アメリカ合衆国史映画
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○「モヒカン族の最後」The Last of Mohicans1920・アメリカ
◇スタッフ
○監督:モーリス=トゥールヌール、クラレンス=ブラウン
◇キャスト
バーバラ=ベッドフォード、リリアン=ホール、ウォーレス=ビアリーほか
◇ストーリー
まだアメリカ大陸の覇権をめぐり英仏が争っていた時代。イギリス軍の司令官の娘と、英軍に協力するモヒカン族の青年が人種を越えた恋に落ちる。しかしイギリス軍は内通のためフランス軍に砦を明け渡し、フランス側のインディアンが彼らを襲う。
◇うんちく
実は何度か映画化されているアメリカの「創世神話」というべき小説「The Last of Mohicans」が原作(厳密に訳すと「モヒカン族最後の者」)。この時代にして人種的偏見を越えた悲恋物語を展開している。確か80年代にリメイクされてるがあっちは大幅に改作している。
○「レボルーション−めぐり逢い−」Revolution1985・アメリカ.イギリス・ノルウェー
◇スタッフ
○監督:ヒュー=ハドソン
◇キャスト
アル=パチーノ(トム)、ナスターシャ=キンスキー、ドナルド=サザーラントほか
◇ストーリー
ニューヨークへ毛皮を売りに来たトムとネッドの親子は、たまたま勃発した独立戦争に巻き込まれる。初めは戦う気もなく脱走する二人だが、ネッドがイギリス軍に虐待されたことをキッカケにアメリカ独立のために戦うことになる。
◇うんちく
意外にも珍しいアメリカ独立戦争を扱った大作。金がかかっているような気はするのだが、ストーリーの方はお粗末の一言。なまじ大作なだけに陳腐さが目立つ。見所は18世紀のニューヨークが見られることぐらいかも(ウォール街のかつての姿が!)。
○「パトリオット」The Patriot2000・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ローランド=エメリッヒ○脚本:ロバート=ローダット
◇キャスト
メル=ギブソン(ベンジャミン・マーチン)、ヒース=レジャー(ガブリエル)、ジョエリー=リチャードソン(シャーロット)、ジェイソン=アイザックス(タビントン大佐)、チェッキー=カリョ(ビルヌーブ大佐)ほか
◇ストーリー
イギリスとの独立戦争の最中のアメリカ。フレンチ・インディアン戦争で活躍して「パトリオット(愛国者)」の称号を得たベンジャミンだが、戦場の悲惨さと自らの残虐行為を憎み徹底した反戦主義者になっていた。しかしイギリス軍に息子を殺されたことから彼は再び戦いに身を投じる。
◇うんちく
監督はドイツ人なのだが、あの怪作「ID4」同様、底抜けのアメリカ万歳主義に堕ちてしまってるなぁ。主人公が怒りを爆発させる30分ぐらいまでは結構見られたが、あとはもう展開が読めてしまう安易な脚本と笑ってしまうほどのベタベタの演出で呆れさせられる。主人公が星条旗を掲げて突進するシーンなんて…。ハリウッドも「独立戦争」ネタだと我を忘れてしまうのだろうか(「ID4」もそうだな)。悪魔化されたイギリス人はもちろんのこと、黒人の扱いについてもスパイク=リー監督が激しく批判している。当時の戦闘の再現は結構正確で近ごろ流行の残酷な戦場描写を心がけており、この辺は見もの。
○「アラモ」ALAMO1960・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ジョン=ウェイン
◇キャスト
ジョン=ウェイン(デイビー=クロケット)、リチャード=ウィドマーク(ボウイ)、ローレンス=ハーヴェイ(トラビス)、リチャード=ブーン(ヒューストン将軍)ほか
◇ストーリー
