中国近代史映画
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○「阿片戦争」1997・中国
◇スタッフ
○監督:謝晋
◇キャスト
鮑国安(林則徐)、蘇民(道光帝)、林連昆(キ善)、ボブ=ペック(デント)、デボラ=ビューモント(ヴィクトリア女王)ほか
◇ストーリー
時は清代。イギリスが輸出してくるアヘンの害の蔓延に悩んだ道光皇帝は、欽差大臣・林則徐にアヘンの撲滅を命じる。林則徐は広州に出向き、不正役人を取り締まる一方、アヘンを没収・廃棄する。しかしこの行為は一部のイギリス人を激怒させ、「阿片戦争」を誘発することとなる。
◇うんちく
中国が香港返還を記念して製作した歴史大作。徹底した時代考証、アヘン廃棄や戦闘場面での大量動員が目を奪う。割と視点は客観的で、イギリス人の良識派も登場させるなど気を使っている観も。林則徐もヨーロッパ文化に関心を示す人物として描かれ、彼の政敵で「売国奴」呼ばわりされる人物にも、それなりに理解を示している。意外にイギリスのシーンが多く、ビクトリア女王なんかも登場する。
○「ウォーロード/男たちの誓い」投名状/2007年・香港/中国
◇スタッフ
○監督:ピーター=チャン
◇キャスト
ジェット=リー(パン=チンユン)、アンディ=ラウ(アルフ)、金城武(ウーヤン)、シュー=ジンレイ(リェンション)ほか
◇ストーリー
19世紀、清朝は太平天国の乱により混乱状態に陥っていた。官軍の敗戦の将パン=チンユンは盗賊集団に身を投じ、そこでアルフ・ウーヤンの二人と義兄弟の契りを結んで仲間たちと共に官軍に加わり、太平天国軍と戦う。各地を転戦し手柄を挙げて行く三人だったが、次第にその関係は破局へと向かってゆく。
◇うんちく
中国では有名な怪事件「馬新貽暗殺」をモチーフにしたもので、これも何度目かの映像化だが大規模で派手でかつ悲惨さを強調した戦争アクションに仕立てている。原題の「投名状」とは山賊仲間に入るために殺人をして俗世と縁を切る誓いを立てるもので「水滸伝」でも出てくるもの。香港中国映画を代表する三大スターが義兄弟となって共に戦い、なおかつ破局してゆく悲劇を熱いテンションで描いた豪華作。
○「蒼穹の昴」2010・日中合作
◇スタッフ
○監督:汪俊○脚本:楊海薇、黄珂○原作:浅田次郎
◇キャスト
田中裕子(西太后)、余少群(李春雲)、周一囲(梁文秀)、張麗頴(李玲玲)、(張博(光緒帝)、殷桃(ミセス・チャン)、小澤征悦(岡圭之介)、薛勇(袁世凱)ほか
◇ストーリー
貧民の子・李春雲は母親を助けようと自ら去勢して宦官となり、やがて絶大な権勢をふるう西太后のお気に入りとなる。その李春雲と兄弟同然に育った梁文秀は科挙に首席合格して政治中枢に入り、光緒帝が進める近代化改革に力を注ぐ。しかし急ぎ過ぎた光緒改革は行き詰まり、保守派の巻き返しもあっていったん引退していた西太后が復帰して改革派は粛清される。李春雲は梁文秀を何とか救おうとするが…
◇うんちく
浅田次郎が「これを書くために小説家になった」とまで言った同名小説を原作に、日中合作の連続TVドラマとして制作された。演出・脚本などドラマ製作をほぼ中国側でやったためかストーリーは大きく変わったところもある(向こうから見ると不自然な部分もあるのだろう)。「おしん」で中国でも知られる田中裕子が西太后を演じたのも話題で、外見はかなりソックリと評判だったらしい。
○「北京の55日」1963・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ニコラス=レイ
◇キャスト
チャールトン=ヘストン、デビッド=ニーブン、エヴァ=ガードナー、伊丹十三ほか
◇ストーリー
20世紀初頭の中国。欧米列強は競って中国に進出し北京には列強各国の人間達が集まって住んでいた。しかしこれに武装集団「義和団」が反感を抱き、外国人追放を叫んで各国公使館を包囲、攻撃を開始する。これに西太后率いる清国政府も同調し、外国人らに宣戦を布告した。各国の人々の55日間の苦闘の日々が続く。
