◎CITESと種の保存法
  リクガメ(=リクガメ科のカメ)は全種、通称ワシントン条約で知られる
CITESで国際取り引きが規制されています。
  CITESは絶滅の恐れがある野生動物の国際取り引きを制限する
国際条約で、規制には3段階があり、対象種が条約の3つの付属書に
書かれています。
  付属書 I(CITES I)      野生個体やその加工品の商業取り引きが禁止される種。
                         学術用などは輸出入国双方の許可を取れば可能だが、
                         ペット用には野生個体は許可されない。
                         ホウシャガメ、ヘサキリクガメ、エジプトリクガメ等が
                         CITES I。
  付属書 II(CITES II)    野生個体やその加工品が商業目的であっても輸出国の
                         輸出許可書をあれば輸入可能。
                         リクガメ科は全種CITES II。
  付属書 III(CITES III)  対象種が一部の原産国で自国内で保護対象のため、
                         輸入に際し、保護を行う原産国は輸出許可証が、
                         それ以外の原産国からは現地証明が必要な種。
  CITES II,IIIの種はペット用として野生個体が、お店で売られる可能性が
あります。しかも通常、個体毎の証明書はないので、許可証なども
ありません。
  しかし、CITES Iの種はペット用として野生個体がお店で売られる可能性は
ありません。ただし、ブリード個体(繁殖した個体)はCITES II相当なので、
繁殖個体である証明書があれば、CITES IIとして、ペット用としてお店で
売る事ができます。

  ところで、CITESの種をこっそり持ち込んだ、つまり密輸した場合は
どうでしょう?密輸自体はもちろん重い罪ですが、ばれずに持ち込めた
場合です。その密輸個体を売る事ができるのでしょうか?
  CITES II,III種は正当な輸出である事を購買者に証明せずに売るのが
習慣になってますし、密輸個体を国内で売る事自体を禁止した法律も
ありません。

  しかし、CITES I種は違います。「絶滅のおそれのある野生動植物の種の
保存に関する法律」(H5.4.1施行)通称「種の保存法」で罰せられます。
  この法律は「輸入する生体」ばかりでなく、「国内種の保護繁殖」や
「象牙など材料として輸入する事」についても規定しています。
このため、全部で六十四条ありますが、我々が興味あるペット飼育に
関係部分は意外に少ないです。

  「種の保存法」は保護種を指定しますが、外国の動植物はCITES Iの
種が指定されます。
  なお、条文を読む限り、この法律自体はCITESと違い、種そのものが
保護対象であり、その個体が野生であるかは問わないらしく、
ブリード種でも当該します。だたし、正規な手続きに基づく、
CITES Iのブリード個体はCITESにおいて、CITES II相当で扱うと言う事で
この法律の対象にはならない運用がなされていると思います。
  ちなみに条文では定義はこうなっています
  第四条 (定義等)
         (2)この法律において「希少野生動植物種」とは、次項の国内
            希少野生動植物種、第四項の国際希少野生動植物種及び
            次条の緊急指定種をいう。
         (4)この法律において「国際希少野生動植物種」とは、国際的に
            協力して種の保存を図ることとされている絶滅のおそれのある
            野生動植物の種(国内希少野生動植物種を除く。)であって、
            政令で定めるものをいう。

  つまり、「国際希少野生動植物種」がずばりCITES Iの種(野生個体のみ
らしい)の事ですね。
  もちろん、「希少野生動植物種」にはそれが含まれます。

  さて、売買や譲渡に関わる部分ですが、以下の条項です。
  第十二条 (譲渡等の禁止)
           (1)希少野生動植物種の個体等は、譲渡し若しくは譲受け又は
              引渡し若しくは引取り(以下「譲渡し等」という)をしては
              ならない。ただし、次に揚げる場合は、この限りではない。
              一 次条第一項の許可を受けその許可に係る譲渡し等をする場合
              二 [国内種の話なので省略]
              三 [原材料とする時の話なので省略]
              四 [国内種の話なので省略]
              三 [原材料とする時の話なので省略]
              六 希少野生動植物種の個体等の譲渡し等をする当事者の一方
                 又は双方が国の機関又は地方公共団体であって総理府令で
                 定める場合
              七 前号に揚げるもののほか、希少野生動植物種の保存には
                 支障を及ぼすおそれのない場合として総理府令で定める場合
  第十三条 (譲渡等の許可)
           (1)学術研究又は繁殖の目的その他の総理府令で定める
              希少野生動植物種の個体等の譲渡し等をする者(前条第一項第二号
              から第七号までに揚げる場合のいづれかに該当して譲渡し等を
              しようとするものを除く。)は、環境長官の許可を受けねばならない。
              
  ここで注意すべきは売買や譲渡をした場合、売った方、あげた方ばかりでなく、
買った人、もらった人も処罰の対象である事です。
  ただし、国際希少野生動植物種の飼育自体はこの法律では禁止されていません。
ここも要注意です。つまり、この法律の前に買ったり、もらった個体は飼育を
続けても問題ありません。もちろんその場合でも売買、譲渡はできませんが。
また、CITES Iに指定される前に購入した個体も同じ事です。
(ただし、その個体が正当である証明とは別問題かも知れないです)
  たぶん、先ほど話が出た正規のブリード物は登録するという事で
第十三条「その他の総理府令で定める希少野生動植物種の個体等」にあたるのでは
ないかと予想しています。実際、元となるCITESでブリード個体をCITES II相当に
するのですから、国内の運用もそれに合わせるべきでしょう。

