夜行ムグンファ号
清涼里駅
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車掌の声で目が覚める。時計を見ると4:30過ぎ、窓の外を見ると何本もの側線が寄り添って走っている。どうやら定時走行し、まもなく清涼里(チャンヤンニ)に到着するので起こしに来たらしい
定刻、4:42清涼里駅の2番ホームに到着する。いつの間にか寝台は埋まっており、大勢の乗客がプラットホームに降り出口に殺到する。私も眠い目をこすりながらホームに降りた
時計の針はまだ4時台。出来ればもう少し寝ていたいのだが、ソウル駅や清涼里駅に到着する夜行列車は、3時〜5時台のモノばかりである。朝ラッシュ時の輸送力確保が最大の目的と思われるが、日本と比較して夜行列車を運転するには運転距離が短すぎるのもあると思われる。せめて6時台に到着してくれればいいのだが・・・
清涼里駅は日本の上野駅に例えられ、中央線や嶺東線の列車の始発駅になっている。駅の雰囲気も若干、上野駅に似ている
まだ日も昇っておらず、地下鉄の始発電車も動いていないのだが、清涼里の駅前広場は、多くの人がたむろしていた。駅前で夜明かししたというよりは、夜行列車で来て地下鉄が動き出すのを待っている感じの人が多い
参考までにこの時間帯に清涼里に到着する夜行列車は以下の通りである
到着時刻 | 列車名 | 始発駅 |
3:42 | ムグンファ号(臨時) | 江陵 |
3:46 | ムグンファ号 | 東大邸 |
4:42 | ムグンファ号 | 江陵 |
5:27 | ムグンファ号 | 釜山 |
この他、ソウル駅では、2:56〜4:44 に14本の夜行列車が到着する
地下鉄の入り口が開くまで数十分、私も駅前広場をウロウロして過ごした。5時頃、入口が開き、多くの乗客が殺到する。450Wの1区間券を購入し、自動改札を通る。始発電車は5:13の仁川行きである。1号線は国鉄線と相互乗り入れしているため、日本と同じように左側通行であった。しかし、他の路線は右側通行であるので、注意が必要である
というのも、韓国の地下鉄は改札口がホーム毎に設置されている場合が多いので、間違うと反対方向に連れて行かれる恐れがあるからです。言葉の通じない異国で、駅員に乗り間違えを申告するのも一苦労あると思われますので、乗車前に必ず行き先を確認する必要があります。また、地下鉄に乗車しても、駅名表はハングル文字が目立ち、英語表記が小さくあるだけ、漢字表記はまずありませんので、乗りこなすのも一苦労です(^^;;
しかも、4号線のように国鉄線内を走行するときは左側通行、地下鉄区間は右側通行と走行区間によって異なる路線もあります。幸い、清涼里駅は島式ホームで、どちらに行くにも同じホームから乗れる構造であった
清涼里では、ドッと乗車したため始発電車ながら、随分と混雑した車内となった。ソウル駅まで8駅、20分ほどで到着。これだけでソウル地下鉄1号線は完乗である。随分とあっけないが、ソウルには地下鉄が総延長で150キロ近くあるので、乗り潰すのは大変である
ソウル郊外線
ソウル郊外線(トンイル号)
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まだ朝の5:30だが、地上に出ると空が白み始めており、人の往来も始まりつつある。新宿の朝の風景と異なり、徹夜で遊び疲れた人の姿は少なく「これから仕事!」といった感じできっちりとした身なりの人が多い
東京駅を思わせるソウル駅舎を眺めながら、切符売り場に向かい新村までの乗車券を購入する。隣駅の新村までは3.1キロの距離であるが運賃は1000W(約120円)。地下鉄の運賃と比較すると倍以上する。今までの韓国の鉄道を乗り歩いた印象からすると随分高い!!
