ロンドン/ナショナル.ギャラリー(フェルメールとデルフトの絵画展)
 London/The National Gallery

 ロンドンは3度訪問しました。最初は、1987年だったかと思います。そして、ロンドンに来る度、ナショナルギャラリーを見ています。今回は、2001年の8月に訪れたものです。
 この美術館は収蔵作品もすばらしいのですが、今回はフェルメールとデルフトの絵画展が開催されていました。この展覧会は世界を巡回したものですが、そのために、私がウイーンの美術史美術館を訪れた時には「絵画のアレゴリー」が貸し出されていてみることができなかったものです。今回ようやくロンドンで見ることができました。しかしここでも、1日目は昼頃に行ったところもう入場制限いっぱいで見ることができず、翌日再び9時頃に並んでようやく見ることができました。この関心の高さ、入場者数の多さは、日本にモナリザがきた時を思い起こさせるものでした。この展覧会には、13点のフェルメール作品が展示されており、フェルメール作品がこれだけまとまって見られることはもうないのではないかといわれる程の充実した作品群でした。ただし、四重五重になって流れていく人々に押しながされながらの鑑賞は、見たいところをしっかり見るという状況ではありませんでした。私は、この時を逃したらもう見ることはできないと思い、最前列につき、後ろのマダムから邪魔だと注意されたりしながらも必死に見たのですが、今、振り返ってみるとあまり鮮明な記憶が蘇ってきません。日本で開かれる企画展も、暫くすると記憶が曖昧になってしまうのは、自分のペースで見たい絵を見たいだけ見ていないからではないかと思ったりします(それとも記憶力が衰えただけでしょうか)。そのような記憶の中から、鮮明に蘇ってくるのは、椅子の画鋲の金色に光っている部分の絵の具がぽっこりと盛り上がっていたことです。その他の部分についても、絵の具の塗重ねの厚みが、あの静謐でいて重厚な画面を作り上げていることを実感しました。それにくらべて、最晩年の作品は、そうした絵の具の重なりがあまりなく、短時間で仕上げたことが分かります。その差は、実に大きいと感じました。


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