1836年、メキシコ領テキサスではサンタ=アナ将軍の支配に対する抵抗から移民たちは「テキサス共和国」の建国を宣言しメキシコに対する独立戦争を開始した。礼拝堂(アラモ)を要塞化したてこもる独立軍だが若い指揮官のトラビス大佐と義勇軍のリーダー・ボウイが対立。そこへテネシーから助っ人としてクロケットが駆けつけ、なんとか全員一丸となってメキシコ軍の猛攻に抵抗する。だが援軍も来ぬままアラモ砦は壮絶な玉砕を遂げる。
◇うんちく
「アラモ」はアメリカ人の愛国心をかき立てる歴史エピソードであるらしいが、立場を変えるとアメリカ側のメキシコに対する侵略なんだよな、これって。「玉砕」したために愛国美談に仕立てられるのはよくあるパターン。バリバリの愛国者を自認していたウェインが自ら監督・主演・製作し物凄い熱意をもって作り上げた一本だが(主演したのは映画会社側の興行上の要請だったようだが)、「自由のための戦い」と言っている割にメキシコ軍がなかなか人道的に描かれたりするため映画自体は意外に「愛国臭」が薄い印象。ウェイン自身が「『アラモ』がアカデミー賞をとるべき」などと意見広告したためかえって選考委員の総スカンを食い録音賞どまりだったというエピソードもある。
○「ルーツ」Roots1977・アメリカTVドラマ
◇スタッフ
○原作:アレックス=ヘイリー
◇キャスト
レヴァー=バートン(クンタ・キンテ少年期)、ジョン=エイモス(クンタ・キンテ)、レスリー=アガムス(キジー)、ベン=ベリーン(ジョージ)ほか
◇ストーリー
18世紀の半ば、アフリカのガンビアで平和に暮らしていたクンタ・キンテは奴隷狩りにつかまり、悲惨な奴隷船での航海の末にアメリカ南部へと渡った。「トビー」と名付けられ奴隷となった彼は何度か脱走を図るが、ついにあきらめ結婚して娘キジーをもうける。キジーは他の白人に売り飛ばされてその子を産み、キジーの息子ジョージは闘鶏師として自由を勝ち取ろうとする。
◇うんちく
原作者・ヘイリーが自身の祖先を調査し創作を加えて発表したベストセラー小説を原作に、大がかりに製作され世界的な大ブームとなった「ミニシリーズ」の元祖。アメリカの負の歴史である黒人差別の歴史を真っ向から扱った内容は今見ても衝撃的。続編「ルーツ2」では現代のヘイリーまで到達する。
○「アミスタッド」Amistad1998・アメリカ
◇スタッフ
○監督:スティーブン=スピルバーグ
◇キャスト
アンソニー=ホプキンズ(ジョン=クインシー=アダムズ)、ジャイモン=ハンスゥ(シンケ)、モーガン=フリーマン(ジョードソン)、マシュー=マコノヒー(ボールドウィン)ほか
◇ストーリー
1839年、スペイン船アミスタッド号で黒人奴隷が反乱を起こし、船員達を殺害してアメリカに漂着した。アメリカで彼らの裁判が行われるが北部の黒人奴隷解放論と南部の奴隷制維持論の対立、スペイン政府の介入など政治問題に。解放奴隷のジョードソン、弁護士のボールドウィンは黒人達の解放を勝ち取ろうと奮闘、元大統領クインシー=アダムズの出馬を仰ぐ。
◇うんちく
実際に起こった事件をもとに、スピルバーグ自身が黒人の養子のために製作したという一本。重いテーマなんだけどスピルバーグ流の楽天性もあり、後味は悪くない。ただし史実に忠実かどうかをめぐっては公開時に議論もあった。なお、本作で登場するアダムズ元大統領はブッシュ以前の父子大統領の息子のほう。
○「西部開拓史」How the West Was Won1962・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ジョージ=マーシャル、ヘンリー=ハサウェイ、ジョン=フォードほか
◇キャスト
ジェームス=スチュアート(ライナス)、キャロル=ベイカー(イーブ)、グレゴリー=ペック(クリーブ)、ジョン=ウェイン(シャーマン)ほか
