ロシア史映画
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Русь
 изначальная

(原初ロシア)
1985年/ソ連
ゴーリキー・フィルム・スタジオ
カラー映画(138分)
スタッフ○監督:ジェンナジ=ヴァシルエフ○脚本:ジェンナジ=ヴァシルエフ/ミハイル=ヴォルフォルメエフ○撮影:アレクサンドル=ガリビアン○美術:アルフレド=タランチェフ○音楽:アレクセイ=リュドニコフ○原作:ヴァレンチン=イワノフ
キャストボリス=ネヴゾロフ(ブセスラフ)、ウラジミール=アントニク(ラティドル)、リュミドラ=クルシナ(アーニャ)、イノケンティ=スモクチュノブスキー(ユスティニアヌス帝)、マルガリータ=テレコヴァ(テオドラ皇妃)、ユーリ=カティン=ヤルチェフ(プロコピウス)ほか
ストーリー6世紀、黒海北岸の大草原では多くのスラブ系部族が住んでいた。南の東ローマ帝国ではユスティニアヌス帝が内乱をおさえ、遊牧民ハザールをけしかけてスラブ系部族を攻撃させる。ハザールと戦って和解したスラブ族たちは結束して東ローマ帝国に戦いを挑む。 
解説イワノフの古代ロシア三部作小説の第一作の映画化。まだ「ロシア」ですらない6世紀段階の東スラブ族の生態をじっくりと映像化している。そこに東ローマ帝国のユスティニアヌス帝の話やらハザールの侵攻やらマニ教の布教やらいろいろと絡んでくるのでちと話が散漫な印象も受けるのだが、映像化が非常に珍しい時代と素材だし(特に東ローマ最盛期が見られるのが貴重)、素人目にだが時代考証もかなり正確な印象で、映像作りに手間暇かけているのが分かる。元ネタにされているのはユスティニアヌス時代に実在した歴史家プロコピウスの北方民族に関する記録で、彼自身も語り手として登場している。
メディア日本ではソフト化はおろか、公開された気配もない。


バトル・キングダム
〜宿命の戦士たち〜

"Ярослав. Тысячу лет назад"
"Iron Lord"
2010年/ロシア
アンノ・ドミニ・スタイル・エージェンシー
カラー映画(99分)
スタッフ○監督・撮影:ドミトリ=コロブキナ○脚本:マリナ=コシュキナ○音楽:ドミトリー=ダンコフ○製作:ワジム=ビルキン/オレグ=スルコフ
キャストアレクサンドル=イヴァシケビッチ(ヤロスラフ)、スヴェトラーナ=チュイキナ(ライダ)、アレクセイ=クラブチェンコ(ハラルド)ほか
ストーリー11世紀、キエフ公国ウラディミル1世の王子ヤロスラフはロストフに領地を持ち、支配を広めていた。現地には熊を信仰する部族やヴァリャーグ(ヴァイキング)の子孫たちなど様々な種族がおり、治安も不穏で統治は容易ではない。ヤロスラフは熊族の捕虜となるが族長の娘と恋に落ちて脱出、ヴァリャーグの盗賊たちと戦う。 
解説後のヤロスラフ1世(賢公)の若き日を描き、20世紀FOXが配給を手がけたこともあって珍しく日本でもソフトが出たロシア製中世歴史劇。先が読めずどんでん返しな展開は推理物めいている。キリスト教が支配的になる前の自然信仰やヴァイキングの北欧神話が入り乱れる宗教風土の描写がかえって新鮮で、異文化共存がテーマになってるあたりは今風(でもラストはキリスト教会建設なんだよな)。主人公の子孫が現在のヨーロッパ各国の王室にいると強調するラストなんかは現在のロシア流の「国威高揚」ともとれる。ところで原題は「ヤロスラフ、千年前」といったものだが邦題はあからさまにファンタジーRPG風味である(笑)。
メディアDVD発売:トランスフォーマ