この初乗り運賃で何処まで乗れるのだろうかと、切符の券面に書かれている駅名を確認すると、25キロ先の一山まで同一運賃であった。すなわち、3キロ乗ろうと25キロ乗ろうと同一運賃であるということである
そんなわけで、電鉄線をのぞき、近距離で国鉄を利用する使う人はあまりいないようだ。随分と役割がはっきりしている
ソウル発5:45の客車「トンイル号」で新村へ。新村には5:50到着。韓国の鉄道は列車毎の乗り切り制と聴いているので、一端改札を出て議政府までの乗車券を買い直す
ソウル郊外線を走る列車は1日3往復、他に観光SLの「ムグンファ号」が1日1往復あるが、休日のみの運転のようである。東京でいうと武蔵野線のようなものなのだが、随分と運転本数が少ない。沿線は結構住宅地もあるのだが、ソウル市内に直結する鉄道の方に比重が置かれ、環状部の路線はあまり利用されないようである
新村駅6:12発のソウル郊外線のトンイル号に乗車する。この旅初めての気動車であるが、3両編成で列車の模様が花柄であった
車両は見た目にも新しく、製造年月を確認すると現代精工で1997年製であった。車内はセミクロスシートで、先ほど乗車した古ぼけた転換クロスシートの客車「トンイル号」とは随分と雰囲気が違う
韓国国鉄は年内に客車「ビトゥルギ号」を廃止し、「トンイル号」への置き換えを推進しており、すでに京義線、ソウル郊外線とも「トンイル号」への置き換えを完了しているのであるが、車両はずいぶんと異なるものである
さて、ソウル郊外線の気動車であるが、運転本数は少ないので、3両は輸送力過剰だろうと思ったら、案の定がら空きで、貸し切り状態であった
加佐から水色間での区間では、左側に京義線の車両基地が広がる。ソウルと韓国各都市を結ぶセマウル号やムグンファ号の客車が休息しており、見ているだけでもなかなか楽しい
車両基地への回送列車の設定が無くなる水色から単線になり、陵谷で京義線と別れる。
ここから正式にソウル郊外線の旅が始まる。真新しい複線電化鉄道と交差したと思ったら、そこが大谷駅であった。町外れの郊外に位置するのであるが、近代的な鉄道がいきなり現れる光景はなかなか圧巻である
この駅は、京義線とソウル郊外線がY字に分岐したところにあり、高架で地下鉄3号線(国鉄一山線)の駅が交差する一大ターミナルとなっているのであった
韓国の鉄道路線図を見ても、国鉄線と地下鉄線(一山線)は別々のページに書かれており、乗り換え駅の表記もなかったので実物を見るまで気がつかなかった
大谷を過ぎるとしばらく住宅地の外側を走るが、次第に山の中にはいっていく。このあたりまで来ると自然が豊富であり、観光用にSLが運転されるのもわかる気がする。ソウル郊外線は運転本数は少ないのであるが、日迎で交換列車とすれ違う。あちらもそんなに乗客はいないようである。トロトロと走り、7:34 議政府(ウィジョンブ)に到着した
京元線
新炭里駅
行き止まり地点にある標識
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議政府で一端下車しようとすると、結構乗客が乗車してくる。あれと思って、行き先のサボを見ると「議政府−東安」に変わっていた。7:45の東安行きになるらしい。一端、改札を出て駅前のコンビニで食料を入手。多少不気味な薄暗い地下道をくぐって、駅に戻ってくると駅前では何やら演説が行われていた。聴いてもさっぱりわからない
新炭里までの乗車券を求め、8:20発の新炭里行きの「トンイル号」気動車に乗車する。郊外へ行く路線なのだが、5両編成の座席がほぼ埋まっていた。随分と乗客がいるものだ
これから乗車する京元線は、朝鮮戦争以前は京城(ソウル)と現在は北朝鮮の元山を結ぶ路線であったのであるが、朝鮮戦争の際に南北に分断され、山間の小さな駅、新炭里が終着駅となっている
新炭里は、韓国の鉄道の駅で北朝鮮との国境にもっとも近い駅だそうである。北朝鮮とは準戦時体制なので、利用客も少ないだろうと考えていたが、列車本数は1時間に1本程度あり、比較的訪問しやすい
沿線には戦車の姿も見え、軍事訓練が行っている様子も垣間見ることが出来る。沿線では、軍事訓練でもあるのか、途中の駅で軍服姿の若者が何人も乗り降りしていた。準戦時体制の最前線に近づいていると思うと緊張する
