中興期後俳人短冊より
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我門や人の来ぬほと艸しけれ 蝶夢
はる雨や赤兀山はふるはかり 青羅
傾城の文見ることし今年竹 素丸
煮るか如涌て凉しや砂清水
津富
蝶夢 釋氏、名幻阿、五升庵、泊庵と号す、京都人、初め阿弥陀寺帰白院十一
世の住職たり、後ち退隠して洛東岡崎に住す、希因門、芭蕉研究に努力
せし人なり。寛政七年没、享年六十四。
青羅 松岡氏、幽松庵、三里房と号す、玄武坊門、播磨人、寛政三年没、享年
五十二。
素丸 溝口氏、称十太夫、其日庵三世、天地庵、謂濱庵、絢堂、亨堂、五味堂、
曇華斎、萬里軒、向旭楼、謙虚道人、青軒、龍斎、白芹の号あり、馬光
門、江戸人、葛飾風中興の祖と称せらる。寛政七年没、享年八十三。
津富 島氏、妍斎、君山と号す、初め蒼狐、後ち素外門、江戸人。寛政九年没、
享年六十八。