300万年前より古い人類化石発見についての新聞報道300万年前ころより後の人類化石については研究が進んできたが、これより前の期間についてはまだよくわかっていない。この期間については、化石が十分に発見されていないからであり、また、発見されても骨格のごく一部であったり、研究者によって判断が分かれることも多いからである。 人類の誕生は、生物の遺伝子についての研究およびこれまでに発見されている化石などから判断して、およそ800万〜500万年前とみられ、アフリカの類人猿のなかから人類へ進化したものと考えられている。 人類最古とみられる化石の発見が現在でも続いており、ときおり、権威ある科学雑誌に発表されて新聞報道されることもある。300万年前より以前の人類化石発見については、次のものが新聞報道されている。 【トゥーマイ猿人】 2002年7月11日付北海道新聞によると、チャドやフランスなどの国際共同研究チームが、中央アフリカのチャド北部の砂漠で、約700万年前と推定される猿人の化石を発見したことが英科学誌ネイチャーに発表された。現地の言葉で「生命の希望」を意味するトゥーマイ猿人と名づけられた。(注:ただし、頭骨の特徴がゴリラの祖先に近く、人類の化石ではないのではないかとの反論も出ている。) 発見されたのは、ほぼ完璧な頭骨1個と下あごの断片2個、歯3本。化石のあった地層は放射性同位元素による年代測定ができなかったため、同じ地層から出たゾウの祖先などの化石を基に600万〜700万年前と推定された。年代測定は若干正確性を欠くが、研究チームは700万年前に近いとしている。約600万年前とされるオローリン(ミレニアム・アンセスター)よりも古く、猿と人類の分岐点に更に近付くものである。 頭骨の大きさや後頭部の形は現在のチンパンジーに似ている反面、顔はアウストラロピテクスに似ているという。類人猿に比べて犬歯が小さく、先端から平らにすり減っていることや、歯のエナメル質が厚いことから猿人の化石と結論付けされた。 発見場所は、当時は現在の約80倍も大きかったとされるチャド湖の湖岸で、林もあり、さまざまな動物がくらしていたとみられる。 参考文献:北海道新聞 2002年7月11日朝刊。 Nature Japan ≫ Toumai The Face of The Deep BioNews from Nature Japan and Applied Biosystems ≫ 進化:本当に最古の人類化石なのか? トゥーマイに寄せられる疑問の声 中日新聞 ≫ 「トゥーマイ猿人」化石発見 複雑化する人類の起源 毎日新聞 ≫ 毎日の視点 ≫ 科学環境ニュース ≫ 生物・バイオ・地球科学 ≫ 600万〜700万年前、世界最古の人類化石 【ミレニアム・アンセスター】 2000年10月末に、約600万年前のものと考えられる猿人の骨がケニアで発見され、ミレニアム・アンセスターと名付けられた。 現生人類と類人猿とが枝分かれしたのは、DNAの分析などから約500万〜600万年前とされており、この分岐時期に迫る発見である。 ミレニアム・アンセスターは、「千年紀の祖先」という意味で、ケニアとフランスの合同チームが、2000年10月末に、アフリカのケニア北西部にあるバリンゴで、長さ30cmの大腿骨や足・手・指の一部・歯のついたあごの化石を発掘した。 「少なくとも男女の五体で、年齢は六歳から三十歳まで。チンパンジーほどの大きさの成人の大腿骨は食いちぎられたあとがあり、他の肉食動物に食べられたとみられる。手や指の形から木を機敏に登ることができ、歯の形状や摩耗の程度から堅い皮の果実を主食にしていたと推定される。 」としている。 参考文献:中日新聞 CHUNICHI WEB PRESS 2000/12/05の記事「最古の猿人化石発見」 【?】 2001年7月12日付北海道新聞によると、約520万から580万年前の猿人化石とみられる骨がエチオピアで発見された。発見したのは、アメリカカリフォルニア大学とエチオピアの共同研究グループで、エチオピアのアディスアベバの北東約230キロの地点である。歯の残った顎の骨や、腕や脚の骨などで、少なくとも5体の猿人のものとみられている。 【ラミダス猿人】 ラミダス猿人は、諏訪元(東京大学理学部助教授(当時))が、1992年にアフリカのエチオピアのアラミスという地域で、その歯を発見した。その後、いくつかの骨が断片的に発見されている。約440万年前のものと考えられている。ラミダス猿人は歯の形態が非常に原始的で、類人猿からヒトとチンパンジーに分岐した直後の人類ではないかと考えられている。この地域に分布する化石などから、「ラミダス猿人は木が茂っているような場所で生息していた動物群の一員で、生息数はその群の中では多い方ではなかった」と考えられている。二足歩行していた可能性が高いが、樹上生活も行っていたかどうかはまだわからない。歯の状態から、雑食であったと考えられる。 【ケニアントロプス・プラティオプス】 2001年3月22日付北海道新聞によると、アフリカのケニア北部にあるトゥルカナ湖畔で、350万年前の地層から新種のヒト科の頭蓋骨化石が発見されたことが発表された。頭の形は原始的だが顔は平らでより人間に近い形態をしている。ケニアントロプス・プラティオプス(「ケニアの平らな顔の人」の意)と名付けられた。 アファール猿人と同時代に、別の系統の猿人が発見されたことにより、ヒト科の進化の系統樹が見直されるかもしれない。 【参考ページ】 霊長類の誕生 人類の誕生 【LINK】 社長室 ・・・片岡電業社社長の片岡和憲さんのページ。このなかで、ライアル・ワトソンの「水生のサル説」が紹介されています。非常に興味深いです。 参考文献 「ヒトはどこからきたか 最新考古学の世界」河合信和著、朝日新聞社(朝日ジュニアブック)、1991年 「新しい人類進化学」埴原和郎著、講談社ブルーバックス、1984年 「Newton '95年3月号」から「最古の人類化石を発見した(諏訪元助教授へのインタビュー)」教育社、1995年 「Newton '98年3月号」から「飛躍とマンネリをくりかえしてきた人類史(馬場悠男著)」教育社、1998年 「世界の歴史1 人類の誕生」今西錦司他著、河出文庫、1990年 「Japan Chronik 日本全史」講談社、1991年 「年表式世界史小辞典」文英堂、1988年 「朝日=タイムズ 世界考古学地図 人類の起源から産業革命まで」クリス・スカー編集、小川英夫・樺山紘一・鈴木公雄・青柳正規日本語版編集参与、朝日新聞社、1991年 中日新聞 CHUNICHI WEB PRESS 2000/12/05の記事「最古の猿人化石発見」 北海道新聞。2001年3月22日、2001年7月12日、2002年7月11日の記事から。 更新 2003/8/22 |
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