新炭里に到着する頃には、乗客の姿はほとんど無くなり、9:38 新炭里に到着。新炭里はいかにもローカル線の駅という雰囲気しかなく、街らしい雰囲気はない。線路沿いの道を北に歩いて3分ほどのところで、線路は途切れる
この線路が途切れた地点には、大きな看板がある。日本語に訳すと「鉄の馬は走りたい!」だそうである。南北に分断された朝鮮半島の悲哀を感じることが出来るポイントであろう。まわりには、民家が数件、蝉の鳴き声だけがうるさかった
駅に戻り、議政府までの乗車券を購入する。一緒に入場券も購入しようとしたが、「議政府に行くのに入場券必要ないよ!」と韓国語で言っているようで、英語で説明しても全く通じなかった。新炭里まで来た記念に入場券を購入したかったのだが、理解してもらえない・・・・
準備していた会話集に、この用語は無かったので購入を断念。折り返し10:00発の列車で議政府に戻る。帰りの列車には、どこから現れたのか車内販売員が乗務。ワゴンを押して営業を行っていた。列車は駅毎に乗客が多数乗り込む。ローカル線なのに随分といい乗車率だ
1時間に1本ほどのフリークエンシーが確保されているのもうなずける
ソウルからの足場も良くローカル気分の満喫できる路線として、おすすめできる。5両編成は長すぎると思っていたのだが、議政府に到着する頃には、通勤電車並の混雑になっていた
首都圏電鉄線
国鉄1号線電車
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議政府(ウィジョンブ)から国鉄の京元電鉄線で清涼里(チャンヤンニ)に向かう。この区間は複線電化で国電型電車が頻繁に走り、地下鉄1号線を介して、仁川(インチョン)まで走る。ソウルの都市圏輸送を支える重要な交通機関となっている。乗車する人も多く、議政府では座れなかった
回基(フェギ)で、漢江沿いに走行する京元電鉄線と別れ、地下鉄1号線への連絡線に入る。韓国国鉄は交流25,000Vで電化されているのだが、地下鉄は1,500Vということで、電車はデットセクションを通過しながら地下に潜り、清涼里(地下駅)に到着する。韓国で交直デットセクションを体験するとは思いもしなかった
ちなみに、1号線にはソウルを出ると、もう一度国鉄京仁線に合流するのでもう一箇所交直デットセクションがあり、乗り通すと2回デットセクション通過を楽しめる
朝に乗車した清涼里地下駅で下車。地上に出て、国鉄清涼里駅舎に入り、京春線の切符を求めるべく、切符売り場を探すが、閉まった窓口しか見あたらない
「おかしいなぁ」と思いつつ、インフォメーションセンターに尋ねてようやく場所がわかった。駅前広場の一角に、イベント会場のようなテントが張っていて、そこに長蛇の列が出来ている。最初は何かの行列なのだろうとしか考えていなかったが、実はそこが切符売り場なのであった
売場の窓口は、10近くあるのだが、どの窓口も30m程の長い列になっている。ざっと見積もって、300人くらい待っている計算だ
それぞれの窓口にハングル語で売場の説明が書かれているが、読めないのでどこでも同じだろうと思って、身近な列に並んだのが失敗であった(^^;;
どうやら「払い戻し/乗車変更」専用の窓口だったらしく、紙に書いて提出しても、窓口が違う!といった素振りで、発券して貰えなかった。30分も並んだのだがずいぶんと冷たい
天気も不安定で、土砂降りの雨が降ったり、止んだりの繰り返しである。また30分も並ぶ気がしなかったので、京春線に乗車するのは諦めて清涼里駅(地上)から龍山(ヨンサン)を経てソウル駅へ向かうことにする。13時も近いしお腹も空いている
清涼里から漢江沿いに沿って走る京元電鉄線に乗車。この電車から眺める漢江は、迫力がありなかなか面白かった。「漢江の奇跡」と呼ばれた高層ビル群を一望できるポイントであるので、ソウルをかいま見るのは手軽である。15分程度で龍山(ヨンサン)に到着。ソウル駅に発着するセマウル号やムグンファ号がガンガン走っているし、仁川(インチョン)へ向かう京仁線の電車も頻発している。一日いても飽きそうにないが、ソウルへ向かう
京義線
ソウル駅
京義線トンイル号
