島春句
平成25年
島春句
(御題)かぎろひが立ち新年の島群へ
紅葉谷の懐中物として地蔵
紅葉谷山師のやうに確かめつ
紅葉且つ散るや五平太掘りし跡
刷り物のお勅語貰ひ菊花展
サブマリンのやうな青虫目に浮上
拱けば大青虫が黄から茶へ
庭に満つ仕合せさうな秋ざくら
身にぞ入む爪噛んでゐるその事が
踏み出づる霜の土橋や平凡へ
島春句
初日影桜の山より梅の里
フライトへ逸る機体に淑気立つ
既にして断層ひらく鏡餅
ベンチより起ち冬芝の日当たりへ
狐火やカーナビは只道なりに
一枚ずれし天井板や根深汁
日向ぼっこの耳の穴足の爪
花八手に虫たかり投票弛む
煤掃けば痩せた碁石の黒が二子
煤を掃く代りにオルゴールを直す
島春句
日脚伸ぶ座右の観葉植物へ
彫像にすべる光や日脚伸ぶ
片裾に立つ白波や椿山
卒業や万事が選外佳作めき
観梅や竹の子眠る傍を行き
白梅が浮遊野道のオートバイ
春めいて落とした一円玉走る
灯台へ向け寒声を飛ばしけり
雪の夜のテレビは旅を温泉へ
持ち込みし流しに透いて雪兎
島春句
日脚伸ぶ座右の観葉植物へ
彫像にすべる光や日脚伸ぶ
片裾に立つ白波や椿山
卒業や万事が選外佳作めき
観梅や竹の子眠る傍を行き
白梅が浮遊野道のオートバイ
春めいて落とした一円玉走る
灯台へ向け寒声を飛ばしけり
雪の夜のテレビは旅を温泉へ
持ち込みし流しに透いて雪兎
島春句
みみづくのやうに構へて花の冷
花冷えの裸足にムムと低周波
花を待つ肩のだるさを振り回し
猫柳一斉に逃げようとする形
春風に名刺の硬さ押し戴く
この男に背広のほつれ春の風
駅周辺の食べ物くささ春の風
春風に応へる万国旗それぞれ
角張って胸ハンカチや春の花卉
蜆蝶野良猫が来るまでのこと
島春句
今昔の感さくらよりつつじへと
霞む旅橋でかがりし島伝ひ
潮引いて小島の霞ふくれけり
磯遊び祖父は万能選手かな
夢の端の干潟の先に我ひとり
観天望気のウイークエンド初燕
見せ合へる大将首や苺狩
彩れるヂゴクノカマノフタ指呼す
髭面の急接近や白すみれ
馬糞踏まぬやうたんぽぽ踏まぬやう
島春句
鈴蘭をもうちょっとだけ見ることに
石楠花の完結したる苔の園
鈴の緒に風徒や楠若葉
山へ消える路の始まり鯉幟
非常階段からへらへらと紙の鯉
開けて閉めた二階の窓のサングラス
短夜をいま満潮の鎮もりに
豪勢に牡丹描かれし現在地
鼻の先にある風力の牡丹園
島春句
崎泊りしりへの街の灯もすずし
金ぶんを尻ポケットに忘れんぼ
かたつむり三つの中の二つ捨て
ふとい声ふとい腕だな蛍指す
梅雨茸を川魚料理屋でまたぎ
病室のベッドで梅雨を聴くあぐら
たんこぶにアイスケーキをあてにけり
山腹の茶屋ラムネだけ売り切れに
条件やコップのサイダーは疲れ
島春句
梔子を嗅ぎ留守なりし又も嗅ぎ
飛行機で帰郷金魚をお土産に
金魚池家の主の今日の顔
日盛という席題や主婦ばかり
薔薇に水手を振ってやる選挙カー
雲の峰幾つも囲み城荒れし
砂粒が乗る紫蘇の葉や雨後の月
紫陽花に青びょうたんの秀才が
牢獄のやうなる庭に七変化
梅雨明に来て明日も又来る羽目に
島春句
裏山が脱がされてゐる稲びかり
稲びかり寝間は立方体である
だるまさんがころんだときに稲光
墓路の臭木刈られてある此処ら
展望台の閑かなとんぼ抓まれし
気分よき目覚めなり謝謝と蝉
駅頭や虹見るマイノリティに吾
ショッピングモールで雨が過ぎて虹
仕舞まで虹を見たるも旅のこと
山越の花火のどれもさいごかと
島春句
金風に広くなったる片額
村は総出薄目ひらいて彼岸花
印肉の乾びの今や曼珠沙華
待宵の眉カットする片目して
お月見の膝にのり来る尻たぶら
ペディキュアの脚組み替へて居待月
連泊の湯宿に慣れし昼ちちろ
小股二歩ちんちろりんの正面に
街も野分する流連の尻打ちに
九月来て風来て庭が大忙し
島春句
秋を探そうとする青い芝生から
小虫居て芝生を秋にうごかせる
台風の尻尾が去んで追ふ芒
空っぽのダンプにとんぼ羽下ろす
雑作を変へしが夜を長うしぬ
長き夜の首をちぢめて籠の鳥
シャーペンの芯繰り出して夜の長さ
パイロットランプの働き身に入みる
繋がれて首振る小舟鳥渡る