」 「ラーズにするの」
「うん 昔飼っていたペットの名前」ま もっともあれが私のペットになるか どうか・・・
「ふうん」昔ねぇー
「リネ ラーズが考えていることわかる?」
「うん ・・・ おなかがすいた だって」
 ユウロスは小型化した飛竜をおろし冷蔵庫を開け中から鳥肉を出した
「猛禽類じゃないけど大丈夫だろーなっ なっ」
「なっ なっと言われても」
 ユウロスは鳥肉をラーズに見せた
 ラーズは口を目一杯開けてかぶりつく だが鳥肉は凍りついている でもラーズは凍った鳥肉を食べ始めている
「おいしそうに食べてるよ」
「凍ってても食べるんだな」すげえ
 サディスが静かに帰って来た
「サディス 7番コードを接続して」
 サディスが扉を開け操舵室に入ると プシュー と扉が閉まった
 ユウロスは倉庫に行き何かを造り始める
 リネはラーズを抱き上げラーズに問う
「どうしてユウロスになついたんだ」
 ラーズからの返事は受け取れなかった
リネ「・・・・・・・・。」

 ユウロスは階段を上がりラーズの所に行きラーズに造った物を頭にくっつけた
「これでOKだ」
「ユウちゃん これ何」何か耳が4つって感じだけど
「通信機みたいな物」
「ふーん」どうだか

 その晩
 ピィー ピィー
「うーーん」
 ピィー
「うるさいなぁー」
 ペロッ
「うわぁあー!」 ・・・・・ 目が覚めてしまった
「なんだ」ラーズか
 ユウロスの部屋はベッドの下に机がありUAI02の端末機が机の隅においてある 他には 伝声管 たんす 洋服掛け 窓 廊下への扉が 約1,5×5×2メートルの空間に収まっている
 ピィー 
 ラーズがどういう意味で鳴いているのかユウロスには分からない
「うむー」困ってしまう
 ラーズはユウロスから離れるとカーテンを手足の爪で引き裂いた
「あのー」うっひょぉぉぉぉぉぉぉぉー カーテンが
 カーテンが引き裂かれたその間からは二つの月の光が差し込んできている ラーズはユウロスの方を向いて 二つの月の光が重なっている所に降り立った
「ぅわあっ」いきなりの閃光っ 眩しい・・・
 ユウロスがラーズを見ると光が人の形をとどめていた その光がすうーっと消えると 一目で高貴な身分と分かる少年?が立っていた
「あわっ」んっ
 少年らしき者の胸の部分にラオリスの金貨などによくついている印を見て
「それはラオリスの・・・」
「はい」
「では 君は」
「リーナ フィン ラオリス・・・」
「りいな 何だって」
「リーナ フィン ラオリスッ!」
 ユウロスは頭の中から該当者を引き出し
「ラオリスの姫かぁ?・・・」女だったなんて てっきり男かと思ってたのに うらをかかれた
 リーナはユウロスに説明する
「ええと とある実験中に事故に巻き込まれ見知らぬ土地に 気がついたら飛竜になって・・・」
 ユウロスは頭と体が一致しない感覚の中
「でっ どーして今まで飛竜だったんだ」元に戻れないのかな
「飛竜になってから約1年 二つの満月の光が重なる時に回復系の魔法を使うと その魔法を使っている間は元に戻る事が分かりました でも・・・ 」
 ユウロスはなんとか頭と体の感覚を一致させ鋭く
「ちからが切れると飛竜に逆戻りか」
 リーナは尋問に答えるように
「はあ・・・ そういうことです」
「父上はお元気かな?」
「ええ 私のいた時点では ・・・ でも私は父の元に戻りたいとは思っていません 私の母は私を産んですぐに亡くなりましたし 兄や弟たちはまた別の母の子 それに・・・」
 ユウロスはリーナの言葉を遮り
「そうか それは好都合だ」
「なぜ・・・」
「私いたの都市は君の国に占領されているのでね この船はその都市の所属という建前だし」
 リーナは月の方をちらっと見て
「・・・ 私はこれからどうすれば」
「とりあえず僕以外にはなつかないでほしい」
「他には」
「飛竜の時は人間の言葉は理解できますかな」
「ええそのぐらいならば でも たいていの魔法は使えませ・ん・・あぁ・・・・・」  リーナは光りに包まれ元の飛竜に戻った
「でも これからもラーズってよぶからね」
 飛竜は少しすねた感じだった
 ユウロスは外を見て
「ほぉー」満月だったんだな二つとも

 翌朝ではなく昼
 倉庫の中で
 ピィー ピィー
「こっ こら 暴れるな」
 ユウロスはリーナを捕まえて
「頼むから 暴れないでくれよ リーナ」
 ピィー きげんはなおったようだ
 ユウロスは倉庫でサディスの修理をしている最中である
「どうも 反波動エネルギー砲はサディスにはエネルギーがでかすぎるなー 何とかしないとな・・・」
 リネがドアを蹴破るように倉庫に入って来て
「ユウロス 班長が来てるよ」
 ユウロスはその方向に振り向き
「えっ ・・・ 班長が・・・」今頃?
 何言われるか分かったもんじゃないな などと思いつつユウロスは階段を上がって行くのです 班長はいすに座っていた 階段を上がって来たユウロスを見るなり
「ユウロス 君に折り入って頼みたいことがあるのだが」
 ユウロスはいすに腰掛けて答えた
「出来ることならば」
「いやいや 出来なくてもやってもらう」
 すらりと言う班長
「へっ?・・・」なんだかなー
 ちょっと戸惑うユウロス
「グラメダの仲間にこの手紙を届けてほしい」
「どうやって ですか?」
「17番ドックがまだつかえるはずなのだが」
「17番ドックですか ・・・」
「そこから入ってグラメダ港の食堂ゴルナの例の爺さんに渡してくれ」
例の爺さん 誰だ?「いいでしょう 出発はいつ頃」
「今夜がいい」
「分かりました」
 班長は立ち上がって
「たのんだよ」
 そう言って船を去った
 振り返ってユウロスは
「リネ 君はどうする」
「どうしようかなぁー」
 考え込むリネ
「一緒に行くかい」
 リネは素直に
「うん」
「リネっ ラエルどうしよう」
「どうしようか?」
「まあ いいか」

 ユウロスは船の中の食料を確かめて階段を降りる
 そのままエンジンルームへグラメダ脱出のとき応急処置した強制注入器を修理にかかる
「さてと・・・」修理修理

 時間の経過
 強制注入器の修理を終え何か食べようと階段を上がって来たユウロスはリーナの奇襲攻撃を
「ぐわっ」
 うけ階段を落ちる 階段の上からリネが倒れたユウロスに
「あーあ 大丈夫 ユウちゃん」
 ユウロスは起き上がって服をはたき
「何とか」
 その時勢いよく扉を開けてラエルが入って来た
「ふっふっふっ 俺も行くぜ」
 ユウロスあんどリネ「勝手にしろ」だれがラエルに情報を漏らしたんだーっ?
「まって お兄ちゃん」
 振り向いてラエルは
「エレナ ついて来たのか」
 エレナはラエルにせがみながら
「あたしも行くうー」
 ユウロスあんどリネ「・・・・勝手にしたら」
「だめだっ」
「あたしも行く」(以下省略)

 それをよそに冷蔵庫をあさるユウロス 彼は鳥肉の燻製を切り出して操舵室へ
「UAI」
 はい
「グラメダまでの航路計算をしておいてくれ」
 わかりました
 操舵室を出たユウロスは息を吸い込んで未だ口論しているラエルとエレナに
「いいかげんにしろっ!」
 きょとん としているラエルとエレナにユウロスは
「出発するぞ」
「でもだなー」
「いいじゃないか」
「あたしの勝ち」
 ユウロスは屈み込みエレナと同じ視線で
「エレナ 荷物は」
 エレナは平然と
「召喚するの」
「・・・・。」召喚するってねー
 エレナはどこからともなく魔法陣の書いてある麻でできているマットを広げる 三人が見ているなかエレナが何か唱えると 一瞬閃光がはしった その後 エレナの持ち物がらしきものが魔法陣の中に出て来た ユウロスはそれを見届けると操舵室に入り
「UAI」
 はい
「航路計算は」
 完了しました
「パネルに」
 メインパネルに行路が表示される
「47%まで最高速航行以後手動にする」
 わかりました
 ユウロスは席に座り操縦桿を握り
「サードエンジン始動 出港する」
 軽快なモーター音が船内に響く 少し波のある海面に白いしぶきを上げながらオケアノスの巨体を通り過ぎる そのころ
「メインエンジン始動MAXへ 30秒後外部圧力バリア フルパワーへ オートモードへ移行」
 ユウロスは席から離れ操舵室を出た
「うわっ」うわあーーー
 轟音と共にメインエンジンがアフターバーナーを噴き出し船が急加速する その反動で飛竜のリーナがユウロスに飛びよってくる
「はははっ お前をわすれてたなー」
 ユウロスはリーナと鳥肉の燻製を抱えてテーブルへ
「リーナ おとなしくなっ」だれも聞いてないよなぁー
 リーナと鳥肉の燻製をテーブルに降ろしてユウロスは冷蔵庫へ
「何か飲むもーのーっ」
 冷蔵庫をあさるユウロス
「・・・」何をやっているんだか
 ユウロスが取り出したのは果汁100%の葡萄ジュースもちろん果汁以外何も入ってない それもそのはず炭酸水やお酒で割ったもの以外みんな100%物しかないという それを木製のコップとガラス製のグラスに・・・ユウロスは人気のないのを確認して
「はい リーナ」
 ちぎった燻製をリーナの口へ 2・3度ぶきっちょにかむと飲み込む・・・
「あんまり噛めないのかな構造的に なあリーナ」
 リーナは縦に頭を一度振る
「なるほど じゃあ飛び上がるときは魔法を使うのか」
 考えているらしく沈黙するリーナ ・・・ 
「質問が悪かったな 飛んでいるときに魔法を使うかどうか」
 リーナは縦に頭を一度振る ユウロスの質問は続く
「他の飛竜にあったことは」
 リーナは横に頭を振る
「僕らと戦ったときのあの透明な竜は魔法かい」
 リーナは縦に頭を振る
「飛竜での生活に慣れたかどうかは」
 少し間をおいてリーナは縦に頭を振る
「最後に人間に戻りたいか」
 縦に頭を振りリーナはそのままユウロスがちぎった燻製にかぶりつく ユウロスは手を噛まれるのを恐れて
「ちょっと待た」あぶなかったー「・・・・・・・・・これ全部食べる?」
 リーナは燻製を我が物顔にくらっている
「あーあ」わっ 私の分が・・・・・・・・・。
 グラスについだジュースを飲み干してユウロスが
「リーナ口を開けて」ふっ ふっ ふ
 あーん とばかりに口を開けるリーナ ここぞとばかりその口にコップごとジュースを飲ませるユウロス リーナはなるがままジュースを飲む ユウロスは強制的にジュースを飲ませたあとコップとグラスを拭いて元あった場所に戻す そのままユウロスは自分の部屋へ リーナも後から ぷんすか ユウロスの部屋へ ユウロスは大きめのバスケットに毛布を厚めに敷いて
「リーナこれで寝れるかい」
 リーナはすでにそのバスケットの中で横になる気持ち良さそうな目をしている
「じゃあ おやすみ」
 明かりを消してベッドに入るユウちゃんには疲れの表情が見えていた

 次の日の朝
が しかし
 リーナのしっぽがー ユウロスにattack Hit!
「ぐわぁっ」なんだ 何があったんだぁー
 目が覚める ユウロスは辺りを見回す 部屋は朝の光が窓から柔らかに差し込んでいる
「リーナだなー 全く」ぶつぶつ
 どこからかリーナの鳴き声がきこえるがユウロスはベッドから降りて部屋を出て鍵を閉める
 そのまま操舵室に入り席に座って一息入れていると
 12時24分の方向 距離572キロ 艦隊確認
 戦艦3隻 巡洋艦6隻 空母2隻 潜水艦14隻 補給艦3隻 艦隊速度42ノット
 敵艦隊はまだこちらに気づいてない模様
「国籍は」
 ラオリス王国
「UAI エネルギー残量率は」
 92%
「ハッチ及びドアをロック 潜行モードへ」
 了解
 船内にハッチロックの音がしばし響き渡り船が海の中へ沈んで行く
 了解  潜行します
「サブエンジン潜行モード始動 外部圧力バリアON」
 了解
 船体が沈みきると静かに船が動き出す
「空間歪曲始動 座標前方距離570000 200キロ立法でメインパネルCモードに」
ブゥン という音と共にメインパネルが現れる
 ユウロスは伝声管を手に取り
「これより潜行してグラメダに向かう」
 伝声管を元の位置になおすユウロスは取り直して操縦桿を握る

そのころ目標の敵艦隊はと言うと 前方に小型のブラックホールが発生していた
 旗艦の双眼鏡持った水兵A「艦長っ 前方の海面が異常にもりあがっています」
 旗艦の艦長「指令っ 前をっ」
 なんたら方面作戦司令官「むっ 各艦全速力でこの海域を離脱せよ」悪い予感が
 旗艦の通信の人A「全艦に継ぐ全速力でこの海域を離脱せよ繰り返す・・・」
 各艦の艦長「取り舵(面舵)いっぱぁーい全速前進」
 各艦の機関長「全速力」
 水兵A「わあーーっ」
 歪曲された空間の方へ飛ばされて行った
 術師A「重力がっ 変化しているのかっ」恐るべき力
 巡洋艦の操舵する人達「舵がきかないっ」
 巡洋艦の艦長達「もはやこれまでか」
 巡洋艦の通信の人A「我操舵不能 我操舵不能・・・」
 旗艦の通信の人B「艦長っ 全巡洋艦 別れを告げています」
 旗艦の艦長「くっ」
 黒い閃光が゛その空間に広がった・・・
「うぁー」
 ラオリス本国の通信の人「第三艦隊消息途絶えました」とりあえず報告
 ラオリス本国の通信の主任「はぁっ?!」

 ユウロスは重力震の余波によるショックの後
「空間歪曲停止」凄まじいな
 了解
 一気に凝縮されたものが無造作に辺りに飛び散る 巡洋艦だった金属片・人だった肉片・海水
 さてそんな事は知る由もない 水面下20まで潜行した船の中では ちょうどリーナがユウロスの部屋の扉をぶち破って出て来た所だった
「ぴゅぃー」やれやれユウロスはどこかな
 後ろで見ていたリネ
「な ・・・・。」絶句
 操舵室の中にいるユウロスはメインパネルを手元のスイッチで切り替え 3D表示にし海底の様子を見ていた
 敵潜水艦7隻 12時19分の方向 深度1000 距離73k接近中
「高速重力子砲エネルギー170%全砲門 スタンバイ 無音潜行 深度そのまま」
 操縦桿を片手で持ちメインパネルに表示されている赤い点7つと青い点の距離関係を考えつつ伝声管を手に取り
「しばらく静かにしていろよ 戦闘中だから」
 敵潜水艦7隻注水音20確認 艦首こちらに向きます
「気づいていたか ・ 高速重力子砲 目標敵潜水艦隊」
 サブパネルに表示されている収束率に目をやる
 収束率47・8・9・50・1・2・3・4・・・
「サブエンジてーし」撃たれる前に撃たなければ
 収束率57・8・9・60・1・2・3・4・5・6・7・8・9・・・
 敵潜水艦隊 魚雷10射出 T−21高速拡散魚雷です
 ユウロスはサブパネルから目をメインパネルにやりまたサブパネルにもどす
 収束率75・・6・・7・・8・・9・・80・・1・・2・・3・・4・・5・・・6・・・
 ユウロスはいらだちを感じながらサブパネルを見る
 収束率94・・・・5・・・・・6・・・・・・7・・・・・・・・8・・・
「Fire」
 メインパネルに高速重力子砲の9つの青の点が7つの赤の点に向かって進んで行くのが分かる 同時に10の赤い点が1つの青の点に向かってくるのもユウロスは見逃さない
「サブエンジン MAXへ 船内重力管制オン」
 ユウロスは操縦桿を少し引き船を傾けたが 操舵室の中にいるユウロス以外は傾きを感じない 船は少しずつ浮上しながら元の位置を遠ざかる
「グラメダの方向 距離を」
 9時56分 1001k
「えっ」遠いなー
「・・・ 外部圧力バリア・メインエンジン共にMAXへ」
 高まる金属音の後 爆発音と共に船が水上に出る
「あら」出てしまった まあいい
 何も言わずに手元のレバーでメインエンジンの出力を最大にする
「空間制御システム ワープモードへ 30秒 グラメダの方向へ920k地点」
 メインパネルに空間が歪曲するのが表示される 伝声管を手に取り
「ワープする 20秒以内に何かにつかまれ」
リネ「えっ」
ラエル「なに」
エレナ「ワープってなに」
リーナ「・・・」なになに なんなの?
 サブパネルには
 ワープモード あと22・21・20・〜・9・8・7・6・5・4・3・2・1・
ユウロス「わぁー」
リネ「きゃあー」
ラエル「おおおっ」
エレナ「ひゃーあ」
リーナ「ビー」だれかー
 ワープ後の海面から無数の小型魚雷が飛び出しなし崩しに爆発した
 ユウロスの目の前の空間が正常に戻る 流氷の真っ只中 そのまま操縦桿を思いっきり倒して
「潜行モード 深度1000」
 前のめりになる船に操舵室の中にいるユウロスは前のめりに・・・
「ああーっ おちるぅー」ガツッ
「いっ ・・・・・・・ 痛いんだな」
 ユウロスはシートの横についている操舵室の重力コントローラーのスイッチを入れる こんどは反対に姿勢を崩し再び頭を打つユウロス
「うっうっ・・・・・・」痛い
 取り直してサブパネルに表示されている深度をみる
 1235・・・1370・・
「ああっ」
 ユウロスは急いで操縦桿を引き戻し船を水平に戻す
「グラメダ17番ドックに方向修正 Fモードへ」
 ユウロスは操舵室から出て玄関兼応接間兼台所にある冷蔵庫を開ける
「何かないかなぁー」
 冷蔵庫をあさるユウロス
「ピイー」ユウロスにattack
「ぐわぁ」冷蔵庫に突っ込むユウロス
 ユウロスはリーナのしっぽを冷蔵庫に上半身が突っ込んだままつかんみ 姿勢を立て直す
「ふっふっふっ」
 逆さまのリーナに不適に笑うユウロス
「ピ・ピユィー」
 おびえるリーナ
「3日3晩食事なぁーし」
「・・・・」うっそぉー
 ユウロスは冷蔵庫の戸を閉めて階段を降りた
「あ ・・・ ら」
 破壊された扉に驚くユウロスはそのまま倉庫に 超々ジュラルミン製のケースをリーナをいれた状態で閉めた
 さわぐリーナ
「安心しろ通気性はある」
「ぴゅーーーーーっ」そんな問題かぁー

