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 奏楽の調べ

 神楽の奏楽は、通常、「大太鼓」「小太鼓」「手打鉦」「笛」の4種類の和楽器によって行われる。この奏楽には指揮者は無く、
また、楽譜も存在しない。大太鼓の奏者を中心に、他の奏者は大太鼓の音と曲の流れを聞き、自分の楽器の音を確かめなが
ら、高度に洗練された型を奏する。いわゆる「阿吽の呼吸」で奏する必要があり、平素から奏者全員の信頼関係が醸成されて
いることが重要である。奏楽はすべて口伝で修得され、奏者は相当な技術と努力が必要である。
 なお、大太鼓の奏者は、奏楽の中心的役割だけでなく、その曲目全体を掌握して指揮する非常に重要な役割を負っており、
大太鼓の奏者の技量が、その曲目全体を左右するといっても過言ではないと思われる。

1 拍子
  日本古来の音楽は、「二拍子」「四拍子」が多く使われ、「三拍子」は極めて希で、一部の地方
 を除き、ほとんど見かけないといわれる。それは、日本人が農耕民族で、鋤や鍬で土地を耕す
 拍子や荷を引く拍子が、二拍子、四拍子に合致していたからであろうとする説がある。
  芸北地方の神楽の奏楽も、「四拍子」を主体に、「二拍子」を巧みに組み合わせて構成されて
 おり、その拍子は、我々日本人の感覚と調和して、非常に心地よい気分にしてくれる。

2 囃子
  私の地方では、春と秋の年二回、地区の氏神社において、豊作祈願や豊作感謝のための祭
 典が催され、祭典では、「祭典楽」(お祭りの儀式の奏楽)である「座付」「歩」「御神楽」「入申」
 「神饌楽」「昇殿楽」「祓式」などが奏される。囃子とは「楽」(曲)のことで、神楽囃子は、この祭
 典楽を原型として作られたものではないかと思われる。
  神楽囃子は、曲目や場面によって、それぞれ異なったものが奏され、最も代表的なものでは、
 神舞の時に奏する「神囃子」や鬼舞の時に奏する「鬼囃子」があるが、地方によって、奏法、楽
 曲、呼称などは異なり、一様ではない。
  奏楽は、大太鼓、小太鼓、手打鉦、笛の四種類の楽器によって行われるが、律を奏でること
 ができるのは唯一「笛」のみである。中国では、約三千年前から洋楽でいう一オクターブを十二
 の音に区分し、それぞれ音名を決めていた。これは「十二律」と呼ばれ、円周九分、長さ九寸の
 管を吹いた音を標準音(黄鐘)として、それぞれの律が定められている。神楽笛は、この十二律の中から壹越(ハ長調レの
 音)、平調(ハ長調ミの音)、双調(ハ長調ソの音)、黄鐘(ハ長調ラの音)、神仙(ハ長調ドの音)の六つの音を選んで作られ、
 洋楽でいうハ長調の「ファ」と「シ」の音が無いのが特徴であ
 る。この旋律の特徴は、日本の民謡や多くの演歌にも見られる。

3 神楽歌
  神楽歌とは、広くは神事や神前で奏される歌謡のことで、狭くは宮廷の御神楽に用いられる
 歌謡のことであるが、宮廷以外の神祭りや祭祀にも神楽が行われていることから、神楽歌は宮
 廷に限らない広がりを有している。一説には、御神楽も里神楽も、元は同じもので、里神楽に含
 まれる色々な要素を集成、整理し、宮廷向きの歌詞や曲調、構成などを加味したものが御神楽
 とされる。
  芸北地方の神楽歌は、基本的に五七五七七の短歌形式の五句三十一音が多く用いられてい
 るが、奏楽に合わせて同一語や同一句を繰り返す部分があり、必ずしも、五句三十一音とはな
 らない特徴が見られる。短歌は和歌の一体で、最も普通の歌体であり、起源は諸説あるが、万
 葉時代には既に確立し、長歌、旋頭歌などの廃れた平安時代以降は、和歌といえば「短歌」を
 指すに至ったとされる。
  神楽歌の出所は、古事記や日本書紀、古今和歌集など、多岐にわたっており、出所不明のも
 のも少なくない。古事記に見える須佐之男命が奇稲田比売命と新居に入られて詠まれた歌と
 伝えられる
   「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を」
 は、日本最古の短歌といわれ、特に有名である。

4 調子
  調子とは、物事が進んで行く時の進行の状態をいうが、神楽囃子における「調子」は、音、拍子、楽などの総合的な奏楽
 の進行の状態、つまり「旋律」のことである。
  一般的に、石見神楽で、「六調子」「八調子」といわれているものは、囃子の速度や大太鼓の打数によって区別されるもの
 ではなく、旋律の基本型を示しており、前述した神舞の時に奏される「神囃子」を基本に区別されているのではないかと思わ
 れる。
  神楽歌は、五七五七七の短歌形式の五句三十一音が多く用いられていることは、前述したとおりであるが、一句から三句
 までの十七音は上の句、四・五句の十四音は下の句といわれ、六調子は、四拍子を6回で上の句、下の句をそれぞれ謡い、
 八調子は、四拍子を8回で同様に上の句、下の句を、それぞれ謡うことから区別されたものと思われる。
  神楽歌を謡う場合、同一語や同一句を繰り返したり、「あー」とか「うー」という音、いわゆる「揺り」を使うのは、神楽歌を「調
 子」に合わせるためである。
  石見神楽の奏楽は、舞楽や能楽の様式にならって、楽式上の三区分である序・破・急の三段に分けられている。これは洋
 楽でいう第一楽章、第二楽章にあたるもので
   ○ 序=ゆったりとした軽快な流れ
   ○ 破=どっしりとした力強い流れ
   ○ 急=さっくりとした速い流れ
 とされる。

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