教育基本法改正 論議へ(2000年1月25日 朝日新聞)
文相 来月にも中教審諮問
文部省は二十四日までに、中央教育審議会(根本二郎会長)で、教育基本法の改正の是非を含めた議論を始める方針を固めた。二月中にも、時代の変化に応じた新しい教育のあり方について文相が中教審に諮問する方向で検討しており、それを受けて、教育基本法が果たしてきた役割やこれからの教育の規範としてふさわしいかどうかなどについて話し合う見通しだ。教育勅語に代わる戦後教育の理念を表し、憲法と並んで戦後民主主義の象徴となってきた教育基本法が中教審の議論の対象として取り上げられるのは初めて。ただし、中教審委員の中には教育基本法見直しに消極的な意見もあり、連立与党内でも意見が分かれているため、実際の法改正に結びつくかどうかは議論次第だ。
教育基本法については、小渕恵三首相が「生涯教育や地域教育、家族教育などの視点がはめ込まれていない。そうした点を含め研究してみたい」などと、見直しに前向きな発言を繰り返している。小渕首相が自自公合意に基づいて三月にも発足させる「教育改革国民会議」でも、論点の一つに浮上すると見られており、並行して議論が進められることになりそうだ。
中教審への諮問内容は「高度成長には大きな役割を果たしてきた戦後教育だが、時代の変化に対応できなくなってきている」という問題意識をもとに、今後の教育のあるべき姿について幅広い検討を求める内容になる方向だ。
中曽根弘文文相は、文相就任以前から、教育基本法見直しに積極的で、河村建夫文部政務次官も自民党の教育改革実施本部の教育基本法等研究グループの代表を務めていた。こうしたことが、教育基本法を正面から取り上げることに必ずしも積極的ではなかった文部省を後押しする形になった。このため、「愛国心」や「伝統」といった内容を盛り込みたいという自民党を中心とする立場からの議論が勢いを持つ可能性もある。
しかし、教育基本法の見直しは、中曽根文相の父親の中曽根康弘元首相が、臨時教育審議会を通じて取り組もうとして果たせなかっ経緯がある。教育の「憲法」とも言える基本法の見しに実際に着手しようとれぱ、教育界にとどまらず強い反発がまき起こることは間違いない。
教育基本法 一九四七年三月三十一日に施行された。前文と十一の条文からなる。教育の目的、方針、機会均等、義務教育、男女共学などが定められている。戦前の教育勅語に代わる日本教育の理念を表している。前文では新憲法の理想に触れた上で、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない」とうたっている。