 ユウロスはリーナが破った戸を取り外すため歪んだパーツをたたいて成形している
 ガンガンガンガン・・・
「せぇーのっ」
 グワンッ
 リネが勢いよく戸を蹴破り・・・
「うるさいわねっ! 全く」
と ぶつぶつ言いながらまた部屋に入って行った
「と言われてもなぁー ・・・ よっと」
 戸を外すユウロス そのままは外した戸を倉庫にもっていきスペアをもってくる
「よう どうしたユウロス」
「リーナが戸を壊したんで交換さ」
「リーナって?」
「例の飛竜の事」
「名前変えたのか ご苦労なこった」
 などと言いつつ階段を上って行った ユウロスは戸を交換すると階段を上り再び操舵室に入る
「17番ドックまでの距離を」
 43004m
「このまま何事もなくいける確率は」
 47%
「半分以下」まあ何とかなるかな
「後何分」
 47分
 船は深度1200をゆっくり進んでいく
「・・・・」暇だし詮索してやるか
 ユウロスはキーボードを叩きつけるようにあつかいはじめる
 サブパネルには
 あまり強くたたかないでください
「・・・・・」なんて機械だ
 しばらく端末機との静かなる格闘?がっ 格闘が続くが・・・
 ライジングアロー管制システム
「ふう」何とかここまでは来れたが とりあえずファイアーコントロールを
 またキーボードに何かを打ち込む
 システム7ファイアーコントロール
「えーと 誘導エネルギー砲 ・・・・まあいいとするかな」
 システム2軌道航行制御
「何だこりゃ ・・・ 」
 忘れたのですか? 仕方がないですね説明しましょうか?
「うっ ・・・ うん」いつの間にそんな機能を すげえ機械
 宇宙空間における航行法の一つ 主として外部の重力をなどを利用し なんたら・かんたら(省略)
 システム1エンジンコントロール
「システム3はなんだった?」
 システム3居住環境制御
「あっそ・・・・。」
 説明は
「要らない」
 少し考えてユウロスは
「UAI なんかこう・んー ・・・ 簡単な言葉で説明されているような感じがするんだが」
 それは わかりやすく説明するのに 難しい言葉を使ってもしょうがないと言う貴方の方針です
 お忘れですか?
「ちょっと 近頃忘れっぽくて」まあいいかなぁ  いやよくないと思う
 システム5潜水航行制御
 システム6
「あらっ」6の後が出ない ・・・ まあいいとして
 システム4
「おいおい」これもかー
「UAI どうなっているんだ」
 なにが ですか?
「システム4と6はなんなんだ」
 システム4・6はメインシステムなのでシステム0に代表されます
「あっそっ」
 システム8通信管制
「何と通信するんだ」
 UAI00本体とです
 システム9トランスフォームシステムズ
「なにこれ?」
 お答えしましょうか 度忘れのマスター
「ああ そうしてくれ」毒舌家か?
 ワープを使ってパーツを呼び寄せ 外見上様々な形に変形するものです
 ちなみに今の状態は・・・
と そのとき 爆音と共に船が激しく揺れユウロスは跳ね飛ばされた ユウロスはシートに座り直し
「UAI損傷は」
 ありません
「今の爆発はどう思う」
 深度と爆発力より深々度機雷と思われます
 これにより敵に発見された確率が上がります
 17番ドックの存在が発見される確率が上がります
「17番ドックまでの距離は」
 入り口まで127m
「近いな」このまま行くのかそれとも・・・
「UAI進むのと戻るのとではどっちが得策か」
 両方とも否定されます
 この場合静かにしていたほうが得策かと
「ところでさっきの爆発は地上にいるものには分かったのか」
 爆発の規模と気象状態から言って否定できます
 ユウロスは操縦桿を握り
「これよりグラメダ17番ドックへの入港準備だ」
 偵察出しますか
「ああ そうしてくれ ・・・ 食事にするから」
 分かりました
 ユウロスは操舵室から出て棚からパンを取り 流れるようにそのまま冷蔵庫からラヴィジという柑橘類を2つ取り出しテーブルに着く 通勤ラッシュ時の立ち食いソバ屋に詰め掛ける一般サラリーマンの様に がつがつと急いで食べ 食べ終えるとそのままの勢いで操舵室に戻る
「さて UAI 偵察は」
 17番ドック 幅100m奥行き710m高さ87m
 潜水艦 3隻
 それから釣りをしている人が1人います あまり釣れていないようです
「ようし 入港する」
 船はかなり広い岩穴のような暗い中を進む しばらく進むと上に明かりが見えてくる
 浮上しますか
「もちろん」
 しばらく時間が掛かります

 暗い水の底から何か白い物がぼんやりと姿を表し 大きくなり 水面に姿を現す
「ふうっ」
 ユウロスは操舵室から直接船外へ出た 目の前に竿を放り出して驚いている釣師の顔を見て
「すいません お騒がせして」
 釣りしていた人
「あっ ああ」
「あなたは」
 釣りしていた人は取り直して
「グラメダ学者団7班所属のルイってんだ」
と 親指で自分を指す
「ではここは見つかっていないと」
「ああ そうだ」
 ユウロスは操舵室に入り船を寄せ
「UAIワイヤーと錨を」
 はい
 内蔵されている錨が勢いよく水の中へ落ち前後甲板の一部がスライド式に開くのを確認して
「居住空間以外ロックしておいてくれ」
 分かりました
 ユウロスは直接甲板に出てワイヤーを持ちドックに飛び降りる・・・ 足が届かなかったのか足が滑ったのか・・・
「がぁっ」
 ユウロスは水面からからはい上がりワイヤーをかける いつの間にかドックには残った学者や工夫やその家族たちが集まりだす
「あらっ 皆さんおそろいで」
 エレナが甲板に出て来て
「わぁー 人がいっぱいいる」
 ユウロスの目の前にはいつの間にか・・・
「ようユウロス」
「あっ・・《ユウロスが考えていますしばらくお待ちください》・・だれ」
「あのなぁ」つっ 疲れた
 どうやら名乗る気もなくなったようだ さてその名乗る気もなくなったひとはユウロスを呼び通路の奥へと歩いて行く ユウロスは人をかき分けてユウロスを呼んだ人の行った方向へ進む
「ふわぁっ」やっと抜けたぁー
 ユウロスを呼び込んだ人は通路の角を右に曲がった通路の扉の前に立っていた
「さあ班長たちが待っているぞ」
 ユウロスは言われるままに部屋に入る
 部屋には11人の班長と3人の潜水艦の艦長と首長が円卓に座っていた
 首長はユウロスのずぶ濡れの姿を見て
「ユウロス君にタオルを ・・・ どうやってここに」
 ユウロスは一般兵らしき人物からタオルを受け取り顔と髪を拭きながら
「成り行きです」
「成り行きとは」
 ユウロスは一般兵らしき人物にタオルを渡して手紙を取り出す
「うちの班長から手紙を預かってましてね ええと宛て名は・・・・《食堂ゴルナの爺さん》」
「ちょっと見せてくれるか」
 ユウロスはずぶ濡れの手紙を渡しながら
「手紙ですからあまり宛て名以外の人が見るのはなぁ」
 首長は手紙を見るなり
「やはり ・・・ ユウロス君これを・・・」
 首長はユウロスに紙のぎっしり詰まった封筒を渡しながら
「・・・これを12班のメンバーに渡してくれ ご苦労」
 ユウロスは振り返って
「じゃあ帰ろうかな」
「ちょっと待て」
 艦長の一人がユウロスを呼び止める
 ユウロスはふたたび振り返って
「何でしょうか」
 その艦長はたたきあげの軍人の極みみたいな人である
「ユウロスとか言ったな お前は空母の任務を勝手に変更した どう言うつもりだ」
 ユウロスは戸を開けて
「結果論です 悪しからず」
 ユウロスは
「全く」
 などと言いながらドックへ戻る
 ドックにはまだたくさんの人々が船に集まっている ユウロスは人々をかき分けて船にかけてあるはしごを登り甲板に立つ 人々はユウロスに向かってなんだかんだ叫ぶ ユウロスは群衆相手に
「船から離れてください」
 群衆は船から離れようとしない ユウロスは操舵室に入り濡れた服を気にして席に座らずに
「UAI ワイヤーを外してくれそれからだれが外に出ているかも」
 ワイヤーの輪の部分がすっぱりと切れてウインチに巻き付けられ引っ繰り返って元の甲板に戻る
 エレナがまだ戻ってません
 ユウロスは操舵室から甲板に出て息をすって
「エぇーレナぁー」
と 大声で叫ぶ その辺りから
「はぁーい」
と エレナが姿を現す
「エレナ帰るぞ」
「はぁーい」
と 返事はするもののあきらめの表情で船内に入る
 ユウロスは操舵室へ入る
「さて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」どうしたものか 
 どうしました
「いや ・・・ 行くぞ」あの人たちは?
 はい 潜行します
 船は水の中へと沈む
「UAI イトスに向かってくれ」
 はい
「着替えてくる」
 ・・・・
「うっ」ひっじょーーーに危険な予感
 リネが目を逆三角形にしてユウロスを見る
「なっ なにか」
「なにかじゃないわよ ・・・・
 エレナがすべてを見通すようで何も見えてないような目でリネを見て
「本題に入ったら」
 リネが驚いて
「・・・・あっはいはい」
「本題ってなに」
「そーそー 水が無いのよ水が」
「水かぁー」
「水よ水 水が無かったら何もできないじゃない」
「水・水・水・」
 などと言いながら操舵室に入る
「戻ってしまったよ UAI」
 弁解ですか
「まあな 水が無いんだ」
 分かりました
 4En MAXp 1・2En Fire
「・・・まあいいか」
 操舵室を出ながらつぶやく 丁度船が海中の洞窟を出たころ船尾から爆発音が五つ振動と共に耳に入る
 そのころ濡れた服を着替えたユウロスが肩にリーナを乗せリネ・エレナ・ラエルと一緒に テーブルについてカードゲームを始めようかという所だった
 ユウロスはカードをくりながら
「1時間ぐらいで着くからね」
「全く ・・・」水がなかったら何もできないのに
「始めよー 始めよーよ」
「ええっ」
「配るぞー」
「こいっ」
 ユウロスがカードを配る
 船が水上に出かかったころ操舵室のサブパネルには
 5En W
 そのころユウロスは
「うーむー」このカード出すか出さぬかどうするべきか
 リネがせかす
「早くしなさいよー」

 操舵室のサブパネルには
 ・・6・・5・・4・・3・・

「ようし うわぁーー・・・・・」
 突然のワープに4人+1は椅子から転げ落ち意識を失い・

 時間の経過
 ・・・・・・・・・「んっ」
 ユウロスが起きる 彼が辺りを見回すと船はいつの間にかイトス港のもといた場所に停泊していた
 が船の中はユウロス以外の人間?はどうやら気絶しているようだ
「んー いつの間に・・・」いやはやなんとも また
 ピユイィー
「リーナか おいで」
 リーナがユウロスの頭のうえに着地?する 非情に爪の感触が痛い ユウロスは無情だー などと思いながら
「リーナ どうせなら肩の方がまだいいんだがな」
 リーナは不器用に肩に両足を移す まだましだなぁー などど考えつつユウロスは船を出る
「うわっ」
 太陽光線のまぶしさにくらむユウロス
「ピー」情けない
 ユウロスは太陽光線のまぶしさにくらみながら修理中のオケアノスの方へと足を進める 修理部分をずーっとかぶったままのインコムを使って見ると どうやら内装の修理自体は終わったようで外装の装甲を修理している様子
「さてさて」
 ユウロスは首長より預かった封筒を取り出す
「これって一体なんなんだろーねー リーナ」
 いつの間にかオケアノスの内部に入っていた一人+1
「ユウロス君」
「ああっ 班長これを」
 封筒を指し渡すユウロス 班長は封筒を受け取りリーナに目を向けて
「面白いものを飼っているね」
「ええっ いいでしょー」と あしらっておかなければ・・・
 班長は振り返って歩きだしながら
「後73000ファルだぞ」
「へっ」
 班長は歩きながら
「修理費だよ」
「ああっ」忘れてた
 まだたくさん残っているなー なんて思いながら艀をわたって船に戻るユウロス
「ピュイー」
「どうしたリーナ」おっ あれはラエル
 ラエルが艀の反対側から歩いてくる
「ユウロスはい」
 ラエルは言いながら紙切れをユウロスに渡すと
「じゃあ」
と 艀を走って逃げるように戻って行った
「いっちゃったい なんだろ・・」
 その紙切れは・・・・・

 ちょっと時間の経過
 ババババババッ
「ふうーっ」ラエルのばかぁーーっ
 ユウロスは船の修理の仕事を一カ月契約でラエルにさせられている訳で・・・
 船の鉄板を前に溶接の作業をやらされている訳です

 ユウロスの愚痴を想像しつつ次の日の朝へ
「やぁーっほぉー」
「やあ」
 リネはユウロスのくらぁーい返事にたじろきながら包みを渡す
「はいユウロス」
「ああっ どうも」
 船から出たユウロスは桟橋を走りながら
「ラエルのばぁーくぁー!!」
 リネは船からそれを見て
「はぁーっ」何なんだか
 ピュィー
 リネはリーナを抱き抱えて
「あんたは何を食べる」と心を読むリネ
「ピー」食べられるものなら
「うっ・・・・・」
 あたしの作ったのが食えないってかい? まあ作ってみるかな 台所ではリネが何かを作り始める

 と その頃
「ユゥーロォースさぁーん」
「おんやっ」
 ユウロスは声の方を向くとオケアノスの乗組員と思われる男が呼んでいた
「何でしょーか?」
 男は走って来て
「ユウロスさんですね」
「ええっ まあ」他に同じ名前の人がいるかもしれないけど・・・
「班長がお呼びです」
「でもこれから仕事でして」
「・・・ わたしが変わりに行きましょう」
「んー・・・ 分かりました」
「班長はオケアノスの第2倉庫にいます」
「ランドルという造船所に行って下さい」
「船の修理?」
「はい ・・・ ではっ」
 ユウロスは振り返って船へと走り急ぐ 勢いよく戸を開けリネとリーナを無視して階段を降りインコムをかぶってフロートバイクに飛び乗る
「UAI スタンバイ」
 インコムのスクリーンに
 のってますねー
「ああっ」
 などと言っているうちに甲板が開く
 OK
「・・・近いけどまあいいか」
 フロートバイクが飛び出す
「UAI 第2倉庫へはどう行けばいい」
 第2倉庫のハッチ開けましょうか
「ああ そうしてくれ」
 ユウロスはスピードを落としオケアノスの左舷上甲板の一部が開くのを見届けそこに近づき中を見回してフロートバイクごと中に入る
「閉めておいてくれ」
 了解
 大きな音を立てて上甲板が閉じた ユウロスは暗がりの倉庫内を見渡し 班長のいる明るい場所へ歩いて行く その先でアレイムが手招きしてユウロスを呼びながら
「よう ユウロス 派手な登場だな」
「ああっ まあな」いやあお恥ずかしい
 ユウロスはアレイムの席の隣に座る 大理石でできているテーブルは鏡のように磨きあげられており そのむこうには・・・
「諸君 ユウロス君が持ち帰った 首長ガイ・バダールの手紙とラオリス攻撃の作戦命令書だ とりあえず 手紙を読み上げる 聞きたくないなら聞かなくていいぞ
(12班の諸君 皆元気でいるだろうか 首長なんてものをやっているために 逃げる訳にも行かない が 学者団やその家族などは逃がしてやりたいものだ さて本題に入るが きたる4月17日 我々は潜水艦3隻をもってラオリス港を奇襲する よって君たちにはその東にある要塞にて陽動活動をしてほしい そうすることでラオリスの軍事力を半減できれば幸いだ
Dear私)」
 ガターン
「班長ぉーー Dear私って何ですか」
「まあ細かいことは気にするな」
 班長は一枚の紙を広げながら
「でっ これがその周辺のマップと要塞のマップだ」
 二つの地図を大理石のテーブルに広げる
「んーーー」あまりいい作戦ではないのだがなぁー
「どうしたユウロス」
「あっ? ああっ 4月17日ってあと5カ月と少しあるんでしょ 長すぎやしないかな」
「じゃ その間休養でもしてたらどうだ」
「休みはやれんよ」
「んー 残念」
「班長 潜水艦3隻は少なすぎませんか」
「そう言っても うちは潜水艦は3隻しかないだろ」
「いや 4隻だ」
「あのなー」
「さて どうやって攻撃するかだ」
「空から攻撃してはどうでしょうか」
 ラルド・ミィディー 茶色のショートカットの髪がきれいなの12班ただ一人の女性 が意見を述べた
「ミィディー君 空から攻撃するにしても結界を破壊してしまわなければ・・・」
「んー」どーしたものか
 インコムの小型パネルに
 トランスフォームシステムズを使えば何とかならないこともありませんが
「おまえ それじゃー盗み聞きだぞ」
 はあ すみません
 しばらくの沈黙の後
「班長」
 思い切った口調でディーロック・アンヴァーストが席を立つ
「どうしたね ロック君」
「この要塞の形状大きさから推測するにはー この方位より結界の破壊を行い  破壊後 ここに攻撃を集中させればよいのでは」
「ふーむー」
 班長はロックの説明と要塞の形状を見比べ
「この要塞が守りにつけばの話だな」
「班長 作戦は今考えるのではなくて後程にしては」
「ふむ どーするかな皆さん 後に回すとしますか 反対の方は挙手願います」
 アレイムは辺りを見回して誰も手を挙げていないのを確認して班長に
「次はいつですか?」
「そん時はまた呼ぶよ」
 ユウロスは席を立ち
「じゃー帰るよ 私は」
「ユウロス君 君には人命救助に行ってもらうよ」
「はぁー?」
「君にはこのオケアノスを動かしてグラメダの民を救助しに行くんだ なあに 死にはしないさ」
「今から?」死にはしないさって 無責任だぁー
「そうだ」そのとうりだ
「修理は」
「終わった」
「燃料は」
「満載」
「なんで そー 準備が良いの?」
「クルーが優秀だから」
「分かりました 乗組員以外は全員退艦 UAIフロートバイクを第8倉庫へ」
「だが ハイパーアクチュエーターは使えないよ」
「そんなぁー」
「健闘を祈る」
 ユウロスは開き直って
「さーみんな出てって」
「よし行くぞっ」
 12班の者達がユウロス一人を残してオケアノスを出る 上甲板が2カ所開きフロートバイクが移動する
 ユウロスは艦橋にむかい倉庫を後にした ユウロスが艦橋につくと 乗り組員たちが整列していた その中から一人の男が一歩前え出て
「私がオケアノス艦長マイク・リバートンです」
「ユウロス・ノジールだ 以後私の指示にしたがってもらう と 言うことになるのかなぁ」
「はぁ 分かりました」
 ユウロスは気の抜けた返事を聞き流し
「艦の全長・全幅・全高・排水量・最大速度・推進装置・武装を述べてほしい」
「全長672m・全幅75m・全高53m・排水量12020000トン・最大速度570ノット 推進装置 ハイパーアクチュエーター4機 スクリュー2機 武装 魚雷発射口前4門 両舷5門 後ろ2門 弾数100発 エネルギーシールド 以上」
「ふむ グラメダまでの航路計算を」改造点はなしか
「できてます」
「UAI グラメダは今何時だ」用意の良いこと
 夕方の18時26分です
「あと3時間20分後に出港だ 私は一度戻る」
「分かりました では出港準備にかかります」
「ああ そうしてくれ」
 ユウロスは艦橋を出ると第8倉庫へ向かう 第8倉庫は艦橋から最も近い倉庫であり最も装甲の厚い倉庫でもあるなぜなら戦闘機やヘリ等の主力兵器がおいてあるからだ 空気を吹き出す音と共に第8倉庫への扉が開く ユウロスはインコムをかぶりなおしフロートバイクに乗り込む
「UAI 一度戻るぞ」
 了解

 ユウロスはしばしの空の旅を楽しむ
 船に着くとユウロスは
「UAI 発進準備」
 了解
と いって自室へ
「ユウロスどこ行ってたの」
 リネが突然帰ってきたユウロスに聞く
「オケアノス」
「何してたの」
「これから仕事」
「どんな」
 ユウロスはリネの質問に答えずに彼の部屋の戸を閉めた・・・
「あっ」野郎逃げたな
 リネはユウロスの部屋から荷物を引っ掻き回す音をしばらく耳をつけて聞いていた
 ユウロスが扉を開ける 頭を打つリネ
「うーーっ」いたぁーい
「どうしたリネ」
 リネは目を逆三角形にしてユウロスを見る ユウロスは 危険を感じてか
「リーナは何処」
 などとたずねる リネは目を逆三角形にしたまま
「リーナってだれ」
 ユウロスはかなりの危険を感じながら
「飛竜の正体」
 などと言い捨て階段を上が・・・
「がっ・・・・・」無っ情ーーーーーーっ
 リネのサンダーがユウロスに貫通するような衝撃をもたらす

