ツ、ツバ、ツバキにつづく |
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犬や猫は5奉行シリーズ |
哺乳類の唾液腺には、左右一対の耳下腺、顎下腺、舌下腺の3大唾液腺と、唇、頬、口蓋、臼歯、舌の粘膜に散在する小唾液腺とがある。 イヌやネコでは、頬骨腺と臼歯腺が発達して大唾液腺として加わり、5大唾液腺を持つことになる。(2282) |
唾液腺が分泌する |
唾液腺は、腺房部と導管部からなり、腺房部の細胞には漿液性細胞と粘液性細胞とがある。細胞の構成は、腺により、種属により異なる。唾液は唾液腺の外分泌物である。 導管部は、介在部、線条部、葉間部からなり、各部の分布は腺により異なる。各部の細胞構成も異なる。(2282) |
ヒトの唾液腺では |
ヒトの耳下腺は漿液性細胞からなる。顎下腺、舌下腺は両細胞が混じっており混合性であるが、顎下腺は漿液性が、舌下腺は粘液性が主である。 3大唾液腺の各分泌量は、顎下腺が最も多く、次いで耳下腺で、舌下腺が最も少ない。一日の総分泌量は1000〜1500ccといわれる。(2282) |
乾いたパンとビーフと |
唾液腺は、すべて延髄唾液核からの鼓索、舌咽神経(副交感系)と、上部胸髄(交感系)からの神経支配を受けている。 分泌を起こす刺激の種類やそのときの状況に応じて、さらさらかねっとりか、目的に適った量や性質の唾液が分泌される。(2681) |
顎下腺の多様さ |
哺乳類の3大唾液腺のうち、顎下腺は多様な構造をしている。特にネズミの仲間(齧歯類)は特徴的である。 齧歯類の顎下腺の分泌細胞は1種類(哺乳類一般では2種類)で、線条部に多くのはっきりした分泌顆粒を持つ。(8942) |
ネズミのオスとメスは顎下腺でもわかる
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マウスは、その線条部の分泌顆粒にテストステロン感受性があり、つまり雌雄差を示す。ラットではやや不明瞭。 こうした外分泌物を、身体の他の部位にある放臭腺などと関連付ける見方があるのは面白い。(8942) |
閑居してもツバは出る |
ヒトで、新生児にも唾液分泌は認められる。認められるような唾液分泌を催す要因が無くて見られる分泌を安静時唾液と呼ぶ。 安静時唾液は、その量の70%は顎下腺から、25%は耳下腺から、残り5%は舌下腺から分泌される。(2282) |
そのうち年をとる |
年齢に伴う唾液腺の成熟により、安静時唾液(混合唾液)の量は増加して、29歳ごろ最大に達し、以後は加齢に伴い徐々に減少する。 これは耳下腺の安静時唾液が、幼児は多いのが8、9歳ごろまでに急に減少し、成人以後はあまり変化しないことによる。年を取るに従い、大脳皮質による耳下腺の自律神経の抑制が、強く働くせいであろう。(2282) |
見たり、舐めたりして |
梅干を見たり、想像したりしての唾液分泌は、その人が以前に梅干を味わった経験が有るか無いかによる、各個体固有の条件反射分泌である。 味覚(化学的)刺激や機械的、温熱的刺激で起る分泌は、生まれながらに持っている無条件反射分泌である。(2282) |
二日酔いの朝 |
食道からの刺激によっても唾の分泌は誘発される。また胃に食べ物があると刺激されて分泌が起こる(内臓性反射)。 この胃、食道唾液反射があることにより、食道や胃の粘膜に炎症があると、唾がよく出ていやすことになる。(2681) |
唾液の粘膜保護作用 |
唾液中には、消化管粘膜の潰瘍を予防するような物質(上皮成長因子EGF)が存在する。 胃潰瘍があると生体はそれを増加させる。摂食後の胃の酸性度はやや低く、EGFは作用するものと思われる。(7943) |
ツバの出方にかかわること |
