高校に入って二度目の春 ついこの間2年になったばかりである 校内の桜は一斉にその花を開き 見るものを楽しませていた
ここは○立○学院高等部の校舎から少し離れた場所にある図書館
その閲覧室にて
「ふぁーーっ」
そんな欠伸をする作者 彼は黒く少しカールのかかった髪の毛をくしゃくしゃとかきながら世界地図のヨーロッパのドイツ付近のページを開き見入っていた
「眠そうだな」
横で自前の本を読んでいるユウロスが本から視線を移すことなく言った
「もう眠くてねぇ 今日朝早くまでホームページの更新していたから」
「再放送のエ○ァもみてたね」
「ああ」
「ただでさえ深夜の再放送だもんなぁ」
「とは言っても 深夜のラジオの代わりみたいなものだよ」
話している二人の後ろから
「そんなこと言って さっきの時間 最前列で大いびきかいていたのは誰かな?」
「せ 先生」
作者がそばにいたユウロスと一緒に振り返る
「面目ない」
作者は頭をかきながらそう言う 彼らの目の前にいるのは国語科の担当の先生
「読んだわよ 新しいの」
「げっ」
「あ それなら私も登校する前に読んだよ たしか『膝の上の猫』だったよな」
「がぁーん ユウロスならまだしも 先生にまで」
このままでは職員室内にこの情報が漏れるのは時間の問題 等と作者が考えていると 目の前の先生は 一通り感想を述べた後
「職員室の先生方からも結構評判良かったよ」
お 終わった 口には出すこともなくしばらくそのまま静止してしまった作者であった
「あれ?」
「ま そんなものか 結構ダークな話だったからな 希亜」
ユウロスはご丁寧にペンネームまで告げるしまつ
そんな事がありまして 放課後
「あれ 希亜は?」
すでに担任の先生からそう呼ばれている作者
「ああ先生 彼なら 『今日は厄日らしい』と言って一目散に教室から出ていきましたよ」
作者からは黙っていてと言われたにもかかわらず ばらすユウロス
「では」
ユウロスは教室の入り口で待っていたナッキャの元へ
その日帰った作者がメールを開いてびっくりしたのは書くまでもなく・・・
翌日
週休二日制の学校なので土曜日である今日は休みの日
作者の部屋にエアガンを撃つ音が響く リボルバーを構え6発全弾打ち終える 床に落ちる金属音 そして作者のため息
月曜日 お昼休み
ユウロスはいつも通り教室にて昼食を取った後図書館に来ていた もちろんナッキャと共に
しばらくして作者らも図書館に入ってくる
それぞれにとりとめのない話をしながら 時間が過ぎて行く
そんな中 一人の女生徒が図書館に入って来た 空色の髪に空色の瞳を持った彼女はユウロスを確認すると かけより入り口に背を向けていた彼に飛びついた
「マスター」
そう言って飛びついた彼女
ユウロスはよろめいたが その周りはもっと驚いていた
「バルなのか?」
そのユウロスの言葉に一番早く反応し 彼に抱きついている彼女の言葉を遮ったのはナッキャだった
「誰よその子は」
まるで自分のおもちゃを取られた子供のよう と言った表現がぴったり来るような言い方で
「妹だよ」
ユウロスはそのまま「本当のな」と言ったのだが周囲の声にかき消されてしまった
「なるほど そう言われてみればそうだな」
混乱している中 一人納得する作者
「今年入ってきたのか バル」
バルキリーはユウロスの前まで来て その空色の瞳でユウロスを見て
「はい・・・ お兄ちゃんに会いたかったから」
「しょうがない奴だ」
ユウロスは彼女の頭をなでてやると 視線を移し
「私の妹のバルキリー・ディ・ハルシオーネだ」
そう周りに言い放った
放課後
図書館にてユウロスにべったりのバルキリー そこから少し離れて諦めるようにしてその二人を視線の端におさめ続けるナッキャ 彼女は午後の授業中にユウロスから彼女のことを聞いていたので 心に引っかかるものはあるものの 静観することに決めたのだ
「あれ? ナッキャぁ 部活は?」
ナッキャの友人である 図書委員のリアが返却図書を本棚に返しに行く途中で声をかけたのだ
「リアぁーー」
ナッキャは情けない声をあげ 視線をユウロスにべったりくっついているバルキリーに移す
「ふーん 彼氏取られちゃったんだ」
まるで楽しむようにナッキャに言ったリアは 本棚に本を入れていく 腰まで届く流れるような黒髪はナッキャもうらやまし
