日本の神道日本の神道は、太古のアニミズムにはじまる。太陽、雨、風、雷、海、湖、山、森、岩、石などに、神聖なものを感じ取った。細石(さざれいし)が巌(いわお)に成長するという考えも、ここから由来する。 やがて、卑弥呼などにみられる神官(シャーマン)のような存在が出現し、神社もつくられた。 一方、天皇家や豪族たちの祖先崇拝が行われるようになり、氏神というかたちで表れてくる。 奈良時代に、東大寺の大仏がつくられたとき、宇佐八幡宮(大分県宇佐市)の巫女が朝廷に大仏づくりを見守りたいと申し出て許され、東大寺のそばに手向山八幡宮が建てられた。また、法隆寺には龍田神社が、平安時代になると延暦寺に日吉神社が、金剛峯寺には丹生都比売(にうつひめ)神社が、仏を守る神として建立された。 (注:宇佐八幡宮の巫女は、道教の影響によるとみられる呪的医術で信者をあつめており、大和まで赴いて大君(天皇)の病気回復を祈ることがしばしばあった。) 平安時代には、日本の神々は仏や菩薩が姿を変えたものであるとする 「本地垂迹説(ほんじすいじゃくせつ)」が行われた。室町時代には、逆に仏や菩薩は日本の神々が姿を変えたものであるとする「逆本地垂迹説」を唱えた吉田兼倶(かねとも)が吉田神道をかたちづくった。吉田神道の経典のひとつ「神道由来記」では、「天地に有りては神と云い、万物に有りては霊と云い、人に有りては心と云ふ。心は則ち神明の舎なり。」といっている。 江戸時代には儒学(特に朱子学)や仏教寺院が政治と強く結びついていたが、本居宣長や平田篤胤らを中心とする国学者は、日本古来の精神を追求し、「復古神道」と呼ばれる。 明治維新により「神仏分離」が行われたが、「廃仏毀釈」となって寺院、仏像、仏画、経典、什器など多くが破壊された。また、山岳信仰や霊場信仰も弾圧された。神道は、天皇を「現人神」とする国家神道となるが、第二次世界大戦の敗戦により終わりをとげる。 現代の神道は、次の4つに分類される。 ・神社神道 神社を中心とする祭祀や儀式。 国家神道の消滅により、民間組織として伊勢神宮を本宗とする「神社本庁」が設立され、都道府県には「神社庁」を置いて八万近くの神社が所属したが、三万余りの神社は所属しなかった。 ・民間神道 各地の風俗・習慣・民族行事。初詣、七五三、成人式などを含める。 ・皇室神道 天皇家を中心におこなわれる祭祀。新嘗祭など。 ・教派神道 幕末から明治にかけて誕生し、組織的な教団により活動しているもの。政府の弾圧を受けて解散したものもあるが、公認されたものは1942年に強制的に13派に編成された。 実行教、扶桑教、御嶽教 〜 山岳信仰がもと 黒住教、金光教、天理教 〜 民間信仰を基に教祖が創設 禊教、神習教 〜 禊祓行法による修行 神道修正派、大成教(神道大成教) 〜 伝統的な神道が儒学の影響を汲んだもの 大社教(出雲大社教)、神理教、神道本局(神道大教) 〜 復古神道のながれを汲むもの 第二次世界大戦後は、政教分離が行われ、信仰の自由が認められたことから、新たな宗教団体が誕生しているほか、上の13派から分離して誕生した宗派もある。 現代の日本人はほとんどが無宗教とされているが、基本的な発想には古来からの神道の思想が色濃く影響している。 多くの日本人は、次のように考えていると言ってもよいのではないか。 「自然界のさまざまなものに霊的なものを感じ、人間はその自然界のなかで生きている。現在の自分や社会があるのは、多くの祖先たちのおかげであり、今を生きている者はこれをより良いかたちで子孫へ伝えていかなければならない。したがって、今の人生を一生懸命に生きなければならないのだ。」 こうした考え方は、一神教のような神を必要としない。日本人には信仰がないとよく言われるが、信仰がないのではなく、一神教とは異なる思想で生きているからではないだろうか。 (参考) 家庭で神様をおまつりするときの神拝詞(しんぱいし。神を拝む言葉)を、阿部正路著「改訂版 神道がよくわかる本」から引用しておきます。 「掛(か)けまくも畏(かしこ)き 天照大御神(あまてらすおおみかみ) 産土大神(うぶすなのおおかみ) 天地諸々(あめつちもろもろ)の大神等(おおかみたち)の大前(おおまえ)を拝(おろが)み奉(たてまつ)り慎(つつし)み敬(うやま)い白(もう)さく 万(よろず)の禍事(まがごと) 罪穢(つみけがれ)あらむをば祓(はら)い清(きよ)めて 心(こころ)にかかる雲(くも)もなく 大神等(おおかみたち)の御教(みおし)えのまにまに 直(なお)き正(ただ)しき真心(まごころ)もちて 誠(まこと)の道(みち)に違(たが)うことなく 負(お)い持(も)つ業(わざ)に励(はげ)ましめ給(たま)い 家(いえ)をも身(み)をも健(すこや)かに栄(さか)えしめ給(たま)えと 恐(かしこ)み恐(かしこ)み白(もう)す」 【LINK】 神道 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 神社 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 皇室神道 ・高谷朝子 著「宮中賢所物語」聞き手:明石伸子、書き手:太田さとし、ビジネス社、2006年 ![]() ![]() 日本の国歌 ![]() ![]() ![]() 日本人と神道 ![]() ・山村明義 著「神道と日本人 魂とこころの源を探して」新潮社、2011年 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() その他 ![]() ![]() ![]() 参考文献 「3日でわかる宗教」ダイヤモンド社編、山折哲雄監修、ダイヤモンド社、2000年 「日本神道の現代的意義」王守華著、本間史訳、農山漁村文化協会、1997年 「日本人なら知っておきたい 神道」武光誠著、河出書房新社(KAWADE夢新書)、2003年 「改訂版 神道がよくわかる本」阿部正路著、PHP研究所、1997年 「広辞苑 第二版」新村出編、岩波書店、1969年 更新 2015/1/9 |