アムステルダム/アムステルダム国立美術館
 Rijksmuseum Amsterdam/Stadhouderkade 42, Amsterdam

 アムステルダムには2001年8月末に訪問しました。この時はロンドンで待ち合わせがあり、その途中に、この美術館を見るために大きく回り道をすることにしたのでした。
 パリの北駅を6時台に出るタリスで出発するために、妻とともに五時頃にパリのアパートを出ました。前日、旅の準備であまり寝ておらず、眠い目をこすりながら駅のベンチに腰をおろしてすぐ、横にいた妻に何やら聞いている男がいます。私が、なんだろうと立ち上がると、切符を見せて、この列車はどこから出るのかと言うのです。怪しいと思い、知らないと言って振り返ると、すでにやられてしまいました。一瞬目をはなしたすきに、ショルダーバッグがなくなっていました。タクシーから両手に荷物をたくさん持って来たのでうっかりバッグをベンチに置いてしまったのです。そのすきをスリのプロ達は見のがしませんんでした。私の後ろに仲間がいたはずです。聞いてきた男もあっという間に人込みにまぎれてしまいました。パリに1年住んで、何度かスリにアタックされながらもどうにか被害にあわないですんだのでしたが、とうとうやられてしまいました。さすがに、財布など入れていなかったのですが、待ち合わせの人との連絡用に借りた携帯電話とアムステルダム経由ロンドンまでの切符を取られてしまいました。切符の再発行を交渉しましたがダメでした(ダメだろうね)。その後、警察に届け、調書を作ってもらい、再度切符を買い、4時間遅れで出発したのでした。盗んだ方はあまりお金にはならなかったのではないかと思うのですが、私達は、旅の出ばなをくじかれました。
 前置きが長くなりましたが、そんなわけで、アムステルダムには、ほんの4時間ぐらい美術館を見るために立ち寄っただけです。
 さて、この美術館の目玉はなんと言ってもレンブラントの「夜警」です。おそらくスタンドオイルのようなねっとりとした油で描かれた絵肌は、強靱な塗膜を持ち油による変色も感じられません。何よりその光と影の見事なコントラストによるドラマチックな画面は西洋絵画の最高傑作の一つであることに疑問の余地はありません。他にも優れたレンブラント作品を持っており、例えば「聖エレミア」もすばらしい作品です。また、フェルメールも4点あり、いずれもすばらしいものです。レンブラントのダイナミックでドラマチックな光と、フェルメールの静ひつな光は対照的でありながら、いずれも優れた光の表現と言う共通点を持っています。また、これらの作品を見ると、油絵の具の物体としての強さが作品の強さに繋がっていることを感じさせます。レンブラントのこってりとした絵の具の塗重ねによる重厚な画面は、日本人の描く油彩画にはあまり見られないものです。また、フェルメールの椅子の鋲などは、実際にぽこっとした盛り上がりを持ています。これらの作品は、油彩の重要な特徴の一つが、そうした物体性にあることをよく示しています。微妙なトーンは、薄塗りの絵の具よりも、こってりした絵の具を使った方が遥かによく表現できるし、その後に行うグラッシ(グレーズ)もより効果的なのです。


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