◇ストーリー
1830年代、西部開拓に乗り出したプレスコット一家の歴史を主軸に、川の遡上、ゴールドラッシュ、南北戦争、大陸横断鉄道の開通、無法者の時代の5つのエピソードが綴られて行く。
◇うんちく
三つのカメラで撮影し湾曲した大画面に映写する「シネラマ」方式の代表作(その後この方式は完全にすたれてしまった)。ある一族の三代にわたる開拓史なのだが、リンカーンやグラント将軍など有名人もチラッと登場する。野牛暴走シーンやインディアンの襲撃、列車強盗などなど西部劇の要素はすべてぶち込まれている。そのぶんオリジナリティには乏しいが。出演者は豪華そのもの。
○「遥かなる西部〜わが町センテニアル〜」Centennial1978・アメリカ(TVシリーズ)
◇スタッフ
○監督:ハリー=ホーク、ポール=クラズニーほか
◇キャスト
ロバート=コンラッド(パスキネル)、リチャード=チェンバレン(マキーグ)、グレゴリー=ハリソン(ゼント)、ウィリアム=アザートン(ロイド)、ティモシー=ダルトン(オリバー)ほか
◇ストーリー
物語は18世紀後半、インディアンの世界であったコロラドの地にフランス人パスキネルが毛皮をとりに来るところから始まる。インディアンとの交流と対立、カウボーイたちによるテキサスからの牛の大移動、小さな取引所から町への成長、成長した町の政争といったドラマを織り込みながら、「センテニアル(百年)」と名付けられた都市の200年の歴史がつづられてゆく。
◇うんちく
アメリカ流大河ドラマ「ミニシリーズ」の大作の一本で全12話で構成(総計26時間)。映画級のスターも多く出演した豪華作で、日本ではNHKで吹き替えで放映された(時間からするとややカットしていたかも)。原作はジェームス=A=ミッチェナーのベストセラー小説で、次々と主人公をリレーしながら一つの西部の町の歴史を語っていくというユニークな作品だった。百年まで話が進んだところで一気に1970年代に飛ぶのは当時見ていて不徹底に感じたのだが原作がどうなってるのか未確認。なお現在コロラドに「センテニアル」という町が実在するが、これはこのドラマ後に名がついたもので小説・ドラマの内容が史実というわけではない。
○「若き日のリンカーン」Young Mr.Lincoln1939・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ジョン=フォード
◇キャスト
ヘンリー=フォンダ(リンカーン)ほか
◇ストーリー
初恋の女性に死なれた若き日のリンカーンは故郷を離れて法律を学び、弁護士となった。駆け出し弁護士の彼に殺人事件の容疑者の弁護の仕事が舞い込んでくる。容疑者は二人の兄弟で、どちらが真犯人かは不明だがお互いに自分が犯人と主張し、唯一の目撃者である兄弟の母親は黙秘を貫く。このままでは二人とも死刑になってしまう難事件を、リンカーンは誠意をもって引き受ける。
◇うんちく
のちの名大統領リンカーンの青春時代を描く異色作で、彼が実際に手がけた難事件の名裁判の逸話を大幅にふくらました法廷劇。ソ連のエイゼンシュテイン監督はこの映画を見て大感激、フォード監督に熱烈なファンレターを贈ってしまったとか。ヘンリー=フォンダ演じる若き日のリンカーンはまさにハマリ役。
○「國民の創生」The Birth of Nation1915・アメリカ
◇スタッフ
○監督:D・W・グリフィス
◇キャスト
リリアン=ギッシュほか
◇ストーリー
アメリカの南部と北部に住む二つの家族はお互いに交流し強く結ばれていた。しかし南北戦争が勃発、両家は否応なく動乱に巻き込まれていく。南部の敗戦後、南部には黒人が幅を利かせはじめ、白人達は対抗してKKKを組織する。
◇うんちく
