V.小玉博司宛小口のはがき

このはがきは岡谷市の小口家に現存し、今津の資料館にはその複製写真がある。このはがきの日付印はーー滋賀・今津6・6・28 后9−12−−とある。葉書は私製葉書で白砂青松の雄松の風景がスケッチされている。

昨日は猛烈な順風で殆ど漕ぐことなしに雄松迄来てしまった。
雄松は淋しい所で、松林と砂原の中に一軒宿舎があるだけだ。羊草の生へた池の中へボートをつないで夜遅くまで砂原に寝ころんで月をながめ、美人を天の一方に望だ。今朝は網引をやって面白かった。今夜はこの今津に宿る。

小玉博司宛のこのはがきを素直に読めば大正6年6月27日の第一日は雄松に泊まり、翌日は余裕を持って朝は網引きもしてから周航の途につき、二日目今津に着いた夜早々に投函したものと受け取れる。小玉博司は次節でも明らかなように小口の親友であり、この内容は文字通りに受け取るべきものであろう。このはがきは宿泊第二夜が今津であったことの有力な資料である。次ページへ続く