島春句

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平成201月号

島春句

裔たるの意識いくばく嫁が君

ティスプーン指す眺望に帰り花

残菊も遠き月日も会話外

枯蔦を引っ張る脳の中のこと

月に一度人声洩らす花八手

目覚めたるたばこ自販機朝時雨

しぐれ雲背景に囲の蜘蛛の生

坂下る仕舞いは走り出すコート

眠くてならぬことの一つに竹の春

もみづるや視力が攀じる山頂に

 

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平成202月号

島春句

梅の蕾凝り固まりし肩あたり

おでん屋の湯気に潰れて眉列ぶ

河豚提灯ポインセチアを腹の下

藍甕のやうなる湾に初明かり

アメジストよりルビーへと御来光

初日昇る雁木の波は忘れらる

差し潮の川端北へ初詣

初烏翔るを複視めでたけれ

重ねたる羊歯の微動す三次元

健気なる火星も共に初日待つ

 

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平成203月号

島春句

鬼の豆終着駅のストアにも

寒声や干きし砂浜広大に

寒声や磯の巌はギザギザと

寒晴の患者と医療従事者と

落ちて行き藪に雪塊潜伏す

軒氷柱朝餉の大根おろし哉

霜の橋大型トラック呑み込み中

水仙の多過ぎ愚直過ぎ壷に

 

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平成204月号

島春句

ビスケットに唾をとられつ鳥雲に

辻のミュージシャンに風船立ち止まる

曲り角に時がたゆたふバルーン売

風の力手が引算し紙風船

苗札のエンゼルストランペットは長い

花の苗左右に買ってパン買へず

煮凝の魚をしゃぶって西行忌

春の闇ならぬ沖あり島の通夜

春潮を航くマンガ本二冊目に

かばかりの飛地の野とて焼かれけり

 

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平成205月号

島春句

行人は喉豆見せて初ざくら

初花を見て徳利のやうに立つ

初花の地べた舐めたる如き哉

放たれし犬にたんぽぽ頭が高い

すみれ野の気を多い目に鼻に入れ

はこべの地繁りに繁る親和力

梅林に入る橋のみが一直線

中座して憚りを出て目白見て

白椿彫深くして風鎮め

猫と暮らし羽毛の軽さ春障子

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平成206月号

 島春句

酒宴の灯めくれば闇の蛙かな

汐引いて泥の艶ある朧かな

朧月河口明るく抜けたるに

連山のつつじを首で追ひ綴る

寺山やつつじ含有量に富み

明時をパン屋の前の春の風

石段を途中で坐り涅槃西風

噴水の扇形保ち花かすむ

霞んだる盆地の底にクアハウス

大霞ダム湖の表面張力に

 

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平成207月号

島春句

この薔薇の妙なる色名をば訊かれ

薔薇嗅げと寄られて鼻が白みけり

降口はひだりがわとや窓若葉

道辻を示し新樹に自販機が

車道より道が岐れて若葉へと

ミュージアムより若葉見え暮し見え

蛙聞えて蛙聴くなり応接間

首グキと鳴らしても蛙は止めず

茸とも見たりや樹陰の落椿

余花へ照り反す手水の金柄杓

 

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平成208月号

島春句

せかせかとする蟻見えてそれを観る

ごきぶりや曲の途中のオルゴール

痒いとこ掻けばごきぶり過るなり

今日夏至のうっかりミスを復活す

蟹素早家から幼稚園までの

市中のお地蔵さまと蟹の仲

蛍かご目はパッチリとお人形

生きもののつめたさつまむ蝸牛

不如意にてでで虫の角見て飽かず

鶴を捕るやうに白百合つかみけり

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平成209月号

島春句

グラジオラスの見返り美人活けむとし

ベランダに茄子は東洋風である

すみれ色の影を手中の茄子作る

あぢさゐの大脳青し座禅寺

墓苑とは丘の治癒痕油照り

雨脚のなすが侭なる梅雨の花圃

梅雨の花圃アトランダムの色動き

蔓の先梅雨雲の低さを知らず

化粧水桔梗も一重まぶたして

もう瞠き切ったる桔梗おぞましき

 

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平成2010月号

島春句

ひたひたと都市化前線魂迎

公園や噴水ひとり勝名乗

細首で朝顔しぼむ頃が朝餉

向日葵に向け手鉄砲里わらべ

向日葵の門口ピザが到着す

サッシ開ければ落ちかかる蝉の瀑

銅葺の寺屋根の反り蝉擁し

墓地は要塞の如し熊蝉油蝉

雲の峰踏みジーパンの大女

次も次も線香花火の現実は

 

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平成2011月号

島春句

鶏頭のずどんと立ちて不景気な

鶏頭に活けられてある気分なし

日めくりをパリッと破り彼岸花

台風の端くれに野菊ら屹と

その中に薔薇も加へて月見かな

観月やホワイエにピアノの黒き

名月にワインの赤さ挙げにけり

秋海棠中国語なと習はんか

梨乃ちソフトボールのモーションに

彫像のため稲妻の次を待つ

 

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平成2012月号

島春句

秋の昼川行く水のくつろげり

煉瓦路踏みしめ了る秋遍路

風も無く秋日滴るくじ売場

よく咀嚼されし陰翳竹の春

穂が垂れてゐる黄が見える田のエッジ

ダム湖面色なき風に痺れけり

落鮎の瀬の盛り上がり多彩とも

男郎花蔭り女郎花は日向

見出でたる野菊は見上げゐたりけり

紅茸を養ふ雨に消閑す

 

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