アレクサンドル・ネフスキー
"Алекса́ндр Не́вский"
1938年/ソ連
モスフィルム
白黒映画(111分)
スタッフ○監督:セルゲイ=エイゼンシュテイン○脚本:セルゲイ=エイゼンシュテイン/ピョートル=パブレンコ○撮影:エドゥアルド=ティッセ○美術:イサク=シュネビリ/ニコライ=ソロヴィヨフ/コンスタンティン=エリセーエフ○音楽:セルゲイ=プロコフィエフ
キャストニコライ=チェルカーソフ(ネフスキー)、ニコライ=オフロプコフ(ブスライ)、アンドレイ=アブリコソフ(オレクシチ)、バーバラ=マッサリティノワ(ブスライの母)ほか
ストーリーモンゴルの支配下にあった13世紀のロシア。しかしその実力は次第に増しつつあった。そこへゲルマン人の侵略者が攻め込んでくる。ロシア人を率いるネフスキーは「氷上の戦い」でこれを打ち破る。  
解説映画史上の巨人・エイゼンシュテインが製作した歴史大作。時代はまさに第二次世界大戦中で、ロシア民族の愛国心高揚を図る国策映画であった点は否めない。ゲルマン人の大軍は明らかにナチス・ドイツをイメージしている。しかしさすがはエイゼンシュテイン、彼一流の映画文法を駆使した名シーンが目白押しだ(やはり「氷上の戦い」が凄い!)。しかし冒頭に登場するモンゴル人の役人の服装はどう見ても明代中国の官僚のものなのだが・・・嗚呼、西洋人から観るとモンゴルも中国もみな一緒。
メディアDVD発売:IVC

イワン雷帝
"Иван Грозный"
1944〜46年/ソ連
モスフィルム
白黒映画
第1部 99分
第2部 88分
スタッフ○製作・監督・脚本:セルゲイ=エイゼンシュテイン○撮影:アンドレイ=モスクヴィン/エドゥアルド=ティッセ○音楽:セルゲイ=プロコフィエフ
キャストニコライ=チェルカーソフ(イワン4世)、セラフィマ=ビルマン(エフロシニア)、パーヴェル=カドチニコフ(ウラジーミル公)、リュドミラ=ツェリコフスカヤ(アナスタシア妃)ほか
ストーリー15世紀のロシア。ツァーリ・イワン4世は民衆の支持を集めて、ライバルとなる他の皇族や大貴族達を倒し、権力を強めていく。  
解説これまた映画史上の巨人・エイゼンシュテインが製作した歴史大作で彼の遺作。ロシアを初めてロシアたらしめたとも言える「イワン雷帝」の生涯の映画化で、本来は三部構成。第二部で次第に暴君化していくイワン像が、明らかに独裁者スターリンと重なってくる。このために第二部で製作は中断され、まもなくエイゼンシュテイン自身が死去したため第三部は製作されなかった。当時としては貴重なカラーフィルムを入手し、第二部のラストの一部にカラー映像が使われている。このシーンを観た黒澤明がカラー作品製作に踏み切ったとの逸話も残る。「見栄」など歌舞伎の影響が濃厚に見られることでも有名。
メディアDVD発売:IVC

