平成245月号

春星作品より

種播きしあと夕月に託しけり     福田鬼秋

石に落ちし椿の座禅始まりぬ     

陽炎ひつ聞きたがり屋がやって来る  中川みえ

土筆摘んで退院の夕餉ととのへる   

亀甲固き土筆の野にて指切りす    丹野 郷

天寿全うす贅沢梅真白        松本男兒

茎立ちや不意に刻告ぐ放ち鶏     山鹿喜朔

大寒や田畑が縮み村縮む       石川如月

八方に空よりの使者風光る      遠藤紫好

さりげなく村ありなんとなく霞    伊富貴耀堂

囲はれし女郎の様な寒牡丹      山本かつら

一筋の煙吸いこむ朝霞        児玉千畳

沈丁花香を弛めゐる夜の匂ひ     赤坂敦子

銹鉄路袂分ちて草萌ゆる       小川閑魚

大きな暈かむるお日様苗木市     松本文武

かくれ滝春の息吹の谺かな      左近司いをぎ

苗札を手向けのやうに花鉢に     白須佳世子

寒晒かすかに聞こゆ手毬唄      前川みさ子

春の潮じゅげむじゅげむと繰り返す  石橋澄江

梅散るを葉脈に乗せ椿かな      吉積 蓮

梅咲いて暦一枚剥がしけり      立川 游

枝垂梅かいくぐりては仰ぎけり    山岡繁子

庭の梅窓開けきって供花とせん    上野満香

暖房列車に只管欠伸捨てにけり    兼田清子

雀来て時折野梅賑やかす       胡木里恵

啓蟄やスランプ脱出する時ぞ     菅 和子

水仙を束ねて花の白き息       阪田くに女

青年の古き地層を耕せり       越水鞠子

北風唸る足るを知らざる声に似て   松村龍彦

頂上を余し寺縁の囀りに       松本島春

囀りを蔵して分限者が住まひ

城跡と云ふウエットさ囀れり

百千鳥にてローマ字とひらがなと

パンジーに紙切れが風に浮く物理

三月尽砂金さらさら砂時計

雛の間にやや尖端のカレンダー

雛の間の声坪庭に飛び来たり

春塵の如き不首尾を重ねけり

探梅や尿のやうなる茶を喫し

       

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