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ナショナル・ギャラリーは、ルーブルほどの巨大美術館ではないものの、粒ぞろいのすばらしい作品を収蔵しています。また、ここは、大英博物館と同様、入場が無料ですので、旅行者はもちろん、ロンドン在住でくり返し訪問したい人にとってはとても有り難いです。最初に訪れた時、ファン・アイクの「アルノルフィニー夫妻の肖像」やフェルメールの2点の小品、ピエロ・デ・コジモの作品などに強く感動しました。収蔵品は1級品ばかりで、保存がすばらしく、照明なども見やすく設定されています。それらの中でも、入館してすぐに目に入る、「アルノルフィニー夫妻の肖像」は別格にすばらしいと感じます。ファンアイクが能う限りをつくして描いたこの作品は、彼の代表作の一つと言っていいものです。結婚を祝して注文されたと言われていますが、凸面鏡に映った画面の手前側の光景までも描き込んだ渾身の描写は、極限の人の技を見せてくれます。これが、油彩のみで描かれたのか、それとも他の技法と併用されているのか、いろいろな研究者が説をたてているようですが、私は、吸収性の下地に描かれていることは間違いないと思います。それにより、油絵の具の油分が適度に吸収され変色を押さえているのではないかと思います。また、下層描きには、テンペラも用いたのではないかと思います。それは、これだけち密な描写をしていることから、相当数の塗重ねをしていることは間違いないのですが、もし油彩のみで行ったのなら、筆の後に生じる油の盛り上がりをこれ程完璧に押さえることは不可能に思えるからです。 |