ピョートル大帝
"Peter The Great"
1986年/アメリカ
NBC
カラーTVドラマ(全4回、371分)
スタッフ○製作・監督:マービン・J・チョムスキー/ローレンス=シラー○脚本:エドワード=アンホルト/ロバート=K=マシー○原作:ロバート=K=マシー○撮影:ビットリオ=ストラーロ○音楽:ローレンス=ローゼンタール
キャストマクシミリアン=シェル(ピョートル)、ジャン=ニクラス(ピョートル青年期)、バネッサ=レッドグレーブ(ソフィア)、ヘルムート=グリーム(メンシコフ)、オマー=シャリフ(ロモダノフスキー大公)、メル=ファーラー(フリードリヒ1世)、ローレンス=オリビエ(ウィリアム3世)、ジェレミー=ケンプ(ゴードン)、ボリス=プロトニコフ(アレキシス)、ナターリア=アンドレチェンコ(エフドキア)、ハンナ=シグラー(エカテリーナ)、クリストフ=アイクホルン(カール12世)ほか
ストーリー17世紀末のロシア。幼いピョートルは姉ソフィアによって起こされたクーデタによる流血の惨事を目の当たりにし、病弱の兄と共にツァーリに即位する。成長したピョートルは姉の支配を脱し、次々と型破りの政策を実施、西欧への大旅行も敢行する。北方の覇権をめぐりスウェーデンと戦って勝利を得るが、国内では息子との確執に苦悩する。 
解説アメリカ製作のTVドラマだが、本物のクレムリンを初めとするヨーロッパ大ロケーションと豪華俳優陣、映画並みのスタッフが結集した大作。特に本物のクレムリンを使った冒頭の戦闘シーンや北方戦争の帰趨を決めた「ポルタヴァの戦い」は見応え十分。ちょっとピョートルの家族関係がしつこく生々しいので辟易する部分もある(まぁ実際にそうだったわけだけど、ピョートルはああもしつこく悩まない性格だと思う)。また話を面白くするために史実改造がかなり見られるあたりは、いかにもアメリカ作品(笑)。ところでこれはNHKが日本で放映しているのだが、そのタイトルが「愛と戦いの日々・ロマノフ王朝大帝ピョートルの生涯」という民放二時間ドラマみたいなものだったのが笑える。
メディア日本でのソフト化は一切なされていない。

女帝キャサリン
"Catherine the Great"
1995年/アメリカ
UFA/パトローラ
カラーTVドラマ(104分)
スタッフ○監督:マービン・J・チョムスキー○脚本:ジョン=ゴールドスミス/フランク=ツディスト○撮影:エレメール=ラガリー○音楽:ローレンス=ローゼンタール○製作:マービン=J=チョムスキー/ウォルフ=バウアー/コンスタンティン=トーレン
キャストキャサリン=ゼタ=ジョーンズ(エカテリーナ2世)、ポール=マクガーン(ポチョムキン)、ジョン=レイ=デイビス(ピョートル3世)、ジャンヌ=モロー(エリザベート)、メル=ファーラー(大司教)、オマー=シャリフ(ラズモフスキー)ほか
ストーリードイツ貴族の娘エカテリーナはロシア皇太子の妃となるが、政略結婚の二人の間に愛情は芽生えず、女帝エリザベートはエカテリーナに愛人を与えその子どもを宿らせる。宮廷内の愛憎渦巻く中でエカテリーナは真の愛を求めつつ、自らの手に巨大な権力を握ろうとする。 
解説アメリカのテレビ映画らしく、日本ではビデオでリリースされた。上記の「ピョートル大帝」の監督が製作、オマー=シャリフ、メル=ファーラー、ジャンヌ=モローら大スターをチョコチョコと配しているものの、全体としては日本の民放二時間サスペンス劇場のノリ(笑)。見つけたビデオ屋でも「エロティック」部門に分類されていた(DVDでも「エロチック・サスペンス」と銘打たれている)
メディアDVD発売:パイオニアLDC