安静時唾液(とくに耳下腺)分泌には個人差、年齢差がある。季節差、時間差があり、日差、性差はない。また睡眠時、眠りが深くなるにつれて減少する。精神疲労、また精神緊張によって減少する。 反射唾液は、化学的、機械的、咀嚼運動、歯科治療!、55度C以上の温熱、条件刺激が分泌を催起する。(2282) |
ツバの中身にかかわること |
唾液の組成には、血清由来のものと、唾液腺で生成されるものとがあるので、その各々の種々の因子により影響を受ける。 唾液分泌速度によって、多くなる成分(Na、アミラーゼなど)と少なくなる成分(Mg、ロダンなど)がある。分泌刺激の種類、食餌の違い、副腎皮質ホルモンの影響などの因子がある。(2282) |
大ごちそうでは |
味物質を舌に与えると、2〜3秒後に唾液が分泌し始め、2〜3分で最大量となり、以後減少して6分後には元に戻る。 これは味物質によっても違ってくる。その性質が単一の場合は、その濃度または量と分泌量の間には、比例関係が成立する。(2681) |
酸っぱいは甘いの4倍 |
3%の食塩水5ccを口に含んだときに感じる塩辛さの強さと同じ強さの味を感じる濃度は、砂糖で18.8%、酒石酸は0.28%、キニーネは0.02%。 この強さの液5ccを舌に3分載せたときの唾液分泌は、食塩0.67ml、砂糖0.46ml、酒石酸1.83ml、キニーネ0.57ml。(2681) |
舌は唾の味を感じるか? |
唾液には多少の塩分が含まれているが、その味を感じない。それは味神経を構成している神経線維に、水分に反応する水繊維とある程度以上の濃さの塩分に反応する塩繊維とが存在するからである。 唾液に含まれている塩分の濃度では、水繊維は反応するが、塩繊維は反応しない。その濃度を境にして、薄いと水の味である無味、濃いと塩分の味を感じるのである。(2282) |
カワくとワく |
かさかさの乾パンを食べるときは、おかゆのような水分の多い食べ物よりも、たくさんの唾が出てくる。水分の多いさらさらの唾であるのは分泌速度に因る。 口を開けて1分間ほど息をしていると、口の中の粘膜が乾いたような感じがして、つばが湧いてくる。ツバを吐く回数が多いと分泌量が増える。(2681) |
泉が涸れてくる |
増齢と共に、唾液腺に萎縮、脂肪化が起り、機能が衰える。主として漿液性唾液の減少である。それでツバが粘るようになる。 唾液の比重や比粘度は、歳をとるに従い増加するが、粘度は30〜40歳以後低下する。表面張力は60歳以後低下する。(2282) |
ツバキあぶら |
顎下腺や舌下腺や口蓋腺の唾液には、ムチンという高分子糖たんぱく質が多く含まれる。粘性の高い酸性たんぱく質である。 入れ歯と粘膜との間の唾液層は、表面張力が小さいほど薄くなり接着力が増す。いっぽう入れ歯の維持のための粘度は、ムチンが多い口蓋腺唾液の量が役立つ。(2282) |
唾液の消化作用 |
唾液アミラーゼは、調理されたでんぷんをデキストリンを経て麦芽糖にまで分解する。耳下腺唾液に多く含まれる。 唾液アミラーゼの至適PHは6.8であるから、ゆっくり噛まない人では、本来の消化作用よりも、食後残留する殘滓の処理(自浄作用)の点で有用であるかも。(2282) |
ツバで分ける血液型 |
80%の人で、ABO型血液型の凝集原が唾液に分泌する。S型血液型といい、非分泌者はs型とする。 血液型物質は粘液細胞で作られるので、小唾液腺、舌下腺で高濃度、顎下腺は少ない。耳下腺は殆ど無い。(2282) |
唾液腺ホルモン |
唾液腺からパロチンというホルモンを分泌する。老化防止の作用が言われ、医薬品として、初期老人性白内障、進行性指掌角皮症に効能がある。 線条部を持つ耳下腺、顎下腺で内分泌される。他の内分泌腺と異なり、唾液としていったん外分泌され、それが線条部で再吸収されて血中に入る。(2282) |