◇うんちく
いや、なんというか今では絶対出来ない視点の映画である。完全に構造は「野蛮人VS文明人」である。「義和団」が乱暴なのは認めるが、そもそもなんで各国の人間がやたらに中国にいるのか社会背景の説明はほとんどない。そうした時代性をヌキにしてもストーリーはいささか平板で、意味のない妙なアクションも多い。北京を模した大規模セットで展開される戦闘シーンが敢えて言えば見物か。そうそう、故・伊丹十三が俳優として出演し、日本人「柴大佐」役を演じている。
○「砲艦サンパブロ」1966・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ロバート=ワイズ
◇キャスト
スティーブ=マックイーン(ホールマン)、リチャード=アッテンボロー(フレンチー)、リチャード=クレンナ(コリンズ)、キャンディス=バーゲン(シャーリー)、マラヤット・アンドリアン(メイ・リー)、マコ=イワマツ(ポーハン)ほか
◇ストーリー
1926年、外国勢力排斥運動が広がる中国にやって来たアメリカの水兵ホールマンは長江に浮かぶ砲艦サンパブロに赴任した。サンパブロには多くの中国人が出稼ぎで乗り込んでおり、我の強いホールマンは中国人アメリカ人双方の乗組員とたびたび衝突する。ようやく気持ちを通じ合った中国人ポーハンは排外運動の暴徒に殺され、唯一の友人フレンチーも中国人の娘メイリーを身請けして結婚するが悲劇に終わる。孤立するホールマンは宣教師のシャーリーと恋に落ちるが…
◇うんちく
リチャード=マッケナのベストセラー小説を原作にした3時間の大作。製作当時の中国でロケが出来るわけもなく、香港や台湾で撮影されている。1920年代中国の混沌とした空気はよく伝わってくるが、映画では登場人物たちの立ち位置がもう一つハッキリせず、ただただ混沌とした話が長時間続く印象。作り手としては製作当時のベトナム戦争を念頭に他国に首を突っ込む帝国主義政策を批判してはいるようだが…
○「ラストエンペラー」1987・イタリア・イギリス・中国
◇スタッフ
○監督:ベルナルド=ベルトルッチ○撮影:ヴィットリオ=ストラーロ○音楽:坂本龍一、デビッド=バーン、スー=ソン
◇キャスト
ジョン=ローン(愛新覚羅溥儀)、ジョアン=チェン(婉容)、ピーター=オトゥール(ジョンストン)、坂本龍一(甘粕大尉)、マギー=ハン(川島芳子)ほか
◇ストーリー
1950年、戦争犯罪人として収容所に入れられた溥儀は、尋問を受けながら自らの半生を回想していく。わずか三歳の溥儀は西太后に呼び出され、清の皇帝に即位した。そして辛亥革命で帝位を追われるが、その後も皇帝としての生活を続け、家庭教師ジョンストンに教えを受ける。自ら宮廷改革を試みる溥儀だったが、クーデターにより紫禁城を追い出され、日本の庇護下に入ってしまう。そして満州国で帝位に返り咲くが、実際には日本の傀儡に過ぎなかった。
◇うんちく
イタリアの巨匠・ベルトルッチ監督が作り上げた、中国最後の皇帝・溥儀の数奇で波乱に富む一代記。現実の収容所生活と回想場面を交互に見せる巧みな脚本、名カメラマン・ストラーロの撮った美しい映像、坂本龍一らの印象的な音楽で見事アカデミー作品賞を受賞した。細かいことを言えばやや事実と離れる部分もあるのだが、一本の映画としての完成度は高い。
○「火龍」1987・香港
◇スタッフ
調査中
◇キャスト
梁家輝(溥儀)、パン・ホン(李淑賢)、王鉄成(周恩来)ほか
◇うんちく
原題は「溥儀的後半生」。「ラストエンペラー」よりも彼の後半生に焦点を絞っている。収容所から出た溥儀が再婚し、その後の「文化大革命」の標的とされるあたりまで描いている。溥儀がよりコミカルで、こちらの方がリアリティがある。
○「末代皇帝」1988・中国TVドラマ
◇キャスト
陳道明(溥儀青年時代)、朱旭(溥儀老年時代)、羅歴歌(婉容)、黄月美(李玉琴)、楊斌(溥傑青年時代)、胡浩(吉岡安直)ほか
◇うんちく