エカテリーナ
"Екатерина"
2014〜2019年/ロシア
アメディア
プロダクション・ヴァリュー
コスモス・スタジオ
カラーTVドラマ
第1シリーズ・全10回
第2シリーズ・全12回
第3シリーズ・全16回
スタッフ○監督:アレクサンドル=ヴァラノフ/ラミール=サビトフ/ドミトリー=ヨシフォフ○脚本:アリフ=アリエフ/イヴァン=ザヴァルエフ○音楽:ニコライ=ロストフ○製作:アレクサンドル=アコポフ/エカテリーナ=エファノヴァ/ナタリア=シネイデロヴァ〇製作総指揮:リリア=チェクステル/アレクサンドラ=シャフナザーロヴァ
キャストマリーナ=アレクサンドロワ(エカテリーナ2世)、アレクサンドル=ヤツェンコ(ピョートル3世)、リナール=ムハメトモフ(サルトゥイコフ)、ウラジーミル=ラグリッチ(ポチョムキン)、アレクサンドル=ラザレフ(ラズモフスキー)、ユリア=アウグ(エリザヴァータ女帝)ほか
ストーリードイツ貴族の娘エカテリーナはロシア皇太子の妃となるが、政略結婚の二人の間に愛情は芽生えず、女帝エリザヴェータはエカテリーナに愛人を与えその子どもを宿らせる。宮廷内の愛憎渦巻く中でエカテリーナは真の愛を求めつつ、クーデターにより自ら帝位について権力を握り、ロシア帝国を強力に牽引してゆく。 
解説本場ロシアで製作されたエカテリーナ2世の一代記大河ドラマ。素材がそうだからだがロシアでもこれだけ愛憎ドロドロ宮廷メロドラマ大作を作るようになったんだなあと思うばかり。とにかく主演のマリーナ=アレクサンドロワの美貌と存在感が圧巻。
メディア

戦争と平和
"War and Peace"
1956年/アメリカ・イタリア
ポンティ・デ・ラウレンティス・プロダクション
カラー映画(208分)
スタッフ○監督:キング=ヴィダー○脚本:ブリジェット=ボーランド/ロバート=ウェスタビー/キング=ヴィダー/マリオ=カメリーニ/エンニオ=デ=コンチーニ/イーヴォ=ペリッリ/ジャン=ガスパーレ=ナポリターノ/マリオ=ソルダーティ○撮影:ジャック=カーディフ○音楽:ニーノ=ロータ○原作:レフ=トルストイ○製作:ディノ=デ=ラウレンティス○製作総指揮:カルロ=ポンティ
キャストオードリー=ヘップバーン(ナターシャ)、メル=ファーラー(アンドレイ)、ヘンリー=フォンダ(ピエール)、アニータ=エクバーグ(エレナ)、ハーバート=ロム(ナポレオン)、オスカー=ホモルカ(クトゥーゾフ)ほか
ストーリー19世紀初頭、ヨーロッパはナポレオンによる覇権が確立されつつあった。ロシアはアウステルリッツでナポレオンに完敗、やがてナポレオンはロシアへ遠征しモスクワを占領する。その激動の中、ピエール、アンドレイ、ナターシャの三人の若者の愛と戦いのドラマが展開される。 
解説ソ連版に先駆けて制作されたイタリア・アメリカバージョン。力が入っているのは分かるのだが、ソ連版見ちゃうとねぇ・・・。ヘップバーンの魅力でなんとかってとこかな。ただ本作で先を越されたためにソ連があの超大作を作ることになったし、そのソ連版を見て惚れこんだラウレンティスがソ連と協力して「ワーテルロー」を製作することにもつながっている。
メディアDVD/BD発売:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン

戦争と平和
"Война и мир"
1965〜67年/ソ連
モスフィルム
カラー映画
第一部「アンドレイ・ボルコンスキー」140分
第二部「ナターシャ・ロストワ」93分
第三部「1812年」77分
第四部「ピエール・ベズーホフ」93分
スタッフ○製作・監督:セルゲイ=ボンダルチュク○脚本:セルゲイ=ボンダルチュク/ワシーリー=ソロヴィヨフ○撮影:アナトリー=ペトリツキー/アレクサンドル=シェレンコフ/イォランダ=チェン○音楽:ヴャチェスラフ・オフチンニコフ○原作:レフ=トルストイ○製作総指揮:ニコライ=イワノフ
キャストセルゲイ=ボンダルチュク(ピエール)、リュミドラ=サベーリエワ(ナターシャ)、ビヤチェスラフ=チーホノフ(アンドレイ)、イリーナ=スコブツェワ(エレン)、ボリス=ザハーワ(クトゥーゾフ)、ラジスラフ=ストルジェリチク(ナポレオン)ほか
ストーリー19世紀初頭、ヨーロッパはナポレオンによる覇権が確立されつつあった。ロシアはアウステルリッツでナポレオンに完敗、やがてナポレオンはロシアへ遠征しモスクワを占領する。その激動の中、ピエール、アンドレイ、ナターシャの三人の若者の愛と戦いのドラマが展開される。 
解説なんせ原作がトルストイのあの名作で、その完全(文字通り完全な)な映画化ということもあって、ストーリーが簡潔にまとまらない(ま、読んでみてくれ)。とにかくこのソ連版は国家事業として制作されたため、映画史上最大の大作と言われる。7時間・4部構成とは言えその製作費を超える映画は今後現れるとは思えない。華やかな貴族社会の描写も凄いが、何と言っても圧巻はアウステルリッツ、ボロディノの両戦闘シーン。360度カメラを回しても大平原をフランス・ロシアの大軍が埋め尽くし、騎馬隊の突撃や砲撃の嵐を見せてくれる。時折カメラは天空に舞い上がり、人間の愚行を見つめる「神」の目になる。莫大な製作費を投じた超大作でありながら人間描写にいささかも手抜きはない。
メディアDVD発売:IVC

戦争と平和
"War & Peace"
2016年/イギリス・アメリカ
BBC
カラーTVドラマ(全8回)
スタッフ○監督:トム=ハーパー○脚本:アンドリュー=デーヴィス○撮影:ジョージ=スティール○音楽:マーティン=フィップス○原作:レフ=トルストイ○製作:アンドリュー=デーヴィス/ベッサン=ジョーンズ/フェイス=ペンヘイル/シモン=ボーガン/ハーヴェイ=ウェインステイン/ロバート=ワラック
キャストポール=ダノ(ピエール)、リリー=ジェームズ(ナターシャ)、ジェームズ=ノートン(アンドレイ)、タペンス=ミドルトン(エレン)、ブライアン=コックス(クトゥーゾフ)、マシュー=カソヴィッツ(ナポレオン)ほか
ストーリー19世紀初頭、ヨーロッパはナポレオンによる覇権が確立されつつあった。ロシアはアウステルリッツでナポレオンに完敗、やがてナポレオンはロシアへ遠征しモスクワを占領する。その激動の中、ピエール、アンドレイ、ナターシャの三人の若者の愛と戦いのドラマが展開される。 
解説これが二度目のテレビドラマ化。時間に余裕があるせいか主人公ピエールがフリーメイソンに入会するくだりなど過去の映像作品で端折られた部分も細かく映像化されている。だが服装や美術は厳密さより華やかさを優先した観があったし、ロシアやバルト三国でロケしながら戦闘シーンも含めてスケール感が感じられず、原作の群像男女のくっついたり離れたりばかりが目立つ安っぽい恋愛ドラマに仕立てられてしまった印象。
メディアDVD発売:NHKエンタープライズ

デルス・ウザーラ
"Дерсу Узала"
1975年/ソ連・日本
モスフィルム
カラー映画(141分)
スタッフ○監督:黒澤明○脚本:黒澤明/ユーリー=ナギービン○撮影:中井朝一/ユーリー=ガントマン/フョードル=ドブロヌラーボフ○音楽:イサク=シュワルツ○原作:ウラジミール=アルセーニエフ○製作:松江陽一/ニコライ=シゾフ
キャストユーリ=ソローミン(アレクセーエフ)、マクシム=ムンズク(デルス)ほか
ストーリー19世紀末、アレクセーエフ率いるロシアのシベリア探検隊はゴリド人の「デルス・ウザーラ」と出会う。デルスは自然と共に生きる民で、自然に対する豊富な知識と崇拝心とを持ち、探検隊の危機をたびたび救う。二度目の探検でアレクセーエフはデルスに再会するが、デルスは老いてしまっていた。アレクセーエフはデルスをひきとって町暮らしをさせるのだが…
解説黒澤明監督がソ連映画として製作した異色作。黒澤は青年時代に原作を読んで以来、北海道に舞台を移しての映画化も企画していたほどだったが、ちょうど日本国内で映画製作が困難になっていた時期に本国ソ連での製作が実現した。「人間と自然」をテーマにした最も古い映画だったりしないだろうか。自然界の全てに人格を感じ、彼らと共生するデルスの生き方は素直に感動を呼ぶ。
メディアDVD発売:IVC、オデッサ・エンタテインメント、東宝