  この法律では登録ができる事になっています。
  第二十条 (個体等の登録)
           (1)国際希少野生動植物種の個体で商業目的で繁殖させた個体若しくは
              その個体の器官または加工品であることその他の要件で政令で定めるもの
              (以下この章において「登録要件」という。)に該当するもの(特定器官を
              除く。)の正当な権限に基づく占有者は、その個体等について
              環境庁長官の登録をを受けることができる。
           [(2)-(5)に事務についての取り決めがあります。]
           
  また、一般の飼育者には関係ないですが、お店などの輸入や販売目的の陳列に
ついての事も書かれています。
  第十五条 (輸出入の禁止)
           (1)[国内種の話なので省略]
           (2)特定国内希少野生動植物種以外の希少野生動植物種の個体等を
              輸出し、又は輸入しようとする者は、外国為替及び外国貿易
              管理法(昭和二十四年法律第二百二十八号)第四十八条第三項又は
              第五十二条の規定により、輸出又は輸入の承認を受ける義務を
              課せられるものとする。
  第十六条 (違法輸出入者に対する措置命令)
  これは条文を引用しませんが、内容は違法輸入者または違法輸入と知って
買ったり、もらったりした人に対して、環境庁長官は違法輸入の個体を
輸出国または原産国に送り返すよう命令できる事。もし、この命令に
従わない場合は環境庁長官は違法輸入の個体を輸出国または原産国に
送り返えし、その費用を違法輸入者などに負担させる事ができるという
事です。

  第十七条 (陳列の禁止)
             希少野生動植物種の個体等は、販売又は頒布をする目的で
             陳列してはならない。ただし、特定国内希少野生動植物種の個体等、
             特定器官等、第九条第二号に該当して捕獲などをした国内希少
             野生動植物種の個体若しくはその器官若しくはその加工品、第二十条
             第一項の登録を受けた国際希少野生動植物種の個体等又は第二十条の
             三第一項本文の規定により記載された同項の事前登録証に係る
             原材料器官等の陳列をする場合その他希少野生動植物種の保存に
             支障を及ぼすおそれのない場合として総理府令で定める場合は、
             この限りではない。
  第十八条 (陳列をしている者に対する措置命令)
    これは条文を引用しませんが、内容は違法の陳列に対して環境庁長官が
  陳列の中止などの措置ができるという事です。
  第十九条 (報告徴収及び立入り検査)
    これも条文を引用しませんが、環境庁長官は希少野生動植物種の陳列等を
  行う場合は立入り検査などを行う事ができる等です。

  第二十一条 (登録個体等及び登録票等の管理)
             (1)登録又は事前登録(以下この章にいて、「登録等」という)に
                係る国際希少野生動植物種の個体等は、販売または頒布をする
                目的で陳列するときは、その個体等の係る登録票又は
                前条第一項で本文の規定により記載された事前登録証(以下に
                おいて登録証等という。)を備え付けておかねばならない。
             (2)登録等に係る国際希少野生動植物種の個体等の譲渡し等は、
                その個体に係る登録票等とともにしなければならない。
             (3)登録票等は、その登録票等に係る国際希少野生動植物種の
                個体等とともにする場合を除いては、譲渡し等はしてはならない。
             (4)登録票等に係る国際希少野生動植物種の個体等の譲受け又は
                引取りをした者は(事前登録を受けたものから、その事前登録に
                係る原材料に係る前条第一項で本文の規定により記載された
                事前登録証とともにその原材料器官を譲受け又は引取りをした者
                を除く。)は、総理府令で定めるところにより、その日から
                起算して三十日(事前登録証とともにその原材料器官を
                譲受け又は引取りをした者にあたっては、三月)を経過する日までに
                環境庁長官にその旨を届け出さねばならない。
  第二十二条 (登録票等の返納)
    条文は引用しませんが、理由が無くなった場合には登録票を三十日以内に
  環境庁長官に返納しなければなりません。

  したがって、販売目的で店頭に陳列する時点では登録票が必要に
なります。また登録票を不正に譲渡したりもできません。

  ちなみに主な罰則は、条文は引用しませんが、以下のようです。
  第五十八条 懲役1年以内または100万円以下の罰金。
             第十二条違反、つまり、不正に売ったり/買ったり、
             もらったり、やったりした場合があたります。
  第五十九条 懲役6ヶ月以内または50万円以下の罰金。
             第十八条 不正な陳列の中止命令に従わない場合,
             第十二条の事務手続きの違反。
  第六十一条 50万円以下の罰金。
             第十七条 不正な販売目的の陳列をした場合
  第六十四条 お店の場合、店員が第五十八条、第五十九条、第六十一条の
             違反をした場合、その店員当人はもちろん処罰されるが、
             そのお店(法人)やオーナーもその処罰相当の罰金刑が
             科せられます。
  なお、一般に条文の罰金額は変わりませんが、物価などに合わせ
実際の罰金の金額は上がります。

  なお、国内種にはもちろん、天然記念物として保護されるものも
あり、これは採取、売買はもとより、飼育も禁止ですので、
飼っていれば即アウト。より厳しい内容です。これは違反する人は
いないとは思いますが...。
  また、天然記念物以外の国内種で、CITES Iとして該当するのが
ウミガメ類(天然記念物ではないですよね?)で、これはCITES Iで
「種の保存法」対象です。以前はショップで売られていたようです。
国内での捕獲はここでは説明しませんでしたが、もちろんウミガメや
その卵の捕獲などは「種の保存法」違反で、罰せられます。

  なお、私は法律の専門家ではありません。
  この記事に誤りなどがあっても、その適用結果を含め、
一切責任は取りません。実際に法律等の適用が必要な場合などは
各自確認して下さい。
  もっとも「カメ言いたい放題」自体、内容やその適用結果については
一切責任を負いませんが...。(^_^;)



前へ 次へ 戻る