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第29回(平成12年4月17日)
ラガーレグルス競走中止について
 4/17 2000.

まず、スタート自体が「真正な発走」であることは間違いない。あれをスターターのミス、ましてやカンパイなどと言うなら、発馬機を使った発走というのはできなくなってしまう(特にカンパイという意見はルール的根拠が全くない)。その理由はスポーツ紙で書かれている「0.4秒のタイムラグ」というのともちょっとニュアンスが違うんですけどね。敢えて対策を講ずるとすれば、スターター云々よりもゲート馴致の問題だ。この意見は、府中のスタート後ろ放馬止めを5年やった者として自信あり。
 感情論だとか、JRAの責任にすれば収まりがいいという観点から発言する人は絶対納得しないだろうけど、私は発走委員の腕というのは信用していいものだと思う。さらに「腕」以前の問題として、発走委員というのは命の次に大切な(笑)お金をぶち込んでるファン以上に「揃ったスタート」を望んでいるものでもある。最初からファンとJRAは対立する存在、という世界観でものを見ると歪んだ感想にもなるだろうが、ファンもJRAも厩舎関係者もみんな満足のレース、というのは成立可能、かつ関係者はそれを目指しているわけで、ファンもその点は見誤らないでもらいたい。

ラガーレグルスという馬自体についても色々言われているが、馬券について言うなら、共同通信杯でヒントが出されていたぶん、リスクもオッズに折り込み済みだったのではないだろうか(私自身、中山三度目ということで大丈夫と踏んでしまった)。もちろん、座り込んでゲートを出ないなんてことは想像しなかったわけだが、ある程度以上の出遅れは馬券としては同じ意味なわけで。
 また、騎乗技術うんぬんで佐藤哲三騎手を責めるものかわいそう。あれは騎乗者の技術でどうこうできるものではない。ただ、一部スポーツ紙のように「(ちゃんとコメントした)佐藤哲の態度は素晴らしい」などと書くのは行き過ぎで、礼儀としてコメントし、ファンに謝罪の言葉を口にするのは普通のことだと思う。これは調教師についても同じ。まあ、調教師の方は馬匹管理者なわけだから結果責任もあることだし、単に礼儀以上の態度をとってもらえるとより尊敬できるのだが。

さて、ではJRAも騎手も調教師も悪くないとすれば誰が悪いのか? と疑問に思う人もいるだろう。その疑問に答えるなら、誰も直接的には悪くないのである。誰も悪くはないのにああいうことにもなってしまうのが「馬」「競馬」というものであり、それは全ての馬券に共通するリスク(リスクである以上、タナボタのリターンもある)ということ。それを本当に嫌だと思うなら、他の公営競技なり、民営ギャンブルに転向するしかない。

長くなりすぎるのであと2点だけ。掲示板(須田鷹雄商店に限らず)を見ているとファンの感覚というのがよく分かるが、みんなちょっと久米宏的世界観で競馬なりJRAなりというものを見過ぎですよ。というか、JRA・厩舎関係者・競馬マスコミなど全てに対するイメージが現実とズレているので、意見もズレたものになってしまうという印象がする。
 私としては敢えてそのズレに合わせてデマゴーグ的原稿を書くと非常に売れていいのだが、自分の中の筋道としてそれはできない。逆に、それをしすぎな媒体なりライター・出演者というのはけっこういるのだが、それが積もり積もってファンが勘違いし、将来「整理本部に押しかける」以上の事態につながらないか、今回の結果を見ていると真剣に心配になってきた。

最後に、JRAに対して望むことをひとつだけ。
 ファン世論の操作が下手すぎです。例えば不正があってそれを隠す、という事態ならともかく、堂々さらけ出していいところまで慎重になりすぎで失敗しているという印象が強い。慎重ぶりが疑心を呼び、結果的には「JRA悪の帝国論」に燃料を継ぎ足していると言っても過言ではないだろう。
 そんな情報リリース体制でメリットを受けるのは不始末をしでかした時の厩舎関係者くらいのもので、JRAという企業のイメージはジリジリ悪くなっている。この状況をどう思っているのか、中堅職員の人たちとかには一度聞いてみたい。
 オープンにするものはオープンにして、その上で賭けの主催者として「俺がルールブックだ」と、そう堂々としていればいいんじゃないかと思うのである。
 レースについて分かりにくかった点は情報を公開しまくる。一方で、関係者が起こした不始末の尻拭いもしない。……例えば記者会見でキレて帰っちゃった騎手はそのままグリーンチャンネルで流す、とかね。そういう、ちゃんと風が通った世界に中央競馬をしてほしいし、それによって困ることなどなにもないはずだ。



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(有)ドラゴンプレス