 時間の経過
「ピー・・・・ピュィー」
「んっ・・・あっリーナか」
 ユウロスは起き上がりグラメダ時間そのままの時計を見る
「21時13分」えっ?
 ユウロスはリーナとカバンを抱えてフロートバイクに乗り込む
 いいですか
「第8倉庫の上だ」
 了解
 フロートバイクが発進し わずかな間をおいて主翼を広げ方向転換をする その先の洋上にオケアノスは静かにフロートバイクを待っているかのようにたたずむ
 着艦します
 静かにスピードを落としゆっくりと機体を降ろしオケアノスの第8倉庫の入り口に着艦した
「第8倉庫に入れておいてくれ」
 了解
 ユウロスはリーナとカバンをもってオケアノスの艦橋に急ぐ
「まにあったぁー」
「今グラメダ時刻21時16分になりました」
「私はどの部屋を使ったらいいのかな?」
「今 手の空いている者は」
「はい艦長」
 一人の水兵が返事をする
「名前は」
「ヴィンスタッド・ルーン 一等兵であります」
「では ヴィンスタッド ユウロス殿に一人部屋を案内しろ」
「はい艦長」
 ユウロスは一等兵の後をついて行く しばらく長い通路を右に左に曲がって行くと
「どうぞ」
「ありがとう」
 ユウロスは中に入る 部屋にはベッド・机などが一つずつある 潜水艦にはあまりふさわしくない部屋でもある
「部屋の鍵はその引き出しの中です でわっ」
 ヴィンスタッドはそう言うと部署に戻っていった
「はぁー」
「ピュィー」
「忘れてたな」
 ユウロスはリーナに
「ついてくるか?」
 リーナはうれしそうに答えた ユウロスは部屋にカバンをおき鍵をかけて艦橋に戻るリーナはユウロスの肩に乗っている 艦橋に入っていきなり
「ユウロス殿 何とお呼びすれば」
「ユウロスでいいよ」
「それではしめしがつきません」
「あーー 艦長だったらどうだ」面倒だなぁー あっ 余計にややこしくしているかも
「了解 ではユウロス艦長 定時出港致しますか?」
「ああそうだ」ちょっと違うがな・・・
 マイクはユウロスの左肩にとまっている飛竜のリーナを見て
「ユウロス艦長 その動物は」
「これはペット」
「ですから何という名前の」
「おれ生物学の担当じゃないからなぁー UAIたのむ」
 わかりました データはグラメダの物です
 竜目 飛竜科 バース・ト・ドラゴン
 飛竜だが極めてドラゴンに近い 知能が高く全体が暗い緑色を帯びている 純白の角が特徴
 ユウロスはマイクにそのまましゃべり最後に
「だそーです」と付けた
「うーんー」
「分かったかなぁ」
「はあ」
 ユウロスは時計に目をやって
「出港時刻までは」
「後34分」

 キャラクターの休憩
 出港時刻間際になってユウロスはずっと被りっぱなしのインコムに
「UAI グラメダ沖 真東25キロの深度1200にオケアノスをワープさせろ」
 オケアノスですか
「そーだ」
 了解
「マイク時間になったら潜航しろ」
「了解 潜航準備」
「潜水に必要な時間は?」
「7秒」
「時間は」
「あと1分です」
 ユウロスはインコムに
「1分の後にワープだ」
 OK
「マイク! 45秒後までに全員に対ショック防御を」
「了解」
 マイクはストップウォッチを片手に
「なせ対ショック防御を」
 ユウロスは不適に笑みを浮かべ
「ワープだ」
 マイクは艦内放送で
「全員に継ぐ35秒以内に対ショック防御を終了させろ繰り返す30秒・・・」
「マイク 潜航! それからcountdownを」
「・24・23・22・21・20・19・・・・」
ユウロスは17をきくとほぼ同時に手摺りに捕まる
「13・12・11・10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0・1・2・3・4・5・6・7・8・・

「ユウロスどうしたのかなぁ ・・・ あっ」
オケアノスが沈んだ後の海が陥没するのをリネは目撃した

ユウロスは機能の回復したワープ後のオケアノスの艦橋にいる
「んー ・・・ 今どこを向いている?」
 マイクはモニターに目をやり
「真東より4ミル北です」
「真西に方向修正 速度20ノット 前方に注意 機雷海域だ」
「現在深度は?」
「1200」
 ユウロスが答える
「1200です」
 操舵手が答えた
「・・・ ソナー!」
「はい」
 大きな球形の3Dレーダーに向かっている人が返事をする
「機雷を探せ 見つけ次第処理しろ」
 さっき返事した人が
「分かりました」
「マイク オケアノスには小型潜水艇は無いのか?」
「有りますよ」
「だれか先にそれを使って知らせに行け 準備の時間も惜しい」
「・・・・・はい艦長」
 少し艦内が慌ただしくなる
「今出て行きます」
 3Dレーダーに黄色い点が移動して行くのが分かる と同時に赤い点が映る
「んー」心配しても始まらないよなぁー
 リーナがユウロスの肩で暇そうにあくびをする
「マイク 私は部屋に戻るからな」
「はい」いいかげんな人だ・・・

「えーと」
 ユウロスは通路を見渡し
「こっちか」
 記憶をもとに部屋へと進むが
「あっ」
 重い扉を開けるとそこは・・・
「だっ 第8倉庫だ」なっ 何故 こんな所に・・・
 まあいいとするかなと思いつつ ユウロスはリーナを肩から降ろしてフロートバイクの点検を始める

「あらっ リネの魔法だな全く」破壊力のあること
 壊れていたのはエネルギーシールドのエネルギー発振機
「・・・」仮に壊れたまま長時間エネルギーシールドを使用すると どっかぁーん だな
 ユウロスは発振機を取り外す
「ふう」 ・・・ 「スペアあったかな」
「ああっ」ここはオケアノスの中だった「ゆっ ・・・ 」うAIも呼べないなぁ
「まあいい」なくても攻撃には差し支えないし・・・
 ユウロスはフーロトバイクのトランクに発振機を入れ発振機の元あった場所の蓋を閉めると
「リーナっ 部屋に戻ろうか」
 肩の上のリーナが少しうれしそうに
「ピュィー」
 ユウロスとリーナは第8倉庫を後にした
 オケアノスの艦橋ではあわただしくグラメダの人々の受け入れ準備に追われている
 ユウロスは艦橋の様子に
「あらあら」なんだかなぁー
 マイクは戻って来たユウロスに
「ユウロス艦長」
「何でしょうか?」
「もうすぐ知らせに行った小型潜水艇が戻って来ます」
「分かった その乗組員を艦橋へ」
「はい」
 ユウロスはしばらく艦橋内を見渡す
 一人の水兵が入って来て
「艦長っ ただ今戻りました」
「うむ 報告を聞こう」
「報告します 残っている人数は全部で782名 軍・レジスタンス関係者48名 学者・坑夫関係者734名 以上です」
「そうか マイク この艦は今どこに」
「はい 今浮上中です」
「どうも」もうすぐだな「マイク30分以内に再び潜水できるように」
「全力を尽くします」
 マイクは艦橋を出て行った ユウロスは艦橋内のモニターで艦外を見る そこには浮上したオケアノスの上甲板に数名の水兵が多人数用のハッチを開け  人々が中に入ってくるさまが映っている それを見てユウロスはため息のように
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・
「あの 静かにしてくれますか」
・・・ーっ ああっ」
「うーん」つまらん 何もない ああっ
 マイクが艦橋に戻って来てユウロスを見るなり声をかける
「どうしました」
 ユウロスには届かないのか
「ああーーーっ」ひまだぁー
「あのっ」
「えっあっなっ・・・なにか」
「だから・どうしました」
「あっ・・・(ひまだなんていえないよなぁー)・・・なんでもない」
「そうですか」
 ユウロスは歩きだして
「マイク 私は部屋に戻ってるから」逃げよう つまらないから
「分かりました」またですか

「ピー」やっと出られた
 リーナがあくびをするように翼を広げる ユウロスは歩きながら
「ピー か・・・ああっ」のんきでいいよなぁー
 オケアノス内部の通路は結構入り組んでいる
「ここっ・・・かな」
 鍵を差し込むユウロス
「んー」はいったぁー
 鍵を回すユウロス
「開いたぁー」ばんざぁーい
 普通はこんなんこと考えない 戸を開け中にはいるユウロス
「ピィー」リーナがユウロスの肩から飛び出しベッドに降り立つとおもいきや
「スー スー」と寝息が聞こえてくる
「うっ」わっ私の寝る場所は? 仕方がないリーナの横で寝ようかなぁー
 ベッドの上にいるリーナをそっと持ち上げようとするユウロス
 しかし 不意にリーナに右手首を咬まれるユウロス
「がぁーっ」うおぉーーーーーーっ いっ 痛い
 ユウロスは右の手首を押さえて壁に寄り掛かる
「ちっ 血が出で来た」
 ユウロスは壁に寄り掛かりながら通路に出ようとする
「うっ うっ」
 ユウロスは滴る血を気にしながら通路を歩く
「うっ」あっ ・・・ユウロスの意識が途切れる

「・・・」ああっ 光が見える ・・・・・・・・・ 人の声が聞こえる
 ユウロスは目を開け視界を見渡す 医者の使う道具が棚に並んでいる
「気がついたかね」
 白衣の老人が声をかけた ユウロスはベッドから起き上がり
「ここは 医務室?」
「ああそんなとこだ 君は廊下で右手首から血を流して倒れていたんだよ」
 右の手首に包帯が巻かれているのにユウロスは気がついた 老人の話は続く
「君は特殊な血液型だな」
「はあ。」
「何というか こう・・・今まで見たことがない訳だよ 私も長年医者を務めてきたが  こんなのは初めてだよ 君両親は」
「さあ」
「さあって 君 両親がいなければ君の存在はないはずだよ ・・・ 孤児かね」
「まあ とりあえずは ・・・ 私の血液型はどんなものなんですか?」
「そうだな しいて言えば何者にも似つかないんだ」
「そうですか では」
 ユウロスは一礼をして医務室を後にした
「・・・・・・・・・・・・」どうしたものか・・・ いやいや 今何時だろーか
 ユウロスは艦橋へと足を進める が ユウロスは辺りを見回して
「あっ」艦橋どっちだっけ

 さてそのころ リネはというと
 バスケット・杖片手にラエルの家へと進んでいる最中でして
「どうも ユウロスの考えがよめないなぁー」今どこにいるんだか
 港に面した小道の角を曲がるとラエルの家が見えてくる 赤いレンガの家だ
ラエル「おぉーい」
エレナ「リネだ リネだぁー」
 リネが声のする方を見上げると ラエルとエレナが屋根の上からこちらを見おろしている
「今 いくよぉーー」

 さてそのころユウロスは
 ユウロスは艦橋を見渡し
「海流にのれないか」
「海流ですか 航海長 近くの海流は」
 海図を前にサングラスをかけた航海長が座っている
「ルベルトン海流がありますが この海流の流れは あてにできません」
 ユウロスが航海長の机に近づき質問する
「イトス近くに流れる海流は」
「3つあります ガーリッシュ海流とオースト海流にアスイセカ海流です」
「ここから一番近いのは」
 航海長は世界海図を広げ
「近くはありませんが まずこの南極海にある巡流にのり そこからこの寒流に乗り換えます  更に赤道付近でこのガーリッシュ海流に乗ればいいでしょう」
 ユウロスは海図に目をやって
「全行程何日だ」
「およそ ・・・ 15日です」
「普通に行くとどうなる」
「20日ぐらいです」
 ユウロスは海流を表した地図から目を離しマイクに目を向け
「最短距離で赤道を目指して・・・」
「しかし艦長」
「この船の装甲は俺が設計したんだ 物理的な衝撃はおろかラオリスの魔法攻撃をくらっても沈まないようにな」
「はあ・・・」しかし 学者の言うことはあまり・・・
「なにかまだ言いたいことがあるかな」
「了解・・・」
 航海長は席を立ち
「ユウロス艦長」
 ユウロスは席を立ち
「海図をよく見て」
と 言葉を残し発令所を後にした
「はぁーっ」まさか体当たり攻撃を旨とする強襲特攻艦をモチーフにした なんて言えないよなぁー
「ああーーーっ」しかし 俺が設計したのに道がわからんとは・・・ 外部装甲だけだったよーな
 しばらくして ユウロスが艦内をうろついていると その辺のスピーカーから
「ユーロス ノジール ただちに第4倉庫まで来い 繰り返す・・・」
「来いって言っても どっちだ」どっちなんだよぉーーーーーーっ
 などとユウロスがやっていると
「どうしました」とある水兵が声をかけた
「おおっ(天の助け)えーっと 第4倉庫はどう行けばいいのかな?」
 水兵は笑って
「冗談が好きなんですか? その扉ですよ」
 ユウロスは気を動転させて
「えっ?えっ?」

 空白の時間
 錆び付いたような音を立てて重い扉を全力で開けるユウロス 重い扉は低い響きを立て 止め具に当たった
「ユウロス君 ・・・ こっちだ」
 広い倉庫の中を軽く響きながら男の声が伝わる ユウロスの背後で自動的に扉は閉まった
「はいはい」
 ユウロスは歩きながら辺りを見回す 倉庫の一画には前回の反波動エネルギー砲が姿を残していた
「どうも」
 ユウロスは空いている椅子に座っる
 ユウロスはちょっと戸惑ったわずか2秒だが
 知らない男の人が
「早かったね ・・・では始めよう この度集まってもらったのはマイク艦長が決断したものだが・・・ (ユウロスは男の話を聞きいている いや聞き流しているようだ)・・・
 というわけで キャタピラーの第4ブロックの修理の主任をユウロス君にやってもらいたい」
「なにをするって?」
「キャタピラーの修理だが 何か」
と 議会進行役の男はユウロスに問う
「んー(艦長が決断したとあれば・・・よし) 分かりました」
 ユウロスは席を立ち
「失礼」
 言葉を残して倉庫を去った

