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第6回(平成9年12月13日)
緊急特集 韓国競輪体験記(その5:レース編)
 12/13 1997.

車券については前々回に収録したが、レースそのものの様子については触れていなかった。韓国競輪特集をしめくくるにあたり、レースに関する情報をダイジェスト的にお送りしよう。

<バンク>

蚕室競輪場は333mバンクだが、やけに細長い形状をしている。オリンピック用のバンクだったせいだろうか、カントのきつさは250mバンク並みなのではないかと思うほどだ。また、幅員が非常に狭く、7車立てのレースを余儀なくされている(マークカードは9車ぶん塗るところがある)。噂ではこのバンクを競輪学校化し郊外に移る話もあるそうで、その際には9車立ても可能なバンクが建設されるのではないだろうか。

<レース数>

レースは1日14レース。私の訪れた日は1レースが11時20分、最終14レースが17時25分であった。レース間隔が20分から最大でも35分なので、非常にテンポ良く打つことができ、この点はなかなかよい。

<班別>

私の確認したところではS,A,B1,B2,C1,C2の4級6班があるようだった。競走得点もあり、Sで100点以上、C2が85点以下くらいの感じであった。

<レースのレベル>

ちょっとびっくりするくらい低い。S級やA級のレースは競輪らしいと言えなくもないが、C級なんてのは町の自転車愛好家とどう違うんだという程度のものである。実際、「平塚愛輪会」とかの人の方が強いと思う。

ちょうど我々が訪れた日の競輪新聞に新人(最新1期分)のデータが載っていたのだが、1000m独走でいちばん早いのが1分11秒1。いちばん遅いのは1分19秒59である。昔からの選手の中には20秒台もごろごろいる。日本で競輪学校に受からない人は、韓国に帰化してみる手もあるのではなかろうか。

<レースのレベル その2>

脚が無いのも問題だが、作戦面で知恵が未発達なことも挙げられる。赤板以降になると(ちゃんと残り3周は青板、2周は赤板で表示されている)全員がとりあえず前へ前へ行こうとし(ライン戦という考えはない)、その結果脚を余して直線沈むケースも少なくない(その場合、コーナーでイン詰まりしてた奴が漁夫の利を得たりする)。

逆に、バックハコと展開に恵まれた選手が逃げている選手をぎりぎりまで使ったりした場合に、勝ってゴールした後「頭脳プレー」をアピールするポーズをとったりしている光景も見られた。単なる番手捲りに過ぎないのだが。

このように、日本人から見れば原始形態の競輪が行われている理由は次の3つと考えられる。

1.脚がない

→よって作戦にメリハリなどつけようが無く、馬鹿丸出しのこぎ比べになる。

2.7車立て

→ライン戦にならず個人戦になる

3.横の動きがない

→相当に規則が厳しいのか、競りはおろかちょっとしたブロックもない。

というわけで、「レースとしての面白さ」を期待して見に行ったら裏切られるだろう。原始の競輪として今のうちに見ておき、徐々に発達している韓国競輪を見守り続けるのがいいのではないだろうか。選手のレベルが上がり、9車立てのバンクができれば時代は動きだすものと思われる。

韓国人の間に「競輪ゴコロ」が芽生えてくる過程ってのはかなり面白いはずだ。「韓国の高原永伍、1周逃げを開発」とか、「韓国の坂本勉、捲り追込を発明」とか、そんな瞬間に居合わせてみたい気もするし。あるいは韓国競輪選手と友達になって、「イン切りとはね……」とか知恵つけるのもいいな。

5回にわたってお送りしてきた韓国競輪特集。途中更新間隔が開いて御迷惑をおかけしたが、情報が少ない韓国競輪についての記事だけに、なにらかの形で皆様にお役に立てれば幸いである。幸いといえば、異常なペースでのウォン安も海外旅行者としてソウルを訪れる我々にとっては追い風となるもの。今は冬季休業中だが、来春には是非ソウル競輪を見に行ってみてほしい。その際にメールをいただければ、より詳しい情報を御提供するつもりでもある。



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