中東・イスラム圏史映画
歴史映画コーナーのトップに戻る

ザ・メッセージ
"The Message"
1976年/レバノン・リビア・クウェート・モロッコ・イギリス
カラー映画(178分)
スタッフ○製作・監督:ムスタファ・アッカド○脚本:H=A=L=クレイグ/チューフィク=エル・ハキム/A=B=ジャウダット=エル・サッハー/A=B=ラーマン=エル・シャーカウィ/ムハンマド=アリ=マヘル○撮影:サイード=ベイカー/ジャック=ヒルデヤード/イブラヒム=サレム○音楽:モーリス=ジャール
キャストアンソニー=クイン(ハムザ)、イレーネ=パパス(ヒンド)、マイケル=アンサラ(アブ=ソフィヤン)ほか
ストーリー7世紀のアラビア。メッカに住む商人ムハンマドに神の啓示が降った。預言者として周囲に神の言葉を広めていくムハンマドだったが、メッカの市民は彼を迫害し、ムハンマドとその教団はメディナに移る。やがてメッカ軍がメディナに迫り、ムハンマド達は剣をとって戦いに臨む。戦いの末、メッカを奪回したムハンマドはカーバ神殿の偶像を破壊し、イスラム教の基礎を固めた。間もなくムハンマドは自分がただの人間であることを強調しながらこの世を去るのだった。 
解説日本では大概の人が名前は知ってるけど実際の事績を知る人がほとんどいないような気がする、イスラム教の開祖ムハンマド(マホメット)の生涯をつづった伝記映画。スタッフは「アラビアのロレンス」の現地スタッフが多く含まれ、曲もモーリス=ジャールなので雰囲気が似ている。さすがにムハンマド本人を映像に出すことは教義上問題があり(だいたい演じる人が大変)、ムハンマドは後ろ姿や影のみで登場する。アラブの各国が出資したそうで、内容もイスラム教の寛容性の強調に重点が置かれている(キリスト教徒、ユダヤ教徒も登場)。欧米経由のイスラム観を持っている人には良い勉強になる。
メディアDVD発売:パラマウント・ジャパン(「砂漠の旋風」の副題つき)

風とライオン
"The Wind and The Lion"
1975年/アメリカ
ハーブ・ジャフィ・プロダクション
カラー映画(118分)
スタッフ○監督・脚本:ジョン=ミリアス○撮影:ビリー=ウィリアムズ○音楽:ジェリー=ゴールドスミス○製作:ハーブ=ジャフィ
キャストショーン=コネリー(ライズリ)、ブライアン=キース(セオドア・ルーズベルト)、キャンディス=バーゲン(ペデカリス夫人)、ジョン=ヒューストン(ジョン=ヘイ)ほか
ストーリー20世紀初頭のモロッコ。アメリカ人の夫人とその子供達が酋長ライズリに誘拐された。折しも強気の政策で人気を得ていたルーズベルト大統領は、ライズリから夫人を取り返し、なおかつモロッコで欧州列強ににらみを利かせようと画策する。一方、誘拐された夫人たちはライズリの武勇と誠実さに次第に惹かれていく。 
解説劇中のセリフでは「風」はルーズベルト、「ライオン」はライズリを象徴する言葉なのだが、逆にもとれるところがミソ。この両者は一度も顔を会わさないが、大西洋を隔てた双方の動きがうまくかみ合った作品となっている。チャンバラシーンでショーン=コネリーが「隠し砦の三悪人」の三船敏郎のマネをするのは余りにも有名。他にも「七人の侍」など黒澤映画へのオマージュが見うけられ、騎馬戦シーンの迫力は屈指のもの。ショーン=コネリーをひたすらカッコ良く撮った映画でもある。
メディアDVD発売:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント

アラビアのロレンス
"Lawrence of Arabia"
1962年/イギリス
ホライズン・ピクチャーズ
カラー映画(207分、完全版227分)
スタッフ○監督:デビッド=リーン○脚本:ロバート=ボルト/マイケル=ウィルソン○撮影:フレディ=ヤング/ニコラス=ローグ/スキーツ=ケリー/ピーター=ニューブルック○美術:ジョン=ボックス○音楽:モーリス=ジャール○原作:T=E=ロレンス○製作:サム=スピーゲル
キャストピーター=オトゥール(ロレンス)、アレック=ギネス(ファイサル)、オマー=シャリフ(アリ)、アンソニー=クイン(アウダ・アブ・タイ)、アーサー=ケネディ(ベントリー)、ジャック=ホーキンス(アレンビー将軍)ほか
ストーリー第一次世界大戦中のアラビア。敵国トルコを背後から圧迫するためイギリスは「アラブの反乱」を扇動した。そのために現地に赴きファイサル王子に会った軍人ロレンスは、アラブの各部族を率いて砂漠を横断、アカバを攻略する。その後も鉄道爆破などで砂漠の英雄となっていくロレンスだったが、彼が夢見たアラブの「独立」はイギリスの策謀のために消え去っていく。そして帰国したロレンスはバイクの事故であっさりと死んでしまうのだった。 
解説知る人ぞ知る名作。この一本で「アラビア」にはまってしまった人は多いらしい。何と言っても全編にくり広られる砂漠の美しさが圧巻。そこにかぶさるモーリス=ジャールの名曲だけで「名画」に値する作品だ。もちろんデビッド=リーンの演出によるロレンスの苦悩と矛盾に満ちた人間性表現も見事である。ただ一応、原作が「ロレンス本人の著作」であることに注意。映画もまた必ずしも実像を語っていない(オトゥールが似ているのは顔だけ)。アラブ側から見るとイロイロ変らしいんですよ、この映画。「アラブの見たアラビアのロレンス」(リブロポート・冒険の世界史シリーズ)って本をお薦めします。
メディアDVD/BD発売:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント

砂漠のライオン
"Lion of the Desert"
1981年/アメリカ・リビア
ファルコン・インターナショナル
カラー映画(173分)
スタッフ○製作・監督:ムスタファ=アッカド○脚本:H=A=L=クレイグ○撮影:ジャック=ヒルデヤード○音楽:モーリス=ジャール
キャストアンソニー=クイン(オマール=ムスタール)、ロッド=スタイガー(ムッソリーニ)、オリヴァー=リード(グラッツァーニ)、イレーネ=パパス(マブルーカ)ほか
ストーリー第二次世界大戦の時代。イタリアの独裁者ムッソリーニはリビアを侵略、植民地化を進めていた。これに対しオマール=ムスタール率いるイスラム教徒ゲリラが激しい抵抗を続ける。 
解説リビアの英雄・ムスタールを描いた3時間近くの大作。歴史映画と言うより戦争映画のノリに近い。スタッフは「ザ・メッセージ」とほとんど同じ。”あの”カダフィ大佐絶賛の一本だそうな。
メディアDVD発売:パラマウント・ジャパン

アルジェの戦い
"La battaglia di Algeri"
1966年/イタリア・アルジェリア
白黒映画(116分)
スタッフ○監督:ジッロ=ポンテコルヴォ○脚本:フランコ=トリナス/ジッロ=ポンテコルヴォ○撮影:マルチェロ=マッティ○美術:セルジョ=カネヴァーリ○音楽:エンニオ=モリコーネ/ジッロ=ポンテコルヴォ
キャストブラヒム=ハジャク(アリ)、ジャン=マルタン(マシュー中佐)、ヤセフ=サーディ(カデール)ほか
ストーリー1950年代、フランス統治下のアルジェリア。チンピラのアリは刑務所の中で独立運動家の処刑を目撃した事をきっかけに「解放戦線」の組織に加わる。解放戦線は首都アルジェでフランス人を標的としたテロ攻撃を繰り返し、対するフランスも軍隊を投入、徹底した弾圧と拷問で解放戦線の組織を潰してゆく。そして1960年、突如民衆が蜂起しアルジェリアの独立は現実のものとなっていった。 
解説イタリアのリアリズム映画の系譜につながる、セミ=ドキュメンタリー映画の傑作。決して感情的ではなく(もちろん軸足はアルジェリア側に置いているが)、むしろ淡々とテロと報復の連鎖を描いて独立戦争の実態をリアルに描き出した。ヴェネチア映画祭でグランプリを受賞したが、参加していたフランス映画人はこの映画が「反仏的」であるとして抗議の退場を行っている。
メディアDVD発売:IVC


歴史映画コーナーのトップに戻る