戦艦ポチョムキン
"Броненосец «Потёмкин»"
1925年/ソ連
モスフィルム
白黒無声映画(75分)
スタッフ○監督・脚本:セルゲイ=エイゼンシュテイン○撮影:エドゥアルド=ティッセ○音楽:ニコライ=クリューコフ
キャスト市民多数
ストーリー革命前夜の1905年、黒海オデッサに停泊中の戦艦ポチョムキン内で兵士の反乱が発生、艦を占拠した。これに呼応してオデッサの市民がデモを起こすが、政府軍がこれに対し「オデッサの階段」で無差別に発砲、多数の死者を出す。さらにポチョムキン鎮圧のため戦艦が港外に姿を現す… 
解説エイゼンシュテインの代表作にして映画史上不朽の名作。無声映画時代だから映像のみで語る手法が今見ても斬新。とくに「オデッサの階段」の名シーンはエイゼンシュテインの映像理論の成果であり、今なお映画話法の教科書的存在だ。これをパロった、あるいはオマージュした場面を何度見たことか…。
メディアDVD発売:IVC、コスミック出版

終着駅
トルストイ最後の旅
"The Last Station"
2009年/イギリス・ドイツ・ロシア
イーゴリ・トッセリ・フィルム
カラー映画(112分)
スタッフ○監督・脚本:マイケル=ホフマン○撮影:セバスティアン=エドシュミット○美術:パトリツィア=フォン=ブランデンスタイン○音楽:セルゲイ=イエチェンコ○原作:ジェイ=パリーニ○製作:クリス=カーリング/イェンス=モイラー/ボニー=アーノルド○製作総指揮:アンドレイ=コンチャロスキー/フィル=ロバートソン/ジュディ=トッセル/ロビー=リトル 
キャストヘレン=ミレン(ソフィア・トルストイ)、クリストファー=プラマー(レフ・トルストイ)、ジェームズ=マカヴォイ(ブルガコフ)、ケリー=コンドン(マーシャ)、ポール=ジアマッティ(チェルトコフ)ほか
ストーリー1910年、文豪・思想家として世界的名声を得ていたトルストイはすでに82歳となり、自らの理想を実現するべく信奉者たちと村を作って共同生活を営んでいた。そこへトルストイを信奉する若者ブルガコフが秘書として加わるが、トルストイが妻のソフィアと財産や著作権の移譲をめぐって激しく争う様子を日々目撃する。エスカレートするソフィアの態度に辟易したトルストイは「家出」を決行、旅の途中のアスターポヴォ駅で最期の時を迎える。
解説文豪トルストイの晩年を描いた異色作で、芸達者なベテラン二人が演じる老夫婦ゲンカが見ものの映画。トルストイの妻ソフィアはソクラテスの妻と並ぶ「歴史的悪妻」として知られるが、確かにこういう状況じゃ頭にもくるわな、と思える。
メディアDVD発売:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント

ニコライとアレクサンドラ
"Nicholas and Alexandra"
1971年/アメリカ
ホライゾン=ピクチャー
カラー映画(189分)
スタッフ○監督:フランクリン=J=シャフナー○脚本:ジェームズ=ゴールドマン○撮影:フレディ=ヤング○音楽:リチャード=ロドニー=ベネット○原作:ロバート=K=マシー○製作:サム=スピーゲル
キャストマイケル=ジェイストン(ニコライ2世)、ジャネット=サブマン(アレクサンドラ皇后)、トム=ベイカー(ラスプーチン)、ジョン=マッケネリー(ケレンスキー)、マイケル=ブライアント(レーニン)、ブライアン=コックス(トロツキー)ほか
ストーリー日露戦争の展開に苦慮する中、ニコライ2世と皇后アレクサンドラの間に待望の皇太子アレクセイが生まれた。しかしアレクセイは血友病で、何度も死の淵に陥り皇帝夫妻を苦悩させる。超人的な力でアレクセイの病を治した怪僧ラスプーチンが夫妻に取り入るなか、ロシアの民衆は貧困と戦争と飢餓に喘ぎ、革命への機運が盛り上がっていく。やがて第一次世界大戦が勃発、つづいてロシア革命が起こりロマノフ王朝は滅亡。ニコライ一家は悲劇的な末路をたどっていく。 
解説ロマノフ王朝最後の皇帝ニコライ2世一家の悲劇を描きつつ、ロシア革命前後の状況を実に教科書的(映画的遊びがあまり無く盛り上がりにはいまいち欠ける)に描いていく歴史大作。ニコライ、レーニン、トロツキーといった実在人物たちが実にソックリな俳優さんばかり。
メディアDVD発売:ソニ・ピクチャーズ・エンタテインメント


ドクトル・ジバゴ

"Doctor Zhivago"
1965年/アメリカ・イタリア
カルロ・ポンティ・プロダクション
カラー映画(200分)
スタッフ○監督:デビッド=リーン○脚本:ロバート=ボルト○撮影:フレディ=ヤング/ニコラス=ローグ○音楽:モーリス=ジャール○原作:ボリス=パステルナーク○製作:カルロ=ポンティ
キャストオマー=シャリフ(ジバゴ)、ジュリー=クリスティ(ラーラ)、アレック=ギネス(エフグラフ)、ジェラルディン=チャップリン(トーニャ)、トム=コートネイ(パーシャ)、ロッド=スタイガー(コマロフスキー)ほか
ストーリー第一次世界大戦の中、従軍した詩人で医者のジバゴは看護婦のラーラと知り合う。その後革命が起きて家族と共にシベリアへ逃れたジバゴはラーラと再会、密かに恋愛関係となる。そのうちジバゴは反革命軍に捕らえられ家族と離別するが、脱出してラーラのもとへ向かう。ジバゴとラーラは大草原の一軒家で愛の生活を送るが、やがて別れの時がやってくる。 
解説とにかく「ラーラのテーマ」の曲に尽きる映画。ロシア革命を挟んだ激動の時代を背景に展開される壮大な愛のドラマ。原作はパステルナークで、まぁ当時のソ連では映画化できない内容だ。スペインやらロッキーやらで無理矢理ロシアに見立てて製作している。しかしデビッド=リーンの重厚な作りには感嘆させられる。ネタバレかもしれないが、「バラライカ」の伏線が出来過ぎ!ラストでうなってしまった。ひょっとすると「市民ケーン」の真似かもしれんが(^^;)。21世紀に入ってから欧米とロシアとでそれぞれにTVドラマ化もされている。
メディアDVD/BD発売:ワーナー・ホーム・ビデオ