いと思ったことがあった 彼女を見ながらそんなことを思い出してはいたが 次の言葉がナッキャの思考を停止させた
「インターネットでキアって人の小説読んだことある? 文字は漢字で 希望の希にアジアの亜って書くんだけど」
返事が来ないのでリアは再び
「ねえ 聞いてる」
固まったままのナッキャは返事ができない
「インターネットでその人のページ見つけたんだけど 結構私の好きな話が有ったから気に入ったんだけど特に『音速の箒乗り』はおもしろかったよ ってどうしたのナッキャ」
リアは抱えていた本を戻し終えるとナッキャの前に来て 複雑な表情のナッキャに
「どうしたのナッキャ 変よ」
さすがに私のクラスに本人がいるなんて 言えない と判断したナッキャは
「なんでもない なんでもないの」
笑ってごまかすナッキャは そのまま部活へと出ていった
「ふうん」
その場に残されたリアは ナッキャが何かを隠していることだけは見抜いていた
その図書館の一室 雑誌閲覧室では作者がパソコン雑誌片手に何回かくしゃみをした後 一つのページを見つめていた 彼はそのページに書かれているホームページアドレスを記憶し雑誌を元に戻し 荷物を肩に掛け 図書館を後にした
図書館を出た作者はそこから素振りをしているバドミントン部の中に奥村島村森本の三人組を視界の隅に確認するが 距離的に離れすぎているせいか特に挨拶するでもなく駅へと足を進めるのであった
「なあ あれ希亜じゃないのか?」
素振りをしている島村が隣にいる森本に言った
「ん そうだな」
森本の言葉に答えようとした瞬間 島村の握っているものがなくなる
「あらぁ?」
島村の握っていたラケットは放物線を描き 図書館の壁に当たって 地面に落ちた
「あーあ」
あまり驚いてないような様子で島村は 落ちたラケットを拾いに行くのであった
それから 小一時間後
ユウロスは日も傾いてきたので帰ろうとバルキリーに告げた
「マ あ お兄ちゃんはどこに住んでるの?」
先ほど 恥ずかしいのかユウロスはバルキリーにマスターと呼ばないでと言われたのを思い出して 言い直した彼女は ユウロスの返答をじっと待っている
「ええとねぇ・・・ 神○市○灘区森○町2丁目○-24-507 だけど」
「神○市なの?」
「ああ 東のはずれだがな」
「すぐ近くなんだぁ」
「どの辺り?」
「○屋市の西の端だもん」
「そんな所に・・・」なるほど やはりあれは人違いでは無かったんだな「バル では途中まで一緒に行こう」
バルキリーはうれしそうに返事を返し 二人は図書館をあとにした
夕刻
作者の家 この家の主は自分のパソコンに向かっている
「インストール完了 スペッククラスはプロフェッショナル とりあえず大出力レーザー1対搭載のHBVを作ってみるか やはり名前はラ・・・ では芸がないな・・・ うむではSHINDENで行こう」
彼が現在いじっているのは先日発売されたばかりのゲームPC版のV○rt○al
ON The Last DAY 開発元がヴ○ーチ○ロン最後の作品と位置づけた物で 要求されるスペックも厳しいため発売と同時に買ったものの パソコンのスペックの都合により今日までプレイできなかったのである ちなみに今日彼が手に入れたのはマザーボードCPU×2メモリと1Gのシリコンディスクである
その二つ上の部屋 ほぼ同時刻
作者のスペックより僅かに高いスペックを持っているユウロスのパソコンは V○rt○al
ON The Last DAYにて機体制作と設定を終えていた 当の本人は白い飛行型ヴァーチャロイドを紅茶を飲みながら見つめていた 名前はXBV−D8−A SIVAそう表示されている
「さて 奴が出てくるのを待つか」
そう言って受信待ちの状態にしたままシナリオモードを始めるのであった
その夜
○屋市の海に近い 日本家屋の一室 窓を開け空に輝く月を見つめ 彼女は
「この月はマスターも見ているのかなぁ」
その空色の瞳で圧倒的な存在で空に在る月を 静かに見つめていた
もちろん当人はあのゲームで作者と対戦をしているのであった
それから 間もなく
ユウロスの部屋 通信対戦に飽きたのか作者は一通のメールをよこして 最後の勝負から下りた その直後 受信待ち状態を解除しようと マウスを持った瞬間挑戦者が現れた 画面の端にはメールアドレスが記載されている そのアドレスは「な ナッキャが?」
紛れもなくそれはナッキャ・ストラフィーネのアドレスであった