 数日後
「さて 艦橋はどっちかな」
と 部屋を出て見上げてみると 道しるべが掲げてあった
「あっちか」
 ユウロスは前方に注意を払いながら歩きだす
 艦橋まであと175m
 ユウロスはこの表示を見て走りだした
 金属の床に靴が当たる 軽快な響きが耳に伝わる・・・
 ・・・突然目の前が暗くなる・・・
 ガシャァーン 突然 めまいのためヘッドスライディングの様に倒れた
「うっ ううーっ貧血がぁー」なっ!?
 頭をクラクラさせながら起き上がり艦橋に向かう
 空気音と共に扉が開くユウロスはその間をゆっくりと通過し
「現在位置は」
 航海長が答える
「パルミィール川河口の北東約204キロ 深度500」
 ユウロスは少し考える
「・・・・・・」うーんー どのへんだー 全くわからん 海図では?
「海図で示してほしいなぁー」
 航海長は手招きしてユウロスを呼び込み海図の掲げてある方を指さす
「ここがパルミィール川河口」
と 言って逆くの字になった所を指さした
「そしてそこから北東約204キロ」
 航海長は定規をもって方位を測りコンパスで距離を測ってその到達地点を指さした
「ここですユウロス艦長」
「ありがとう」経度−12緯度−3か もっとも まだ世界は個々の大陸のマップにより構成されているから海図もそれに伴ったものだし 当然緯度・経度なんて存在してないもんなぁ・・・
「ユウロス艦長あと30分程で赤道に達します」
 マイクはユウロスに言った
「はいはい」
 返事をしてそれからユウロスは海図を見て
「航海長この付近の海流は」
「オースト海流です この季節なら海流に乗れます」
「よし 任せる」
 航海長は少しの間 計算などをして
「マイク艦長 コース・・・」
「分かった」
「対ショック防御を発令して下さい この時期のオースト海流の流れは強力です」
「分かった 総員対ショック防御」
「イエッサー」
「航海長 いつ海流に乗れますかな」
「早くて30分遅くても1時間以内には」
「対ショック防御はいつまで続けるつもりだ? 航海長」
「海流に入るまでです」
「そうか・・・ では 戻ってますから」
「もう倒れないで下さいよ」
 艦橋内の水兵が笑う 扉が閉まり笑い声も消えた
「はぁー」
 あの笑い声に情報の伝達は早い などと考えているうちに
「・・・・・・・・・」迷ってしまったんじゃないかな
と 思い込むユウロス 
「 ! そうだ 鍵に何か書いてあるかも」
と 鍵を取り出しあらゆる方向から眺めると
 D−32 と彫ってある
「D−32と言うのはどこかなぁー」
 通路の所々にある扉をじろじろ観察する
「E−34」
 その右の扉を同じように観察する
「E−35 かぁー」
「という事は・・・」
 ユウロスは通路を見渡して階段を探す
「あれっ・・・」ない 見当たらないじゃないか
 走りだすユウロス ブーツの裏が堅い音を立てる ふと階段の姿が視線を横切ると同時にユウロスは体を180度ひねり90度のカーブに入るそしてカーブの終了地点には上下に続く階段がそびえているのであった ユウロスは階段を下り最寄りの扉を見る
 D−49
「という事はあっちか」
 カツ カツ と音を立て歩くユウロス
「45 43 41 39 37 35 33とっ」
 ユウロスは立ち止まり反対側の扉に書いてある数字を見る 32
「とりあえずここのはずだが」
 鍵を開け金属製の扉を押し開ける・と・・・ リーナのいびき?が聞こえる
「うっ」また咬まれる・・・かも・・・
「ぐーうー」
 ユウロスのおなかの辺りで音がしたので ユウロスは鍵をおいて部屋を後にした
「さて・・食堂に 何か残ってればいいけど」
 ユウロスはオケアノス艦内を食堂めがけて 艦内を迷う・・・
 ぐっぐぅーーっ
「あーもーだめっ」おなかすいたぁー
 ふとユウロスは自分の部屋の前に戻ってきているのに気づく
「どうして・・・」なぜ・・・
 ユウロスはカバンの中の弁当らしきものの事を思い出した 足取り重く部屋に戻り カバンを開けた 中には包みが入っている それを取り出し中を開けて見ると
「なっ・・・・・・・」
 中には黒い団子のようなもの四つと紙切れが入っていた ユウロスは紙切れを開いてみると
「ユウちゃんへ 私のお爺様の作った物です 遠慮なく食べてください 食べなかったら 知らないぞ  リネ」
「リネの爺さんの名は確か チャール・エピックだったよな 因果応報 なんで私が教えたのを私が食べなきゃいけないんだ しかもこれすごく苦いんだよな・・・・・・」
 ユウロスは黒い球体一つを片手に
「ええいっ」
 ゴックッ ・・・ ン
 ユウロスは文字どうり にがぁーい 顔をする
「まあーーったく しかし これ一つでしばらくもつな」
と その時
 大きく船体が傾いた
「うおっと」
 すぐさまユウロスは体勢を立て直した
「海流に乗ったかな」ということは修理を急がなければ
 ユウロスが部屋を出ようとしたとき
「ピー ピュィー」あっ ユウロス
 リーナが起きた ユウロスは振り向いてリーナを見て
「おいで リーナ」
「ピー」
 リーナは無重力空間に浮遊する物体のように ふよふよ とユウロスによって来て右肩にとまった まだ眠そうである ユウロスは部屋を出て鍵をかけて 通路を歩きだす ユウロスは頭の中のオケアノスの装甲の立体図形の中からキャタピラー第4ブロックの位置を取り出す
「キャタピラーというのはともかく総称してハイパーアクチュエーターというのは問題があるなー 名前変えてもらおうかなー」
 ユウロスは階段をゆっくり歩いて降りる しばらく降りて行くと修理作業が慌ただしく進められていた 「えっと ここは何があったかな」
 一人の男が作業をやめユウロスの前に来て
「ユウロスさん」
 辺りは雑音の嵐 ユウロスは首で現場責任者に返事をする
「丁度良い 興味本位なんですがね 装甲の厚さを教えてくれませんか」
 ユウロスは大声で
「装甲の厚さ? この辺りは水平に切ると0.8mの外層に17.4mのエンジンブロックと7.3mの内層を含めて25.5mですが何か」
「ユウロスさん ここはエンジンと発電機との中継コードがあるんです」
 中継コード と言っても断面積2平方m もある巨大な金属柱である・・・
「ということは エンジンブロックの中は今は水が入っていないのかな?」
「そういうことです」
「破損箇所は」
 男は手元の設計図を広げて指で指し示す
「ここのコード2本とその周辺箇所です」
「いまどんな作業をしているんだ?」
 男は現場を指さして
「あのウインチがコードを引っ張り出す作業をしています それからあの人だかりが発電機側のコードと中継コードの接続部分を修理しています あと壁の向こう側に何人かがエンジン側の修理に追われています」
「中継コードを引っ張り出す作業か 少し作業がおくれてるね」
 男は答える
「途中で中継コードが切れてたので 二度手間になったんです」
「なーるほど」
 辺りはまだ騒がしい ウインチの音が軽くなった瞬間ズタズタの金属柱がユウロスの前に横たわった
 男が大声で叫ぶ
「こいつをどけてスペアを持って来い」
 物かげから新品の金属柱が姿を現す ユウロスは壁を叩いて
「装甲の向こうの作業は」
 男は大声で指図する
「おい そこは鏡のようにつるつるに磨いとけ ・・・ なにか」
「この装甲の向こうの作業は」
「もうすぐ終わります」
 ユウロスがキョロキョロと辺りを見回して見ると 修理に汗を流している水兵とは別の水兵が艦内用のジープに乗って来た その水兵はあわてて
「ユウロス艦長ですね マイク艦長がお呼びです 急いでお乗りください」
 ユウロスは責任者に
「後をたのむ 急がず焦らず手を抜かずでね」
と ことずけ車に乗った ユウロスはジープが走りだすと同時に運転している水兵に
「何かあったのか」
 ジープは角を曲がり広い通路に出た水兵は
「我が艦がラオリス第1艦隊に発見されました」
 水兵は一呼吸置いて
「とはしますぜ」
 ジープはスピードを上げる 車両用エレベーターに入る直前に水兵は急ブレーキをかける ユウロスは飛ばされないように必死につかまる 160度回転してジープはエレベーター内部に止まった 水兵は止まると同時にジープから飛び降りエレベーターのスイッチを押しに急ぐ ・・・ ものものしいモーター音と共にエレベーターが動き出す
 エレベーターが止まった 目の前に第8倉庫が広がっている 水兵は無言で倉庫の出口近くへジープを進める ジープが止まるとユウロスはジープから降りて倉庫を後にした・・・
 しーーんとしている 艦橋内は音一つ響いて来ない空間になっていた ユウロスの歩く音が艦橋内に響く そして 水兵たちの視線がユウロスに向けられる
「マイク 状況は」
 マイクはいつもより低い声で
「ユウロス艦長 ラオリス第1艦隊に完全に包囲されまた」
「うむ それで」
 マイクの低い声は続く
「今 降伏を勧告された所です」
「ほう ・・・」
 ユウロスの顔が不気味に笑みを浮かべる
「・・・ 浮上にいくらかかる」
「ユウロス艦長 受諾するのですか」
 ユウロスの力のある声が
「答えろ」
 マイクは答える
「30秒程度ですが」
 ユウロスはインコムのマイクを口元に
「UAI聞いたか」
 インコムのパネルにUAIの返事が表示される
 はい
「やるぞ」
 ワープですか?
「無論・・・ マイク 浮上しろ ・・・ しかけるぞ」
 マイクはユウロスの考えが分かるのか
「急速浮上 対ショック防御」
「UAI 浮上を開始した」
 分かりました
 ワープアウトポイント イトス沖南西20kの海上
 ユウロスは上にある手摺りを左手でつかむ
「了解」
 しばらく音も無く時が流れる
「浮上しました」
 発令所のモニターにはラオリス第1艦隊の姿が映し出されている
 そのとき ズズーーーーーーン 轟音と微々たる振動が管内に伝わる
「艦長 左舷中部砲撃受けました 損傷はありません」
「なんて 艦だ」
「艦長 9時の方向に砲弾多数 後10秒で弾着・8・・7・・6・・5・・4・・3・・」
 そんなときインコムのパネルには
 ワープイン
 オケアノスが姿を消したあとに数本の水柱が上がる ユウロスが気がつくと艦橋内の人間がぐったりとのびていた そしてそれをよそに艦橋を後にし部屋へと歩きだす
 リーナが暇な人間の欠伸のように声を発する
「ピー」
「どうしたリーナ」
 ぐうーっ
 リーナのおなかから音が聞こえる
「まあ待ちなさい ちゃんとあげますから」
 リーナは不満そーな感じでユウロスの右肩に止まっている しばらくオケアノスの中を進んで部屋に入りカバンを持って
「戻るよ リーナ」
 鍵を部屋の中に置き戸を閉め再び歩きだす 車両用エレベーターの前でボタンを押しユウロスは上から降りてくるエレベーターを眺める ユウロスはエレベーターに乗り最上層第8倉庫のあるLデッキのボタンを押す
 鈍く深いモーターの音がエレベーター内に響く ふと ユウロスはこのエレベーターには天井がない事に気が付いた 上を見ているユウロスに天井が近づく そう もう最上階のLデッキに着いてしまったのである モーター音が消え ユウロスはエレベーターを離れた フロートバイクは静かに第8倉庫にたたずんでいる フロートバイクに乗り込みユウロスはリーナを後ろの開いているスペースに降ろした
 インコムのパネルには
 ヘリ用ハッチを使います
「どうぞ」
 倉庫の天井が轟音と共にスライドして開く フロートバイクはその間を突き抜けるように通り抜け主翼を展開した ユウロスはT型の操縦桿を握りある程度の高度をとってインコムに
「着艦してくれるかな」
 インコムのパネルには
 いいですよ 操縦桿をはなして下さい
 ユウロスは操縦桿をはなしてシートにもたれかかりながら外の景色をしばらく眺める フロートバイクが主翼を収納し ライジングアローの前部甲板に静かに着艦した ユウロスはフロートバイクから降りリーナとカバンを取り出して船の応接間兼ダイニングキッチン兼玄関である所に入り冷蔵庫を引っ掻き回す そのころライジングアローの前部甲板が開きフロートバイクはその下の前部倉庫に姿を消した
 リネは目を逆三角形にして
「ユウちゃん お客さんよ」
と 鬼のような声で冷蔵庫をあさっているユウロスに呼びかけた
 ユウロスは神経が凍りついたように
「だれ?」
「あなたのこと チーフって呼んでるんだけど チーフってなぁーに」
 ユウロスはチーフという言葉に懐かしさと恐怖感を一気に沸騰させた
 次の瞬間ユウロスはおそる おそる冷蔵庫から目を放し リネの方を向いた・・・
 ユウロスの心の中
・・・・・・・・・・おっ 終わった・・・・・・・・・・
 などと放心状態に浸っているユウロスに女性の声がかかる
「チーフ フリーナ・ノーベルですお久しぶりですねー」
 ユウロスは心を落ち着けて
「フっ フリーナなにかあったのか?」
 フリーナはリネにちらりと視線を向けて
「チーフ人払いを」
「リネ済まない」
 リネは船の入り口を蹴破り 出て行った ユウロスはリネの考えを察しながら落ち着かない様子で
「でっ 何があったのだフリーナ もしかして 仕事しろ なんて言わんだろーなー」
 フリーナは真面目になって
「あまり変わらないですが チーフ 数日前に発見したのですが 30光年の距離に 全艦数5万隻の艦隊と思われるものが 艦隊速度毎時0.02光年で接近中 相手の所属が分かりませんが 戦いを仕掛けて来られたらチームの防衛システムを持ってしても全滅させるのは難しい可能性も出て来ます」
「とりあえず艦隊がこの星系を避けるように行動しろ もしだめなら私も行く」
「分かりました」
 フリーナは船を出て
「チーフ 遊んでばかりいないで 仕事したらどうです かなりチーフの仕事はたまってるんですよ」
「まあまあ そう言わずに」
 フリーナは桟橋に置いてあるフロートバイクに似た三角翼の小型の飛行機に乗ると ユウロスにほほえんで 音もなく飛び去っていった
「ユウロス あれ だれなの」
 リネが目を逆三角形にしてユウロスに問う
「トップ シークレット」
 リネはユウロスに近づいて来て
「答えて」
と 再びユウロスに問う ユウロスは恐怖感に浸りながら
「答えると 歴史に狂いが生じる危険性が・・・」
 ユウロスはリネの電撃がこわいのだ
「わかったわ もういい さようなら」
 リネはそう言って町のほうへ歩いて行く
「 ・・・・・ まあいいかな」

 そんなことがありまして 翌日
 ユウロスは朝起きると同時に前部倉庫に入りフロートバイクの発振機をスペアと交換にかかっていた
 そんなとき倉庫の扉をノックする音が
「だれだ倉庫の扉を叩く奴は」
 ユウロスは独特の悪寒を感じながら倉庫の扉の鍵を開ける だれもいない がユウロスは人の気配を感じた ユウロスは身の危険を感じ 倉庫に戻ってバルカンブラスター右腕に持って倉庫を出て倉庫の扉を閉めた 後部倉庫までの通路にはだれもいない ユウロスは右腕のバルカンブラスターをセミオートにし 階段を一歩一歩のぼる 応接間兼台所兼玄関になっている空間にはだれもいない ユウロスははっとして操舵室への扉を開けた だれもいない ユウロスは扉を閉め振り返る
「死ねー」
 猛然とした声で何物かがユウロスに襲い掛かる ユウロスは反転し左腕を盾にした
 ガキイィーーーン
 金属同士の鋭い音を立てて相手の剣がユウロスの左腕の肉に食い込む
 ユウロスは古ぼけたマント姿の男を見て
「・・・お前はバリアス」
「いかにも 俺はバリアスだ 貴様 俺の剣を骨で受けるとはな」しかしガキイィーーーンって音がしたぞ・・・
 ユウロスは剣の中心をバルカンブラスターで破壊し平然として食い込んだ剣のかけらを左腕から振り落とした
「私を殺したいのなら最強魔法を会得することだな」それでも無理だろうけど
 バリアスはユウロスが痛みをうったえないことに動揺して
「おまえは一体・・・」
 ユウロスはバルカンブラスターでバリアスの両腕を撃つ
 バリアスは破壊された剣を落とし
「ぐああーーっ」
と 悲痛の声を上げる
 ユウロスはバルカンブラスターの出力を最小にしてバリアスに放った
「うっ」
 バリアスは倒れこみ気を失った
 ユウロスは左腕の傷を見て平然と
「あー 参ったなー」この傷どうしようかなぁ
「まあ包帯でも巻いておこうかな」
 バルカンブラスターを肩にかけテーブルの引き出しから包帯を取り出し左腕に巻き付けた
「よし こんなものかな」
と そのときリネが戸を蹴破るように入って来て
「ユウちゃん 答えてもらおうか?」
 リネがサンダーいっぱいでユウロスを威嚇する ユウロスは恐る恐る
「リネ ちょうどいい この傷治してくれないかな」
 リネはつえを振りかざし
「Thunder!」
 ユウロスはあまりにも激しい苦痛の中
 左腕・両脚全壊 臓器73%破損 生命維持率17%・・・
 ここでユウロスの頭の中が真っ白になった
 リネはいつもどうりのサンダーを浴びせたのだがユウロスの黒焦げに近い姿を見て
「ユウロスッ」
 リネは急ぎフルパワーで回復魔法を使い始める
 ・・・・・「ユウちゃん」・・・・・
 両手足回復・臓器91%復活・生命維持率98%
 ユウロスがむくりと起きる 左腕の傷もふさがっている ふと膝の辺りが重いと感じ膝の方を見た
「あれ」リネがたおれてる ええと リネのサンダーを骨に受けて全身に回って・・・ 死ぬところだったのか うむ 一度死んでみるのもおもしろいかもなー・・・
 などと考えているユウロス リネはぐったりとしてユウロスの膝のうえで寝ている
「全く 世の中これでいいのかねぇー」
 ユウロスはリネを部屋に運びながら
「リネって こんなに重たかったかなー」
 リネをベッドの上に寝かせてまた階段を上がりバリアスの倒れているところへ ユウロスはバリアスを見て
「記憶を消すかそれとも・・・どうしようか うーむー 記憶を見てみようかな」
 ユウロスはバリアスの両手を持って階段を引きずり降ろし前部の倉庫へ引きずって行く 倉庫にはフロートバイクのテールがこちらを向いて置いてある  その横を通り奥にあるほこりを被った椅子にバリアスを座らせた
「あーーーーっ 重い」
 ユウロスはバリアスの乗っかっている椅子を見てもっと近いところがよかったなー などと思いながら床から突き出た四角柱型の上にあるいろいろな色といろいろな形をしたキーの一つにユウロスの指が触れる
 鈍い音と共に操舵室のメインパネルと同じものが宙に現れた ユウロスは別のキーに触れる さっきとはすこし違った鈍い音と共にパネルには漆黒のローブをまとった男らしき人物が映る
「分かった まかせろ」
 バリアスの声だとユウロスの脳裏に浮かぶ ユウロスはまた別のキーに触れる 一瞬パネルの映像が乱れて別の画面に変わり 漆黒のローブをまとった男らしき人物が歩いてくる
 男らしき人物が
「バリアスだな」
と 尋ねるような口調で言う
 バリアスの声がこれに答える
「ああそうだ」
 男らしき人物がローブの中から袋をだしバリアス渡しながら
「とりあえず手付金だ」
「今どこに」
「今はイトスにいるはずだ」
「分かった まかせろ」
 画面がくるっと回って男らしき人物が画面外へと消えた
 ユウロスは別のキーに触れる 初めの鈍い音と共にパネルが消えた
「記憶を消してみようかな」
と 言って赤色系統のキーに触れる バリアスの頭に数本のスパークが起きる
「まずは これでいいか」
 ユウロスはバリアスを背中に乗せる 重い
「重いぞぉーー」
 などとわめきつつ そのままユウロスはバリアスを開いている船室まで運んで行く
 バリアスをベッドに降ろしユウロスは疲れきった声で
「あー 重たかったー」
と ため息のように発音したしばらくしてユウロスは 上部船室に上がり
「リーナ どこ」
 どこからともなくリーナが
「ピュィー」
 ユウロスにattack
 バキッ ユウロスの頭が軽い脳震盪を起こす
 ユウロスは起き上がりながら
「うっ うーんー」
 どーもリーナはパワーがあり過ぎるなー
「さて リーナ 何か作ってあげよう」
 ユウロスは冷蔵庫を開ける
「あれ?!?!?!?!?!?!?・・・・・・・・」
 冷蔵庫の中はきれいさっぱり食い荒らされている ユウロスは壁にこびりついている肉辺に付いている歯型を じーっと 見て
「リーナか」
 ユウロスは頭をかきながら やっぱり人間に戻す必要があるな 食費がかかり過ぎるこのままでは破産してしまうーーー なんて思いつつ
「よし!」
 ユウロスは冷蔵庫を閉めて浮遊しているリーナをごく自然に捕まえようと歩み寄り
「おいで」
と 極めて普通に言った リーナは何も知らずにユウロスの右肩に止まる ユウロスはそのまま操舵室に入りシートに腰掛けた 即座にサブパネルに
 ユウロスどの ペットはお断りです
と 表示される
「ちょっと待て ええと フリールを呼んでくれるかい」
 分かりました
 しばらくしてメインパネルが平面で現れ 眠そうな顔の枕をもった女性がそれに映り
「ふぁーーーっ ひーフ 何でしょうか」
「フリールかい?」
 フリールは取り直して
「はいそうですが 何か?」
「20分以内にここに来てほしい」
「分かりました 努力します」
 ここでメインパネルが消えた ユウロスは操舵室を離れて
「さて 釣りでもしようかな」
と 階段を降りて後部倉庫に入る しばらく倉庫を荒らした後ユウロスは甲板にでて 竿を一振りし浮き・重り・釣り針・餌を水面に投じる ユウロスは釣竿の先ごしに港を眺めながら物思いにふける
「ああー」リーナをこのままの姿でラオリス王に会わせてみようかなー あの爺さん元気かなー 近年忙しくって あってないからなー そういえば ここからラオリスの王宮までは・・・β半周だから ええと 何キロかな
「UAI 現在位置から ラオリス王宮まで 何キロだ?」
 インコムのパネルには
 24783kです
「はあっ」あー遠いなー
 しばらく港を見ながら 静かだー なんて思っていると 頭上にかんだかい爆音が迫る  ユウロスは上を見る
「おいおい」・・・・・・・・・・・・・・・・
 かなり高い場所からユウロスによく似た者が機械を着て降りてくる
 その機械はフリールの背中にありそこから長いものと短い翼らしきものが左右対称に突き出ている
 ユウロスはぎょっとして
「ちょっと待て! フリールそんな物で現れるんじゃない!」
 フリールは静かに甲板に着地し
「はあ すみません でもこれで再突入するのが楽しみですから」
「ところで 君に預けていた あの力を返してくれるかい?」
 フリールは機械の翼をはずしながら
「ええ いいですよ」
と 答える
 リーナはこの二人をじぃーーっと見比べる ユウロスとフリールを ・・・ あまり変わらない
 服装が違うのはともかくとして強いて言えば性別とユウロスの方が髪が長い程度である しかし服装の他の部分はあまり奇抜でもないのにくらべ リーナの目にはフリールの着ている服装は露出度の高い奇抜な物だった
 フリールは船の甲板から桟橋に降り魔法陣を書き始めるリーナはこの様子を船の上から眺める がっ
「!」こんな魔法陣見たこともない 一体何?
 フリールは魔法陣を書き終えるとその隣りにもうひとつの魔法陣を書き始めた ユウロスはこの様子を見ながら被っていたインコムを甲板に置き 降りる
 ようやくフリールは二つ目の魔法陣を書き終えた
「いいかな」
 フリールは指さして
「その大きな魔法陣の中心に・・・」
 ユウロスはその魔法陣の真ん中で立ち止まり
「いいぞ」
 フリールがもう一方の後で書いた小さな魔法陣の中に入り精神を集中させていく しばらくして フリールがブツブツと何かを唱える  リーナはその様子を無我夢中で見ている 魔法陣が鈍く青く光り次の瞬間強烈な閃光がはしった リーナは目が眩みしばらくの間なにも見えなくなった 眩んだ目が元に戻ったころユウロスとフリールは魔法陣の上で気を失って倒れていた

 時の経過
 ユウロスが むくり と起き上がり辺りを見回す
「フリール ・・・ 気を失っているな 確かに 力は返してもらったよ」ただ君には若干嘘を付いていた 私は 君に力を預けていたのではなく 君に私の あの破壊的な全ての力を封印したんだ しかし ダメだな 私はあの力の上に成り立っているらしい・・・」
 しばらくうつむいていたユウロスは不自然に甲板に飛び上がり 直接操舵室に入る
「UAI フリールに留守番を押し付けてくれ」
 いいんですか?
「大丈夫!」
 ユウロスはそう言い残して操舵室を出て階段を降り前部倉庫に入る
「ええと あの黒い鎧 マジカルアーム? サイアーマーだったかなぁ? 最近物忘れがひどいのかなぁ・・・ どこだ」あれ? 名前を忘れたなぁー
と 倉庫の一角の山を崩す
 そのころリネが目を覚まし部屋を出て階段を上がり水を木製のコップに注いで飲もうとしている
 水が喉を潤すと同時にこころも満たされていくような感触がする なんて思っているころ
 ユウロスはがらくたの山から漆黒のマジカルアーマーという名前らしき鎧の主要部分を取り出し 他に必要な物を探す
「これと ・・・ あったあった」
 ユウロスはインコムをつけずにフロートバイクに乗り込み 精神で
「リーナ ここへ」
 リネの精神にもこの言葉が入って来た
 リネは即座に
「だれ この声は」と問いかけた
 ユウロスの心の中
「リーナ 今ハッチを開ける」
 前部甲板の真ん中辺りが戸を圧し開けるように開く 数秒後その間からリーナが飛び込んでくるユウロスはフロートバイクにリーナを入れ 後ろにマジカルアーマーがあることを確認して
「UAI ラオリス王宮の方向へ 」
 フロートバイクのパネルに
 分かりました
 発艦します
 爆発音と共にフロートバイクが前部甲板から飛び出し主翼を展開し大きくターンしさらに加速を続ける
「巡航スピードまであげてくれ」
 分かりました
 スピード→M7 対圧力バリアon
 まだまだフロートバイクが加速を続ける すぐにイトス島が見えなくなる さらに少し時をおいて少し静かになった
「リーナにとっては初めての経験だろーな」
 風を切り裂く音だけがユウロスとリーナの耳に入ってくる ユウロスは少し余裕をもつように
「途中から飛んで行くかな」

