******** 警告 ********

  • 必ず、サクラ2は第6話まで進めてください。ネタばれしてます。
  • スマイル娘のファンのかたは、読まないほうがいいかもしれません。
  • このSSはフィクションです。怒らないでね?





 あたし、野々村つぼみ。

 帝劇の売店の売り子さんをしている高村椿さんに代わって、乙女学園から帝劇に来たんですっ!

 憧れの帝劇に勤務できるなんて、ほんと、夢みたいですっ!!

 ちょっとドジでおっちょこちょいだけど、根性と笑顔だけは誰にも負けないわっ!!

 さあ、今日もがんばって、


  スマイル、
   スマイルっ!!






スマイル娘が行くっ!!

作・撞鐘Boy





「・・・あ、つぼみちゃん。ちょうどよかったわ。ちょっと来てくれないかしら?」

 問屋さんから仕入れた商品を並べていたら、どこからかあたしを呼ぶ声がしたんです。
 ちらり、と見ると、事務室の先輩の藤井かすみさんが、柱の影から手招きしてました。

「あ、何ですか?」

 手を休めてあたしが聞くと、かすみさんは心底困った顔で、あたしに語りかけました。

「事務室にある書類の整理を手伝ってほしいんだけど。いいかしら?」
「あ、いいですよ。もうすぐ終わりだし」
「助かるわ。じゃあ、ちょっと来て」
「はいっ!!」

 すぐさまあたしは売店から飛び出しました。先輩の言うことには絶対にさからっちゃいけません。しかも相手がかすみさんでは。
 この前かすみさんに逆らった、もう一人の先輩の榊原由里さんがどんなひどい目にあったのか、あたしは知ってます。
 口には出せないけど。
 とにかく、急がなくちゃいけません。優しそうな顔してかすみさんはとても厳しいのです。できるだけ素早く、あたしは売店から出ようとしたのですが・・・

「あっっとととととっっ!!」


 ドンガラガッシャーン!!


 かけ出ようとしたあたしの袖に売店のカウンターの端がひっかかって、あたしは思わず転んじゃいました。
 上にのっていたブロマイドとポスターとプログラムが、あたしの上に崩れ落ちてきました。
 たいへんっ、死んじゃいます!
 必死になってブロマイドをかきわけ、ポスターをちぎり、プログラムを踏みつけて、あたしは売店からの脱出に成功しました。ぶいっ!! V(^o^)

「あ、あ・・・あ・・・・」
「どうしたんですか、かすみさん? あたしはこんなに元気ですよ?」
「・・・・」

 なぜかひきつった顔でいるかすみさん。変なの。

「・・・ま、まあ・・・後で片づけておいてね」
「はいっ! こんなの日常茶飯事ですから、慣れてます!!」
「・・・慣れてほしくないんだけど・・・」

 青ざめた顔で首を振り振り、かすみさんは事務室へと歩き出しました。
 どうしのかな? 元気なさそう。
 とことこ後をついていきながら、あたしはとっても不思議でした。
 元気ないときでも、やっぱりスマイルが一番ですよ、かすみさん!



「・・・じ、じゃあ、とりあえず、この書類を、日付順に並べて」
「はいっ!」

 かすみさんが示してくれた書類は、とってもたくさんありました。積み上がった書類の一番上は、背伸びしても全然届きません。脚立を持ってこなくちゃ!

「すみませーん。脚立持ってきますっ!」


 ガラドンガッシャーン!!


「・・・あ・・・あ・・・あああああ・・・・!!」

 どこかひっかかったみたいです。積み上げてあった書類の山のひとつが、崩れ落ちてきました。
 でも、大丈夫。
 あたしは持ち前の運動神経で難なくかわして、事務室を後にしました。うん。やっぱり帝劇の一員たるもの、こうでなくちゃいけませんよねっ!!

 20分ぐらい迷ってしまいましたが、無事に倉庫を探し当てて、あたしはまた20分ぐらい迷って、事務室までちゃんとたどりつきました。
 うん。われながらすごいなっ!!

「脚立持ってきましたあっ!!」
「・・・あ、ご苦労さま・・・注意して運び入れてね?」
「はいっ、わかってますっ!!」


 ガラガラドッシャーン!!


「・・・ふ・・・ふあああ・・・あああああああっっっ!!」

 へんだな。注意して持ってきたのに。どうしてひっかかるんでしょう?
 何か必死になって書類を元のように積み上げていたかすみさんが呆然とした顔をしています。

「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」

 かがんで声をかけたそのひょうしに、脚立がまたどこかにひっかかったようでした。あたしの後ろで、さっきよりも凄い音を立てて、書類がなだれをうって崩れ落ちてきました。
 もちろん、ひょい、と華麗にあたしはよけることができました。でも、そのひょうしに、別の書類の山に当たってしまったみたいでした。

「あああっ!! 書類が・・・あんなに苦労して積み上げた書類が・・・ドミノ倒しのように崩れていくぅっっ!!」

 あらら。こまっちゃいました。事務室が書類だらけになってます。慌ててあたしは、伝票をかきわけ、明細書を踏みつけ、極秘と赤い文字で書かれた何かの書類をひきちぎって、かすみさんを掘り起こしてあげました。

「ああ、よかった。かすみさん。無事だったんですねっ!!」
「・・・も、もういいわ、つぼみちゃん」

 なぜか知りませんが、かすみさんはとても疲れた声で言いました。

「もう、事務室を手伝ってくれなくていいから・・・」
「え、そうですか?」

 あたしは首をかしげました。先輩の由里さんから聞いたところによると、かすみさんに捕まったら必ず徹夜になってしまうということだったのですが。
 でも、あたしは気にしません。かすみさんの言うとおり、あたしは事務室を後にすることにしました。

「わかりました。また御用があったら、呼んでくださいっ!」

 ぺこり、と頭を下げて、あたしは事務室を後にしようと回れ右しました。またどこか、ぶつかったみたいでした。


 ドラガラドッシャーン!!


「・・・・・・じ、じゃあ、つぼみちゃん・・・また・・・・」

 泣き笑いのような顔で、かすみさんが見送ってくれました。
 うーん。なんだかとっても礼儀正しくて優しい、すてきな先輩です。
 あこがれちゃいます!!

 それにしても、なんだか、あたし、ドジばっかりですね、てへっ!!

 でも、こんなことでくじけちゃいけませんっ!
 笑う角には福来たる、です。

 さあ、明日からも、

  スマイル、
   スマイルっ!!





  お・わ・り






 その後、帝劇支配人室での会話。

「・・・・お願いです、支配人・・・あの子、やめさせてくださいぃぃ・・・(T_T)」
「いや・・・乙女学園のほうでも、拒否されとるんだ・・・」






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