上記映画版とほぼ同時期に中国国内で製作された大河ドラマ。溥儀の即位から辛亥革命、宮廷改革、満州国建国、東京裁判、戦犯収容所生活といった溥儀の半生を長時間を生かして克明に描いていく。本家中国の製作だけに溥傑が監修にあたるなど映画版より史実重視の姿勢は強いが、さすがにまだ文革は扱えなかったとみえ、収容所を釈放されて北京で周恩来に会見するところで終わっている。
○「流転の王妃、最後の皇弟」2003・テレビ朝日大型ドラマ
◇スタッフ
○監督:藤田明二○脚本:龍居由佳里
◇キャスト
常盤貴子(嵯峨浩)、竹之内豊(愛新覚羅溥傑)、反町隆史(桜井哲士)、王伯昭(溥儀)、劉丹(婉容)、段田安則(工藤正二)、木村佳乃(ハル)、竹中直人(甘粕正彦)、江角マキコ(川島芳子)、天海祐希(李香蘭)ほか
◇ストーリー
名門華族嵯峨家の令嬢・浩は軍部の思惑によって留学中の満州国皇帝溥儀の弟・溥傑と見合いし結婚させられが、政略結婚ながらも浩と溥傑は互いに深く愛し合い、日中両国の架け橋となることを誓い合う。やがて満州に入った二人だったが、満州国の実態は日本による支配にほかならず、間もなく日中戦争が開始される。やがて満州国は崩壊、浩と溥傑は離れ離れとなって互いに流転の人生を送る。
◇うんちく
テレビ朝日開局45周年ドラマスペシャルとして製作された2夜連続・5時間半に及ぶ大作。溥儀の弟・溥傑とその妻・浩の波乱に富んだ生涯のドラマ化で、政略結婚夫婦の純愛をメインにしつつも中国ロケもふんだんに盛り込み大作感はあった。実在人物の「ちょっと出るだけ特別出演」がやたらに多かったのも特徴。
○「孫文」1986・中国
◇スタッフ
○監督:ティン=インナン
◇キャスト
劉文治(孫文)、大和田伸也(宮崎寅蔵)ほか
◇ストーリー
清朝を打倒し近代国家を作ろうとする革命家・孫文。彼はハワイへ、そして日本へ渡り、中国人の同志や宮崎寅蔵ら日本人達の協力を仰ぎ、次々と蜂起を起こす。苦労の末「辛亥革命」となり孫文は臨時大総統に迎えられるが、革命は袁世凱によって奪われ同志も次々と非命に倒れて行く。孫文は再び革命を起こそうと広東で再起を図る。
◇うんちく
原題は「孫中山」。辛亥革命の指導者・孫文の半生を描いた大作だが、日本公開バージョンはかなり編集された印象(日本でのシーンだけ妙に長い)。大和田伸也ら日本人俳優も多数出演し日本でのロケも行われていて、孫文と日本の関わりの深さが分かる。終盤には毛沢東・蒋介石のソックリさんもチラッと登場。
○「孫文-100年先を見た男-」夜明2006・中国/マレーシア
◇スタッフ
○監督:デレク=チウ
◇キャスト
ウィンストン=チャオ(孫文)、呉越(陳粹芬)、アンジェリカ=リー(徐丹蓉)、趙崢(羅肇麟)、王建成(徐博衡)ほか
◇ストーリー
1910年、九度目の蜂起の失敗し亡命先の日本も追われた孫文はマレーシアのペナンへ赴いた。この地の中国系有力者・徐博衡は以前から孫文の協力者だったが、あまりの失敗続きに資金援助を渋る。孫文は愛人の陳粹芬に支えられつつあくまで革命遂行の執念に燃え、ペナンの出稼ぎ中国人たちの労働運動にも立ち上がる。そんな孫文の命を狙って清朝の刺客が忍びよる。
◇うんちく
タイトルから予想される伝記映画ではなく、辛亥革命前夜に孫文がペナンの地で過ごした数ヶ月だけをテーマにした中国・マレーシア合作の小品。舞台と時期を絞ったために亡命活動期の孫文の「生きた日常」が鮮やかに描かれている。ウィンストン=チャオはこの映画を含め映画で三本、テレビドラマで1本孫文を演じた、まさに「孫文役者」である。
○「孫文の義士団」十月囲城2009・中国/香港
◇スタッフ
○監督:テディ=チャン
◇キャスト
ドニー=イェン(沈重陽)、ワン=チェシー(李玉堂)、レオン=カーフェイ(陳少白)、ニコラス=ツェー(阿四)、レオン=ライ(劉郁白)、ファン=ビンビン(ユエル)、クリス=リー(方紅)、ワン=ポーチエ(李重光)、メンケ=バータル(王複明)、胡軍(閻孝国)、チャン=ハンユー(孫文)ほか
◇ストーリー
