ウイーン/美術史美術館

 

 2001年7月19日、ウイーン着。パリから、バーゼル、ミュンヘン、ウイーンと列車の旅をして来ました。ウイーンの西駅についたところで列車をおりると、乗客の何人かがパスポートをチェックされています。私はパリのアパートにパスポートを忘れたまま旅を続けていたので、どうしようかと焦りましたが、呼び止められることもなく無事通過できました。
 ウイーンに来た最大の目的は、言うまでもなく美術史美術館を見ることです。この美術館は、珠玉の名品をすばらしい保存状態で展示しています。館内の装飾もすばらしく、使われている大理石の色の調和が見事です。ハプスブルク家の趣味が収蔵作品からも装飾からも伝わって来ます。また、階段を登り切ったところの上の壁には、クリムトのすばらしい壁画があります(上段左の写真の上部)。
 作品は、1級品ばかりで、特にイタリア絵画、フランドル絵画が充実しています。上段中央の写真は、落ち着いた存在感のある色彩と構成が魅力的なジョルジョーネの作品です。明部と暗部の対比が絶妙です。ラファエロの聖母子像の優れた作品もあります。この作品のイエスの足下を見ると下地や絵の具の塗重ねの具合が良く分かって興味深いものです。また、ブリューゲル作品を多く収蔵していますが、特にバベルの塔は必見でしょう。また、マンテーニャの聖セバスチャンもすばらしいですし、ファンアイクの小品もあります。それから、デューラーの作品は、実に平滑な画面に輝く色彩と滑らかなグラデーションを持つ作品に仕上げていて、その絵画技法に脱帽です。
 さて、この美術館最大の目玉の一つは、フェルメールの「絵画のアレゴリー」ではないでしょうか。私も期待して出かけたのですが、世界を巡回したフェルメール展のために貸し出されていて見ることが出来ませんでした。(その後8月末にロンドンのフェルメール展で見ることが出来ました)
 この美術館は、収蔵作品に偏りはあるものの、古典技法を研究したい人、幻想的な志向を持つ方には最適な美術館だと思います。


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