島春句

 

 

 

令和三年(89)

 

 

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令和3.10

令和3.11

 

 

 

 

 

 

 

 

令和31月号

島春句

 

年を経てインコと暮らす窓小春      

うどんでは足らずと小春又歩き

古民家のバニラコーヒー小春凪

飛び飛びに砂浜の肌島小春

この岩を紅葉となれば踏んでゐる

煮ざかなを焦がして紅葉疲れ哉

首揺すり思案して居ず色無き風

手で眼塞ぐは句作十三夜

署名する指の震へや九月尽

 

 

令和32月号

島春句

長方形の老人施設鷹の谷

谷口の白きを弾む石叩き

梟や顔塗るための玉子殻

冬至南瓜彫り物みたいにうち眺め

路地中のフランス料理冬鴉

煤逃げとお好み焼きで出会ひたる

水鳥の端っこ街の烏たち

令和二年川端は水鳥ばかり

常用の便秘ぐすりや去年今年

 

 

令和33月号

島春句

元日の郵便箱へ歩行数

食積の判らぬままの赤いもの

沢庵を噛む音正月を済ませ

ミルクティ玻璃の雪山曇らせる

雪落しホールドアップ庭木ども

寒雀に感情移入腹が空く

 

 

令和34月号

島春句

下萌やもう忘れよう捜し物

くしゃみ続けて一斉に木の芽立ち

土筆野やまあるく鈍に陶器片

道細り下車してヂゴクノカマノフタ

マンションの予定の宙を燕来る

まろやかが売りの飲料朝寝して

風船を逃がした爪を噛みに噛み

日当たりと木陰とシーソーの母子

 

 

令和35月号

島春句

首グキと沖の小島へ暖かし

暖かやこりゃよう書けるボールペン

打ち首の姿勢に水の温みけり

ムスカリや毎年掘り捨てようとせし

菜の花は軍歌のごとく靡くかな

海街でたんぽぽの絮吹かいでか

たんぽぽの真上十円玉ポトリ

路岐れそれぞれ一分隊ほどすみれ

 

 

令和36月号

島春句

屋上の隅に青苔養花天

瞳孔をちぢめさくらの梢まで

お団子のやうな雲ゆく花の上

足弱が手を取り合うて夜桜へ

雲雀野や住職頭撫でる癖

鶯よ上見よ雲の図体が

一かけらほどの囀り我が杣家

モノクロの映画の卓の桜餅

階昇り階降り草餅の行方

雨久し振り木の芽和久し振り

 

 

令和37月号

島春句

下る坂それでも緑陰へと潜り       

この茂り脱けるまで直進する岬

夏木立面胴籠手と風荒び

もう梅雨入トマト一つで腹満ちし

年齢も梅雨も盛りの炒め飯

昔も昔カラメル焼など作った梅雨

梅雨晴間盛り過ぎたる花貰ひ

梅雨の花圃バージンロードの歩き方

 

 

 

令和38月号

島春句

満腹の時に虹見に出よと云ふ

橋より見て川そして山そして虹

虹を見んと衣紋つくろひつつ参る

待ち人は来たらず虹の顕ちにけり

したたかに酔うて蛍は見ず仕舞

橋に来て小腰伸ばすや蛍狩

連れでありしあの人この齢蛍狩

梅雨穴にはまる広域合併し

梅雨籠りチンしたご飯にて茶漬

小鳥飼ふを五月雨深う決意して

 

 

令和39月号

島春句

大衆の好める樹形らし蝉の

初蝉や席一つ空け黙り込み

白服が病院待合室に咲く

白服の日本語のやや里離れ

白服は数人ネクタイは花柄で

浴衣も大儀なりとボタン掛けながら

選び損ねのハンカチなりけるを仕舞ひ

晴天の鉄塔夏は湯気の如し満腹の時

 

 

令和310月号

島春句

駄菓子屋が店奥に干す唐辛子

舌を焼くラーメン晩夏罵れり

蝉来ぬ木鬼門に植ゑて茂りけり

ゴミ出しに蟹股で行く半ズボン

首は座卓に置いて団扇や永テレビ

 

 

令和311月号

島春句

 

赤咲けば赤青なら青朝顔が好き

竜胆の酸素飽和度百をキープ

朝シャンのドライの景に彼岸花

花蓼やピンク多量に幼などき

かくも咲けば野菊の如きとも云へず

シネマでポプコーン食ひ茄子買ひ戻る

小人数の夏野菜にてカラフルに

高く澄む牧に羊の糞ぱらぱら

チーズ作りの見学コース出て澄めり

 

 

 

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