所沢高 「君が代」半数が着席

(2000年3月9日 朝日新聞)

 

「自分たちの代で混乱を終えたい」卒業生たちが最後まで悩み抜いた結論が卒業式への出席だった。県立所沢高校で八日あった卒業式には九割近い卒業生が出席した。校長主導の厳粛な卒業式と生徒手作りの卒業記念祭という二年前からの並立は続いたが、式への出席めぐって混乱を招いた卒秦行事の分裂は事実上なくなった。卒業生は「自分たちで考えて行動する所高の校風を守ってほしい」と後輩たちに呼びかけた。

 ●9割が出席

 卒業式には卒業生三百九十五人のうち三百四十五人が出席した。体育館の壇上右手のスタンドに日の丸が掲げられ、開催の言葉で全員が起立。「国歌斉唱」のアナゥンスが流れた。

 生徒たらがざわめき、低い音量で「君が代」のテープが流れ始めた。半数の生徒たちが次々と席に着いた。立ったま生徒生掟たちも隣と話すなどし、多くは斉唱することはなかったという。

 卒業生の一人は「日の丸・君が代を押しつけられたとは思わない。ただ、君が代の歴史的な背景を知った今は、歌いたくなかった」と話した。「前校長への反抗心で昨年は式に出なかったが、今年は抑しつけでないから歌った」と話す卒業生もいた。

 三十分足らずで終了した卒業式の後に聞かれた生徒主催の「卒業記念祭」。

 「DREAM IS THERE(夢はそこにある)」と書かれた壁画に出迎えられ、ほとんどの卒業生が出席した。ダンス、コント、バンド演奏など、在校生有志が思い思いのパフォーマンスを演じた,

 長沢校長も出席し、「みなさんの最後の行事,楽しんで下さい」と話した。

 ●歩み寄り

 所沢高校PTAの清水康幸会長は「経緯はあったが、結果的にいい形で終えた。今後は何の問題もなくなるだろう」と、卒業記念祭を終えて語った。

 生徒が考えて行動したことを最大限尊重する「生徒の自主・独立」の校風が、受け継がれてきた。しかし、前校長が二年前の入学式で日の丸掲揚と君が代斉唱を強行したことから混乱が始まった。

 昨年十一月、国旗・国歌法の成立で矛盾が生じた「日の丸・君が代に関する決議文」が生徒総会で破棄された。

 昨春赴任した長沢校長は「個人の思想・信条の自由に立ち入らない」との意向を、生徒会に伝えてきた。

 校長と管理職だけで内容を決めた昨年までの卒業式と違い。今年は教職員で議論して式次第を決めた。「国歌斉唱」は長沢校長が「ぜひやりたい」と要望し、式次第に組み込まれた。

 

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