化政期俳人短冊より
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門にいれは花にしつまること葉かな 成美
入海の深みはしらし秋の風 完来
木からしやけさはふえたる池の鴨 士朗
春の雪おもひ捨ても降にけり 樗堂
成美
夏目氏、名包嘉字萬齢、通称井筒屋八右衛門、随斎、不随斎、贅亭、大必山人、四山道人、萬鈴房の号あり、宗成の男、浅草蔵前の札差、和漢の学に精通し、乙二、道彦と共に寛政三大家と称せらる、江戸人、脚疾を患ひ、多田森に隠棲し、四方に風交す。文化十三年没、享年六十八。
完来
大島氏(本姓富増氏)、称吉太郎、雪中庵四世、震柳舎、野狐窟、空華居士と号す、初め二世宗瑞門、後ち蓼太門、伊勢津藩士、江戸住、書を能す、文化十四年没、享年七十。
士朗
井上氏、名正春、称専庵、枇杷園、朱樹叟、松翁、緑萼、支朗の号あり、暁臺門、名古屋人、医を業とす、国学を宣長、絵を范古に学び、墨竹に巧なり、尾張五老と称せらる、文化九年没、享年七十一。
樗堂
栗田氏、名正範、通称廉屋三左衛門、後ち専助と改む、二畳庵、昆宜庵、息隠居、初め蘭芝と号す、暁臺門、伊予松山の素封家にして大年寄役を勤む、安芸御手洗に庵を結び住す。文化十一年没、享年六十六。