中興期後俳人短冊より
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ぬれ鹿に晨明の月のひかりかな 暁臺
花火盡て美人は酒に身投けむ キ菫
動く氣に成て来てからやなき哉 柳几
賣よりも買ふ人寒し炭二升 蓼太
暁臺 久村氏(本姓加藤氏)、名国擧、称平兵衛、暮雨巷、白一居、買夜子、龍
門司、花の本の号あり、白尼門、名古屋人、京都に仮住す。寛政四年没、
享年六十一。
几菫 高井氏、幼名小八郎、夜半亭三世、春夜楼晋明、剃髪して詐善居士と号
す、几圭の男、蕪村門、京都人、摂津伊丹なる門人士川の別墅に客死す。
常に其角に私淑し、其の風骨を摸慕せり。寛政元年没、享年四十九。
柳几 横田氏、称半内、布袋庵と号す、柳居門、武蔵鴻巣人。天明八年没、享年
七十三。
蓼太 大島氏(本姓吉川氏)、名陽喬、称平八、雪中庵三世、空摩居士、里席、宜
来、豊来、老鳥の号あり、吏登門、信濃人、江戸住。天明七年没、享年八
十。