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問題6
出題の原句は、
朝霧や紫動く牧の牛
でした。これは「紫」一字のみの働きです。暁闇、次第に日の出が近づいて来るに従って、特に山の空気の中の色彩の変化は微妙なものが有ります。眺望していてこの作者は、霧の中に動く紫色を捕らえたのです。始めは視覚の中で快いものとしてでしたが、その紫が牧場の牛であることに気づきました。
問題7
出題の原句は、
水飲んでなほも蜻蛉を追ひに出る
でした。とっとっとっと走り帰って来たと思ったら、ズックを脱ぎ散らかして上がって、部屋を駆け抜け、台所の蛇口に仰向けに口をつけてゴクゴクと喉に波打たせて、胸から臍までびっしょり濡らして、シャックリしながらまた飛び出していった。子供はこれだね。
問題8
それぞれに意外性を求めて字を埋められたと思います。ただ変わっているだけでは値打ちはなくて、発明発見というものは何か意義を持っていなければなりません。
出題の原句は、
箱庭の乾きに蜻蛉羽下ろす
でした。如何でしょうか。8文字をゆったりと使いますと、多少希薄になります。俳句は短詩形ですので、言葉を凝縮して力を持たせたいものです。「箱庭」は、人の手になるミニチュアの風景です。「乾き」は、好天で岩や橋を模したあたりは打ち水も乾いて来ているのでしょう。「箱庭の乾きに蜻蛉止まり蹴り」でもいいわけですが、「羽下ろす」には、大袈裟に言えば、ロストワールドに棲む巨大昆虫のような感じを一寸想像させます。
問題9
出題の原句は、
日向ぼこ我が鼻を見てゐたりけり
でした。「日向ぼっこをしているうち、ぼんやり目の前に見えてるものがある。なんだ、これは私の鼻ではないか。普段は鼻なんて見えないものとばっかり思っていたが、片目つむってみれば分かる。でも、ぽかんとしていて、こんなこと発見している私っていったい何だ」。
問題10
出題の原句は、
霜の夜や酔ひたる我に橋長き
でした。町並みを抜けて暗い橋に差し掛かった、と感じているのに、歩いても歩いても……、こんな長い橋ではないのにね。大酔での帰り道。