 ユウロスが余裕をぶちかましているころ
 リネがフリールを起そうとする
「だいじょうぶ?」
 フリールはゆっくりとうつ伏せの状態から立ち上がってリネの方を見てリネよりも高い声で
「あなたは だれ」
と リネに問う
「あたしは リネ  リネ・エピックだけど・・・」あなたいったい
「・・・・・・私が ・・・ どこから来て どこへ行くのかを 知りたいの?」
 リネはドキッとして
「ええっ  そういうことになるけど」なっ!?・・・
「でも 私が答えても あなたには分からないと思うわ」
「どうして」
「でも 答えてあげる 私達は悠久の時の彼方より来て 悠久の時の彼方へと歩いて行くの」
「はあっ?」
「分からないでしょ?」
「うーんー」どういう意味なんだ まるで呪文だよ
 フリールは船の甲板に登って直接操舵室に入ろうとハッチに手をかける
 UAIの端末機のサブパネルに
 フリール ノジール 確認
 その瞬間にハッチのロックが解ける フリールは操舵室に入りシートに座り
「何か伝言預かってない?」
と たずねる
 サブパネルに
 ユウロス ノジールから あなたに留守番をさせるようにと
 フリールはがくっと首を曲げ
「やっぱり」
と 諦めの表情をする フリールは操舵室から上部船室へ出ながら
「全く うちのチーフときたら・・・」ユウロスのばかぁー
と つぶやいた

 リネは前部甲板に落ちていたインコムを拾い上げ
「ユウちゃん」 ・・・ 「どこに行ったのよ」
 そのまま船の中へとインコムを持って入る暗いリネ
 フリールはインコムを持ったリネを見て
「リネさん どうしました?」
「フリールだったわね?」
「はい そうですが何か?」
「ユウロスが今どこに行ったのか分からない?」
 フリールは平然として答える
「分かりますよ」
 リネは不安を隠せずに
「教えて 早く速く」
「チーフの所へ行くのですか?」
 リネは首を縦に振る フリールは手招きして操舵室にリネを呼び寄せた
「UAI チーフの現在位置を」
 メインパネルが音もなく空間に姿を現し リネの見たことの無いガルバリアβの全貌が3Dのワイヤーフレームで映し出され ユウロスの現在位置がクローズアップされ ワイヤーフレームが画像処理された ユウロスのフロートバイクがM7でラオリス王宮に向かっている事がリネにも読める文字で書いてある
 リネはフリールの方を向いて
「私 ユウちゃんの所へ・・・」
「行くのね」
「うん」
「フライトウイングをつけて行くといいわ」
「フライトウイングぅー?」
 フリールはリネと直接甲板に出てフリールのつけて来た白い機械製の翼を指さし
「あれがフライトウイングよ」
「・・・」おいおい これで飛んで行けと?言うのか「いいえ気持ちはうれしいけど魔法を使うわ」
「すぐに発つの?」
「ううん 準備か整ってから」
 リネは船内に入り荷物の置いてある部屋へ急ぐ フリールは世の中変わるものだねーなどと思いつつフライトウイングを船内へ運ぶ
「リネかぁー 変わった人もいるのねー ・・・ それにしてもチーフは何を考えているのだか分かったものじゃ無い いくら何でも・・・」
 フリールは考えるのをやめた
「誰だ 君は」
 ラエルの声がフリールに届く フリールは声の方を振り向き
「私はフリール ノジール チーいやユウロスから留守番を頼まれています」
 ラエルの後ろからエレナが姿を見せフリールに向かって
「ノジールと言う事は ユウロスの妹なの?」
 フリールはごまかすように
「えっ まあそんなものよ」まあ遺伝子はかなり似てるけど・・・
 冷や汗をかきそうな感覚を持ったフリールだった
「エレナ 初対面の人によく平気だな いつもはもっと・・・」恐れて・・・
「だって ユウロスと同じ感じがするんだもん」
「・・・」同じ感じ 同じ感じ 同じ感じ 同じ感じ 同じ感じ ・・・・・私って一体何?
 ラエルはフリールの方を向いて
「ところで リネいるかい?」
「いるとおもうー」
「はい いますがなにか」
「呼んだ ラエル」
 リネがいつの間にか甲板に出ていた
「もう行くの!?」
「さあ」
「・・・・」おいおい そのくらい決めておくべきだよ
「リネ俺も行こうか?」
「エレナも行くうー」
 リネはフリールのほうをチラリと見て
「でも・・・」
「みんな行けばいいじゃない」私も退屈だし
「どうやって」
 フリールは操舵室に入るハッチを開けながら
「さあみんな乗って」
「納得・・」
 ライジングアローの白色の船体が傾いた日にはえる
「UAI ユウロスを追って」
 ユウロスでしたら先程からラオリス第2艦隊の攻撃を受けてますが
「ワープして」なに?
 ワープインまで15秒
「なかなか船が動かないなー」
 リネは今までの経験を踏まえて
「・・・ラエル エレナ 何かに捕まれー」
 ワープ
「ユウロスはどこ」
 丈夫ですねフリール
 フリールはその辺にあったレーザーライフルをUAIの端末機に向け
「ユウロスはどこ」
 たっ ただ今 ラオリス第2艦隊と交戦中
「全砲門エネルギー注入」
 エネルギー高速重力子砲・誘導E砲・Hoレーザーへ
 照準 誘導E砲→戦闘機14機
    Hoレーザー→航空母艦
 高速重力子砲→その他の戦闘艦へ
 出力104% 準備完了
 フリールはこの表示を確認し
「on fire」
と 同時に
 敵の砲弾4発 弾着まで13秒 撃沈される確立43%
 フリールはこの表示を見ていない

 ユウロスのフロートバイク
 ユウロスは操縦桿を片手にスロットルレバーをMAXに持って行く エンジン音が高まり加速が始まりシートに軽く圧し当てられる感触を覚えながら 必死で食らいついてくる敵機をさらに加速して振り切ろうとする
「もうすぐM4だというのに・・・」やはり減速するべきではなかったな

 フリール繰舵のライジングアロー
 赤い光の筋がまず空に走り 橙色の光の筋が分裂を繰り返しながら空を裂く 最後に水色の光が数本飛んで行った ラオリスの戦闘機は空に散り 航空母艦は黒煙を上げ その他の艦がネジ曲がりながら沈んで行く がっ この時パネルには
 敵の砲弾4発 弾着まで3秒 撃沈される確立93・・・97・・・・・・・100%
 激しい振動と共にフリールがシートから弾き飛ばされる
「きゃあー」
 左舷後部損傷 機関停止 総員退艦
 フリール殿 戦闘不能状態に陥りました
 これよりインコムとガルフブリーズとの直接交信となります
 フリールは立ち上がりこの表示を見て
「ああーーーっ チーフに怒られるー」
 いいながら操舵室から出る と
「フリールって言ったな 船が沈みかけているぞ」
「UAI この船をガルフブリーズへワープさせて」
 インコムのパネルに
 了解 30秒以内に退艦してください
「ラエルさん そのフライトウイングを着けてください」
「もしかしてこれで飛ぶのか?」
「そうです 早く」
 リネは甲板に出ながら先に甲板に出たエレナに問う
「エレナ 飛べる?」
 エレナはどこからともなく魔法陣の書いてあるマット?を取り出し甲板に広げ
「だれか たすけにきてーーーー」
 魔法陣が白く光りそこから体長2mはあろうかという4枚羽根の美しい鳥が姿を現す 頭と脚は鷲のようであり尾のほうはフェニックスようであるが美しい色をしている
「すごい」めちゃくちゃ言った割りには便利なのが出てきたような
 鳥はエレナを乗せ空に舞い上がる
「ラエルさん 早く」
 ラエルはフライトウイングを着け甲板に出る
「操縦は頭で考えるだけです」
「よし」飛び上がれ
 フライトウイングのジェネレーターが始動しラエルの体が宙に浮き上がって行く
 フリールはリネを見て
「リネさんも早く」
 リネがエレナの後を追う様に空高く飛び上がるのを確認し 3人と一羽の後を追う様に空へと上がって行く ユウロスはその頃 レーダーとパネルの表示を見て 飛び上がった4人と1羽のいる方位へと旋回し始めたところだった
「リーナ もう少ししたら全ての魔法を解いてやるよ」
 レーダーの表示からして4人と1羽が近づいてくる
 ユウロスはフロートバイクを減速させ4人と1羽の直前でホバリングさせた
 フリールが強烈な口調で
「チーフ あなたは・・・・・・」
「まあまあ 今は堅いこと言わない それよりとりあえず ・・・ フリール ワープするぞ」
「ワープアウトは どこへ」
「出たとこ勝負」

 リネでさえ何も分からないうちにどことも知れない所へきていた
 わかるのはここの空気の薄さと深い霧の中とてつもなく大きい針葉樹が生い茂っていることだ
 全員が辺りを見回し全員いることを確認した 無論エレナは鳥に乗ったままであるわけで・・・
「ここはどこだー」
 フリールが答える
「南緯37度15分 西経11度41分」
 ユウロスは頭の中で地図を引っ張り出し考える
「グーレーン高原か」
 グーレーン高原 ラオリスとグラメダを結び底辺とした三角形の頂点に位置する高原 どこの国にも属していない
 ラエルがユウロスに問う
「ユウロス 南緯とか西経って何だ」
 ユウロスはフリールの方を向いて
「フリール 答える?」
 フリールは頑として
「だめです 規則ですから」
「ラエル 言えないよ残念ながら」
「はい ユウロスこれからどうするの」
 ユウロスはリネからインコムを渡されそれをかぶった
「近くに 知り合いが生きているはずだ まずそいつに挨拶に行くよ」
 フリール&リネ&ラエル「知り合い?」
「ああ そうだよ」まだ生きているはずだ まだ・・・
 ユウロスはフロートバイクが針葉樹林と霧から抜けるまで高度を上げた
 ユウロス殿 下に降りたほうがよいと思いますが
「うん そうしよう 操縦は任せる」
 フロートバイクがゆっくりと主翼を収納し深い霧の中に沈んで行く
 霧が少し晴れたと思ったとたんフロートバイクは着地した
 ユウロスはフロートバイクから降りると
「上空でついて来てくれ」
 了解
 フロートバイクは静かに上昇する 他の4人と1羽がその代わりに地面についた
 しばらく歩いてユウロスの後をついて行くメンバー しかし次第に霧が深く濃くなってゆく すでに真っすぐ延ばした腕が肘までしか見えない リネのようにある程度魔法の使える者ならいざ知らず ラエルのような者は人の声を頼りに腕を前に延ばして進んで行かなくてはならないわけで・・・
「うわっ いてぇーー」
 ラエルの声が響く 木の枝にぶつかったようだ
 リネは立ち止まって
「一列になった方がいいと思うわ エレナいる」
 リネは大声で
「エーーレナぁーーー」
 上のほうからエレナの声がする
「はーあーい いい景色だぞー」
 どうやら上のほうは霧がかかっていないようだ ユウロスは真っ先に上空のフロートバイクへと飛び上がる
「飛んだ方がいいかもしれないと 思うけど リネさんはどう思う」
「俺は 飛ぶのはごめんだぜ」
 リネは意地悪そうに
「また木にぶつかっても しらないぞぉー ラエル」
「うっ・・・   わかったよ」
 ラエルが飛び上がる フリールがフロートバイクの後を追っていく とインコムのパネルに文字が出てくる ライジングアローにバリアスという者が乗っていましたがどうしましょうか
 フリールはユウロスの目の前にでて
「チーフ」
 フロートバイクに乗ったユウロスはびっくりして手をかけていた操縦桿から手を放し
「どうした目が血走ってるぞ・・・」こっ怖い・・・
 フリールはインコムのパネルに表示された文字をフロートバイクに送り
「どうぞ ご覧ください」
 ユウロスは操縦席の前にあるパネルを見て
「しまったあーーーーっ フリールどうしようか」
「ご自分で判断なさってください」
 ユウロスは自分のインコムにに言う
「ホワイトバードに乗っけてここまで運んで来い」
 いいんですか?
「いいんだ 言われた通りにしろ」
 了解 34分後に合流します

 ガルフブリーズのユウロスの個人用ハンガー
 ここでは バリアスが檻の中に入れられ無人の作業機械に乗せられ白い大型の戦闘機のような輸送機の後部ハッチから中へ入れられる
 後部ハッチが閉まり上からカタパルトアームが輸送機を引っかけるようにつかむ
 輸送機が宙吊りになりカタパルトアームが静かに格納庫天井の軌道に沿って動き狭い空間に入り止まる
 輸送機のいる狭い空間から格納庫への巨大なハッチが静かに閉まる
 フリーナ ノーベルの声が「気圧低下 射出ハッチオープン」
 輸送機の正面のハッチが驚くべき早さで開く
 フリーナは輸送機後方にある操作室からこの様子を見ている
「いけーー」
と 赤いボタンをプッシュする
 カタパルトアームが加速する 輸送機の中のバリアスはかつて体験した事の無い加速度に・・・
「うわぁーーーーー だれかー おかぁーちゃぁーんー・・・・」

 グーレーン高原のユウロスたちは
 そんなころユウロスたちは針葉樹林の上空を飛び続けていた
 どっちを見ても遥か彼方に万年雪たたえた山脈がそびえ立っている
 しばらく飛び続けると丘を一つ越え霧の出ていない空間に出た 地面までよく見える
 フリールがインコムのマイクに向かって
「チーフ ほんとにこんな所に知り合いなんているんですか?」
「うん あの丘を越えた所に湖があるはず そこにいると思うよ」
 ユウロスがフロートバイクの中で指さした丘の向こうには木の生えていない緑の丘がありその稜線から湖が姿をのぞかせている
 ユウロスは丘が近づくとフロートバイクを静かに頂上から少し外れた場所に着地させた
 ユウロスはフロートバイクから降り立ち湖の周りを見渡す 小屋が一軒 煙突からは煙が出ている
「まだ生きているようだ」
 ユウロスはみんなの方を向いて
「ここで待っていろよ フリール ホワイトバードが来たらバリアスを降ろしてくれ」
「OK」
 ユウロスはすこしうれしそうに小屋の方へと走って行く
「ユウロスうれしそう」
「どうだか」
 数十分後ユウロスが小屋に着こうかというころ
「鳥さん 鳥さん ユウロスの後を追って」
 4枚羽根の鳥が羽根を一杯に伸ばし下り坂すれすれに滑空する
「エレナ 戻って来なさい」
 リネがエレナに叫んだがエレナに声は届かなかった

 ユウロスは小屋の戸をノックする
 コンコン
 中からコツコツと木靴で戸に近づく音がする
 戸がきしむ音と共に開いた
 中年程度の女性の声が
「あっ・・・・・・・・・・・・」
 戸を開けた者の時間が止まる
 ユウロスは微笑みを浮かべて
「やあ お久しぶり」
 ユウロスの目の前には ローブを纏った女性が呆然と(愕然と)突っ立っている
「ユウロス?」
 呆然とした口調で女性がしゃべる
「ユウロス・ノジールですよ 近くまで来たので 寄ってみたんです」
「そうですか」
 暗い声の返事だ ユウロスは真剣に
「また 冒険に付き合ってくれないかなと思って・・・」
 暗い声が
「しかし 私はもうそんな力は残っていません」
「そうか じゃあ君にこの腕輪を残しておくよ」
 ユウロスは左腕の銀製の腕輪をローブを纏った女性に渡し
「じゃあ もうここに来ることはないと思うが ・・・ さようなら」
 女性は
「さよなら」
と 暗い声で言い戸を閉めた
 ユウロスは戸から離れ丘の頂上へと草の生えた地面を見ながら歩きだす ふとユウロスが前を見ると
「うわーーーーーーーー・・・」
 エレナの乗った4枚羽根の鳥がユウロスを追いかけるように滑空する
 ユウロスは追いかけられるように鳥の前を走る
「それっ 捕まえろー」
 鳥の大きな二本の脚の爪によってユウロスの両腕が鷲掴みにされる ユウロスの両肩に爪が食い込む
 ユウロスは両腕の激痛に
「エレナ降ろせー」
「鳥さん 落としてちょー」
 旋回した鳥がちょうど湖の上を通過するときに鳥の両足がパッと開く
 ユウロスは重力落下運動をはじめながら
「落としてって ・・・ わぁーーーーーーーーー」
 ユウロスは湖の中に 大きな水柱を造った

 ラエルはこの様子を丘の上から見ていた
「大丈夫かあいつ」
「さあ 以外としぶといから」
 ユウロスがフリール達の方へと歩いているころラエルはフライトウイングをおろして草のうえに横になっていた 外のメンバーも同じようなことをしていた ただフリールはインコムをかぶって空を見上げているが・・・
 穏やかに時間が過ぎる
「こうしていると時間がゆっくりと流れているようね」
「平和だね」
「今はね」
「ピイーッ」
 ユウロスが丘の頂上へと歩いて行く
 エレナを乗せた鳥がユウロスのまわりをハエのごとく飛び回る
「ああー あのまま あいつは死んでしまうのかー」どうしようか やはり あいつ次第なのか
 ユウロスにエレナの声がかかる
「ユウロス 悩む事はないよ 努力はしたんでしょ自分なりに」
 ユウロスは気が動転しエレナに問う
「なぜ 考えている事が分かる?」
「何も 考えないでいると自然と近くにいる人の考えがわかるの」
 ユウロスはつぶやくように
「エレナはテレパスの端くれか」全く油断もすきもない
 ユウロスがエレナに対して不満を溜め込んでいると
 その目に白い物体が遠くに写る
 インコムのパネルに
 ホワイトバード到着します
「了解 丘の頂上に停船させて」
 了解
 白い機体が静かに丘の頂上とわずかにすきまをおいて空中静止した フリールはインコムに向かって
「後部ハッチopen」
 この言葉に反応し インコムのパネルに
 後部ハッチ付近にはだれもいないですか?
 フリールはホワイトバードの後ろに回り込んで確かめ
「だれもいないよ」
 後部ハッチ オープン
 ゆっくりと後部ハッチが開く
 中からは 情けなくて目も当てられない檻の中のバリアスの姿が