「映画の父」ともよばれるグリフィスが製作した無声映画時代の超大作。南北戦争を背景に、まさに「アメリカ」が「アメリカ」となった時代を描く。黒人差別で名高いKKKを好意的に描いているとして当時から批判があるが、いわば南部側からの弁護主張として興味深い。リンカーン暗殺シーンなど、歴史的場面はかなり厳密に再現されており、わざわざ字幕でもその事を述べている。
○「エイブラハム・リンカーン」Abraham Lincoln1930・アメリカ
◇スタッフ
○監督:D・W・グリフィス
◇キャスト
ウォルター=ハドソン(リンカーン)、ケイ=ハモンド(メアリー・トッド)、ユナ=マーケル(アン)、ホバート=ボスワース(リー将軍)ほか
◇ストーリー
1809年に西部の丸太小屋で生まれ、母親から「エイブラハム」と名付けられたリンカーン。青年となった彼は美しい娘アン=ラトレッジと恋に落ち将来を誓い合うがアンは病でこの世を去ってしまう。絶望したリンカーンだったがメアリー=トッドと出会って結婚。やがて政治への道を進み、大統領となって南北戦争に勝利するが、1865年にフォード劇場で暗殺される。
◇うんちく
「映画の父」とも呼ばれるグリフィスが製作したリンカーン伝記映画で、わずか90分程度でその誕生から死まで描いてしまう。特色は前半の、リンカーン若き日の哀しい初恋に焦点を当てたところで、政治家になってからは思いっきり駆け足。南部出身のグリフィスらしさはリー将軍の降伏にいたる葛藤描写に見受けられるが、リンカーンについては絶賛するエンディングとなった。暗殺シーンは「国民の創生」同様に忠実な再現映像である。
○「リンカーン」Lincoln2012・アメリカ
◇スタッフ
○監督:スティーブン=スピルバーグ○脚本:トニー=クシュナー
◇キャスト
ダニエル=デイ=ルイス(リンカーン)、サリ=フィールド(メアリー・トッド)、トミー=リ=ジョーンズ(スティーブンス)、ジョゼフ=ゴードン=リベット(ロバート)、ガリバー=マクグラス(タッド)、デヴィッド=ストラザーン(スワード)、ハル=ホルブルック(ブレア)、ジャレット=ハリス(グラント)ほか
◇ストーリー
1865年、南北戦争も終結の兆しが見え始めていた。すでに奴隷解放宣言を発したリンカーンだったがそれでは奴隷制の完全廃止は実現できず、なんとしても戦争が終わる前に憲法改正により奴隷制を禁止しなければならないと決意していた。憲法改正には議会下院で3分の2以上の賛成を得なければならないが民主党内の超保守派は猛反発、自身の共和党も急進派から保守派までいて目的達成は非常に困難だった。リンカーンは各派を巧みになだめすかし、買収も含めた手段を選ばぬ多数派工作を展開、ついに憲法改正を実現する。だがその直後、凶弾がリンカーンを襲った。
◇うんちく
これまでも何度か黒人差別問題をとりあげてきたスピルバーグがリンカーンその人を主人公に憲法修正十三条可決のドラマに絞って映画化した。目的を達するために手段を選ばぬ政治家の生き様を描いた、いわば「国会中継映画」なので各派のキャラや歴史的背景を理解しないとややついていきにくいかも(日本公開版では冒頭でスピルバーグ自身が歴史背景の説明をした)。リンカーンの妻や息子との葛藤などホームドラマ要素も入れているがラストの描写なんかはリンカーンが神々しく感じられるほど。
○「風と共に去りぬ」Gone With the Wind1939・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ビクター=フレミング
◇キャスト
ヴィヴィアン=リー(スカーレット)、クラーク=ゲーブル(レット=バトラー)ほか
◇ストーリー