「面白い SIVAでお相手しよう」
そう言って通信対戦を始めるのであった
翌日
「あのゲームやるとなんかガンダムのメカニックの気持ちが分かるなぁ」
どうやら一部マニアには絶大な人気を誇っているらしく アニメなどで登場したお気に入りの機体を作りまくっている輩がいるようだ まあこの2人もあまり例外ではなかったのだが
「ユウロス あのしゃがみボム卑怯じゃない?」
「そうか 結構便利なんだけどな それにナッキャの全弾発射も卑怯だよ 当たったら問答無用でおだふつだもんな」
朝からこの話題で盛り上がっている2人であった
昼間食堂
「ふぅー 食った食った」
食堂で島村が月見うどんとカツライスをたいらげ 食器を片づけ食堂を出ようとしたときだった
「希亜っていう・・・」
聞いたことのある言葉が耳に入って来た 島村はその様子を一瞥し食堂を出た
「希亜か 確かあいつのペンネームだったな」
そのまま彼はいつも通りに図書館へと向かうのだった
図書館
「よう 希亜」
島村にそう呼ばれて ビクッ と反応した後振り返る作者
「頼むから その呼び方はやめてくれ」
「はははっ それはそうとおまえさんの『NEO-KOBE-CITYの夕日』の設定資料だけどな」
「ああ あれか どうだった?」
「見つけたよ メモってあるから後でな」
「ありがとな」
「いやいや これでまた希亜の話が読めるとなればこそだよ」
「だから だからそう呼ぶなって」
そんなこんなで じゃれている二人 その図書館の図書貸し出しカウンターで腰まで届く流れるような黒髪を三つ編みにしていたリアはその話を聞いていた
放課後
ナッキャが部室前から花壇に水をやっているユウロスとそのそばにいるバルキリーとホースを持っている島村の姿を もちろんユウロスを中心にみていたときだった
「ねえナッキャぁ」
「どうしたのリア」
「あの ユウロスの隣の人 例の希亜君でしょ?」
と ナッキャに聞いた直後 リアの背後から
「呼んでるぞ」
「え?」
リアが振り向くといくつかのスコップと何かの植物の種袋の入ったバケツを持った読が 後ろでくわとすきを肩にかついでいる作者に言った
「なにが?」
向こうから歩いてくる作者が読に聞き返す
「希亜ってお前のことだろ?」
「ああ まあね」
「この娘が お前のこと言ってたからさ」
作者と読とのやりとりの中
「あなたが 希亜さん?」
「ネット上ではね」
作者は歩みを止めることもなくそのままのペースで歩いていく
「おい ちょっと待てよ」
読は歩いていった作者の後を追うのであった
二人が離れたのを目で追いながら ナッキャはリアに
「知ってる? あの二人両方とも一人暮らしなの」
「えっ」
ナッキャに言われて複雑な表情を見せたリアであった
ユウロスのヴァーチャロイドXBV−D8−A SIVAについて
もとネタは私の百科事典の中にあるホワイトバード・シヴァ 真っ白な機体で戦闘が始まると真っ黒になるという変わり者
勝ったら 剣を振るうか変形して飛んでゆく
主なデータ
XBV−D8−A SIVA
試作戦闘ヴァーチャロイド 開発計画216号機
装甲強度 下の上
移動距離 中の上
機動性 上の中
旋回性能 下の上
右手攻撃 パーワーボム系のボム 遠近両用
立ちは単発の山鳴りの投げボム(34%) しゃがみが自機の直前に2発投げつける(92%)
左手攻撃 ライトソード/デザインこそ違うがテムジンのソードとあまり変わらない長さ
近距離で燕返し(84%) 遠距離でビーム(速射可能で曲がらない/4%)
両手攻撃
近距離でイリュージョンダンス(100%) 遠距離でツインカノン(100%)
必殺技 アカシックバスター(100%/左手両手)
フィールドに包まれて障害物を貫通し相手に向かって加速しつつやや上昇しながら一直線に飛んでゆく
作者のSHINDENについて
黒いライデンの強化型
主なデータ
HBV−32−F SHINDEN
重戦闘ヴァーチャロイド 開発計画50号機
装甲強度 上の中
移動距離 下の上
機動性 最悪
旋回性能 中の上
右手攻撃 バズーカ
爆発の範囲が大きくなった分連射性能が悪化 トータルな威力は変わらず VT信管を採用
左手攻撃 グランドボム系のボム
ライデンとほぼ同じ
両手攻撃 レーザービーム
一瞬のため時間があるが 威力と速度は抜群
必殺技 特になし