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ソウル駅手前で地下に潜りながら、デットセクションを通過。朝利用したソウル駅舎を眺める。ソウル駅舎は赤レンガ造りのルネサンス様式で東京駅に似ている。駅舎の正面には、何故か日本語の解説付きモニュメントも添えられていた(^^;;
赤レンガの駅舎は、明日以降乗車の切符売り場や、鉄道博物館、美術館が併設されていて、駅機能の本体は、12面に及ぶホーム上のコンコースにあり、この上にステーションデパートも併設されている。大きくて広々しているが、利用客も多く活気づいている
鉄道博物館は是非見ようと思い入場したら、チケットを購入するように言わる。あたりを見回したが、それらしい窓口は見つからない。お腹も空いていたので、博物館を諦め駅ビルで昼食とする
お腹も一息つき、時刻表をめくり返しすと、次は14:00発のムンサン行きトンイル号があった。時間もないので急いで乗車券を購入し乗車する。車両はオンボロ客車6両編成でがら空きであった
雲井あたりまでは、高層アパートが立ち並ぶソウルのベットタウンといった感じが強い。しかし、京義線の客車列車は、10年前の福知山線の雰囲気を感じさせる路線であった。日本ではもう味わえない
しかも、車内販売員が乗務しており、ワゴンを押して売りに来る。日本では、ローカル線で車内販売を見るのはまれだから非常に珍しい
販売しているモノは日本のモノと変わりないようである。15:16、珍しく定刻にムンサンに到着。駅前には商店街が広がり、結構大きな街のようである。ここから北に数キロ行ったとこりに有名な板門店があるが、一般人は立入禁止である
駅周辺を一回りしたあと15:50発のトンイル号で大谷(テーゴク)へ戻る。途中、夕立が激しく降りだし、大谷駅に下車したときは土砂降りであった
大谷駅は、京義線、ソウル郊外線がY字に分かれ始める場所で、その地下鉄3号線と直通運転を行う国鉄一山線が乗り越す構造の一大ターミナル駅であるが、駅周辺は閑散としていた。私と同じように京義線から一山線に乗り換えるために下車した乗客が何人かいるが、ソウルと反対方向の5駅先の大化(テーファ)に向かったのはもちろん私ひとりであった
一山線の終着駅大化(テーファ)で、駅周辺の地図を見たら京義線の雲井駅に近いようである。あらかじめ知っていたら、雲井駅から住宅地の中を歩いていたことだろう(^^;;
大化で一息ついたあと、一山線/地下鉄3号線直通電車でソウル市内に向かう。ソウル中心部まで結構遠く、50分以上かかった
乙支路3街(ウルチロサムガ)で2号線に乗り換える。2号線は合井(ハプチョン)−堂山(タンサン)の1駅区間が完成すると環状線になるのだが、まだ工事中のようだ ソウルで地下鉄のマップを見ると、現在建設中の路線でも、堂々と駅名の表示があり、あたかも開通しているように描かれている。脇にハングル文字で「工事中」の文字が書かれているようだが、気がつかないととんでもない目にあうので注意が必要である
私も2号線の路線図をみたときは、環状線だと思ったが、やってくる電車は合井や堂山しかなかったので、路線図を見直して小さな字に気がついたくらいである
わずか一駅乗車した、乙支路入口(ウムチロイブク)で下車。駅コンコースに出たら、床が水浸しになっていた。韓国の地下街って随分と排水機能が良くないなぁと思ったが、あとで集中豪雨の爪痕だとわかった
先ほどまで降っていた雨は上がっていたので、徒歩3分ほどのガイドマップに掲載されていたホテルで交渉開始。このホテル日本語が通じ、すべての用事が日本語でO.K.であった。値段は2泊で約12万W(14,500円)。ソウルの中心部に位置するのでやむをえまいが、この旅行中、すべての支払いで一度に払った最高額であった
いったん、荷物を置いて食事に出かける。外に出るとまた、土砂降りの夕立で、辺り一面水浸しである。明洞(ミョンドン)あたりに食事に行こうと思ったが、この雨では傘をさすのもままならず、近くの韓国料理店に駆け込む
ひとまず、ビールでのどを潤し、骨付きカルビをむさぼり食べる。すっかりおなかも満腹になった頃には雨も弱くなっていたので、コンビニエンスストアに寄ってビールを買い込み、ホテルの部屋でまた飲んで過ごした・・・・
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