 時間の経過
 バリアスはガチガチの体をたき火で暖めていた 彼はユウロスの目を見て
「お前はとんでもない奴だな」
 力のない声だ
「どうだった 再突入の感想は」
「再突入?」
「そうだよ ずーーっと落ちて来ただろ」
 バリアスの言葉がとまる
「うっ ・・・・・」
 ユウロスは半ば笑いながら
「まあ B貨物室にいたのが運の尽きだな それ以外ならまだかなり楽だったはずだよ」
「もう二度と御免だぜ」
「面白そうだから もう一回やってみるか?」
 バリアスは身ごもりして
「頼むからやめてくれぇー」
 皆が笑い声を上げる バリアス一人顔を赤らめるのであった
 フリールがユウロスに寄って来る
 ユウロス振り向いて
「どうした フリール」
 フリールはユウロスを圧迫するように
「チーフ ホワイトバードどうするんですか?」
 弱い口調でユウロスが
「とっ とりあえず みんな乗せるつもりだが」
 フリールは声を大にしてユウロスに
「チーフ そんな事して・・・」
 ユウロスはフリールの口を押さえ
「気持ちは分かるが 少し静かにしてよ」
「はあ・・・」
 フリールはしぶしぶユウロスの言うことを聞いてしまうのであった
 ユウロスはホワイトバードの後部ハッチから直方体のB貨物室へ入りエアロックをくぐる 狭い部屋を抜けたその先にはまた同じような直方体の倉庫がありさらにエアロックをくぐる またその先には幅1メートルの通路があり両側に部屋が設けられている その先は開けた空間になっていてくつろげるようにもなっている その先に両側に上に上がる階段 真ん中下り階段とエアロックがある ユウロスはその階段を降りハッチをくぐり抜けた そこはエアロックになっているユウロスは壁にあるいくつかのスイッチのうち3つ押した 何かが動く音がする 音が止まりユウロスはエアロックを通り抜けた 彼の目の前にはタラップが丘の頂上から少し外れた地点に降ろされていた
 ユウロスはタラップをゆっくり下りユウロスの方を向いているみんなに
「さあ 乗って」
と 言ってユウロスはフロートバイクの方へと歩き乗り込んだ
 皆がタラップを昇るのを眺め ユウロスはフロートバイクをB貨物室に静か移動した
 ユウロスはフロートバイクに
「ようし UAI 私はとりあえずホワイトバードに移るから」
 フロートバイクのパネルには
 了解 
 ユウロスはエアロックを抜けてA貨物室でユウロスはアーマーを置いて再び進む ユウロスはさっきの上に昇る階段を昇り金属製の戸の横についているキーをまるでてきとうに押した キーの上についている赤い光が青に変わり戸が素早く開いた
 ユウロスはリーナを戸の前で降ろし
「おとなしくしてろよ」
と 言付けて中に入った
 そのまま戸が素早く閉まりリーナは置き去りになった訳で・・・
 中はライジングアローとほぼ同じ薄暗いコクピットだった ユウロスは操縦席に座り
「UAI システムは立ち上がってるだろーな?」
 どこからともなく 男とも女ともつかない音声で
 「はい 完全に立ち上がってます」
「そういえば これはしゃべるようにしたんだよなぁー・・・・」
 「ユウロス殿」
「はいはい」
 「伝言を預かってます」
「だれから」
 「どうぞ メインパネルをご覧ください」
 メインパネルが音もなくユウロスの前方に現れる
 そこには迷彩色の戦闘艦が立体で水平方向にゆっくり回転しながら映っている
 2回転ぐらいしてその戦闘艦が平面に画像処理され戦闘艦のデータも表示される
「なんだ これは」
 「音声は入っていません 説明しましょうか?」
「ああ」
「この戦闘艦は数日前に発見した艦隊の旗艦と思われる戦闘艦です」
「今どこへ向かっているんだ」
「現在ガルバリアαの軌道付近に乗る軌道に入っています
  なお 到達まで現時点であと4日です
  それから この艦隊は総合火力2兆キロワット」
「という事は」
 「あなたはガルフブリーズに戻る必要があります」
「いますぐ?」
 「そういう事です」
「終わったら休暇くれる?」
 「それはできませんが・・・ 考えておきましょう」
「たのむよ」
「はい」
「じゃあ ガルフブリーズへ」
 「了解」
 タラップと後部ハッチが静かに閉まる エンジン音が高まりアフターバーナーを噴き出し加速する
 白い機体は180度旋回し元来た方向へ飛んで行く
 上昇角度6° 重力偏差−0,00000004 重力圏脱出まであと・・・
 しばらくしてから ユウロスはコクピットから出て来てリーナを抱き上げ
「みんなの所へ行こう」
「ピーッ」
と うれしそうにユウロスを見つめた
 通路には向かい合った4つ戸があるその中で最も中が騒がしい戸を開けた
 中では絨毯の上でみんなでカードゲームをやっておりフリール一人が四苦八苦している
 フリールはユウロスに気づいて
「チーフ たすけてくださぁーい」
 ユウロスは微笑を浮かべ
「まあ がんばってね」
 冷たくあしらうユウロス
 フリールは悔しそうに
「チーフのいけずぅーー」
 ユウロスは壁際の小さなテーブルのそばのいすにリーナを抱いたまま腰掛けゲームの様子を眺める
 さて しばらくしてゲームの結果が次々と表れる
 リネは右腕を振り上げ人差し指を立て
「かったぁーー」
と 高らかに言う
 次にエレナが
「2ばーん」
と 言いながら後ろにひっくりかえる
「これで どぉーだー」
と フリールがカードを何枚かラエルとバリアスの前にたたきつける
「うおーーーっやられたー」
 バリアスが言うと同時にラエルがカードを手元から数枚落としてしまう
 しばらくして ラエルはカードをゆっくりと出し
「ふっふっふっ 3位はもらったー」
と カードを置いた が
「残念でしたー」
と バリアスとフリールが逆転の一手
 ラエルが驚嘆の
「うわぁー 」
 なんて言いながら数枚のカードをカードの山から引く
 その間に バリアスが静かにカードを出して3位で上がる
「最後にだけは・・・」
と フリールはゲームをすすめる
 ラエルは不適に笑い
「お前がビリだぁー」
と 言って残りのカードを出す
 フリールは持っていたカードを全て落とし
「あーー まけた」
と 白黒逆転する
「あの・・・もし・・・おーい フリール ちょっと」
 ユウロスはリーナを抱いたままフリールの肩をたたいている
「!んっ 俺の剣がなぁーい」
と 大声を上げたのはゲームが終わって身の回りを確かめたバリアスだった
俺が折ったんだよなー まあ記憶を消したから済んだと思ったのにと思いつつユウロスは言った
「背中にあるじゃないか」
 バリアスは背中の大きな刀を少しばかり抜いて説明する
「あのなぁー これは剣じゃなくて刀なんだよ」
「なくした剣の長さは」
「どうするんだ」
「ガルフブリーズに戻るんで造ってやるよ」
「ほんとか」
「要らないの?」
「欲しい!」
「ちょっと待った」
と この間に割り込んで来たのは白黒逆転から復活したフリールだった フリールはユウロスを圧迫するように
「チーフ あなたはこの人たちをガルスブリーズに連れて行くつもりですか?」
 ユウロスはフリールに返すように
「ライジングアローでエネルギーシールドを忘れて砲弾を受けたのはだれのせいだったかな」
「うっ・・・ あのーそれは・・・」やっ やぶへびだった・・・
 ユウロスはさらに強力な口調で
「結局あの後 ガルフブリーズに収容するときに大爆発を起こして再起不能になったんだ 修理可能なのは個々の武装ぐらいだし ・・・ 人が何年かけて造ったと思っているんだぁ!」
「・・・・・・・・・」
「構想から完成まで携わった時間だけで52年だぞ それも当時忙しかった仕事の合間をぬってだ 結局思想から完成まで1703年かかったのにぃーー・・・」はっ
 がちょぉーーん とばかりのユウロスにリネが問う
「ユウロスって 今何歳?」
「そう言えば ずっと外観かわってねーよなぁー」
 ユウロスは危険を悟り
「時期が来たら話そう」
と 言ってコクピットへ逃げて行った
リネ&ラエル「全く」野郎 逃げたな
 暗いコクピットの中でユウロスはシートに深くかけメインパネルにガルバリアβを映して眺めている
 個々の大陸には豊かに緑が多い茂っているのが分かる
 溜め息のように
「ああーーーーっ」地球に行った時の地球の色は灰色だったかなー でもコロニーがいっぱい回ってておもしろかったなー
 昔の思いでに浸るユウロス
 ハッチが開き背後から
「ユウロス」
と 記憶にある声がユウロスを呼ぶ
 ユウロスはシートに座りじっとしたまま問う
「だれだ?」
「だれだと思う?」
 声の主が問い返す
「うーーー《ユウロスが考えていますしばらくお待ちください》ーん・・・ だれだい」
「分からない?」
 少し笑ったような声がユウロスに投げかけられる
 ユウロスはシートを180°回転させる・・・
「ああー ・・・ あれ?・・・ 名前なんだっけ」
 ユウロスは目の前の人物を差さして 真剣に名前を問う
 指を指された人間の姿をしているリーナはボーゼンとして
「・・・・・・・・・・」私の存在理由って一体何?・・・
・・・・・しばらく さみしい風が二人の精神を吹き抜ける・・・・・
 ユウロスは差していた指を重力に沿って降ろし再び問う
「あのー 名前は何というのですか?」
 リーナは自分の存在を忘れられたことに腹を立てユウロスの襟首をつかみ
「忘れたとは言わせないよ・・・」
と 不敵にユウロスに迫る
 ユウロスはリネの魔法攻撃を目の前にするように心から硬直し 禁句を言ってしまうのであった
「忘れました・・・」
 リーナは失望してユウロスの襟首から手を放し
「どーやら 本当に忘れたようだね」
「はい きれいさっぱり」
「私の名前は通称リーナ フィン ラオリス 文献に残す名称はディラスティア ラート リーナ ロブ フィン ラオリスだ」
「納得 納得」
「ところで 何で飛竜の格好じゃないの?」
「さあ さっき廊下? に出たら戻ったの」
「うーんー 宇宙空間だから二つの月の何かの力がβにいるときより強くなるからかな」
 リーナはコクピットの中を見回して
「ユウロス あなたも魔法を?・・・」
「おや どうして?」
 リーナは小さな棚の上に置いてあった古い書物を持って
「これは 魔道書?」
 ユウロスは相手の出方に注意しながら
「さあ・・・」
 リーナは書物のページを捲りながら
「これは 旧式の文字で書かれている・・・かなり古い物だわ そう 六千年ぐらい昔の魔道書  魔法創成期のころだと思う」
 ユウロスはちょっとからかうようにリーナに言う
「著者を見てごらん」
 リーナは書物の著者を探す
「あった」
「読んでごらん」
「ええと ユーロス ノジー・・・・・」
「どう思う」
 リーナは漠然と何かが立ちはだかっているかのように言う
「偶然の一致ね」
「いや 偶然じゃない この本は私が書いた物だ」
 リーナは書物を閉じて
「もっと 上手に嘘をつきなさいよ」
 ユウロスは真剣かつ冷酷に
「いや 事実だ」
「じゃあー あなたが魔法を造ったというの」
「ああっ」
「どうやって」
「鍛え上げた精神力が魔法を作り上げたのさ もっとも 私は現在の魔法の根本を造ったに過ぎない 君たちがそれを進化させたんだ 戦争や医療に・・・ それが現在の魔法だ」
「じゃあ ここで魔法をつかってみなさいよ」
 リーナはどうやら信じていないようだ
「使ったら信じてくれるのかい?」
「論より証拠よ」
「まあ確かに・・・・」
 メインパネルが突然現れUAIの声が
「ユウロス 第4カタパルトへ コード送ります」
 ユウロスはシートを180°さっきとは逆に回転させ
「どーぞー」
と 操縦桿を握り黄色いスイッチを入れる
 リーナはユウロスの頭ごしに長さ30センチの鉄のような金属色の円筒形を3つ束ねたような物とそれを取り囲む直径40センチの白色のワイヤーフレームの球を見た その3つの円筒形の側面には何かがくっついている おもわず
「ユウロス 何これ」
「メインパネルだよ」
 ユウロスは映像だという事をリーナに分からせるためメインパネルに右腕を伸ばして立体映像の中に手を入れあれこれとぶきっちょに右手を動かした
「ふーん・・・」
 表面的に納得するリーナ
 「ユウロス 誤差修正 コース2,7,3へ」
と UAIの声が響く
 ユウロスは操縦桿ではなくキーボードで誤差修正するため右手で操縦桿を押さえるようにし左手でキー ボードを幾つか押しながら
「久しぶりに誤差が出たような気がする」
 「コードを送った時に誤差修正を怠ったからです」
 ユウロスは苦笑しながら
「納得」
「あと30秒で第4カタパルトに進入 ランディングAモードへ」
「自動で頼むよ」
 「妥協しましょう」
「・・・・・」そこまで言うか 
 リーナがユウロスに
「まるで人のように話すのね 一体どういう仕組み」
「数千年かけて造ったんだよ 最もこれはUAI00本体じゃなくて UAI03だけどね」
 「いいんですか これ以上話しても」
 ユウロスは微笑を浮かべ
「指折って数える程度の民草に事実が知れても 歴史には影響無いだろう?」
 リーナは腹を立てて
「民草って 私は王家の人間よ・・・」
 ユウロスはわざと
「そうだったの」と知らんふりをする
 リーナはユウロスの首を両手で絞め
「ふざけているんじゃないだろうな」
と ドスをきかせた声で喋る ユウロスはリーナの両手首を押さえ抵抗する
 そんな時まるで部外者の様にUAIの声が
「第4カタパルトに進入 減速します」
「苦しいっ ・・・ っ」
 ユウロスの声と同時にリーナが後ろに吹っ飛ぶ リーナは悲鳴を上げる暇も無く一瞬にしてハッチに叩きつけられ床に倒れる 幸いハッチには凹凸が無いので局部的な致命傷は避けられたようだ
 ユウロスはやってしまったと思いながら
「大丈夫か」
と リーナに声をかける ハッチに叩きつけられたリーナは頭もかなり強く打ったのだろうか 唸るような返事しか聞き取れない
 ふたたび部外者の様にUAIの声が
 「ユウロスの個人用格納庫に収納します」

 白い機体がカタパルトアームで固定され静かに発進前の位置に戻ろうと天井のレールを動いている
 それを中央管制室いや・・メインブリッジでじっと見ている者がいる
「迎えに行くかいフリーナ」
 黒い髪 黒い瞳 東洋系の顔立ちの男だ
 菫色の髪の毛がきれいなフリーナがメインブリッジを見回し
「ディー リディアは?」
「リディアなら さっき自分のハンガーに行ったよ」
「あら そう」
 そう捨てるように言い リディアは席を立ち上がる
 男も席を立ちメインブリッジを後にした