1906年、清朝打倒の革命を計画する孫文が亡命先の東京から香港に入り、各地の革命同志との会合を行うことになった。これを知った西太后は暗殺団を派遣して孫文の命を狙う。孫文を支持する香港の資産家・李玉堂は孫文を守るため様々な腕利きの男女を集めて護衛につけた。孫文が香港に入った当日、暗殺団と護衛達の間で壮絶な死闘が展開される。
◇うんちく
設定自体は全くのフィクションだが、「実録」っぽく見せたアクション大作。映画後半の一時間はほぼリアルタイムに進行する大アクションの連続で、個性的な護衛達が命をかけて奮戦する展開は王道的カタルシスがある。百年前の香港を再現した大セット、モブシーンも見どころ。
○「1911」辛亥革命2011・中国
◇スタッフ
○監督:ジャッキー=チェン
◇キャスト
ジャッキー=チェン(黄興)、ウィンストン=チャオ(孫文)、リー=ビンビン(徐宗漢)、ジョアン=チェン(隆裕皇太后)、スン=チュン(袁世凱)、フー=ゴー(林覚民)、ユイ=シャオチュン(汪兆銘)ほか
◇ストーリー
20世紀初頭、清朝打倒の革命を目指す孫文は同志の黄興らと共に武装蜂起を繰り返し、失敗しては多くの同志を失ってゆく。しかし革命へのうねりは高まり、1911年10月10日の武昌蜂起をきっかけに孫文を大総統とする中華民国が成立、袁世凱との取引で清朝も打倒されることになる。
◇うんちく
辛亥革命百周年記念映画で、ジャッキー=チェンが出演および総監督という一見妙な取り合わせだが、内容は革命年表をそのまんま淡々と連ねたようなもの。犠牲となった革命家たちを称えることに重点が置かれて政権党の宣伝意図を感じるところだが、倒される清朝側の描写もかなり入っていてバランスはとれている。ジャッキーが唐突にアクションしたり、孫文役が「宋家の三姉妹」と同じとか、隆裕役が「ラストエンペラー」の皇后役だとか、細かいところが面白かったりして。
○「宋家の三姉妹」(原題「宋家皇朝」)1997・香港・日本
◇スタッフ
○監督:メイベル=チャン
◇キャスト
マギー=チャン(宋慶齢)、ミシェル=ヨー(宋靄齢)、ヴィヴィアン=ウー(宋美齢)、ウィンストン=チャオ(孫文)、ウー=シングォ(蒋介石)ほか
◇ストーリー
中国革命を支援する牧師チャーリー宋は新中国の女性を育てようと三人の娘をアメリカへ留学させた。帰国した三姉妹の長女靄齢は財閥の御曹司と結婚し、次女慶齢は革命家・孫文と恋に落ち結婚、三女美齢は蒋介石と結婚し、宋家は「宋王朝」とまで呼ばれるようになる。辛亥革命、孫文の死、日本の侵略、西安事件…中国の激動の現代史を三姉妹の運命を通して描く。
◇うんちく
孫文夫人と蒋介石夫人がいるだけでそのまま「歴史」になってしまう有名な三姉妹の物語の初の映画化。いわゆる「大河ドラマ」な話なので前半はやや刈り込みが目立つが、孫文が死ぬ辺りから三姉妹の愛憎が鮮明となり俄然盛り上がってくる。日中戦争で話はほぼ終わってしまい、毛沢東の大陸制覇・台湾逃亡などは詳しく語られないが、ちょっと政治的な配慮もあったかもしれない。音楽には喜多郎も参加、衣装デザインはワダエミである。
○「さらば、わが愛・覇王別姫」1994・香港・中国
◇スタッフ
○監督:チェン=カイコー(陳凱歌)
◇キャスト
レスリー=チャン(程蝶衣)、張豊毅(段小楼)、鞏利(菊仙)ほか
◇ストーリー
娼婦の子として生まれた小豆は京劇の養成所に入れられ、厳しい修行の末、京劇「覇王別姫」の虞姫役の人気女役となる。幼なじみの段小楼は項羽役で名コンビとなるが、小楼が娼婦の菊仙と結婚したことから三人の間に複雑な愛憎関係が生じてしまう。やがて時代は日中戦争、国共内戦を経て文化大革命の時を迎え、三人の関係は破局へと向かっていく。
◇うんちく
京劇役者達の人生を激動の中国現代史と絡めて描く大作。実際に文革を体験した陳凱歌監督の凄まじい文革描写も衝撃的だが、伝統芸能「京劇」の世界をじっくりと描き出し、女役の蝶衣(レスリー=チャン)の妖艶さも強烈。カンヌ映画祭グランプリ(パルムドール)を受賞し、中国映画の力強さを世界に印象づけた。
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