卒業式の現場に変化(2000年3月16日 赤旗新聞)
「日の丸・君が代」が法制化されて初めて迎える卒業式。昨年の実施率の低さが全国三番日といわれた神奈川県の県立高校では、文部省・県教委などによる強制的介入で「国旗揚揚・国歌斉唱」率は大幅に引さ上げられましたが、その実態は。
「『日の丸』揚揚は全校で、『君が代』斉唱は昨年度の一五・七%から九七・五%になりました」
県教委が二日の県議会で、自民党議員に答えました。
この日までに全日制県立高校百六十六校のうち百五十七校で卒業式が終わり、「君が代」は四校を除いて歌われた、といいます。
自民党県連は五十校の卒業式に県・市議を出席させる方針を決定。ある高校では、自民党から「○○議員が出席するので対応をよろしく」との電話が校長にかかり校長がその事実を職員会議で報告すると、「君が代」に賛成する職員も「とんでもない介入だ」と反発。議員は結局、「迷惑をかけた」と姿をみせなかったといいます。
こうしたなかで多くの高校で「日の丸・君が代」が押しつけられました。しかし、父母や市民団体による押しつけ反対の申し入れや対話の広がりも反映して学校現場では、新たな変化が生まれています。
川崎市内のA校では「開会に先立ち、国歌を斉唱します。賛同される方はご起立のうえ唱和ください」と司会役が案内,結果として、歌いたくない生徒や保護者は着席したままでよいことを伝えました。起立した生徒は卒業生、在校生ともに二、三人。保護者は約三百人中、三十人前後にとどまりました。
横浜市内のB校では、学校長と教職員が話しあった結果、「歌わない自由」の選択があることを生徒にきちっと伝えることで合意。事前に担任をつうじて、@生徒諸君には起立して歌う自由がある、A着席したまま歌わない自由もある―どちらを選択するかは各自の権利である、との 「校長見解」を示しました。
当日は一部の生徒が起立しましたが大半は着席したままでした。
湘南地区のC校では、校長が事前に生徒にたいし「国歌は国際的にも尊重される。歌ってほしい」としながらも、「歌いたくなければマナーとして起立だけでもしてほしい。それも嫌なら着席したままでよい」と説明。保護者にたいしても当日、生徒に説明したことを伝えました。同校によれば三分の一が着席したままでした。
C校の校長は「国会で議論になった歌わない自由、内心の自由も意識しました」と話しています。
北海道、砂原町「国旗、国歌嫌いな人間は国外へ」発言
道教組が町長に撤回要求
(2000年3月15日 赤旗新聞)
北海道砂原町の長谷保和町長が、今月六日に開かれた議会で、「国旗、国歌が嫌いな人間は国外へ」「国旗を揚げたくない先生は町立学校にいらない」などと発言していた問題で長谷町長は十四日、同町役場で、道教組(全北海道教職員組合)、全教渡島(全渡島教職員組合)が求めていた発言の徹回などの申し入れに回答しました。長谷町長は、「国旗」「国歌」とは、一般的な意味で使用したとのべ、それを国民が尊重する必要があること、教育の場でも教えていくことが重要だとの意味で発言したと説明。
また、「日の丸」「君が代」で国民的な意見が分かれていることは認識しているとし、「国民的議論で、日の丸、君が代が変わることもあるだろう」とのべました。
道教組、全教渡島は、町長の発言が思想・信条の白由を保障した憲法に違反するもので、教育への介入だとして、▽発言を撤回すること、▽憲法を順守し、町民の思想・信条の自由を守る立場を表明すること▽教育の人事異動は憲法、教育基本法にのっとり北海道教育委員会の人事異動要綱にもとづいておこなうことなどを求めていました。
道教組の若山俊六委員長は、法制定化で「日の丸」「君が代」を国民におしつけることは、内心の自由を侵すものとして、長谷川町長に発言の撤回を求めました。同町長は、「見解の相違だ。発言は撤回しない」とこたえました。申し入れには、日本共産党の後藤隆町議も同席しました。