哺 乳 類哺乳類の特徴は、胎生にある。卵ではなくて、赤ちゃんを産むということである。 単孔類のカモノハシとハリモグラは例外的に卵を産むが、その他の胎生哺乳類は赤ちゃんを産む。胎生哺乳類は、大きく有袋類と有胎盤類に分けられる。 【単孔類】 1億年前の化石も発見されている原始的な哺乳類で、哺乳類としては例外的に卵を産む。 ハリモグラ科とカモノハシ科があり、どちらも現在はオーストラリアに生息している。 歯は全くないか、幼時に現れるのみであるが、祖先の化石では歯を持っていたものがみつかっている。後肢のかかとに距(きよ)があり、毒腺が開口する。乳首がなく皮膚から母乳がしみ出るようにみえる。体温は不完全な恒温性。 肛門・排尿口・生殖口が分かれておらず総排出口になっていることから、単孔類という名がついた。 【有袋類】 有袋類は腹部に袋があり、子供は出産後この袋のなかに入って育つ。 カンガルーやコアラなどがその代表的なもので、オーストラリアを中心に進化した。 一部、南アメリカでの生息が確認されている。 【有胎盤類】 斎藤成也著「遺伝子は35億年の夢を見る」からの引用である次の文章は、哺乳類への進化の内容を明確に示している。 『 有胎盤哺乳類に至る胎生はどのようなステップで進化してきたのだろうか。爬虫類でもマムシなどは卵胎生といって、体内で卵からの孵化が起こる。おそらく哺乳類の祖先生物でも、まず卵胎生から出発したと考えられる。次は膣と子宮の形成である。単孔類では鳥類や爬虫類と同様に、総排出腔(尿や便を排出する管)に卵管が開口しているが、総排出腔に近い卵管の部分が少し膨らんでいる。対応関係から言って、これは子宮に相当する。ただし、卵巣が左右にひとつづつあるのに対応して卵管も二本あるので、この原始的な子宮は左右にある。これは有袋類でも同様であり、彼らの雌には膣が二個ある。有胎盤哺乳類ではこれら二個が融合して一個の膣となったが、子宮はウサギのように明確に二個に分かれているものから、霊長類のように子宮も融合してひとつになっている種類までさまざまである。そして、ヒトの胎生システム進化のおそらく最後の段階が、胎盤の誕生であろう。胎盤は胎児の細胞の一部が子宮壁中で増殖してできるものだが、多くのホルモンを分泌し、またへそに通じる血管も胎盤の組織から生じる。』 【遺伝子の研究から】 遺伝子の研究により、生物進化の系統樹が少しずつ明らかにされてきている。 哺乳類7種の系統樹 ミュンヘン大学のセバンテ・ペーボ氏のグループが、ミトコンドリアDNAの全塩基配列を研究して、次の系統樹を発表した。(斎藤成也著「遺伝子は35億年の夢を見る」から。) この系統樹では、横軸は時間ではなく遺伝子の変化量に比例しているので、右端がそろっていない。 |
┌─── ラット ┌──┤ │ └── マウス ┌┤ ││┌────── ヒト │└┤ │ │ ┌── アザラシ ─┤ └─┤ │ │┌─ ウシ │ └┤ │ └── クジラ │ └───── オポッサム(南米から北米に分布する有袋類) (注:等幅フォントでご覧ください。) |
この系統樹からわかることは、次のとおり。 ・有袋類であるオポッサムが、最初に他の有胎盤哺乳類と枝分かれしている。 ・有胎盤哺乳類のなかでは、ラットとマウスのグループ(ねずみの類)が、先に枝分かれしている。 ・クジラは、ウシと近い関係となっている。骨の形の比較からも、あり得ることだといわれていた。 【参考ページ】 遺伝子のしくみ 【LINK】 Momoncyo Land ≫ Animal Gallery どうぶつ図鑑 魅惑の地〜オーストラリア大陸〜 ≫ 有袋類と単孔類の楽園 NHKオンライン ≫ 地球・ふしぎ大自然 ≫ 生きもの地球紀行 放送カレンダー ≫ アルゼンチン オポッサム 参考文献 「遺伝子は35億年の夢を見る」斎藤成也著、大和書房、1997年 インターネットの「goo辞書:国語辞典」から「単孔類」(三省堂提供「大辞林 第二版」より) NHKテレビ「アッテンボローがいざなう 知られざる ほ乳類の世界(先行放送、 特別ダイジェスト版) 」2003年7月21日放送([原題] The Life of Mammals [制作] BBC/Discovery(イギリス=アメリカ 2002年)) NHKテレビ「ほ乳類・大自然の物語(1)〜勝者のデザイン」2003年7月21日放送([原題] The Life of Mammals [制作] BBC/Discovery(イギリス=アメリカ 2002年)) 更新 2003/8/8 |