 空気音と共にタラップが飛び出し減速しながら降りる
 ユウロスが先にタラップを駆け降り辺りを見回す しかしユウロスの所有物以外何も見えない
「出迎えはなしか・・・」
 ユウロスはゆっくり深呼吸を1回した 懐かしい空気だ・・・
「ユウちゃん ここ どこ?」
 リネがタラップを歩きながらキョロキョロと辺りを興味深く見回す
「いやぁー すごい所だなー」
 ラエルが続いて降りてくる
「・・・・・・・・・・・・」
 下を向いてバリアスが降りる
「ねえ ユウロスこの人だーれー」
 エレナの声にユウロスが振り返ると・・・
 エレナがリーナの髪の毛を持ってパワフルに引きずりながらタラップを降りてくるではないか
「エレナっ!」
 ユウロスがエレナに怒鳴る エレナはびっくりしてリーナの髪の毛を放した その直後
 ゴン というすこし鈍い音がタラップから響いてくる
 ユウロスはとっさにリーナの頭を抱え脈・瞳孔を診て
「再び 脳震盪かな?」
 その間にエレナがラエルの影に隠れる
 リネはリーナをじぃーっと見つめて
「ねーっ その人誰?」
「随分高貴な奴だな」
「どーして 分かるんだ?」
 バリアスはリーナを指さして
「そのなりで大体の見当はつく それにこいつはラオリスの人間だぜ」
 リネは目をユウロスに向け
「知り合い?」
 ユウロスはリーナを背中に背負いながらリネに答える
「君の祖先の子孫さ」
「はぁー?」
 ユウロスはリーナを背負ったまま近くの扉に歩いて行く
 扉まで後10メートルという所で突然扉が開き中から 黒い髪 黒い瞳 東洋系の顔立ちの男ディー・ラッドベルーンと 菫色の髪の毛がきれいな再び登場のフリーナ・ノーベルがユウロスによってくる
「ユウロス 仕事が待っているわよ」
「ああ」
「お客かいユウロス」
「まあ・そんなとこだ ビジタールームへ案内して」
「OK」
 ユウロスはリーナを背負ったまま通路に出る薄暗いが天井まで約5m幅は10mぐらいある
 そこをユウロスは懐かしさ半分哀愁半分メインブリッジへ歩く 足音が何回も不気味にこだまし静かなる光の通路が続いている 前にも後ろにも・・・
と 背負っているリーナが動き
「ん ねえここどこ?」
 まだ頭がぼーっとしているようだ
 ユウロスがリーナに声を掛ける
「気が付いたかい」
「ええ」
 リーナの声が続く
「あなたはいったい何者なの長いこと生きているようだけれど」
「とりあえず生物だよ」
 リーナはユウロスの首を絞め
「正確に答えなさい」
 ユウロスはふらつきながら
「ぐっ ぐゆじいー」
 リーナはユウロスの首から手を放し
「降ろして」
「はいはい」
 ユウロスはゆっくりとリーナを降ろした そしてゆっくりとリーナの方に振り返ると・・・
 リーナは魔法を使う態勢に入っているようだ 両手が鈍く光っている
「魔法を使うんじゃない」
 ユウロスはあっさりとリーナの両手を押さえ魔法に入っている状態を強制停止させた
 リーナは驚きユウロスに問う
「どうして そうあっさりと私の魔法を止められるのよ 両手の防御は完璧だったはずよ」
 ユウロスは凄い圧力を掛けるように
「いいか ここでは魔法を使うなよ」
 強く言った 圧倒されたリーナは
「はっ はい」
と 素直?に答える
 ユウロスはそのまま通路を歩いて行く 壁は白色系統で塗られている
 リーナはユウロスの後を追うように少し間合いをおいて歩き始めた
「はぁーっ」びっくりした 一体何なのよ
 ユウロスは立ち止まった
 リーナから見てユウロスの右側に一つ扉がある ユウロスはその扉のわきにある幾つかのキーをある順番で何回か押した すると扉は音もなく静かにしかも素早く開いた 中からの光が一瞬目の前を真っ白にする
 リーナはポカンとして
「すごい扉・・・」
 ユウロスは中に入って行く
「ここは・・・・・」
 リーナの声が柔らかく響く
「メインブリッジ」
 ユウロスは階段を上り一番高い位置にあるいすの前にきて ほこりをはらいながら
「やっぱり ほこりはたまるんだなぁー」
と 独り言のようにつぶやき いすに深く腰掛けた
 高さ数十mの天井の下にある 階段状のメインブリッジは一番高いユウロスのブースを頂点とする白いピラミッドのようで その前には3Dディスプレイがユウロスいる反対側の壁まで数mにわたって床に敷き詰められており さらに巨大なパネルがユウロスの目の前の壁一面を埋め尽くしていた
 リーナはその情景をしばらく圧倒されるように眺めていたが・・・・
 ピピッとアラームのような音が数回なった ユウロスはその音に反応するかのように手元のキーを操作する その直後壁のパネルの一部にディーの上半身が映った
 ディーの声がユウロスのブースに直接届く
「ユウロス そっちに一人行ってないか?」
「ああ来てるが・・・ 迫害されると困るからね」
「了解 今からそこに行くよ」
「フリーナとリディアは」
「フリーナはここに それからリディアは自分のハンガーにいるよ」
「よし じゃあ急いで」
「ああ」パネルの映像がふっと消えた
 ユウロスは手元のキーを再び操作し操作行動をUAI本体にゆだねた と同時に壁のパネルに今迫っている艦隊の行動パターン予測がなされていた それをじーっと見ているといつまのにかリーナがユウロスのそばに来ていた
「ユウロスすごい部屋ね」
「そうかな まあここは特殊だからね」
 リーナはユウロスのブースから下を眺めいろいろな機械類があるのを興味深く探っていた
 すると突如としてさっきユウロスの入って来た扉からフリーナとディーが姿を現す
 入って来た二人に座ったままユウロスが
「ディー 今まで艦隊にはコンタクトを取ったのか?」
「ああ 向こうはここに軍事拠点を作る気らしい」
「と言うと・・・・」
「どうもこの辺りがいわゆる国境になっているらしいんだ」
「と言うことは 相手が引く可能性は・無いと・・・・」
「ああ 今までの向こうの言葉からすればな」
「ようし 最終勧告を・・これ以上このガルバリア星系に近づくのなら攻撃を行う・と」
 自分のブースに着いたフリーナがインコムを被り
「了解 UAI 敵艦隊に通信 今の言葉をそのままで」
 しばらく静かに時間が流れる
「返信来ました」
「ほう」
「声明は以下の通りです ・・・ 我々は条約どおり貴国の安全を保障するためこの宙域に要塞を建設する なお貴国が武力に訴え出た場合 我が軍は全力をもってこれに立ち向かう事とする」
 ディーはふざけるように
「ユウロス 俺たちは 国 だったのか?」
 ユウロスはそんなことに目も暮れず
「副砲と ドラゴンフライ放出・・・」 何か違う
「ユウロス 副砲のエネルギー・ド・バスターの目標は?」
「フリーナ 敵艦隊の情報を」
 フリーナは口語体で
「・・・戦艦と巡航艦が飛び抜けて前に出ているわ後は旗艦を含めて固まって存在しているだけ」
「巡航艦に・・・ ディー ドラゴンフライの放出終了後シールドを・・」
「了解」
 フリーナの言葉が一定の口調で流れる
「エネルギー・ド・バスター 出力レベル1 エネルギー維持臨界点です」
「発射態勢へ」
「了解 エネルギー・ド・バスター 出力レベル2へ セイフティー1解除・・・」
 ディーも一定の発音をする
「ドラゴンフライ放出終了 ・・・ ステルスシステム解除 シールド展開 シールド出力レベル4へ」
「エネルギー・ド・バスター出力レベル2 発射態勢に入りました」
「敵艦隊の進路は」
「敵艦隊に進路変更認められません」
 ユウロスの冷たい声が
「・発射・・・」
「エネルギー・ド・バスター セイフティー2解除 出力臨界点へ・・・ 最終セイフティー解除 発射です」
 ガルスブリーズの80万を越えるエネルギー・ド・バスターが一斉に空間を裂き光の筋を描く
 その瞬間扉が開きリディアが身長の数倍ある白い翼を広げ飛び込んで来て そのまま自分のブースへ降り立った
「遅かったじゃないか」
「ちょっと捜し物があって・・・」
 リディアはインコムを被り他のメンバーの座るシートとは別の形のシートに腰を降ろし自分のブースのモニターを流れるように見て
「敵の損害を確認」
「どんな具合 リディア」
「はい 敵の損害 戦艦24% 巡航艦100% 巡航艇35% その他2% ・・・ 
 敵 第1波来ます 30秒後」
 ユウロスは苦い顔をして
「敵の本体は損害をあまり受けていないのか ・・・ 敵に通信 この星系はどこにも属さず非同盟中立を打ち立てるものとする・・・ でっ いいのかな?」
「UAI もう一度頼むわ」
 敵からの数百の光の筋がガルフブリーズを中心とする球形のシールドに当たり薄ぼんやりと光を出して暗黒の宇宙に消えて行く
「敵第1波の攻撃により シールド出力レベル3にダウン」
「ドラゴンフライ 砲撃開始」
「ドラゴンフライの自動攻撃システムに委ねます」
「うむ・・・」
「敵から高速通信で通信 チーフのパネルにつなぎます」
 ユウロスはリーナの方にいすを向け
「ちょっと離れててくれるかい」
「はいはい」
 リーナの口調は勝手にしろとでも言うかのような様子
「攻撃停止 いいぞ フリーナ」
「つなぎます」
 ユウロスのブースにある真正面のパネルが人間の上半身を映し出すその人間はまるで叩き上げの軍人のような面構えでユウロスを睨みつけていた その口から
「驚きだな 貴様のような年の者が指揮を執っているとは」
「言いたいことはそれだけか・・・ どこの軍だ所属を述べよ」
 男は同じような口調で
「我々はティラスト帝国軍第7艦隊 私は艦隊指揮官の鈴木 章一だ」
「ほう 日本語とな しかし文明が低そうだな」
「文明が低いだと 何の根拠で・・・」
「ならば 今一度攻撃しようか?・・・いや それよりも一度攻撃を受けておきながら通信してくるとは」バカかそれとも状況を把握していないというか ほかに・・・
「ところで 先程非同盟中立を打ち立てると言っていたが・・・」
「この宙域はな・・・ ところでこの辺りにはいまどのくらい国があるのだ」
「・・・・・・ この辺り百光年四方は宙域がかなり複雑に富んでいる そしてこの宙域を取り囲むように4つの国が存在している 一つがわがティラスト帝国・一つがレアノルド・一つがストラフィリス王国・最後がリノンヴィア国・・・ 」
 ユウロスは口を挟むように
「その国の状況が知りたい」
「私は貴様に情報を与えに来たのではない この宙域に要塞を築くために来たのだ」
「その必要はない」
「ほう・・・ お前がこの宙域の守護者になるとでも言うのか 」
「そうだ・・・・」
「・・・ 小賢しい 私は任務を遂行する」
 ユウロスのブースのモニターから男の姿が消えた
 ユウロスは気迫いっぱいで
「愚か物め ・・・ 攻撃再開 ドラゴンフライは近い物から攻撃  フリーナっ」
 フリーナは慌てて返事を
「はいっ」
「副砲用意 個々に照準ドラゴンフライとダブらせるな」
「アイ エネルギー・ド・バスター オートDモード」
「敵からミサイル攻撃 70万発です」
「超加速粒子砲を使え」
「整備中」
 ユウロスの口調が下町風になって
「なに考えてんだてめー」
「シールドレベル4に回復」
「・・・ シールドの範囲を広げろ」
「了解 シールドフィールド レベル1〜レベル5へ」
「ミサイル シールドフィールドまで後3分±20秒」
 ユウロスの前方3Dディスプレイの画面には全ての情報が映像化されている その3Dディスプレイにはガルフブリーズが点で示され全ての敵ミサイルの行動や艦隊運動の予測がなされている ユウロスの脳裏にはミサイルが高エネルギー体に近づくと小ワープをしてシールドを超えるかも知れないと考えていた
 ・・・・・ そんなときフリーナの声がユウロスの耳に入った
「エネルギー・ド・バスター 発射しました」
 ガルフブリーズの外では光の筋の束が遥か闇の彼方に消え 爆発のような光跡が闇を照らした
「ミサイルを92%破壊 ・・・ 残り14134発」
「ドラゴンフライで撃墜続行します」
「敵艦隊は退却を始めた模様 現在残り艦数当初の14%」
「壊滅させろ」
「しかし・・」
「・・・・・・・・ ふんっ よかろう・・・ 」
 ユウロスは席を立ちリーナのもとへと階段を降りる
 フリーナの力無き声が
「ミサイルを全壊次第 第4級戦闘体制へそれとドラゴンフライ撤収を・・・」
「了解」
 リーナは階段を降りてくるユウロスを見上げ
「ユウロス ・・・ みんなの所へ行こう」
「行こう」
 メインブリッジの扉の動く音が2回こだました
 リディアは椅子の向きを変え
「ユウロスの性格変わってない?」
「ああ 少し気性が荒くなったな」
 フリーナは二人の会話をうつむいて聞いている
 ディーがフリーナの方を振り向くとフリーナのうつむいた姿が目に入った
「フリーナどうした?」
「いえ なんでもないわ」
 フリーナは席を立ち自室へともどると二人に言いメインブリッジを後にした
 ディーのブースのパネルがミサイル0を表示したのを見て
「UAI ドラゴンフライ撤収作業を」
 了解
「終わった 終わった ・ ご苦労様」
と 言い自分のブースから離れ 扉を目の前にした 振り返って
「リディア乗せて行ってくんない?」
 リディアはよく聞き取れなかったのか
「えっ?」
と 答えるしかなかった
 ディーが扉をくぐりながら
「冗談だよ」
と 言い捨てるが 席を立ったリディアは手元の手摺りを利用して飛び上がりローズピンクの翼を広げ扉をくぐろうとする さながらディーのに猛然と向かってくるようだ
 リディアは驚いて伏せるディーの頭上を越え そのまま通路に出てディーの目の前で壁を蹴って右に急旋回をやり遂げ何秒かに一回のペースで羽ばたきながら通路を飛んで行った
 ディーはこの様子を見て
「たまには歩いて行動してるのを見てみたいものだなぁー」
 そう言って てくてくと 長い通路を歩いて行く

 空気音を伴いビジタールームの扉が開く
 バリアスの
「よお」
と いう声をよそに一通り辺りを見回す
 ビジタールームにはまず入って円柱状の広い部屋があるそれを取り囲むようにバス・トイレ・寝室・カウンターがあるその円い部屋にはさまざまな暇つぶしの道具がおかれている・・・
「バリアス 約束どおり造ってあげよう」
「ユウロス言葉変わってない?」
 ユウロスは辺りを見回し
「フリールはいるか」
「トイレよ」
「なっとく じゃあしばらくしたらまたくるから・・・」
と リーナに言いい バリアスと一緒にビジタールームから出た
 広く静かで明るい通路には ジープのような車が一台 こちら側のウインドを開けてたたずんでいる
「バリアスは向こうから乗って」
 ユウロスはその赤いラインの入った車に乗り込んだ バリアスはおっかなびっくりしていたがとりあえず乗り込んだ
「車は初めてかい」
 ユウロスはキーで行き先を指示しバリアスの返事を待つ 車はゆっくり加速し指示された目的地に向かう
 バリアスは車のすみずみまでよく観察して
「いや 今まで見たどの車とも違う・・・」
「と言うと」
「いや ハンドルもなければアクセルもない 揺れは感じないし エンジンからの振動もないましてやエンジンが動いているのがどうかすら感じさせないんだ この車は一体どんなエンジンを積んでいるんだ」
 この言葉にユウロスは吹き出して笑う
「どうした なぜ笑う」
 ユウロスは必死で笑うのを押さえ
「いや ぷっ」
 ふたたびとどめもなく笑い出すユウロス
 バリアスはあきれた表情でユウロスを見つめた
 車は風を切る音を響かせながら寂しい明るさの中を進む しばらくして幾つかの十字路を過ぎたところで車は音もなく止まった
 ユウロスは無言で車から降り目の前のユウロスのハンガーへの扉の横にあるキーに頭の中にある暗証番号を入力した・・・ 扉が静かに開き始めるのを確認しユウロスは車に戻る
 再び車は動きだし扉をくぐりホワトイバードの横を通り抜け 広い空間の底を走りぬける
 ふと ユウロスの目にスクラップの山積みが目に入った その山の頂上にはなにか立て札がある
 ユウロスは車をスクラップの山積みの前に止め
「ちょっと待っていてほしい」
と バリアスに言付けると
 頂上の立て札に向かってスクラップの山を手足を使いよじ登って行く
「あっ・・・」
 立て札には ユウロスへ ライジングアローの回収した残骸です と書かれていた
 ユウロスはしばらくこの山積みを見下ろし車へと降りて行った
「どうした」
 ユウロスは車に乗り込み
「いや・・・ もうすぐだ」
と 車を進めた 車はしばらく・・・ もしないうちに止まった 小さな白いハンガーの前に
「降りて」
 バリアスに言い聞かせるように発音して ハンガーの閉じていたシャッターを上げる ガラガラと白いシャッターが開く なかはユウロスのハンガーの光りは届かない 入ってすぐの照明のスイッチを入れたユウロスはおもむろに
「バリアス 材質は」
「えっ」
「剣の材質は」
「何でもいいよ」
「ほんとに?」
「ああ」
 ユウロスはその辺りの棚から幾つかの原材料を取り出し 無変形ガラスのボールの中に液体の物を入れ無造作に掻き混ぜる そうして出来た物をテーブルに置き 固体と気体の物を強制科学反応機の中に入れ
 ズバババ・・・ 
と 反応させさらにその生成物とテーブルに置いたボールの中の液体を強制反応させた
 ユウロスはそれをそのまま分解しゆっくり再結晶させる しばらくして不格好な延べ棒のような固まりになった生成物を重力ハンマーという装置で鍛える
「しばらくかかるからお茶でもどうかな」
と ユウロスはテーブルにあるポットを取り蛇口をひねってお湯をそそぐ
 バリアスは はっと我に返ったように
「・・・  なあ」
 ユウロスは紅茶を注ぎながら
「んっ なに」
「いや ほんとに剣を作っているのか心配で・・・」
「安ずるより産むが易し さ」
「は・・・    」
「まあまあ 深く考えないこと 私を信用なさい」
「はぁー」
 ユウロスは紅茶をひとすすり
「まあ 飲みなさい」
 バリアスは無論紅茶を飲んだことがない
 恐る恐るバリアスは紅茶を口に含み口の中をころがす
「うーーーんーーーー・・ 苦いというかうむー 難しい所だ」
 ちなみに砂糖は入っていない
 重力ハンマーは静かに生成物を鍛え形を整えてゆく
「柄はどうする」
「柄かそれならここにあるが・・・」
と バリアスはどこからともなく柄を取り出した
 ユウロスはバリアスの手から柄を取り ポケットからノギスを取り出し内径を測り重力ハンマーに内径をインプットする
 バリアスは紅茶をひとすすりし
「よお ここには何人いるんだ」
「ええと・・・ (ユウロスが考えていますしばらくお待ちください) 5人 5人いる」
 バリアスはぼぉーっとしたようにまだ紅茶の入っているカップをテーブルに置き
「ほんとに5人か」
「ああ  そうだ バリアスだっけ」
「ああ」
「ちょっと 行ってくる」
と 言付けて ユウロスは柄をポケットに入れ シャッターをくぐり抜け螺旋階段を昇り始める
 ユウロスは螺旋階段を昇りながらつぶやき始める
「たしかこの上が武器庫になっていたはずだが・・・ でもこんなに階段長かったかなぁー」ぶつぶつ
 螺旋階段を上りきるとそこはいわゆる剣や斧のような物からテクノロジーの極みを尽くした武器がずずすいぃーーーーーーっと並んでいる ユウロスはその中を無造作に進み やがて銃ばかり並んでいる銃のブースで立ち止まった ユウロスは並んでいる銃に目をやりながら
「ええと バルカンブラスターはどこかな」
 ふとユウロスの目に止まったのはバルカンブラスターMark.2 彼がバルカン〜をいじった物である彼はそれを左手に取り螺旋階段へと足を進めた 階段は一定方向に下り続け周囲の景色を見なければ錯覚を起こしそうになる 螺旋階段を降りたユウロスはバリアスのいる小さなハンガーのシャッターをくぐり抜けた
「何処へ 行っていたんだ?」
 ユウロスはバルカンブラスターMrk.2をテーブルに置き重力ハンマーへ足を進めながら 「上だよ 上」
と 答え 重力ハンマーを一時停止させ ポケットから取り出した柄をくっつけ 重力ハンマーでしっかりと固定するのであった
 できあがった剣は鈍い輝きを持ち重力ハンマーという装置の上に静かに浮かんでいる
「刃渡りはどのくらいかな バリアス」
「57センチぐらい」
 ユウロスはポケットからメジャーを取り出し刃渡りを測る
「54と7 2センチ延ばそう」と重力ハンマーを酷使するユウロス
 重力ハンマーが剣を2センチ延ばしているあいだにユウロスは残っている紅茶を飲み干した
 ユウロスはできあがった剣を重力ハンマーから取り出しバリアスに渡した
「ちょっと軽いが まあいいだろう」
 ユウロスはバルカンブラスターMark.2を持ち
「さて とりあえず行くぞ」
 バリアスは空の鞘に剣を入れ満足そうに小さなハンガーを後にした
 しばらく広い空間の底を歩いて行く2人
 その先にはユウロスのホワイトバードが空間の底に白くたたずんでいた ユウロスはそのホワイトバードを指さし
「バリアス 君はあの前で待っていてくれ 私は他のメンバーを連れてくる」
と 言付け 走り始めた
 走ってハンガーの扉をくぐったユウロスは通路の真ん中で元来た方向を向いて立ち止まった
「さあて」
 ユウロスはポケットからエアスケーターを一足取り出し座り込んでブーツに取り付けた
 立ち上がったユウロスの足は床から離れている 一呼吸おいてつま先にあるグリップで走るように加速をつけ通路を疾走するのであった

 さて
 そんなころ フリール・ノジールたちは何をしているかというと
 あのカードゲームに我を忘れる有り様
 リネは手持ちのカードを確かめるように見つめて
「この勝負もらった」
と 断言
 ラエルがカードを山から一枚引いたところで
「俺が阻止する」
 リネは挑発的に言い返す
「やれるものなら やってみなさいよ」
 順番が回って来たエレナは黙ってカードを出した
「皆さん お疲れ様」
と フリールが手持ちのカードをすべて出した
「かびぃーーーーん」
と リネがカードを手から落とし
「まっ 負けたぁー」
と ラエルは無意識に精一杯悔しい表情を浮かべまた再びカードを配るのであった

 ユウロスはビジタールームの扉の近くで急ブレーキをかけピタリと扉のまえに止まり エアスケーターを取り ポケットに突っ込んで扉をくぐった
「おーい」
 カードを配っていたフリールはユウロスの方を振り返り
「なに?」
「βに降りるぞ」
「いつ」
 ユウロスが通路に出ながら
「すぐに 準備しろ ホワイトバードに行って」
と 言い捨てた
 フリールはカードを配るのをやめ 聞こえるように
「はいはい 帰る準備して」
と 皆に言い聞かせた
「えーーーーーもぉーおわりぃーーーーーーー」
と 言ったのはエレナだった
「さぁて 準備しようかなー」
と リネが立ち上がり ラエルが床の上に大の字に横たわる
 そそくさとフリールがカードを集めケースに入れ立ち上がった
「早く準備してねー」
 ラエルは横たわったまま
「俺は 終わってるぞ」
と 断言
「私も」
と リネの声 その直後に
「エレナも 出来たぁー」
と ふろしき包みを片手にビジタールームを出ようとしている
 フリールは通路に出て扉の横にあるカラフルな幾つかのキーの一つを押し
「少し待っててね」
と 通路のずっと向こうに目を向けた
 その方向から 何かが近づいてくる どうやらさっきユウロスの乗った車らしい その車はフリールの前で静かに止まった
「みんな乗って」
と フリールが車に乗った が
「・・・・・・・」何か忘れているような・・・ 「そうだわ」
 フリールは車から降りてビジタールームへ
「ええと・・・あれ?」バリアスさんの荷物が無い 荷物そういえば持って来てなかったわねぇ
と フリールはビジタールームを後にした
 ふうっ とため息をひとつ車に乗り込んだ 目指すはユウロスのハンガー
 車は無音で長く明るく暗い道程を等速運動で進む
「おや ユウロスは?」
 エレナに言われたフリール
「あれ?・・・ 」

 ユウロスの図書室
 金属が軋む音をたてながらユウロスは図書室のドアを開けた
 この図書室はユウロス専用スペースにある個人用の図書室である 広さは約1ヘクタールの4階建 最上階には ユウロスが今まで買い溜めたゲームソフトの山が・・・ それはさておき 入り口を入ると4階まで吹き抜けになっておりその底には大きな机と図書室を管理するコンピューターがおかれている
 ユウロスはその前を通過し魔法書の棚へ足を進める
「なんか 懐かしいなぁー」
 ユウロスは魔法書の棚の前を通過し梯子をもって戻って来た かなり上のほうにあるらしくユウロスはゆっくりと梯子を固定し 一段ずつ昇る 一番上の一本のうえに両足を乗せ さらに背伸びをして数冊の本を取った と 数冊の本を手に取った瞬間 ユウロスの体の重心が両足の上を離れた
「ぅわあ!」
 ドサッ ユウロスの意識が遠のいて行く

 薄暗い中 人の声が聞こえる 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ユウロス・ノジールです・彼は私の造った最高傑作品です・・・・・・・・・もうすぐこの青水槽を出て自由に歩き回れるようになります・しかし体はこのようでもまだ知能は3歳程度しかありません・・・あとは私とこの助手と精神科医の浦部君とで精神年齢を上げてゆけばいいのです・・・・しかし寿命のない人間など・・・・・大丈夫ですよそのように精神を鍛えますから」
「うわぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」
 肌に脂汗を感じながら暗い中ベッドの上に起き上がっていた
「夢か」
 ユウロスは手で汗を拭った だれかがスイッチを入れたのか明かりがついた その直後
「大丈夫ユウロス?」
 フリーナが部屋に入って来てベッドのよこの椅子に腰掛けた
「あれっ フリール達は?」
「それならさっきホワイトバードでβに降りて行ったけど」
「俺を置いてか?」
 ユウロスは強いショックを受けたのだった
「ええ チーフには仕事がたくさん残っているもので・・・」
「どのくらい?」
「まず チーフが抜け出してからの資料の整理に エネルギー管制のチエック等々・・・ それからティラスト帝国軍が4艦隊を引き連れてこちらに進行中 学会に協力を要請致しましたが返事はNOでした」
「おひおひ」
「チーフ 後でメインブリッジへ・・・ それから脱走ルートはすべて閉鎖しましたので」
と フリーナは部屋を出て行った
「ううっ・・・ばかぁーーっ」はあ 脱走しようと思ってたのに・・・
「くそー 最速で終わらせてやる」
と ベッドを出て汗で濡れた服を着替え始めた