ジョージア州タラの大地主の家に生まれたスカーレットは、その美貌で男達にもてはやされるが、密かに恋していたアシュレーが結婚してしまい、腹立まぎれに手近な男と結婚してしまう。やがて南北戦争が勃発、夫も死に南部が没落する中で、スカーレットは謎の男レット=バトラーと愛憎を繰り広げながら、強くたくましく生き抜いていく。
◇うんちく
アメリカ映画史上に名高い歴史的超大作。南北戦争を背景に描かれる一人の女の強烈な生き様が描かれる。アトランタ陥落シーンなどスペクタクル描写も圧巻。また南北戦争を南部の側からの視点で見ることができ、その「言い分」もうかがえる。アメリカ版「戦争と平和」みたいな一本。
○「グローリー」Glory1989・アメリカ
◇スタッフ
○監督:エドワード=ズウィック
◇キャスト
マシュー=ブロデリック、デンゼル=ワシントン、モーガン=フリーマンほか
◇うんちく
南北戦争の際、北軍で結成された初の黒人部隊を描く実録もの。やや説教臭い印象もあるが、戦闘シーンの迫力はなかなかのもの。デンゼル=ワシントンはこれでアカデミー助演男優賞を受賞し、出世作となった。
○「ダンス・ウィズ・ウルブズ」Dances With Wolves1990・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ケビン=コスナー
◇キャスト
ケビン=コスナー(ジョン=ダンバー)ほか
◇ストーリー
南北戦争で負傷したダンバーは、その功績と引き替えに「フロンティア」への任務を希望する。そこではインディアン達が独自の文化を持ち、誇り高く生きていた。彼らとの交流の中、主人公は「狼と踊る男」と呼ばれるようになる。だがそこへ政府の軍隊が進駐してくる。
◇うんちく
俳優ケビン=コスナーが初監督し、見事アカデミー作品賞に輝いてしまった一本。それまでの西部劇で野蛮人扱いされてきたインディアンを誇り高い種族として描き、彼ら自身の言葉を映画で始めて使用した。この作品のヒットがキッカケとなって西部劇ブームも再来した。
○「シャイアン」Cheyenne Autumn1964・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ジョン=フォード
◇キャスト
リチャード=ウィドマーク(アーチャー)、キャロル=ベイカー(デボラ)、カール=マルデン(ウェセルス)、ドロレス=デル=リオ(スパニッシュ)、リカルド=モンタルバン(リトルウルフ)、アーサー=ケネディ(ドク=ホリディ)、ジェームズ=スチュワート(ワイアット・アープ)ほか
◇ストーリー
白人達により期間限定の約束で故郷を遠く離れた居留地に押し込められたシャイアン族は病気などにより人数も数百人に減っていた。約束のその日が来たが白人側の議員は誰一人会合にやって来ず、ついにシャイアンは数千キロの彼方の故郷目指して移動を開始する。シャイアンの子供たちに教育をしていたクエーカー教徒のデボラもこれに同行し、彼女に思いを寄せるアーチャー大尉は追跡の軍を率いるがシャイアン達の苦境を知り全面的な攻撃は出来ない。シャイアン移動の情報は全国に誇張して報道され騒ぎを巻き起こす事になるが…
◇うんちく
西部劇の名匠ジョン=フォード晩期の大作。すでにインディアン観の見直しが進んでいた時期でもあり、この映画では徹頭徹尾シャイアン族が被害者として描かれ、白人達の「加害」ぶりが痛烈に描かれている(良識的な白人も結構登場するが)。特に新聞が売り上げのためにシャイアンの「襲撃」についてあることないこと書き立てて騒ぎを大きくする描写が興味深い。本筋とほとんど関係ないのに「特別出演」のように登場するワイアット=アープとドク=ホリディのコンビは西部劇ファンには嬉しいところ。迫力ある騎兵隊の突撃シーン、辛く哀しい話なんだけど全体的に温かみがあって救いを感じる叙情性などはいかにもジョン・フォード作品らしい。
