神楽面が、現在のような和紙の「張子面」になったのは明治の中期頃で、それ以前は、能面などと同様に木彫りの面を使用して いたとされる。
和紙の張子面は、木彫りの面に比較して、使用する側から見れば軽くて使い易く、一方、製作する側から見れば細 工や修復がし易く、量産できるなどの利点があることから、使用され始めたのではないかと思われる。
神楽面は、神楽団にとっては衣裳などと並ぶ大事な宝物で、代々受け継がれてきた面を非常に大切にし、痛んで使用に耐えれな くなった場合には、面師に依頼して、その一部を修復するほか、型取りによる同一の複製品を製作するなどの拘りをもっている。
面といえば、「能面」は有名で、能面は、受け取る側の見方、演じる役者の技術、囃子や謡の効果、物語のイメージ、光の具合 など、その時々によって笑っているようにも、また、泣いているようにも見え、時には何とも言えない色気を感じさせ、あるいは すざましい怒りや怨みの相を見せるといわれている。神楽面は、この能面を原型として作られたものではないかと思われ、神楽面 も能面と同様に、通常の状態では、微笑む表情でもなく、泣く表情でもなく、あるいは怒りや怨みの表情でもなく、演ずるその時 々に無限の表情を見せてくれるものが、最高の面ではないかと思われる。
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