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1999.11.19

THE COMPLETE OF PPX RECORDINGS

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クラウン CRCL-4729-34 (1999)

ジミがPPXに残した音源をまとめた6枚組セット。アルバム・タイトルに "THE COMPLETE" とありますが、実際にはまだ他に何曲かの音源が存在しています。
PPXとは、ジミがエクスペリエンスとしてデビューする前に契約していたレコード会社のことです。

●内容について

6枚のそれぞれは、1996年から1997年にかけて、ドイツのSPVというところからバラでリリースされていたものと同じものです。
ジャケットこそジミの顔が大写しになっていますが、あくまでもカーティス・ナイト・アンド・ザ・スクワイアーズのアルバムとして聞いたほうがよいと思います。しかし、ギター・ソロやジミがリード・ヴォーカルをとる曲などでは、十分にその存在感を味わうことが出来ます。

収録されている音源の内容ですが、以下のように、大まかに3つに分けられます。

  • 1965年のスタジオ録音(13曲)
  • 1965年のライヴ録音(23曲)
  • 1967年7月のスタジオ録音(21曲)
3番目の1967年というと、既にエクスペリエンスで活動している時期で、ちょうどモンタレーでアメリカ・デビューをした翌月にあたります。
このときは7月30日と31日の2回に分けて録音されているようです。

●その他

6枚組という恐ろしいボックス・セットなのですが、各ディスクの収録時間をみると、30分〜40分程度なので、実質3枚分のヴォリュームです。
また、それぞれが紙ジャケットに収納されていて、以外にスリム。CDプラケース2枚分の厚さに収まっています。

●曲のコメント

■各曲のコメントに付いては、自分用のメモに手を加えて書いたものです。
■曲名の色分けについて:1965年スタジオ録音 / 1965年ライヴ録音 / 1967年7月録音
■ジミを感じる度数を★の数で表わしております。