○「レッズ」Reds1981・アメリカ
◇スタッフ
○監督・脚本:ウォーレン=ビーティ○撮影:ビットリオ=ストラーロ
◇キャスト
ウォーレン=ビーティ(ジョン=リード)、ダイアン=キートン(ルイーズ)、ジャック=ニコルソンほか
◇ストーリー
反骨のジャーナリスト・ジョン=リードはロシア革命を現地取材して世界に報道し、名を馳せる。帰国後アメリカ共産党を設立するが、内部の主導権をめぐる対立もあり、彼は協力を求めて再びソ連に向かった。しかし彼の人生は余りにも短く終わる。
◇うんちく
アメリカ共産党の創設者の青春を描いた、何とも意外なテーマの映画である。理想に燃える青年像をビーティが自ら演出し、熱演。アカデミー監督賞・撮影賞を獲得した。主人公と自由な恋愛関係を繰り広げるキートンの演技も出色。
○「怒りの葡萄」The Grapes of Wrath1940・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ジョン=フォード○脚本:ナナリー=ジョンソン○原作:ジョン=スタインベック
◇キャスト
ヘンリー=フォンダ(トム=ジョード)、ジェーン=ダーウェル(ママ)、ジョン=キャラダイン(ケイシー)ほか
◇ストーリー
大恐慌下の1930年代。仮釈放で刑務所から出て来たトムが4年ぶりにオクラホマの実家に帰ると、小作農の実家は地主に土地を追われていた。一家は高給の仕事のビラを頼りに新天地カリフォルニアを目指し、おんぼろトラックに家族全員と一切合財を積み込んで大陸を横断してゆく。やっとの思いで着いたカリフォルニアだったが、そこでは搾取と差別の過酷な現実が待っていた。
◇うんちく
スタインベックの大ベストセラーを直後に映画化。抒情的西部劇の名匠ジョン=フォードが監督、原作にほれ込みトム役を熱望したヘンリー=フォンダの熱演により濃密な社会派の傑作となった。救いのない過酷な社会の現実を容赦なく描いていくが、映画自体は家族の流浪の物語に絞ったことで(イデオロギー的な批判をかわすためともみれる)温かみと救いを感じさせる。とくに母親役のジェーン=ダーウェルの存在感が素晴らしく、この年のアカデミー助演女優賞を獲得した。ジョン=フォードも監督賞を獲得している。
○「ゴッドファーザー三部作」The Godfatherアメリカ
◇スタッフ
○監督:フランシス=F=コッポラ
◇キャスト
マーロン=ブランド(ビトー=コルレオーネ)、アル=パチーノ(マイケル=コルレオーネ)、ロバート=デニーロ(ビトー青年期)ほか
◇ストーリー
20世紀初頭、父を殺されシチリア島からアメリカへ逃れたビトーは一代でイタリア系社会でのし上がり、マフィア組織「コルレオーネ・ファミリー」を築き上げた。その三男マイケルはマフィアになることを望まなかったが、父の暗殺未遂・兄の暗殺を経てファミリーを引き継ぎ、裏切り・抗争を生き抜いてより巨大な組織を築き上げていく。やがて70年代、コルレオーネ・ファミリーはカトリックの本山バチカンと手を結び事業を興そうとするが…
◇うんちく
ニーノ=ロータの切ない調べと共に綴られるイタリア系マフィア一家三代の歴史。ギャング映画の枠にとどまらない「移民史ドラマ」としてぜひ通して鑑賞したい一本。オリジナルは「パート2」で年代が入りくんでいるが、年代順に並べ替えたTV用バージョンも存在する。
○「トルーマン」TrumanアメリカTV映画
◇スタッフ
○監督:フランク=ピアソン
◇キャスト
ゲイリー=シニーズ(トルーマン)、ダイアナ=スカーウッド(ベス)ほか
◇ストーリー
