島春句

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平成211月号

島春句

わが牛歩悠然に似たり恵方道

猛牛の風来る赤のスキー帽

菊展のポスターの前ギター弾き

膝くづし熟柿は皿に坐りけり

夜長まだ砂漠を車で越えるテレビ

山道を迷ひ紅葉に飽きにけり

既に朝の色に通草の裂け初め

冬立つと土に填め込む花の苗

カーナビは告げぬが又も時雨くる

朝幾つそして冬薔薇風化する

 

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 平成212月号

島春句 

風花が見える畳に頭を置いて

風花が横からとまる鼻柱

信号赤寝た白菜が提げ重り

水菜畑一枚わたり道尋ね

赤が書けぬ師走の二色ボールペン

惨劇のたらたら電光ニュース冱え

山茶花の鉄扉躯幹で寄り切りし

山茶花が十分咲きなる池の鯉

その一角散紅葉して消防署

散紅葉雨がからんで煉瓦富む

 

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平成213月号

島春句 

寒鮒が釣れてより水生ぐさし

寒鮒がかかり釣人口をきく

久々の墓地ぞや霜に一番乗り

ビラの上にビラ極月の空家たり

電車乗り換へて師走の陽失ふ

道なりに師走の街を擦過する

川と川合はさるところ凧の町

環境といふ一括り初日出づ

葉牡丹と水仙と松我慢比べ

恵方道這ひたきほどに細きかな

 

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平成214月号

島春句 

白い手がずずずず落椿に及ぶ

落椿溜まる小逕に呼び出され

昼月の小骨が刺さり余寒かな

ガイド指し皆が仰反る山笑ふ

山城研究会がくすぐり山笑ふ

瀬が温む鼻にかかりし声音にて

霾ってのっぺらぼうや城下町

春の露店テントの四国北海道

春寒をそこだけ退かし焼栗屋

持ち替へて玄関くぐる福達磨

 

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平成215月号

島春句 

折々の薄い日差しが乗る馬酔木

キャッチボールに邪魔な紅梅綻びぬ

片靴の裏でさするや春の水

彫像のアルミの襞の春の黒

ヒップぽんとたゝかれただけ卒業す

はばかりの窓遠野火がまだ見える

鉛筆舐め煙たい野火に詩を作る

食卓や挿したムスカリ甘味帯び

夜桜や手摺伝ひに刻みながら

学校が濡れ寺社が濡れ花の雨

 

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平成216月号

島春句 

目を挙げて雨に敏しや牡丹咲き

耳を掩ふ牡丹の雨となりにけり

カサブランカ全開飛沫のかすみ草

薔薇園や毛穴ひらいてベンチに居

身ごもれり燕の軒をつとくぐり

霞む山に迫りて空が薄うなる

蛇穴を出て足弱の杖を見る

接写して花となりたる猫柳

草芳しなかなか外せぬ溝の蓋

半百の写真を撮るや蘖の

 

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平成217月号

島春句 

つつじ潜り岩間を潜り径消えし

山つつじ持ち替へバスの切符出す

霞む山が動かぬ遠近法にナビ

仁丹をかんで見歩く五月鯉

五月鯉泳げり水柱想像す

菖蒲咲く傍で角力へり金太郎

母の日の母が下ろせし鯛の味

珈琲はコールに言ひ替へて着座

東京はむしむしするぞ扇子持て

宮門を入り新暖の翠とす

 

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平成218月号

島春句 

葉を若うしたる銀杏の肌叩く

鮎の川屑水晶を拾ひけり

おばあさんが洗濯してない鮎解禁

青蔦で編んだ館で眉を描く

父の日の父の目を正面に見る

盛り花に老いたる百合が首を伸べ

この村の銀座通りやところてん

隠れ家のグルメに毛虫垂れ下がる

新樹尻切れ回転展望レストラン

衰へし薔薇をむしって風葬に

 

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平成219月号

島春句 

予測して箱植の向日葵置かれ
土地勘がある雲の峰今日もかな
地方から出て来て滅却雲の峰
ベランダへ青いトマトを嗅ぎに出た

風鈴の先の雲まで目を飛ばす

眼鏡とり風鈴仰ぎ小腹空く

見方変へて目高の倍の目がありぬ

カラオケの稽古蛍の里人は

裸にて部屋で飼ふなり海の魚
黙然と雪見灯篭梅雨ざんざ

 

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平成2110月号

島春句 

新涼のパンといへどもこの重さ

外来の帰途朝顔の景違ひ

洗うたる足に残暑の畳かな

どやどやと残暑の顔が玄関に

島に満潮の気配や銀河据ゑ

バケツの蟹逃がし手花火はじめけり

白砂青松浮輪の色が縫うてゆく

山越えのみんみん漬けになってゐる

大緑陰炭酸ガスを覚えをり

シネコンで続けて二本あと夜店

 

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平成2111月号

島春句 

ベランダの月見スリッパぺたぺたと

踏んづけし団栗にして息で吹く

昼の虫石灯籠の目方載り

路山に入りまた別の秋風が

赤とんぼ眼鏡が多い子ども会

校門に監視カメラや赤とんぼ

女郎花のくるぶし辺り束ねられ

逆光の真向く桔梗の黒仮面

サッシ舐めて居る台風の舌の先

盆僧待つ門の乾きを癒しては

 

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平成2112月号

島春句 

ビルに来てまで窓に寄り紅葉見る

山を向くパラボラアンテナ紅葉ある

沖釣や紅葉見えゐて目を凝らし

繋留の帆ばしら秋を頷き居

似而非なる麦酒も月見行事かな

野が湖に尽きる寸前野菊置く

秋酣の湖面睫毛のあはひにす

思案尽き石叩また目の前に

捨てしよに冬瓜がある勝手口

冬瓜をまたいで書類持ち来たり

 

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