Vol.1: 「GET THAT FEELING」★★
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Vol.1
  1. Get That Feeling
    ジミが弾いていると思われるファズ・ベースが印象的な、ソウル・ナンバー。ワンコードで延々と演奏が続きます。
  2. How Would You Feel
    後にジミのレパートリーになる "Like A Rolling Stone" の原型のような曲。オブリガードなんて、まるでそっくり。
  3. Hush Now
    ワウ・ギターが全面にフューチャーされたインスト曲。このボックスセットには、これと同じ曲で曲名が違うものがいくつかあります。
  4. No Business
    カーティス・ナイトのヴォーカルが妙に印象に残る、オーソドックスなR & Bナンバー。
  5. Simon Says
    軽快なノリ。カーティス・ナイトがラップ風に歌っています。
  6. Gotta Have a New Dress
    オーソドックスな12小節のロックン・ロール。ペキペキの音のギター・ソロだけど、完璧です。上手い。
  7. Strange Things
    イントロからサイケデリックしています。キーボードの音がドアーズを思い出す。カーティス・ナイトの笑い声が不気味。”ストレインジ・シングザァ”と繰り返し歌う声が妙に頭に残ります。
  8. Welcome Home
    アップテンポなR & B曲。初期ストーンズを感じさせる雰囲気。ギター・ソロのエンディング部分が「サンキュー」と聞こえる。
Vol.2: 「FLASHING」 ★★★
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Vol.2
  1. Love, Love
    ワウ・ワウを使ったバッキングが印象的。
  2. Day Tripper
    ソウルフルなヴォーカルにジミのファズ・ベースがからむ。何と、ソロ・パートはベースでプレイしています。
  3. Gloomy Monday
    コーラスが60年代サイケ風、ポップでなかなか良い雰囲気。シタールの音が聞こえたりします。
  4. Fool For Your Baby
    これもサイケな曲。哀愁のあるメロディーが昔のグループ・サウンズ(!)を思い出させる。
  5. Don't Accuse Me
    一転して重たいノリのブルーズ。バックでうねるファズ・ギターが印象的。
  6. Hornet's Nest
    イントロから聞かれる硬質ファズギターが印象的なインスト曲。ジミのファズ・ギターが暴れまわる。
  7. Flashing
    音数が多いベース・ラインはジミが弾いています。セッション的なインスト。
  8. Oddball
    ジミのファズ・ベースがメインのインスト曲。これもセッション風。Vol.5-10.に同じ曲があります。
  9. Happy Birthday
    ワンコードの単調な歌にジミのワウ・ワウギターのバッキング。
Vol.3: 「BALLAD OF JIMI」 ★★
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Vol.3
  1. UFO
    サビの部分がカントリー風で面白い。ジミの軽快なバッキングが聞けます。
  2. You Don't Want Me
    これも軽快なナンバー。バックでうねっているファズ・ギターが印象的。
  3. Better Times Ahead
    これといって特長のないシャッフルな曲。あまり印象に残りません。まだ未完成という感じがしないでもない。
  4. Future Trip
    ベースラインが "Day Tripper" なので、タイトルもこれに似たものがつけられている。
  5. Wah Wah(=Hush Now)
    曲はHush Nowだけど、これはテンポが遅い。1分とちょっとですぐ終わってしまう。
  6. Everybody knew But Me
    ジミのバッキングに注目。既にこの時点でジミとすぐわかるバッキングです。これも1分半でフェイドアウトしてしまう。
  7. Mercy Lady Day(=Love Love)
    曲名は違うけど、Vol.2-1.Love Loveと同じもの。延々と続く単調なバックにジミのワウ・ワウ・ギターが聞かれるインスト・ナンバー。この調子で8分もやられるのは、ちょっとツライ。
  8. If You Gonna Make A Fool Of Somebody
    モコモコしたギター一本をバックに歌われる。ジミは関係していないとされています。
  9. My Best Friend(=Ballad of Jimi)
    "Ballad of Jimi"のインスト・ヴァージョン。3拍子のリズムにワウ・ワウギター、バックではファズギターが鳴りつづけています。
  10. The Ballad of Jimi
    前の曲に歌が入ります。ハモって歌われるメロディーがポップな感じ。歌に入る前に「ジミに捧げる曲」とか言っています。
  11. Second Time Around(=Get That Feeling)
    曲名は違うけど、これはGet That Feelingと同じです。ジミがプレイする、ファズ・ベースサウンドがド迫力。9分にわたるインスト・セッションです。
Vol.4: 「LIVE AT GEORGE'S CLUB」 ★★★★
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Vol.4
  1. Drivin South
    エクスペリエンスでのレパートリーとなる曲。ここぞとばかりに弾きまくるジミのギターが印象的。途中、メンバー紹介あり。その間もジミの硬質なギターが暴れまわっています。
  2. Ain't That Peculiar
    モータウン系のカバー。フェイドアウト。
  3. I'll Be Doggone
    これもモータウン系のカバー。フェイドアウト。
  4. I've Got A Sweet Little Angel
    B.B.キングによる曲のカヴァー。ジミのギターをたっぷり聞くことが出来るスロー・ブルーズ。フェイドアウトが残念。
  5. Bright Light Big City
    シャッフルのブルーズ曲。ジミのリード・ヴォーカル。物まねをしているのか、ジミが声を変えて歌っているのがおもしろい。オリジナルはジミー・リード。これまたフェイドアウト。
  6. Get Out Of My Life Woman
    ジミのリード・ヴォーカル。アラン・トゥーサンによる曲。これもフェイドアウト。
  7. Last Night
    12小節パターンのインスト。軽く流している感じ。
  8. Sugar Pie, Honey Pie(=I Can't Help Myself)
    曲名こそ違うが、フォー・トップスのI Can't Help Myselfと同じ曲。
  9. What'd I Say
    レイ・チャールズのカヴァー。ジミがリード・ヴォーカルをとります。声が若い。
  10. Shotgun
    スティーヴィー・レイ・ヴォーン好みそうなバッキング・ギター。1:15あたりから2:00あたりまでジミのリード・ギターが大炸裂。バックの演奏はほとんど無視で暴走しています。いったん曲が終わるのですが、再び演奏が始まり、バンドメンバーの紹介をして、ライヴを締めくくっています。
Vol.5: 「SOMETHING ON YOUR MIND」 ★★★★
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Vol.5
  1. California Night(=Nobody Loves Me)
    Vol.6-3.Nobody Loves Meと同じ曲。ジミのブルーズ・ギターが堪能できる。ヴォーカルもジミ。
  2. Level(=Hush Now)
    Vol.1-3.Hush Nowと同じ曲。こちらはよりエコーがかかっている。
  3. I Feel Good
    ジェームス・ブラウンのカヴァー。
  4. Left Alone(=Bleeding Heart)
    後の "Bleeding Heart"("Peoples Peoples")になる曲ですが、後のエクスペリエンスでの演奏とほとんど変わらないのに驚く。ギターをもっと聞きたいところだが、フェイドアウトしてしまうのががくやしい。ジミのシャウトも聞ける。
  5. Knock Yourself Out
    ジミの切れ味のよいバッキングが光るインスト曲。単調なドラムが気になる。
  6. Something On Your Mind
    R & Bのバラード。ゆらゆら揺れるトレモロを聞かせたギター・ソロが印象的。サックスがいい感じです。
  7. I Should've Quit You(=Killing Floor)
    曲はKilling Floorそのもの。しかし、Vol.6-1.Killing Floorとは別ヴァージョン。ジミのリード・ヴォーカルが聞ける。
  8. Hard Night(=Let The Good Times Roll)
    これ、曲名は違うのですが、 "Come On (Part 1)" ( ELECTRIC LADYLAND 収録)の原型と思われます。ギター・ソロは歯で弾いているような音がしています。
  9. I'm A Man
    ジミのリード・ヴォーカル。声が若い。ボ・ディドリーのカヴァー。
  10. Instrumental(=Oddball)
    Vol.2-8.Odd Ball の完全版。ジミによるファズベースのソロが聞けるインスト。12弦ギターの音も聞こえます。
Vol.6: 「ON THE KILLING FLOOR」 ★★★★