アリゾナの農家に生まれたトルーマンは33歳で第一次大戦に志願して出征、帰国後衣料店を始めるが大恐慌に見舞われ地元の有力者に担ぎ出される形で判事選挙に出馬し当選する。次第に政治への情熱を燃やすようになった彼は上院議員になり、さらにルーズベルト大統領に懇願されて副大統領にまでなる。ところがルーズベルトが急死したためトルーマンは突然大統領に。原爆投下、大激戦の大統領選、冷戦と次々と難題に直面していく。
◇うんちく
トルーマンをあくまで平凡、かつ誠実な一個人として描き、それが歴史の激動の中で翻弄されるように大統領にまで登り詰めて、大変な苦労をするというお話。一見地味な素材を面白くまとめた伝記ドラマで、個人の視線から見た「大統領」という制度の舞台裏が興味深い。けっこうカカア天下な妻ベスの存在感も利いている。
○「13デイズ」13Days2000・アメリカ
◇スタッフ
○監督:ロジャー=ドナルドソン
◇キャスト
ケビン=コスナー(ケネス=オドネル特別補佐官)、ブルース=グリーンウッド(ジョン=F=ケネディ)、スティーブン=カルプ(ロバート=ケネディ司法長官)ほか
◇ストーリー
偵察機によりソ連がキューバにミサイル基地を建造していることが判明、軍部・閣僚が「キューバ空爆、さらに侵攻」を主張する中、ケネディ大統領は弟のロバート、補佐官のオドネルと共に「戦争阻止」を念頭に対キューバ海上封鎖を実行する。しかしU2偵察機が撃墜され、世界は核戦争の危機に直面した。
◇うんちく
「キューバ危機」の13日間を、ケネディの補佐官の視点から描く政治サスペンス。ケネディ兄弟がかなり理想化されている嫌いも感じるが、戦争にはやる軍部らを「アイルランド系三人組」が必死に押さえ込んでいく姿は共感を呼ぶ。あれを観てるとケネディが誰に、なぜ殺されたかよく分かるような気がする。
○「ダラスの熱い日」Executive Action1973・アメリカ
◇スタッフ
○監督:デビッド=ミラー○脚本:ダグラス=トランボ
◇キャスト
バート=ランカスター、ロバート=ライアンほか
◇ストーリー
人種問題、対キューバ・ソ連政策で対話的姿勢をみせるケネディ大統領に不満を募らせる右派大物をトップにするグループが、「大統領暗殺」の陰謀を綿密に進めていく。彼らはオズワルドを「狂った単独犯」に仕立てるべく偽物のオズワルドを用意し…
◇うんちく
ケネディ暗殺からわずか10年後に製作された映画だが、「オズワルド単独犯行説」のウォーレン報告を真っ向から否定し、疑問の数々に一応の解答を与えた作品。のちの「JFK」に描かれた推理をほとんど含んでいるが、こちらは犯人達(もちろん架空のキャラ)の視点からその画策・行動を中心にすえてオズワルド殺害までを描いていく。ラストの「18人の重要証人が3年以内に死亡した」というナレーションにはゾッとさせられる。
○「JFK」JFK1991・アメリカ
◇スタッフ
○監督:オリバー=ストーン
◇キャスト
ケビン=コスナー(ジム=ギャリソン)、ゲイリー=オールドマン(オズワルド)、トミー=リー=ジョーンズ(クレイ=ショウ)ほか
◇ストーリー
ケネディ大統領がダラスで暗殺された。犯人としてオズワルドが逮捕されるが直後に彼も射殺される。事件に疑問を抱いた地方検事ギャリソンはケネディ暗殺事件の背後関係を調査していく。そこには軍産複合体の巨大な陰謀が…
◇うんちく
60年代にこだわりつづける映画作家・オリバー=ストーンの三時間強の力作。実在の人物ばかりなので俳優もかなり本物に似せたメーキャップで登場する。実際の映像も駆使した編集の妙が迫力を増す。事実関係はどうあれ、政治的サスペンス映画として十分に楽しめるし、「アメリカの正義」への疑問も投げかけている。
○「ケネディ家の人びと」THE KENNEDYS2011・アメリカ/カナダ
◇スタッフ
○監督:ジョン=カサー○脚本:スティーブン=クロニシュ
◇キャスト
