雪

月 斗

 

   雪の元朝

ちらちらと降り次ぐ雪や初明り

初手水雪ちる川に下り立ちぬ

ほのぼのと雪の軒端の初雀

靡々と降る雪のCらに初手水

聲をあげて元旦の雪を禮贊す

元朝の雪さかんなり子等嬉々と

若水を汲むに深雪となりにけり

柴の雪拂うて炊きぬ初竈

雪の柴拂うて雜煮炊きにけり

元旦の雪は鵝毛と降りしきる

 

   朝雪

 

 昭和二十四年一月の宮中は歌會の兼題が「朝の雪」である。勅題又は新年御題は例年漢詩なり、俳句なり、川柳なり、狂歌なりがこの御題を詠じてゐるのである。又新年の菓子なども御題にちなんで製してゐる。

 

 俳句は季題の制約があるので雪は冬の季題になる。「朝の雪」の句を詠めばよいのである。又「新年の朝の雪」を詠うて來た例に依て「冬の雪」でなく「新年の雪」を詠はふとするのも差支へはない。(略)

 

 「朝の雪」は、降ってゐる雲と解釋すべきがよい。新年の朝の雪を作る。

 

袖の雪拂ふもCら初詣

足跡を雪に印しつ初詣

大前を埋むる雪や初~樂

元朝の雪掻き禮者迎へけり

門禮者袴の雪を打ち拂灯

ふる雪に聲勵ましぬ初烏

雲やこんこん霰やこんこん初驛

ほのぼのとほのや元旦六の花

元旦の吹雪となりぬ吉野山

 

 雪が既に積んでゐるのも許されてもよからうか。降りつつ積んでゐるのは無論よい。

元朝の野山や雪の一白に

大初日雪照る山野輝きぬ

元旦の雪が染めたる野山かな

初詣雲の參道輝かし

白妙に降りつぐ雪や初驛

豐年の兆の雪や今朝の春

豐年の雪白妙や今朝の春

元朝の雲豐歳の兆か松

新雪や年の旦の瑞兆に

 

 新年の勅題には、言外に淑氣、佳氣を見たいものである。餘り過ぎると月竝になる。何となく淑氣、瑞氣、佳氣あるを望ましい。

 

 冬の季題の朝の雪の句を作る。冬の雲と丁寧にことはる迄もないが、新年、新春と、假に別けて云つたのに過ぎぬ。

 

早起の主人が雪を言ひにけり

山里の朝景雲を催ほしぬ

燦々と星の夜明や雪と成る

草の戸の朝明け遲き吹雪哉

竹林に水汲む雲の朝かな

竹田を降り隱す雪の朝かな

朝しぐれ雪を交じへて來りけり

朝焚火雪ちらついて來りけり

朝焚火炎々雪の舞ひにけり

暗きより子等起き出でつ雪達磨

雪兔雪達磨よと子等蚤起

柴くべて爐による雪の朝かな

登校兒雪の田圃に點々と

雪投げる始業の鐘の鳴りにけり

校庭の雪合戰や始業前

雪の城下朝食の煙上げにけり

雪の中晨鐘遠く響き來る

雪の中雪の上照る朝日かな

朝山の雪に兔を追ひにけり

朝驅に嘶く馬や吹雪中

浙瀝と旦の雪に聲ありぬ

朝潮の滿ち來る川や小雪散る

朝手水雪散る川を眺め立つ

卯飮に雪の大川ながめけり

降る雪に暗らき家内や朝茶粥

朝風呂に雪の小窓を眺めけり

?をあげに雪の朝川小舟して

朝開き海上雪のしまきつつ

狐火をよべ見し野邊や朝の雪

市人と雲の一番渡し哉

京やよし昨夜の時雨朝の雪

吹雪して朝明け遲き越路哉

朝火事の焔に雪の舞ひにけり

卯飮に雪をわかして茶漬哉

旦の雪牡丹の藁に積りけり

大雪や朝勤行の鉦籠る

朝月を掻い消ち雪の降りにけり

早立や雪沓はいて旅心

朝凪の海の彼方や雪の山

(昭和二十四年新年に)

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