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Vol.6
  1. On The Killing Floor
    ジミがギターを弾きながら歌っているのですが、サイド・ギターの音が大きすぎて、ジミのギターがよく聞こえないのが残念。のんびりしたドラムが可笑しい。
  2. Money
    有名曲のカヴァーですが、もしかして、ジミのヴォーカル?短いながらもギター・ソロは光っています。
  3. Nobody Loves Me(=Travelin' To California)
    "Red House"のルーツを感じさせる演奏です。1965年の時点でギター、ヴォーカル共にエクスペリエンスでのプレイとほとんど変わらないのに、驚きました。フェイドアウトするのがとても残念。
  4. Love
    ワウ・ワウを全面にフィーチャーした曲。もとはVol.2-1.、Vol.3-7.と同じ。これでもかという程ワウ・ワウしています。
  5. You Got Me Running
    だらけた感じのヴォーカルのブルーズ曲。しかし、ギター・ソロでは目の醒めるようなフレーズが聞かれます。
  6. Mr. Pitiful
    オーティス・レディングのカヴァー。オーティスに似た歌い方をしていますが、カーティス・ナイトのヴォーカルではないような気がします。ジミの切れ味のあるバッキングが心地よい。
  7. Torture Me Honey(=Hush Now)
    Hush Nowと同じもの。
  8. Sleepy Fate(=No Business)
    Vol.1-4.のヴォーカルなし。ファズベースに12弦ギターのバッキングが印象的。
  9. Satisfaction
    残念ながら、ジミらしさを感じさせるギターはほとんど聞くことが出来ません。この曲、オーティスがカヴァーしていたのを思い出しました。