グレッグ=キニア(ジョン=F=ケネディ)、バリー=ペッパー(ロバート=ケネディ)、トム=ウィルキンソン(ジョゼフ=ケネディ)、ケイティ=ホームズ(ジャクリーン)、ダイアナ=ハードキャッスル(ローズ)、ほか
◇ストーリー
自身は政治家として失敗したジョゼフ=ケネディは息子をアメリカ大統領にすえる野心を抱いた。期待した長男は戦死したため、次男のジョン(家庭での愛称はジャック)を半ば強引に政治家に転身させ、マフィアとも結びつくなど手段を選ばず大統領に当選させると、息子の一人ロバートを司法長官に据えさせる。父の影響を絶ち切ったジョンはロバートと共に黒人問題やキューバ危機に対応する一方、女癖の悪さで妻のジャクリーンを悩ませる。絶頂を極めたかに見えたケネディ家だったが、ジョゼフは病に倒れ、ジョンとロバートが相次いで暗殺される悲劇に見舞われてゆく。
◇うんちく
これまでも映画化・ドラマ化の多いケネディものだが、これは「ゴッドファーザー」を連想させる家族大河ドラマ。全8回のミニシリーズで、ケネディを政治家として評価しつつもシナトラも絡んだマフィア問題やマリリン=モンローら女性問題など暗部にもかなり踏み込んでいる。暗殺に関しては背景にはあまり深入りせず、オズワルド単独犯行の「公式見解」に沿ったものとなっていて物足りなさも感じるが、メインがあくまでホームドラマだからでもあろう。
○「マルコムX」Malcolm X1992・アメリカ
◇スタッフ
○監督:スパイク=リー
◇キャスト
デンゼル=ワシントン(マルコム)、スパイク=リーほか
◇ストーリー
黒人の若者マルコム=リトルは父を白人至上主義者に殺され、一家は離散の憂き目にあい、彼自身はチンピラギャングの道を進む。逮捕され収監された刑務所で、ブラック・ムスリムに触れて目を開かされたマルコムはこれに入信し、持ち前の演説力を発揮して頭角を現し、教団の勢力を拡大する。やがてブラックムスリムの限界を知ったマルコムはメッカに旅立ち、新たな思想を導き出す。だが彼に残された時間はあまりにも短かった。
◇うんちく
キング牧師と並ぶ黒人運動の指導者・マルコムXのあまりにも劇的な生涯を描く大作。前半はギャング映画で後半は革命映画。キングと違ってやや過激で敬遠されがちな人物の生涯を、華麗に重厚に描き、マルコムXの知られざる魅力を引き出すことに成功している。アカデミー賞にノミネートされたデンゼル=ワシントンの本人ソックリの熱演は圧巻。まぁややエンディングが説教臭い気もするが。
○「ニクソン」Nixon1995・アメリカ
◇スタッフ
○監督:オリバー=ストーン
◇キャスト
アンソニー=ホプキンズ(ニクソン)ほか
◇ストーリー
ニクソン大統領はウオーターゲート事件により辞任に追い込まれた。彼は自らの半生を回想していく。貧しい家に生まれたニクソンは兄の死のおかげで法律学校へ進み、政治家への道を進むが、大統領選ではケネディに敗れ、州知事選にも敗北して政界引退を一度は決意する。しかし再び出馬し対抗馬ロバート=ケネディの暗殺もあって当選、その後ベトナム戦争から撤退、中国・ソ連との外交を成功させる。しかし彼は常に嫌われ者で、ケネディへのコンプレックスに悩んでいた。
◇うんちく
オリバー=ストーン監督が「JFK」に続いて製作した「大統領映画」。アンソニー=ホプキンズが小心者でコンプレックスに悩む野心家という難役を見事に演じているが、どうも実像通りというわけでもないらしい(実際遺族から抗議もあった)。おまけに彼がケネディ兄弟暗殺に絡んだともとれる描写も批判を受けた。毛沢東やフルシチョフまで登場し、力が入っているのは分かるんだけど、全体に散漫な印象は免れない。脚本・編集も凝りすぎ。
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