独裁/スターリン
"Stalin"
1992年/アメリカ
HBO
カラーTVドラマ(174分)
スタッフ○監督:イヴァン=バッセル○脚本:ポール=モナシュ○撮影:ヴィルモス=スィグモンド○音楽:スタニスラス・サイレウィック○製作:マーク=カーソナー○製作総指揮:アイリーン=カーン
キャストロバート=デュバル(スターリン)、ジュリア=オーモンド(ナジェージダ)、ジョアンナ=ロス(スヴェトラーナ)、マクシミリアン=シェル(レーニン)、ダニエル=マッセイ(トロツキー)、ジェローン=クラッペ(ブハーリン)、マレー=ユワン(フルシチョフ)、ケヴィン=マクナリー(セルゲイ・キーロフ)ほか
ストーリーロシア帝国に対する革命運動に参加していたグルジア人のジュガシヴィリはシベリア流刑から戻ると「鋼鉄の人」を意味する「スターリン」を名乗り始める。やがて革命が成功してソ連邦が成立、党幹部となったスターリンはナジェージダを妻に迎えて公私ともに充実する。間もなくレーニンが死去すると、スターリンはライバルのトロツキーを追いやってソ連指導者の地位に昇るが、彼と軋轢を重ねたナジェージダは拳銃自殺を遂げてしまう。ナジェージダを失ったスターリンはますます猜疑心の塊となり、かつての同志を次々と粛清してゆく。
解説亡命したスターリンの娘の自叙伝を原作とし、彼女が語る形式で描かれるスターリン伝記ドラマ。予算の都合もあったのだろうが、歴史ドラマというよりはスターリン個人の妻や子供たちとの関係を中心とした、知られざるホームドラマといった趣き。チェコのブダペストやモスクワでロケが行われ、奇しくも製作中にソ連が崩壊してしまった。ロバート=デュバルやマクシミリアン=シェルがメイクで必死に似せてるけど、いささか無理があるような…
メディアワーナー・ホーム・ビデオよりVHSソフトが出ていた。DVD以降の商品化はない模様。

スターリンの葬送狂騒曲
"The Death of Stalin"
2017年/イギリス・フランス
メインジャーニ―
クアッドプロダクション
カラー映画(107分)
スタッフ○監督:アーマンド=イアヌッチ○脚本:アーマンド=イアヌッチ/デヴィッド=シュナイダー/イアン=マーティン/ピーター=フェローズ〇撮影:ザック=ニコルソン〇音楽:クリス=ウィリス〇原作:ファビアン=ニュリ/ティエリ=ロビン〇製作:ヤン=ゼヌー/ローラン=ゼトゥンヌ/ニコラ=デュヴァル=アダソフスキ/ケヴィン=ローダー
キャストスティーブ=ブシェミ(フルシチョフ)、サイモン=ラッセル=ビール(ベリヤ)、ジェフリー=タンバー(マレンコフ)、マイケル=ペイリン(モロトフ)、ジェイソン=アイザックス(ジューコフ)、アンドレア=ライズホロー(スヴェトラーナ)、ルパート=フレンド(ワシーリースターリン)、エイドリアン=ッマクラフリン(ヨシフ・スターオルガ=キュリレンコ(マリヤ・ユーディナ)、リン)ほか
ストーリー1953年、ソ連では独裁者スターリンが君臨、大量粛清による恐怖政治を敷いていた。ラジオで生放送されたコンサートの演奏を気に入ったスターリンがその録音レコードを要求、放送局では大慌てで再度演奏、録音してレコードを届ける。そのレコードにはスターリンを罵倒するメモが挟まれていて、それを目にしたスターリンは卒倒、意識を失ってしまう。翌日、共産党幹部たちが倒れたスターリンを発見、スターリンの娘・息子も加わって大騒動に。スターリンが息絶えると幹部たちは今後の政治権力の行方をめぐって暗闘を始める。
解説スターリンの死を受けてのソ連最高幹部たちの権力闘争のドタバタをコメディ調に描いた作品。フランスで原作が出版され、映画は全部英語。史実に基づいてはいるが面白さ優先で厳密というわけでもない。スターリンやフルシチョフなんて古い話なんだがロシアでは公開直後に上映禁止となり、旧ソ連国家のいくつかでも公開不許可とされてしまうなど、まだまだ「ソ連」をコメディにするわけにはいかないらしい。
メディアDVD・BD発売:ギャガ


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