●参考

収録曲の整理をしてみました。

1.1965年スタジオ録音(13曲)

1965年10月15日にPPXと3年の契約をした後、12月までの間に、ニューヨークのディメンショナル・スタジオというところで録音されています。

  • How Would You Feel
  • Simon Says
  • Gotta Have a New Dress
  • Strange Things
  • Welcome Home
以上Vol.1収録曲
  • Fool For Your Baby
  • Don't Accuse Me
  • Hornet's Nest
以上Vol.2収録曲
  • You Don't Want Me
  • Better Times Ahead*
  • Everybody Knew But Me*
  • If You Gonna Make A Fool Of Somebody*
以上Vol.3収録曲
  • Knock Yourself Out
以上Vol.5収録曲
*印はこのシリーズ初出の音源を示しています。
記録によると、このほかに "No Such Animal Part 1 / Part2"という曲が録音されているのですが、今回のセットには収録されていません。

2.1965年ライヴ録音(23曲)

*印をつけているもの以外は1965年12月26日、アメリカニュージャージー州、ハッケンサックの「ジョージズ・クラブ」でのライヴ録音です。
*を付けている曲については資料(「エレクトリック・ジプシー(Electric Gypsy)」)によると、録音時期は"'65Winter"となってました。この5曲はヴォーカルが違う(ジミのようだけど高音が違うような…)ので、おそらく同じ頃に別のところでやったものだと思われます。
  • Drivin South
  • Ain't That Peculiar
  • I'll Be Doggone
  • I've Got A Sweet Little Angel
  • Bright Light Big City
  • Get Out Of My Life Woman
  • Last Night
  • Sugar Pie, Honey Pie
  • What'd I Say
  • Shotgun
以上Vol.4収録曲
  • California Night
  • I Feel Good
  • Left Alone
  • Something On Your Mind*
  • I Should've Quit You*
  • Hard Night
  • I'm A Man
以上Vol.5収録曲
  • On The Killing Floor*
  • Money*
  • Nobody Loves Me
  • You Got Me Running
  • Mr. Pitiful*
  • Satisfaction
以上Vol.6収録曲

この他に今までに発表されてきているライヴ音源で、今回のボックス・セットに含まれていない曲としては

  • Land Of A Thousand Dances
  • Walkin' The Dog
  • Stand By Me
  • Hang On Sloopy
  • Twist & Shout
  • Bo Diddley
  • Wooly Bully
  • Just A Little Bit
などがあります。
"Twist & Shout"や"Stand By Me"などは一度聞いてみたいところです。

3.1967年スタジオ録音(21曲)

記録(「ジミ・ヘンドリックスの生涯」 TONNY BROWN, 1992)によると、1967年7月30日に5曲、翌7月31日に7曲が録音されたとあります。
これを合計すると12曲にしかなりませんが、ミックスを変え、編集し、曲名も変えてでっちあげられたものがかなりあるようです。

ワウ・ワウ・ギターがフューチャーされているのが30日録音分、ファズ・ベースがフューチャーされているのが31日録音分と考えて良いと思います。

1967年7月30日に録音された5曲は

  • Gloomy Monday
  • Happy Birthday
  • Hush Now (=Wah Wah, Level, Torture Me Honey)
  • Love Love (=Mercy Lady Day, Love)
  • Ballad of Jimi (=My Best Friend)
1967年7月31日に録音された7曲は
  • No Business (=Sleepy Fate)
  • Future Trip
  • Day Tripper
  • Get That Feeling (=Second Time Around)
  • U.F.O.
  • Oddball (=Instrumental)
  • Flashing
(    )内は曲名違いで、元は同じもの。
参考資料
ジミ・ヘンドリクスの生涯
トニー・ブラウン著、米持孝秋訳(株)シンコー・ミュージック刊 1992
エレクトリック・ジプシー(上)・(下)
ハリー・シャピロ&シーザー・グレビーク著、岡山 徹訳、大栄出版 1996


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