 メインブリッジ
「ふぁーーーーっ」
 欠伸をしたリディアは再び相手の進路予想をはじきだそうとキーボードをカタカタと鳴らせている
 空気音が響き扉が開く
「よう」
と ディーがメインブリッジへ入って来た
「ディー 修理は終わったの?」
「ああ ほとんど壊れていなかったからな」
と 自分のブースにある椅子に深く腰掛けた
 再び空気音がしユウロスが入って来た
「リディア フリーナを呼んで」
「了解」
「ディー ガルブリーズ内に修理の必要な箇所は」
「現在のところ ありません」
「絶対だな」
「絶対です」
「よし フリーナがくるのを待つ」
と 言いシートに掛けユウロスはコートのポケットに入っている魔法書を取り出し読み始めた
 ちなみに この本の題名は「基礎の魔法」である

 時間の経過
 メインパネルは静かに敵の現在位置を映し出している
 ちょうどユウロスが本を読み終え閉じたそのとき フリーナがメインブリッジに入って来た
「さてと 敵艦隊の状況は?」
 リディアが目の前のパネルを見て言った
「現在 コース2・7・0で208.4光年の位置から こちらへ平均速度3045光年で進行中 あと約25日後に到達するものと思われます」
「副砲発射準備 コース2・7・0」
 フリーナがユウロスの方へ振り向き
「しかし 敵はワープをくり返しているのですよ」
「まあとりあえず 4回 10分置きに連続発射してくれ」
「はあ」
「分かったかな?」
「はいはい  チーフ責任は取りなさいよ」
「ああわかった・・・ ディー切り離しだ」
「へぇっ ?」
「切り離してコース2・7・0でθ軌道の外側まで移動」
 θ 8番目に発見した木星型惑星 太陽系にある冥王星のように公転面が15°程度傾いている 外側から3番目の惑星 あまり大きくないので大気を通すと観測は難しい
「了解 ジョイント切り離し」
 ガルスブリーズは静かにメイフラワー(生物居住区側)の4つのジョイントからゆっくりと離れる
「メイフラワー 軌道偏差認められず」
「サブエンジン始動」
 ユウロスは自分のブースのパネルに現れる数値を確認しながら
「βでジャンプと洒落込もうかな フリーナ」
 正確にはスイングバイといい 大きな質量をもつ物体近辺の空間の歪みを利用して加速する方法である たまにこの方法で惑星などとの衝突をしばしば避けていることがみうけられる
 フリーナは逆三角の眼差しで
「チーーーフ」
と ユウロスを睨みつける
「冗談冗談・・・ ! そうだ フリールと連絡取れないか」
「やってみます」
 リディアは自分の前にあるキーにガダガタと不器用な手つきで何か打ち込む

 ホワイトバード
 パネルの光だけが部屋を支配しているコクピットでフリールが操縦席に座っている
「重力偏差+0,0003で姿勢制御系統異状無し・・・ 対流圏まであと147秒」
 パネルには新たな情報が流れ出る
 現在位地 南緯45度27分 西経43度35分 方向北東・・・
 あと84秒でクレイバラーズ王国の領空に入る 第3級戦闘体制を要請
 フリール ガルスブリーズより通信 電波が乱れて拾波不可能
「緊急?」
 そう思われます
「通信可能になり次第 つないで」
 了解

 ガルフブリーズ
 リディアはユウロスの方向に振り返って
「どうやら 再突入の最中のようです」
「そうか 分かった・・・ デルタオプションを・・・」
 フリーナはユウロスの方に振り返る
「どうするのです?」
「展開し エンタスシッドバリアを用意して 敵の攻撃を待つ」
「了解 デルタオプション 展開しジェネレーター始動 出力47へ」
「重力航法に切り替えます」
「うむ・・・ ディー操縦なんて久しぶり何じゃないのか」
「たしかにな ロケットエンジン停止 ワームコース2・7・0へ 歪曲開始」
「エンタスシッドバリア パワーレベル3へ」
 ホワイトバードとの通信が通じたらしくリディアはずれたインコムを肩で耳に押し付け キーを操作しながら
「チーフ 通信つながりました」
 ユウロスは軽い反応を示して
「ここへ・・」
「繋がります」
 ユウロスはブースの真ん中のパネルにフリールの上半身がバックが青色で写った
「《・・・ほんの数秒怠惰な時が流れる・・・》何用でしょうかチーフ?」
「皆をβに戻したら リーナを連れてメイフラワーへ行ってくれ」
「《・・・ほんの数秒怠惰な時が流れる・・・》分かりました」
「ああっと それから生物居住区へは入れないように」
「《・・・ほんの数秒怠惰な時が流れる・・・》以上で?」
「ああ」
「《・・・ほんの数秒怠惰な時が流れる・・・》」ブンッ
 パネルからフリールの姿が消えた
「さて どうしたものか・・・  ・・・リディア相手の様子を・・・」
「先程ワープを終え エネルギー充填をしている模様 コース2・7・0 距離4,5光年 現在静止中」
「静止中?・・・」作戦でも練っているのかな・・・・・・・・・・
「敵艦隊へ通信 これ以上近づこうものなら 命の保証はしない」
 言い切るユウロス
「了解 UAI今の言葉を・」
 フリーナのブースのパネルに
 了解 しばらくお待ちを
と 表示された

 ティラスト帝国軍艦隊
 ランデウス回廊 ここはこのユリノ星系のほぼ中心に位置する交通の要所となるべき回廊である この辺りの空間は不安定で時折高次元空間となりうる その不安定な空間の中にぽっかりと存在するのがガルバリア恒星系であり そこから四方に伸びた僅かな安定空間の一つがランデウス回廊である
 ランデウス回廊方面艦隊 旗艦アコリピナ 鈴木はこの艦隊を率い今作戦会議室にいた 目の前で繰り返される論議をよそに 皇帝の言った言葉を思い出した
『鈴木よ 予は言ったはずだ 要塞を築け 力を誇示するために』
「しかし皇帝陛下 敵の科学力は我々のそれをはるかに凌駕するもの うかつには」
『たかが要塞一基ごときも落とせぬのか?』
「おそれながら」
『我が帝国の総力を挙げて 叩き潰せ これは命令だ』
・・・くそっ 貧乏くじを引いたか
 突然鈴木に男の声が
「司令」
 鈴木は内心慌てていたが慌てず
「なんだ」
「作戦案が纏まりました」
 進行役の仕官は言った 鈴木は興味をすこしいりまぜ
「どういうものだ?」
「はっ 艦隊を四つに分けワープ 一斉攻撃し直後にワープ 次のワープへのエネルギーをチャージしつつ 敵の行動を予測 また敵近辺にワープ 以上の動作を繰り返します」
「よし 分かった 全員配置へ」どちらにしろ・・・ もう・・・
 皆がこの部屋を足早に去った 鈴木は腹を立てていたのかいつもなら反論するところを今日に限って行わなかった 彼は会議室を出ると真っすぐに艦橋へと足を進めるのであった
「司令っ」
 鈴木は声のするほうに振り返り
「何だ」
 その方向には一人の兵士が立っている
 その兵士は
「敵要塞より通信 これ以上近づこうものなら 命の保証はしない 以上です」
 まだ息が上がっている
「ご苦労」
 鈴木は艦橋へと急ぎたした
 兵士はそのまま自分の部署へ走って行った

 ガルバリアβのクレイバラーズ王国
 ここはクレイバラーズ王国ダレリアドゥーラ空軍基地
 マッハ2,51で飛べる最新鋭戦闘機アルテミナが470機もある
 グラメダとも交易があるためか この国の軍事技術はかなりのものである
 なんだか騒がしい
 Beeep Beeep Beeep・・・
「第32小隊は直ちに出撃準備にかかれ これは訓練ではない 繰り返す第・・・ 」
 慌ただしくライトブルーとホワイトの2トンカラーに塗装してあるアルテミナに乗り込むパイロット達
 どうやら1機につき2人乗るらしい
 乗り込んだリーダーは指示を飛ばす
「全機発進」
 その他のパイロット達は黄色いスロットルレバーを引き倒し
「メインローターMAXpower」
 10機のアルテミナは翼にある1対のローターをフル回転させゆっくりと浮上し 次々にアフターバーナーと轟音を残して飛び去って行った

 フリール操縦のホワイトバード
 メインパネルにアルテミナの機影が10個赤の点で示される移動速度はかなり速い
 フリールは自分を落ち着けながら
「やっかいな所に来たのね・・・ スピードを上げて振り切れUAI」
「了解」
 合成音声が器用に言葉をおりなす
 かなり空気抵抗があるためかなかなか加速度が上がらない
「敵編隊より通信」
「どうぞ」
 アルテミナ第32小隊のリーダーの声が
「所属不明の飛行物体へ こちらの指示に従え さもなくば撃ち落とす」
 翻訳装置を通った音声がスピーカーから聞こえる
 「どうしますか」
「通信して」
 今度ユウロスの所有物を破壊したら何があるか分からない・・・ けど 悪い予感がする
「はい」
「指示とは?」
「高度を12000まで下げ 速度をマッハ1に落とせ」
「分かった」
「いいんですか」
「明日は明日の風が吹くわ」
「分かりました」
 リーダーのもとには合成音声で
「分かったそちらの指示に従う」
と 流れた
「協力感謝する」

 ダレリアドゥーラ空軍基地
 のとある建物の中にある魔法陣の中に一人の女性が静かにたたずんでいた
 彼女はいまホワイトバードの性能や乗組員の素性を探っている
 記録係は彼女の言葉を書き留め
「 ・・・という事は過去のあの英雄に関係があると」
「ええ」
 静けさの中 彼女は答えた
「分かった 他には?」
「以上よ」
 そっけなく言った
「後で夕食でもどう」
「先約があるの」
 いかにも残念そうな口調でていねいに断る彼女
「じゃ また誘うよ」
と 記録係は魔法陣のある部屋を後にした
 記録係は廊下を幾つか角を曲がり司令室へ
「失礼します 司令」
と 記録係は司令室の戸を圧し開き中へはっいた
「おや おひさ」
 司令官の顔の表情が緩みまるで友人に話しかける口調だった
「今は職務中です」
「そ そうだったな」
 司令官の顔が引き締まり
「何用だ」
「これを」
と 彼女の言葉を書き留めた紙を渡した
 受け取った司令官は
「 ・・・そうか 救いに来てくれると良いのだが 国王に報告しておくように」
と 記録係にその紙を返した
「はっ」
 記録係はその紙を受け取り
「では」
と 司令室を後にした

 フリール操縦のホワイトバード
 操縦室の戸を叩く音がフリールの耳に入って来た
「どなた」
 フリールは手元のキーで戸を開けた
「フリール この飛行機を今降ろしてはだめ」
 エレナは遠くを見透かすように言った
「なぜ?」
「あのね 今降りると1カ月後にみんな死んじゃうから」
「ほんとに?」
「うん だから降りないで イトスに向かって」
「分かったわ さっ みんなの所に戻っていて」
「うん」
 エレナは静かに戻って行った
「UAI 聞いたね?」
 「はい 全速力で振り切ります」
 フリールは黙って操縦席に座り
「通信を」
 「了解 どうぞ」
「悪いがそちらの指示に従えなくなった 状況が変わったので・・・」
「通告する こちらの指示にし・・・・」
 アルテミナ第32小隊のリーダーがホワイトバードに目をやった瞬間ホワイトバードは遥か彼方の空の中に消えていた
「くそっ」なんてやつだ「全機帰還せよ」
 アルテミナ第32小隊の編隊はダレリアドゥーラ空軍基地へと飛び去った

 ここで少し時を進める
 白い機体がゆっくりとイトスに停泊しているオケアノスの甲板に降りた
 タラップが降り中から
「あーあ 帰って来たか」
と ラエルが一番に降りてくる
 その後に続いてエレナ リネ バリアスがタラップを降りた
 三人がホワイトバードの方向に振り返るとそこにはオケアノスの甲板が広がっていた
 その三人の頭上で爆音と共にホワイトバードは空の中に消えて行った
「行っちゃったね」
 リネは問いかけるがごとく言葉を口にした
「ああ」
 ラエルがホワイトバードの飛んで行った方向に視線を向けたまま言った
「! ああーーーーーーっ」
 唐突にリネが絶叫をあげる
「どうした」
 ラエルは驚きを隠せずに問う
 リネは放心状態に沈むだけで一向に言葉が口から出ない
「あのね お兄ちゃん 耳貸して」
 ラエルはエレナの言葉に耳を傾ける
 そっぽを向いているバリアスもちゃっかりとエレナの言葉を聞こうとしている
 エレナは小声で
「リネはね 自分の服を今着てるもの以外ぜぇーーんぶ あの船において来たの」
 バリアスは内心笑いながら無言でその場を去った 無論 バリアスは笑いを必死にこらえたのだ
 ラエルはさりげなく
「リネとりあえず家まで来いよ」
 リネは黙ってうなづいた
「エレナ帰るぞ」
 ラエルは歩きだす
「うん」
「・・・・ 」
 リネはラエルの後を後悔でいっぱいになりながら歩きだした

 ガルフブリーズ
「ユウロス どうするつもり」
「さあ 相手の出方を待つさ」
 ユウロスは深くシートに腰掛けたまま答えた
「予定位置に到着」
 ユウロスは落ち着いた口調で
「 そろそろだな・・・ 主砲発射準備出来るか?」
「ユウロス 今回は使わない方がいいんじゃないの?」
「うむ ・・・ ・・・分かったフリーナ よし副砲発射準備 メインジェネレーター出力は」
「了解」
「現在34%」
「メインジェネレーター出力62%へ エンタスシッドバリア出力レベル5へ」
「了解 メインジェネレーター出力62%へ」
「エンタスシッドバリア出力レベル5へ フィールドは?」
「現時点を維持」

 ティラスト帝国軍ランデウス回廊方面艦隊旗艦
「指令 敵が止まりました」
と 参謀の声が鈴木の耳に入った
「全艦 準備は出来ているか」
「はっ」
「作戦開始」
 鈴木の前方に広がるパネルで第一艦隊の1万4千の戦闘艦が消えた

 ガルフブリーズ
「上方4500kに大規模な空間歪曲発生」
「来たか」

 第一艦隊旗艦
「全艦ワープ終了」
 副官の声が艦橋に響く
「撃てぇー」
 数万に及ぶ光線及びミサイルがガルフブリーズへ打ち出される
 殆どの光学兵器はエンタスシッドバリアに吸収されミサイルも閃光をあげて爆発する
「くっ 全艦ワープ態勢にはいれ」

 ガルフブリーズ
「損害は」
「エンタスシッドバリアレベル2にダウン」
「メインジェネレーター出力62%に到達」
「エネルギー・ド・バスター 出力レベル1 エネルギー維持臨界点です」
「発射態勢へ コース2・7・0」
「了解 エネルギー・ド・バスター 出力レベル2へ セイフティー1解除・・・ エネルギー・ド・バスター出力レベル2 発射態勢に入りました」
「敵艦隊の状況は」
「敵艦隊の移動など認められず」
「Fire」
「エネルギー・ド・バスター セイフティー2解除 出力臨界点へ・・・ 最終セイフティー解除します」
 空間を切り裂き闇の彼方へ光の束が吸い込まれるように消えた

 少し時間を戻る
 ティラスト帝国軍ランデウス回廊方面艦隊旗艦の艦橋
「直線の空間動機確認」
 ひとりの兵士の声が静かな艦橋に響いた
 鈴木は直感的に言葉が出て来た
「全艦防御体制を取れ」
 鈴木が言うが早いかエネルギー・ド・バスターが艦隊のいる空間を突き抜けた
 直後に3万数千隻の戦闘艦が閃光と化した
 旗艦は生き残っていた 通常の戦闘艦に搭載していない空間動機シールドが功を奏したのとエネルギー・ド・バスターの直撃を免れたためである
 パネルには第一艦隊の戦闘艦が全艦戻って来た様子が映しだされていた
「全艦 ジーツ星宙域まで撤退」
 鈴木は絶対的な科学力の差の前では数など意味をもたないことを思い知った
「はっ」

 ガルフブリーズ
「敵艦隊コース2・7・3でワープ 撤退した模様」
「ふう」
「ふうじゃないわよユウロス あなたにはまたまた仕事が山のように残っているんですからね」
「そう いうなよフリーナ」
 ユウロスは黙ってメインブリッジを後にした

 ここですこし時を進める
 ここはラエルの家
「おや リネどうしたんだい?」
 ラエルの母親が白黒逆転したリネに問いかけた
「母さん リネは(小声になるラエル)自分の着替えを全部失ったんだよ」
 ラエルの母親は高らかに笑い
「そんなことかい リネ あたしが昔着てた服を貸してあげるよ」
 リネは真っ暗の中一筋の光が自分を照らし出したような気分になった
「これでもあたしは昔イトスで1・2を争った美人なんだからね リネぐらいの年頃には・・・・ 」
「・・・・・」また始まった
 ラエルの母は言い終えると同時に3階に当たる屋根裏部屋に上がって行った
 この家は石造2階建屋根裏部屋付きで海側に庭があり そのうち1階がラエルの両親の部屋と台所兼居間と玄関があり 2階にエレナの部屋とラエルの部屋とテラスがあり 屋根裏部屋は専ら倉庫になっている 付け加えるとラエルの父親は定期船の航海士でもうすぐ帰ってくるとのこと
 しばらくしてラエルの母親は階段をゆっくりと箱をもって降りて来た
 リネはラエルの母親の方を向いて
「あの」
「なんだい?」
 ラエルの母親は箱を降ろした
「お名前は?」
「ああ そうだったね ええとジュリア・ヴェルーン 名前はジュリアだけど」
「どうも」
 すこし畏まるリネ
「あの・・・ お母さんて 呼んでもいいですか?」
「えっ ええお好きなように」
「リネだったね この中から好きなのを選ぶといい・・・ おっと そういえば あたしはもう着られないから あげるよ」
と ジュリアは箱を開けた 箱の中には民族衣装などが沢山入っている ちゃんと保存しているらしく虫食いの跡もない  リネは自分の物のように服を取り出し
「ありがとう」
と お礼を言った
 当のジュリアは台所へきえた

 翌日
 リネはエレナの部屋から元々はジュリアの寝間着を着て朝の霞みがかる外の景色をテラスから眺めていた
「ふわぁーーーーっ」
 眠そうに欠伸を一つ エレナの部屋に着替えに行った
 リネが着替えているとエレナがベッドの上で寝返りをうち幸せな表情が向こうを向いた
「もう おなかいっぱい・・・」
「何か言った?」
と まだ着替え途中のリネがエレナの方に目をやった
 すやすやと眠るエレナの姿がそこにあった
「さて」
 着替え終えたリネは再びテラスに出るともって来たバスケットの中から本を取り出した リネの人差し指の長さぐらいは厚みのある本だ その本はかなり古ぼけて表紙の著者や題名などはほとんど読み取れないだが中身はまだしっかりと読める状態にあった リネはその本のぶ厚い表紙を捲った ページの上のほうに魔法百科と大きく書かれ その下に何人かの著者と思われる人の名前が幾つか書いてあるがそんなことは気にせずに彼女は小鳥のさえずりや船や波の音を聞きながらその本を読み始めた
 リネは知らないこの本の著者が ユウロス ノジール だという事を・・・
 時に10月より31日目の朝であった
『第一章 終』
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