島春句

 

令和二年

 

令和2.01

令和2.02

令和2.03

令和2.04

令和2.05

令和2.06

令和2.07

令和2.08

令和2.09

令和2.10

令和2.11

令和2.12

 

 

 

 

令和21月号

島春句

 

西望の「喜ぶ少女」日の始

米こぼし易き壽齢ぞ初シネマ

掘り火燵ずらり活き魚料理店

塗り薬の蓋の行方よ掘り火燵

町内の主婦らが客の日の短か

うつ伏せの桜落葉を捲り次ぎ

おでん屋の湯気に盆栽もみづりぬ

紅葉山凡なりと雲の百面相

川細う径荒う紅葉に至る

紅葉見よと家族一団の長で

 

 

令和22月号

島春句

 

霜置いてマンガの相の草もある

懐手病院を出て薬局へ

小魚を骨までしゃぶってゐる師走

煤払ひ人形ケース抱きさてと

煤逃げや頁に指を差し挟み

去年今年コツコツ貯める充電器

初日待つや岬の斜面海に尽き

パーキングの自動音声年の朝

元日のぶらんこを漕ぐしかめ面

鉱山跡に拾ひし石や福寿草

 

 

令和23月号

島春句

 

苗木市腰が曲がって鼻すれすれ

口軽に気体扱ふ風船屋

寒温しとや若者ら異口同音

寒玉子地産地消と腕日焼

焼け石に水受験子に寒苺

寒の雨らしからぬ音松風に

無人島目掛け寒声しぼり切る

常春の脱衣場出て寒の闇

洋間にてはや疲れ見せ鏡餅

時計屋の補聴器コーナー年迫る

 

 

令和24月号

島春句

 

梅林へこの岩角を皆掴み

梅の丘震はせバイクまたバイク

白梅と互みに震へ通しかな

信号機渡れば花園苗木市

股の間に子供を据ゑて苗木市

暖かや供養の目明き達磨たち

春の雨みたいな町内放送で

この路地の寿命の嵩や日向ぼこ

 

 

令和25月号

島春句

 

禁足の窓鎮静の花の山

何やかや芽吹いて寮舎空き多し

ただ芽吹くなり薬草も雑草も

下萌えや蹴るか撫でるかの石面

下萌えや一時停止の忘れもの

桜鯛街の魚屋さんてらてら

浜焼の桜鯛黒い箸朱い箸

首振って振ってチューリップは生きた

見えたから見て見飽きたりヒヤシンス

サフランなど見てゐたら日曜も晝

 

 

令和26月号

島春句

 

松山の花の一廓よりが街

明日の買物序でに今日の花に居る

屋上に望めば花の冷えが来る

高階の二隅に可惜花の山

テレビにて桜見るに象の如し

空中の浮力は見せず椿落つ

朝から腰が痛いに蜂が漂へり

蜂が鮮明となり来るストレッチ

蝶が行き蜂が来て水遣りが済む

百円鋏で切る藪蘭の名の若芽

 

 

令和27月号

島春句

 

南極のペンギン画面避暑の子ら

はったいを舐めたのに夕暮の鬱

マンションのチラシのこの辺りは青葉

窓ガラスに映る青葉を消す仕種

飴玉もう噛み割ったりや青葉風

アイスキャンデーで補ふ一部分

夏髪も刈り込み過ぎし恨みに居

緑陰に入るまで何でも半分こ

緑陰にトルソーとして捉へたり

燕のことを云ふ街の魚屋さんが

薔薇を見て日常を取り戻すとは

薔薇のあと紫陽花の鉢せせり出す

廊下を散歩して庭木の芽草の蔓

家に籠ることの卯の花腐しとも

 

 

令和28月号

島春句

 

新暖をややグレイ染み白ペンキ

一房のバナナの重さ梅雨の傘

梅雨晴間陰の中行くマスクの陰

フットマッサージとピザで五月雨るる

五月川鎮まり漆黒の鯉ら

横になれば眠った事が時の日よ

伸び過ぎの菖蒲太刀なりフェンシング

 

 

令和29月号

島春句

 

子かなぶんやっぱり思案して逃がす

洋風にリフォームしたに金ぶん来

商店街アーケード成り蛍売

餡蜜やレコードで聴くビートルズ

目高の群れ動けば多少の偏差値が

 

 

令和210月号

島春句

 

打ち上げられし海月のやうに残暑に居   

畑の西瓜満々と合宿中止

手で撃てば島の西瓜に海の音

羊雲マスクの中の鼻越しに

現前の羊の牧場羊雲

横断マークは昔胡麻干したる箇所で

干し物がここまで飛んで紫蘇繁茂

べら釣りやラジオの野球場を出て

 

 

令和211月号

島春句

 

雨のち風のち秋明菊の首々々

薬草園までのアプローチは萩で

コロナ禍を草花愛でて子規のやう

哲学少年膝抱く秋の浜辺かな

リフォーム後蟲が気を取り直したり

ビルとビルの合間を蟲の直方体

退院の窓の視覚の秋の風

流れ星老いらくの目に引っ掛かり

靴底にじゃまな砂粒星月夜

一人見る一匹で居る目高の目

 

 

令和212月号

島春句

 

年を経てインコと暮らす窓小春

甘いもの腹にと小春お散歩へ

うどんでは足らずと小春又歩き

古民家のバニラコーヒー小春凪

飛び飛びに砂浜の肌島小春

この岩を紅葉となれば踏んでゐる

煮ざかなを焦がして紅葉疲れ哉

首揺すり思案して居ず色無き風

手で眼塞ぐは句作十三夜

署名する指の震へや九月尽

 

 

 

 

 

島春ページへ戻る