パリ/ポンピドー・センター

現代美術の最も重要な美術館の一つがここポンピドー・センターでしょう。まるで工事の足場が組まれたままになったような特異な外観で知られています。美術館に入るためのエスカレーターも建物の外側に取り付けられており、本当にここが入り口なの?と不安になったりします。
 私は、15、6年ぶりに訪れたのですが、いわゆる現代美術らしい作品に混じって、ダドの大作があったのに興味が惹かれました。学生時代に画集で見てなんと凄まじい絵を描く画家がいるものだと驚き、肉食の西洋人は草食動物の日本人とは違うのだと、当時の自分を納得させた作家です。実物を見るのは初めてでしたが、案外荒い画面なのが意外でした。
 新しい作家では、Ugo Rondinoneのインスタレーションが私にはとても心に響くものでした。天井から吊るされた大きな白い張りぼてにスピーカが埋め込まれ、そこから繰り返し同じメロディの音楽が流れて来ます。天井から吊るされたあるディスプレイには、その音楽に合わせ空中に浮かび上がろうとするかのようにくり返し飛び上がる裸の女性がスローモーションで写し出されます。またほかのディスプレイにはドアが開き、男のシルエットが映りまた閉まる映像がゆっくりと写し出されます。20数年前にカヤニスカッティという不思議な映画がありました。様々な映像が音楽とともにゆっくりと時にはハイスピードで流れる、それだけの映画なのですが、そこには人間のさまざまな行為に体する深い洞察を感じさせ、非常に新鮮で哲学的な映画でした。このUgo Rondinoneのインンスタレーションはそのカヤニスカッティと同じ感覚を起こさせるものでした。
 他にラファエル・ソトの大作や、Agamのオップアートなども興味深いものでした。
 ところで、外に出ると、センターの前の広場ではいつも大道芸が繰り広げられています。それらをしばらくのんびりと見るのも、疲れをいやすのにいいものです。
(作品は著作権の関係で掲載できません)


ヨーロッパの美術館の頁に戻る